
生前贈与で現金を手渡しするのはOK?税務リスクとその回避策
公開日: 2024.10.23 更新日: 2024.10.25
目次
生前贈与とは?
生前贈与とは、親や祖父母が生きている間に財産を贈与し、将来の相続税の負担を軽減するための手段です。相続税の節税を目的として、計画的に財産を移転する方法として広く用いられています。財産の種類には不動産や株式、さらには現金なども含まれます。現金の贈与は、比較的手続きが簡便であるため、選ばれることが多い手段の一つとされています。
現金手渡しによる贈与の特徴
現金の手渡しによる生前贈与には、以下のような特徴があります
1. 即時の贈与が可能
現金を直接手渡しすることで、複雑な手続きを省略でき、すぐに贈与を完了できます。
2. 柔軟な対応ができる
受贈者は銀行振り込みなどと異なり、現金をすぐに使用可能です。
現金手渡しで生前贈与をしてもいいの?
現金手渡しでの贈与は法律的に問題ないのか?
現金を手渡しで贈与すること自体は、法律的に特に問題はありません。日本の法律では、現金の贈与も不動産や有価証券などと同様に贈与契約の一環と認識されます。ただし、現金手渡しによる贈与は、贈与の証拠が残りにくく、税務署が贈与として認めないリスクが高まる可能性があります。そのため、適切な証拠を準備し、税務手続きを行うことが不可欠です。
証拠を明確にすることの重要性
現金を手渡しで贈与する場合、贈与が行われたという証拠を立証するためには、贈与契約書の作成や受領書の発行が必要です。単に現金を渡すだけでは、税務署がそれを「一時的な貸付」や「返済の一部」とみなすリスクがあります。
贈与契約書には、贈与の日付、贈与者と受贈者の氏名、贈与の金額、そして贈与の意思を明記することが求められます。また、受領書に受贈者のサインをもらうことで、贈与の事実を確かなものにすることができます。
生前贈与と相続税対策
生前贈与は、将来の相続税の負担を軽減する手段として非常に有効です。特に、毎年110万円以内の現金贈与を計画的に行うことで、基礎控除を活用しながら、リスクを低減しつつ財産移転を進めることができます。
1. 贈与税の申告と基礎控除
日本の税法では、年間110万円までは贈与税の基礎控除が適用され、贈与税がかかりません。しかし、これを超える金額を贈与する場合は、贈与税の申告が必要です。適切な申告が行われていないと、後から追徴課税が課されるリスクがあります。
2. 記録の保存
現金の手渡しで贈与を行った場合、贈与の証拠が残りにくいため、贈与契約書の他に、受領書や贈与に関するメモを保管しておくことが重要です。これにより、税務署からの調査が入った際に贈与の事実を立証しやすくなります。
3. 贈与計画の注意点
贈与者が複数いる場合、受贈者にとっての贈与額はすべて合算されます。例えば、両親からそれぞれ110万円ずつを子供に贈与した場合、受贈者である子供にとっては合計220万円の贈与となります。基礎控除は年間110万円までしか適用されないため、110万円を超える部分には贈与税が課税されます。この点を考慮し、計画的に贈与を行うことが大切です。
現金手渡しのリスクとその回避策
現金の手渡しによる生前贈与には、いくつかのリスクが伴います。ここでは、代表的なリスクとその回避策について解説します。
1. 税務調査が発生する可能性
現金を手渡しで贈与する場合、銀行の振込記録などが残らないため、税務署からの調査対象となりやすいです。特に多額の現金を手渡しした場合、税務署は贈与の事実や贈与税の申告内容について確認を行う可能性があります。
・回避策
このリスクを避けるためには、贈与契約書や受領書を作成し、贈与の意図を証明することが重要です。必要であれば、贈与に詳しい税理士に相談し、記録方法について確認することをお勧めします。
2. 追加課税のリスク
現金手渡しによる贈与が適切に証明できないと、税務署が贈与を否認し、追加の贈与税が課されるリスクがあります。また、ペナルティとして追徴課税が発生する可能性もあります。
・回避策
贈与税の基礎控除を超える金額の贈与を行う場合、必ず税務申告を行いましょう。申告の漏れを防ぐため、税理士に定期的に相談し、適切な手続きを確認することが大切です。
3. 定期的な贈与とみなされるリスク
毎年同じ金額を贈与し続けると、税務署がこれを「定期贈与」とみなすことがあります。定期贈与と判断されると、全期間の贈与額が一括で課税される恐れがあります。
・回避策
定期贈与とみなされないようにするには、毎年異なる金額を贈与するか、目的に応じたタイミングで贈与を行いましょう。また、複数年にわたる贈与契約を作成することで、リスクを軽減できます。
4. 生前贈与として認められないリスク
現金を手渡しで贈与した場合、税務署が「贈与ではなく、貸付や預かり金」と見なすリスクもあります。特に、贈与契約書や受領書がない場合、このリスクは高まります。
・回避策
贈与契約書を作成する際は、贈与の意思と金額を明確に記載し、双方の署名を得ることが重要です。また、銀行振込を活用して証拠を残すことも有効です。
まとめ
生前贈与で現金を手渡しすることは、簡便で迅速な方法ですが、税務上のリスクが伴います。贈与契約書の作成や贈与税の適切な申告を忘れずに行い、必要に応じて専門家の助けを借りることで、リスクを最小限に抑えながら計画的に資産を移転しましょう。
生前贈与を検討する際は、相続税対策の一環として計画的に行うことが重要です。しっかりと準備を整え、安心して資産を次世代に受け渡しましょう。
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