鏡開きはいつ?意味や由来、正しいやり方をわかりやすく解説

鏡開きはいつ?意味や由来、正しいやり方をわかりやすく解説

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お正月が明けると、神社への初詣や年賀状のやり取りといった慌ただしい年始行事が一段落し、日常が戻ってきます。そんな中で忘れてはならないのが、日本の伝統行事の一つである「鏡開き(かがみびらき)」です。お正月の飾りの一環として見かける「鏡餅(かがみもち)」を用いたこの風習には、見た目の華やかさだけでなく、古来より受け継がれてきた深い意味と文化的な背景が込められています。

「鏡開きってどんな行事?」「いつやればいいの?」「固くなったお餅、どうやって食べればいいの?」――そんな素朴な疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。現代では、鏡餅もプラスチック容器に入った簡易なタイプが主流となり、昔ながらの作法や意味合いが忘れられつつあります。しかし、行事の背景やしきたりを知ることで、日々の暮らしの中に日本文化の美しさや知恵を再発見できる貴重な機会となります。

本記事では、「鏡開きの日はいつ?」という基本的な疑問をはじめ、「鏡開きの意味」や「やり方」、「してはいけないこと」まで、伝統と現代の実用性を両立させた形でわかりやすく解説していきます。また、鏡開きで食べるお餅の美味しいレシピやアレンジ方法についても詳しく紹介しますので、ご家庭でもすぐに実践していただけます。

これを機に、ただの年中行事としてではなく、「意味を知って丁寧に行う」ことで、日本の伝統文化を未来へと受け継いでいきましょう。

鏡開きとは?

鏡開き(かがみびらき)は、正月に神仏へお供えした鏡餅を下げて食べる、日本の伝統的な年中行事の一つです。「無病息災」「家内安全」「仕事始めの成功」などを願って行われるもので、新しい年の運気を取り込む重要な意味合いを持っています。

鏡餅とは何か?

鏡餅とは、大小2段に重ねた丸い餅を基本とし、その上に橙(だいだい)や昆布、ゆずり葉などの縁起物を飾ったものです。昔の青銅製の鏡に形が似ていることから「鏡餅」と呼ばれるようになりました。この丸い形には「円満」や「家庭円満」、「調和」といった願いが込められています。

また、鏡餅は年神様(としがみさま)の依り代(よりしろ)とも言われ、新年に訪れる年神様を迎えるための神聖な供え物です。そのため、ただの飾りではなく、神様の宿った神聖な存在とされているのです。

「開く」という言葉の意味

「鏡開き」という言葉には、実は深い意味があります。「開く」という表現には、末広がりに物事がうまく進むように、という願いが込められており、「割る」「壊す」といった否定的な言葉は使われません。これは特に武士の時代に重要視された価値観であり、刃物を使わずに餅を手や木槌で「開く」という所作にも表れています。

武家社会との関係

鏡開きは、もともとは武家社会の風習でした。武士たちは、武具や鏡餅を飾った後、松の内が明けると神棚や床の間から鏡餅を下げ、戦の無事や家の繁栄を祈って食べていました。これが庶民の間にも広がり、現在のように広く行われるようになったのです。

特に武士にとって、鏡餅を「割る」という表現は縁起が悪く、切腹や破綻を連想させるものでした。そのため、武士道精神に基づき、「開く」という前向きな言葉が選ばれたのです。

鏡開きはいつ?

鏡開きが行われる日は、地域や家庭の慣習によって多少異なるものの、全国的には「1月11日」が一般的とされています。これは主に関東地方を中心とした慣習で、江戸時代に徳川幕府が定めた日付が現代まで受け継がれているためです。

地域による違い

鏡開きの日付は、実は全国一律ではありません。地域や文化的背景によっていくつかのバリエーションがあります。

地域

鏡開きの日

備考

関東地方

1月11日

江戸幕府が定めた日。現在も主流。

関西地方

1月15日または20日

旧来の風習に基づく場合が多い。

商家や企業

1月4日

仕事始めに合わせる場合がある。

関東地方では1月7日までを「松の内」とし、その後の11日に鏡開きを行います。一方で関西地方では、松の内が1月15日までとされるため、鏡開きもそれ以降の15日または20日に行うことが一般的です。

松の内との関係

鏡開きの日付は、「松の内(まつのうち)」と密接に関係しています。松の内とは、正月飾りを出しておく期間であり、年神様が家に滞在している期間とも言われています。この期間中に鏡餅を下げるのは神様がまだいらっしゃる最中とされ、失礼にあたるため避けられています。

