故人のPayPayやSuicaなど電子マネーは相続できる?残高確認と手続きの流れを徹底解説

故人のPayPayやSuicaなど電子マネーは相続できる?残高確認と手続きの流れを徹底解説

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電子マネーは相続の対象になるのか?

電子マネーとポイントの違い

電子マネー(例:Suica、PayPay等)は、事前に現金をチャージする「プリペイド型」の仕組みを持ち、利用者が事実上“お金を預けている”形になるため、「金銭的価値あるもの」として相続財産に含まれるのが一般的です。
一方で、ポイント(例:Tポイント、楽天ポイントなど)やマイルのようなものは、契約上、本人にのみ利用が許されているサービスが多く、相続対象とならないことが多いです。ただし、ANAやJALのマイレージについては例外的に相続が認められている場合があります。

電子マネーは「預り金」として相続財産に含まれやすい

日本銀行や国の税務当局の取り扱いにおいて、「プリペイド型電子マネーのチャージ残高は、『財産的価値を持つ債権』と見なされ得る」という見解が示されており、相続税の課税対象として扱われるケースが多いです。

相続できない(失効してしまう)サービスもあるため要確認

ただし、nanacoのように「利用者が死亡した時点で残高が失効し、払い戻しも不可」とされているサービスも存在し、このようなケースでは相続財産にならない可能性があります。また、利用規約に「相続不可」が明示されているサービスもあり、事前確認が必要です。

相続税の課税対象になるのか?

プリペイド型電子マネーの残高は、たとえ少額であっても相続税評価の対象となります。申告漏れが税務調査による追徴課税につながるリスクがあるため、注意が必要です。

相続できる電子マネーの種類

電子マネーと一口に言っても、交通系ICカード、小売系プリペイド、QRコード決済など多様な形態が存在します。それぞれ相続への対応も異なるため、具体的なサービスごとに確認しておくことが大切です。

交通系ICカード(Suica・PASMOなど)

SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは、預り金(デポジット)とチャージ残高の二重構造を持っています。これらはJR東日本や私鉄各社が提供しており、チャージ残高とデポジットを合わせた金額が原則として相続対象です。

例えば、Suicaの場合は、JR東日本に対して死亡届と共に払い戻し申請を行うことで、残高の返金を受けられる仕組みになっています。ただし、故人の氏名やカードの所有者確認が必要となるため、利用者登録を行っていない無記名カードでは払い戻しが難しい場合もあります。

小売系電子マネー(WAON・nanacoなど)

WAON(イオン)やnanaco(セブン&アイ)といった小売系電子マネーも、チャージ型の電子マネーであり、残高の払い戻しや解約が可能です。

ただし、nanacoは利用規約上、死亡時点で残高が失効すると明記されています。利用者が死亡したことを申告すると、相続人であっても返金を受けることはできない可能性があります。この点が電子マネーの中でも特に注意すべきポイントです。

一方、WAONは問い合わせによって返金や解約の手続きが可能なケースもあり、利用状況や登録情報によって対応が分かれます。いずれも、カスタマーセンターへの連絡と身分証明書類の提出が必要です。

QRコード決済(PayPay・楽天ペイなど)

近年利用者が急増しているのが、QRコードを用いたスマートフォン決済です。PayPayや楽天ペイ、d払いなどが代表例です。

PayPayはユーザー本人の電話番号やメールアドレス、銀行口座に紐づいており、相続手続きには次の情報が必要です。

  • 故人のPayPay登録情報(電話番号、メールアドレス)

  • 登録済みの銀行口座情報

  • 死亡の事実を証明する書類(戸籍謄本など)

  • 相続人の本人確認書類

楽天ペイやd払いでも、ほぼ同様の情報が必要です。特にPayPayは、残高の現金化ができない「PayPayマネーライト」や「ボーナス」など複数の残高種別があるため、それぞれの扱いにも注意が必要です。

航空マイルや各種ポイントの扱い

JALやANAのマイレージプログラムでは、故人の死亡後、一定の条件下でマイルの相続が可能です。

【ANAマイレージクラブ】

  • 相続申請期限:死亡後6か月以内

  • 必要書類:死亡診断書、相続人の本人確認書類

  • マイル移行先:配偶者または二親等以内の親族

【JALマイレージバンク】

  • 同様の条件で、配偶者・子・孫などへのマイル移行が可能

  • 有効期限の延長は不可

一方で、スーパーマーケットやドラッグストアのポイントカード、Tポイントなどは、契約上「個人に付与される特典」であり、原則として相続不可となっています。死亡後は即時失効する場合が多いため、事前の対策が重要です。

