iPhoneの「故人アカウント管理連絡先」は使える? 万が一に備えた対応

2025.6.30

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iPhoneのパスロック解除は、FBI捜査でもAppleが拒否したことで以前話題にもなりましたね。 万が一に備えたいけどパスロックをそのまま伝えたり、紙に残しておくのは不安という方へおすすめの機能をご紹介します。

故人アカウント管理連絡先とは?

iOS 15.2、iPadOS 15.2、macOS 12.1以降で利用可能な「故人アカウント管理連絡先」機能は、本人が亡くなった後に信頼できる人がAppleアカウント内のいくつかのデータにアクセスできるようあらかじめ設定しておく仕組みです。(2025年6月現在) 主に対象となるのは写真、メッセージ、メモ、ファイル、ダウンロードしたアプリ、デバイスのバックアップなどです。 購入した映画や音楽、書籍などのデジタルコンテンツや、支払い情報・パスワードなどのキーチェーン情報にはアクセスできないよう、セキュリティ面にも配慮されています。 この機能を設定しておくことで、万が一の際に「大切な人の思い出や重要な記録を取り残さず引き継げる」安心を得られるのが最大のメリットです。

設定方法

※Face ID、Touch ID、またはパスコードでの認証が必要です。 iPhone/iPadの場合: i. 設定アプリを開き、自分のユーザー名をタップ ii. 「サインインとセキュリティ」を選び、「故人アカウント管理連絡先」を開く iii. 「故人アカウント管理連絡先を追加」をタップし、連絡先を指定

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iv. アクセスキーの共有方法(メッセージ送信/プリント出力など)を選び設定完了

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Macの場合(macOS Ventura以降、または12.1以前)も同様に以下のステップで設定が可能です: i. システム設定(またはシステム環境設定)を開く ii. 左上の自分のApple IDをクリック iii. 「パスワードとセキュリティ」→「故人アカウント管理連絡先」を選ぶ iv. 「追加」をクリックし連絡先を指定 v. 表示されるアクセスキーを共有、完了をクリック モバイルと同様の操作手順です。Macユーザーもぜひ準備を進めましょう。

重要ポイント

複数人指定可能:信頼できる人を複数選べるため、万が一の際のアクセス権を分散管理できます。 ・Apple ID不要:受け取る側はApple製デバイスやApple IDを持っていなくても大丈夫。 ・アクセスキーの共有が必須:設定後、アクセスキーを関係者へ共有する必要があります。 ・アクセス期間は3年間:申請承認から最大3年間、データを閲覧できます。 ・年齢制限あり:設定者は13歳以上が対象(地域により異なる場合あり)。 これらは実際に設定する際に注意すべきポイントです。

アクセス申請に必要なもの

アクセスキー:故人アカウント管理連絡先に登録した後、共有された固有のキー。 ・死亡証明書:日本では戸籍謄本が一般的です。 Appleへの申請時にこれらを提出することで、審査が開始されます。

セキュリティ対策

・Appleは申請内容を厳密に審査します。 ・承認されると故人のApple IDとパスワードは無効化されます。 ・すべてのデバイスでアクティベーションロックが解除され、体制的にデータ引き継ぎが可能になります。 ・対象者は「読み取り専用」であり、データの改変・削除はできません。

アクセスキーの共有と注意点

アクセスキーは故人のデータにアクセスするための唯一の鍵となるため、その管理は極めて重要です。共有方法は以下の通り状況に応じて柔軟に選べます。 ・iOS 15.2以降のAppleデバイスを使用している場合 故人アカウント管理連絡先を追加する際に、iMessageなどを通じてアクセスキーを直接送信することが可能です。相手が承諾すると、自動的に自分のApple ID設定にアクセスキーが保存されます。 ・古いiOSを使用している場合 相手のソフトウェアが古い場合は、先にiOSのアップデートを促す必要があります。アップデート後にアクセスキーをメッセージアプリなどで送信すれば、同様に設定が可能となります。 ・Apple製品を持っていない人の場合 アクセスキーは印刷して物理的に手渡すか、PDF形式に変換して安全な方法でデジタル送信することもできます。たとえばUSBメモリに保存して相続関連書類と一緒に保管する方法も推奨されています。 ここで注意すべきは、アクセスキーを共有した後に、その連絡先をApple ID設定から削除してしまうと、共有済みのキーは無効化されてしまう点です。故人アカウント管理連絡先の維持管理にも注意が必要です。