電子マネー残高を確認する方法

相続の手続きを進める上で、故人が保有していた電子マネーの「有無」と「残高」を正確に把握することが不可欠です。しかし、電子マネーは目に見える形で存在しないため、発見が遅れたり、見落とされたりするリスクが高くなります。以下に、具体的な確認方法を解説します。

故人のスマホ・タブレット・PCを確認する

最も直接的な手段は、故人が使用していたスマートフォン、タブレット、PCなどの端末を確認することです。電子マネーアプリ(PayPay、楽天ペイ、Suicaなど)は、ログインすれば残高を確認できます。機種やOSによって異なりますが、多くのアプリではホーム画面や残高表示画面に即座にアクセス可能です。

もし端末が指紋認証や顔認証、パスコードでロックされている場合、開けることができなければ情報の確認は非常に困難になります。そのため、事前に家族間でログイン情報の共有やエンディングノートへの記載が重要です。

銀行口座の通帳や明細でチャージ履歴を追う

電子マネーは銀行口座やクレジットカードからチャージすることが一般的です。そのため、通帳やクレジットカードの利用明細から「PayPayチャージ」「楽天Edyチャージ」などの記載があれば、故人がそのサービスを利用していた可能性が高まります。

この情報をもとに、各サービス会社に問い合わせを行い、残高の有無を確認する流れが基本となります。

メール受信履歴やアカウント情報を探す

電子マネーに関連するサービスでは、利用明細やキャンペーン通知、チャージ完了の案内などがメールで届きます。GmailやYahoo!メールなど、メールアカウントにアクセスできる場合、「PayPay」「楽天ペイ」「WAON」などのキーワードで検索すると、サービス利用の痕跡を見つけることができます。

これらのメールから、登録アカウント、ID、紐づけられた電話番号や口座情報がわかる場合もあるため、相続手続きの手がかりになります。

パスワードロックが解除できない場合の対処(Apple・Androidごとの違い)

故人の端末がロックされており、解除ができない場合は次の対応が考えられます。

【Apple(iPhone)の場合】

  • Apple IDが必要。Appleのサポートに連絡し、「デジタル遺産プログラム」や「アカウント復旧申請」によってアクセス権限を相続人が引き継げる場合があります。

  • 死亡証明書や相続人であることを証明する書類が必要。

【Android(Googleアカウント)の場合】

  • Googleのサポート窓口に対して、故人のGmailアカウントやGoogle Payアカウントへのアクセス権限の申請が可能。

  • 一定の手続きにより、メールやクラウド上のデータ、場合によってはGoogle Payの履歴情報にアクセスできます。

ただし、これらの手続きには数週間を要することもあり、必ずしも承認されるわけではないため、事前にアカウント管理情報を家族に共有しておくことが最善です。

電子マネー相続の手続きの流れ

電子マネーの残高を相続するためには、ただ「知っている」だけでは不十分です。実際には、各電子マネー事業者とのやり取りや、法的な手続きを踏む必要があります。ここでは、一般的な手続きの流れを詳しく説明します。

相続財産に含めるための調査と整理

まずは故人の遺品整理や情報確認を通じて、電子マネーの存在を明らかにします。すでに紹介したように、スマートフォン、PC、通帳、メールなどから利用履歴を確認し、どの電子マネーサービスを使っていたか、残高はいくらかを調査します。

調査が完了したら、発見された電子マネーの一覧を作成し、それぞれの「登録情報(ID、メールアドレス、電話番号)」「残高」「発行元会社」「相続の可否」を記載した一覧表を作ることが推奨されます。これにより、手続きが重複したり、漏れたりするリスクを減らせます。

各サービス運営会社への問い合わせ

電子マネーは発行元によって規約や対応が異なります。そのため、一覧表に基づいて、各サービス会社のカスタマーサポートや問い合わせ窓口に連絡を取ります。

問い合わせ後、サービスによっては「解約申請書」「払い戻し申請書」の提出を求められる場合もあります。

払い戻しや解約の申請

手続きが進むと、次に「解約」「払い戻し」「名義変更」などの選択肢が提示されることがあります。

たとえば:

  • Suica:デポジット含む残高を現金で払い戻し

  • PayPay:残高を登録銀行口座へ返金

  • WAON:残高を相続人指定の銀行口座に払い戻し

なお、利用規約により「相続不可」「返金不可」とされているサービスの場合、解約はできても残高の受け取りはできないこともあるため注意が必要です。

遺産分割協議書や戸籍謄本など必要書類の準備

サービスによっては、相続人全員の同意を得たうえで手続きが求められるケースもあります。そのため、相続人全員が署名・押印した「遺産分割協議書」や、相続人関係を証明するための「戸籍謄本」などの準備が必要です。

また、弁護士や司法書士に相談し、法的に有効な書類を整えることで、スムーズな手続きが可能になります。特に相続人が複数いる場合や、相続争いの可能性がある場合には、専門家のサポートを受けることが重要です。

電子マネーの相続税評価

電子マネーは現金や銀行預金と同じく、法的には相続財産とみなされる可能性が高いとされています。そのため、相続税の申告においても、適切な評価と記載が求められます。ここでは、電子マネーの相続税評価の実務について詳しく解説します。

残高は金額そのままが評価額となるケースが多い

電子マネーの相続税評価額は、原則として「死亡時点の残高相当額」がそのまま評価額になります。これは、電子マネーが預金と同様に即時に現金化可能な性質を持っているためです。

たとえば、故人がPayPayに2万円、Suicaに5,000円のチャージがあった場合、その合計2万5,000円が相続税評価額として計上されます。

評価額の根拠となるのは、次のような情報です。

  • アプリの残高画面のスクリーンショット(死亡直後)

  • サービス会社からの残高証明書

  • 銀行口座からのチャージ記録

  • 電子マネーの利用履歴

可能であれば、死亡時点の残高証明を取得しておくことで、評価の裏付けとして利用できます。

相続税申告書で記載する場所

相続税申告書では、電子マネーの残高は「現金・預貯金等」の項目に分類されることが多く、預金等と合算して申告されるのが一般的です。

具体的には、第11表「現金・預貯金・株式等の明細書」などに明記し、どのサービスでいくら残高があったかを記載します。サービス名や残高を明確に示しておくことで、税務署からの照会を避ける助けになります。

なお、電子マネーは目に見えない財産であるため、申告漏れが多い分野とされています。特にスマートフォンのロックやデータの消失などにより残高の把握ができなかった場合、税務署の調査で発覚することもあり、追徴課税のリスクもあるため注意が必要です。

少額でも原則として申告対象になるので注意

電子マネーの残高が数百円、数千円といった少額であっても、相続財産である限り、原則として相続税の申告対象となります。特に他の相続財産と合算して課税対象額(基礎控除額)を超える場合は、例外なく申告しなければなりません。

見落とされやすい電子マネーの残高ですが、故人が普段からキャッシュレス生活をしていた場合、合算すると意外に高額になるケースもあります。PayPayや楽天ペイだけでなく、複数の交通系ICカードや、未使用のポイントギフトカードなども対象に含まれる可能性があるため、慎重な調査が求められます。

注意点とよくあるトラブル

電子マネーは便利な反面、相続の場面では思わぬトラブルの原因になることがあります。ここでは、相続実務における注意点や実際によくあるトラブルを取り上げ、その対応策について解説します。

利用規約で「相続不可」とされているサービスもある

多くの電子マネーやポイントサービスでは、利用規約の中に「アカウントの譲渡・相続は不可」と明記されています。たとえばnanacoでは、「利用者が死亡した時点でカードは失効し、残高は返金対象外」とされています。このような規約がある場合、法的な相続権があっても、運営会社は返金や名義変更に応じない可能性があります。

また、楽天ポイントやTポイントなども、アカウントが死亡により停止された後、保有ポイントが失効する仕様になっているため注意が必要です。事前に利用規約を確認し、利用中のサービスが相続可能かどうかを把握しておくことが重要です。

少額だからと放置しても相続税上は課税対象

電子マネーの残高が少額だからといって相続対象から除外することは、法律上認められていません。たとえばPayPayに数千円、WAONに500円、Suicaに1,000円というような分散された残高でも、合算すれば相続財産としてカウントされる必要があります。

特に近年では、故人が現金をほとんど持たず、電子マネーのみで生活していたケースも増えており、総額が数万円から十万円を超えることも珍しくありません。税務署の調査で発覚すれば、申告漏れによる加算税や延滞税が課せられるリスクがあります。

残高を使い切ってしまうと、相続人間でトラブルになる恐れ

相続人のうち一人が「残高を使い切ればいい」と考えて、勝手に故人のスマホを操作して電子マネーを使ってしまうと、他の相続人との間で法的な争いに発展することがあります。電子マネーも相続財産である以上、遺産分割協議が完了する前に一方的に使うことは「遺産の私的処分」とみなされ、後々問題になる可能性があります。