注意点

故人アカウント管理連絡先を設定する際は、いくつかの実務的な注意点も押さえておきましょう。 ・アクセスキーの受領確認 メッセージで送信しただけでは、必ずしも相手がアクセスキーを受け取ったとは限りません。受信確認を取り、必要であれば物理的なコピーも渡しておくと安心です。 ・相続書類との一括管理 アクセスキーは他の相続関連書類(遺言書、財産目録など)と一緒にファイル化して保管すると、家族にとっても分かりやすくなります。 ・連絡先の見直し 時間の経過とともに家族構成や信頼関係が変化する可能性もあるため、登録した連絡先が適切なままか、定期的に見直すことが推奨されます。 こうしたポイントを踏まえることで、設定の意義がより高まり、万が一の際の混乱を未然に防ぐことができます。

共有されるデータの詳細

故人アカウント管理連絡先に指定された人がアクセスできるデータは多岐にわたります。以下のように大別できます: iCloudに保存された情報 ・写真とビデオ(iCloudフォト) ・メッセージ(iMessage/SMS/MMS) ・iCloudメール ・連絡先リスト ・カレンダーイベント ・メモ、リマインダー、ブックマーク ・ボイスメモ、iCloudドライブ内の各種ファイル ・健康情報(Appleヘルスケアアプリに記録されたデータ) デバイスのバックアップ ・iPhoneやiPad、Macのバックアップデータ ・デバイスの設定情報(ネットワーク構成、アプリのレイアウトなど) その他 ・ダウンロード済みのアプリ情報(使用履歴やアプリごとのデータ) これらはすべて読み取り専用であり、削除や編集は行えません。安心して情報共有ができる仕様になっています。

アクセスできないデータ

故人アカウント管理連絡先であっても、アクセスが制限されているデータも存在します。以下の内容にはアクセスできません: ・Apple IDで購入した映画、音楽、電子書籍などの有料デジタルコンテンツ(著作権の都合上) ・サブスクリプション契約内容やその利用履歴 ・iCloudキーチェーンに保存されたパスワードやクレジットカード情報など ・別の暗号化パスワードで保護されているデータやアプリ内データ(たとえばサードパーティ製パスワード管理アプリ内の情報) このため、完全なデータ移行というよりも、「必要最低限の思い出や記録にアクセスできる安全な仕組み」として位置付けるのが現実的です。

データアクセスの流れ

故人アカウント管理連絡先が実際にデータへアクセスするには、Appleによる正式な承認プロセスを経る必要があります。以下はその一般的な流れです。 1、アクセス申請の提出 故人が生前に設定した連絡先が、Appleの公式ウェブサイトまたはAppleサポートに連絡して申請を行います。この時点でアクセスキーと死亡証明書(日本では戸籍謄本など)を提出する必要があります。 2、Appleによる審査と承認 Appleは提出された情報をもとに、申請者が適切に指定された連絡先かどうかを厳密に確認します。これは本人確認と同様のレベルで行われます。 3、専用Apple IDの発行 審査が通過すると、Appleから「故人のアカウントにアクセスするための専用Apple ID」が発行されます。このApple IDを利用することで、iCloudをはじめとしたサービスへのアクセスが可能となります。 4データへのアクセス 指定の専用Apple IDを使って、iCloud.comやAppleのデバイスから該当データを読み取ることができます。ただし、アクセスできる期間は最大3年間に制限されています。この間に必要なデータの保存や整理を進めることが大切です。 このように、手続きには一定の時間がかかるため、早めの設定と家族への共有が安心に繋がります。