たとえば、相続人Aが故人のPayPayを使って1万円分の買い物をした場合、相続人BやCがその使途や配分に納得できなければ、家庭裁判所での調停や訴訟に発展するケースもあります。

このようなトラブルを防ぐには、電子マネーの存在を明らかにし、全相続人が合意したうえで対応を決めることが大切です。分配が困難な場合は、いったん解約・払い戻しを受けて現金化し、通常の相続財産として扱うことが推奨されます。

終活の視点からやっておくべきこと

相続人にとって電子マネーは把握しづらい資産の一つであり、亡くなった後に存在が分からず、残高が失効してしまうケースも少なくありません。こうしたトラブルを避けるためには、本人が生前に対策を講じておくことが極めて重要です。以下に、終活の一環として行っておくべき具体的な準備を紹介します。

利用している電子マネーやポイントをリスト化しておく

自分が日常的に使っている電子マネーやポイントの一覧を作成し、どのサービスを利用しているか、どの程度の残高があるかを定期的に確認・記録しておくことが有効です。特に複数のサービスを使い分けている場合、どれか一つでも把握されていなければ、その資産は失われる可能性があります。

このリストには以下の情報を含めるとよいでしょう:

  • サービス名(PayPay、Suica、WAONなど)

  • 登録メールアドレス・電話番号

  • チャージ元の口座またはカード情報(分かる範囲で)

  • IDまたはログインアカウント

  • 残高(おおよその目安)

サービスごとの相続可否を事前に調べる

すべての電子マネーやポイントが相続できるわけではありません。中には、規約により死亡時に自動的に失効するもの、相続申請に厳しい条件があるものもあります。そのため、自分が使っている各サービスについて、「相続可能かどうか」「手続きの流れ」を一度確認しておくことをおすすめします。

各社の公式サイトには、相続に関するFAQや問い合わせ窓口の情報が掲載されていることが多いため、生前に確認し、必要があればサービスの変更や統一を検討することも一案です。

相続人にわかるようにエンディングノートに記録しておく

電子マネーやポイントに関する情報は、エンディングノートやデジタル資産管理ノートに記録しておくことで、相続人が迷わずに手続きを進められるようになります。記録の際には、「どこにアクセス情報を保管しているか」「どのデバイスに保存しているか」も明記しておくとより確実です。

なお、アカウントのIDやパスワードを直接ノートに書いておく場合は、盗難や悪用のリスクも考慮し、厳重な管理を行う必要があります。クラウド型のパスワード管理アプリを活用し、マスターパスワードだけを記録しておく方法も有効です。

必要に応じて弁護士や司法書士に相談する

電子マネーの相続は、まだ法制度や運用が完全に整備されていない分野であり、実務上の判断が分かれることも多くあります。特に相続財産が高額である場合や、相続人間に意見の相違がある場合には、法律の専門家に相談することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

弁護士や司法書士は、遺言書の作成支援や、相続に関する事前アドバイス、電子マネーに関する法的な評価や手続きにも対応可能です。終活の一環として一度専門家に相談し、将来に備えるのも重要なステップです。

まとめ

キャッシュレス化が進む現代において、電子マネーやポイントといった「見えない資産」の存在がますます重要になっています。故人が残したSuicaやPayPayなどの電子マネーは、実際には銀行預金と同じように相続財産として扱われるケースが多く、金額にかかわらず相続税の対象となる可能性があります。

しかしながら、電子マネーの扱いはサービスによって大きく異なり、相続手続きに対応していないものや、死亡時点で残高が失効するものもあります。こうした違いを理解せずに放置すると、本来引き継げたはずの財産が失われてしまったり、相続人間でトラブルが発生したりするリスクが高まります。

電子マネーの相続では、「何を持っていたかを正確に把握すること」「サービスごとの対応を確認すること」「手続きを丁寧に進めること」の三点が重要です。残高の確認方法、相続可否の判断、必要書類の準備など、早い段階での調査と対応が、スムーズな相続手続きへとつながります。

また、本人が生前から利用している電子マネーの情報を整理し、エンディングノートなどで相続人に明示しておくことは、将来的な混乱を避けるうえで非常に有効です。すべての財産を正確に受け継ぐためには、現金や不動産だけでなく、デジタル資産についての理解と備えが不可欠な時代になっているのです。

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