プライバシーとセキュリティの考慮事項

故人アカウント管理連絡先機能には、プライバシーとセキュリティを守るための複数の仕組みが取り入れられています。これにより、本人の意思を尊重しつつ、適切な情報の管理が可能となります。 ・読み取り専用のアクセス アクセス可能なデータはすべて読み取り専用であり、編集や削除はできません。この仕様により、故人の情報が改変される心配はありません。 ・二段階認証の義務 故人アカウント管理連絡先としてアクセスするには、申請者自身がApple IDの二段階認証を有効にしている必要があります。これはなりすまし防止のための重要な条件です。 ・アクセス履歴の記録 誰が、いつ、どのようにして故人のアカウントにアクセスしたかの記録が保持されます。これにより、万が一の不正アクセスも発見されやすくなっています。 ・複数の連絡先を設定可能 故人アカウント管理連絡先は1人に限定されておらず、複数人を指定することができます。これにより、1人にすべての情報を託すリスクを回避し、より公平な情報管理が可能になります。 このように、「故人のデータを必要な人に安全に届ける」ことを第一に考えた設計となっています。

故人アカウント管理連絡先の削除方法

一度設定した「故人アカウント管理連絡先」も、いつでもApple Accountの設定画面から削除することが可能です。信頼関係の変化や相手の事情などにより、連絡先の見直しが必要になった際には、速やかに削除の手続きを行いましょう。

iPhone/iPadでの削除手順

1、「設定」アプリを開き、自分の名前(Apple ID)をタップ 2、「サインインとセキュリティ」をタップ 3、「故人アカウント管理連絡先」を選択 4、登録されている連絡先一覧から、削除したい相手をタップ 5、表示される詳細オプション内の「連絡先を削除」を選択 認証(Face ID、Touch ID、パスコード)が求められる場合があります。

Macでの削除手順

1、Appleメニューをクリックし、「システム設定」(または「システム環境設定」)を開く 2、自分の名前(Apple ID)をクリック 3、「サインインとセキュリティ」→「故人アカウント管理連絡先」へ進む 4、一覧から削除したい相手を選び、詳細オプションを表示 5、「連絡先を削除」をクリック こちらもTouch IDまたはMacのログインパスワードでの認証が必要になることがあります。

削除後の動作と通知

・「連絡先を削除」操作を完了すると、その人物は即座に故人アカウント管理連絡先から外されます。 ・相手に対して通知メールなどは送信されませんが、Apple製デバイスを使用している場合、その人の設定画面から依頼者の名前がリストから消えます。 ・最も重要な点は、相手が保持しているアクセスキーがその瞬間から無効になるということです。削除後にアクセス申請を行っても、Apple側では認証されなくなります。

削除のタイミングと管理上の注意

故人アカウント管理連絡先を設定することは、非常に私的かつ慎重な判断を要しますが、同様に削除も重大な決断となります。関係性の変化に応じて見直すことは大切ですが、アクセスキーの再発行はできないため、削除する前に代わりとなる新しい連絡先の登録を済ませておくと、データ保全の観点からも安心です。 複数の連絡先を設定している場合でも、削除された連絡先が持っていたアクセスキーは機能しなくなるため、信頼性や必要性を総合的に判断して管理しましょう。

まとめ

Appleが提供する「故人アカウント管理連絡先」機能は、デジタル遺品整理の一環として非常に有効な仕組みです。重要な思い出の写真や、生活記録としてのメモ、メッセージなど、故人が残したiCloud上の多くのデータに、適切な手続きを踏むことでアクセスが可能になります。 この機能の導入により、従来のように「故人のiPhoneのロックが解除できず、家族が中身を見られなかった」といった事態を避けることができます。また、パスワードを紙に書いて残すことのリスクや、そもそもパスワードを知らなかったという問題も軽減されるでしょう。 デジタル時代における「終活」として、今後ますます重要性が高まると考えられます。iPhoneユーザーはもちろん、iPadやMacを日常的に使っている人も、一度はこの機能を確認し、信頼できる家族や友人と話し合う機会を持つことをおすすめします。 事前の設定が、万が一の時に遺族の心の負担を大きく軽減してくれるのです。

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