そのため、松の内が明けたあとに鏡開きを行うのが本来の形です。現在では松の内の終わりが地域によって違うため、鏡開きの日にもばらつきが出ているのです。

武家社会の慣習が背景に

なぜ1月11日なのか?これは江戸時代、武家社会での慣習にルーツがあります。元々は「1月20日」が鏡開きの日とされていましたが、20日は徳川家の忌日と重なっていたため、縁起をかついで11日に変更されたという経緯があります。

このように、鏡開きの日付一つ取っても、武家文化、地域慣習、宗教的意味合いなど、さまざまな要素が絡み合って現在の形に定着しています。

学校や会社での鏡開き

現代では、学校や会社でも鏡開きを行うことがあります。特に企業では、仕事始めとなる1月4日または最初の営業日に合わせて簡易的な鏡開きを行うケースも見られます。これは仕事運や商売繁盛を祈る意味が込められており、同時に社員の団結を促す場ともなっています。

鏡開きのやり方

鏡開きは、ただ鏡餅を下げて食べるだけではなく、年神様への感謝を表し、縁起を大切にする所作を踏まえて行う必要があります。ここでは、家庭でも実践できる鏡開きの基本的な流れと注意点を丁寧に紹介します。

1. 鏡餅を下げるタイミング

鏡開きを行う日の朝、まずは神棚や床の間に飾っていた鏡餅を丁寧に下げます。お正月の間、年神様の宿る場所として供えていたものなので、軽く手を合わせて感謝の気持ちを伝えるとよいでしょう。なお、松の内が明けた日(一般的には1月7日または15日)以降に行うことが基本です。

2. 鏡餅は「切らずに開く」

鏡開きで最も大切なのは、「刃物を使わない」ことです。鏡餅は包丁などで「切る」のではなく、木槌や手で割る=“開く”という所作が重視されます。これは、武士の文化に由来し、「切る」ことが切腹や争いを連想させるとして忌避されたためです。

手や木槌を使って、割れ目に沿って自然に割るようにすると、餅も無理なく扱えます。固すぎてどうしても割れない場合は、無理に砕こうとせず、次の工程で対応しましょう。

3. 固くなった鏡餅の戻し方

最近の鏡餅は真空パックや個包装タイプも多くありますが、昔ながらの本物の餅は時間が経つと非常に固くなります。無理に割ろうとせず、水に一晩浸けることで扱いやすくなります。

  • 乾燥した餅は一晩水に漬ける(冷水でも可)
  • レンジで加熱する前に湿らせると柔らかくなりやすい
  • トースターで焼く際も、表面に少し水を塗るとヒビ割れ防止に

この下準備をすると、安全に調理でき、喉に詰まらせる事故も防げます。

4. 食べる際の心構え

鏡開きでいただくお餅は、単なる食材ではなく、年神様の力が宿った「おさがり」です。食べる際は、「今年一年、健康で過ごせますように」と心の中で祈るようにしていただくと、行事としての意味が深まります。

また、家族や職場などで一緒に食べることも重要です。一人で静かにいただくのも良いですが、集まって分け合いながら食べることで、絆を感じられる行事としての役割も果たせます。

鏡開きでやってはいけない行為

鏡開きは、新年に年神様からの力を授かる大切な行いであると同時に、古くからの風習やマナーが根付いた文化的な行事でもあります。そのため、知らず知らずのうちに行ってしまいがちな「やってはいけない行為」もいくつか存在します。この章では、鏡開きを行ううえで避けるべき代表的な行為と、その理由について解説します。

1. 松の内の期間中に鏡餅を下げる

鏡餅は、年神様が滞在されている「松の内」の間は下げてはいけませんこの期間中に鏡餅を片付けると、年神様が滞在中にもかかわらず、お帰りいただくような形になり、非常に失礼にあたります。

2. 感謝の気持ちなく食べる

鏡餅は単なる食品ではなく、年神様に供えた神聖なものです。それを食べる行為には、「神様からの力を分けていただく」という意味が込められています。したがって、何も考えずに食べる、適当に扱うといったことは避けるべきです。

家庭では、子どもたちにもその意味を簡単に伝えて、一緒に丁寧に食べるようにするとよいでしょう。

3. 鏡餅を捨てる

カビが生えたり、乾燥して硬くなった鏡餅をそのまま捨ててしまうという人も少なくありませんが、これは本来避けるべき行為です。鏡餅は神様に供えたものですから、感謝の気持ちを持って、できるだけ食べきるのが望ましいとされています。

どうしても食べられない部分がある場合でも、新聞紙に包んで「ありがとうございました」と一言添えて処分する、神社でお焚き上げをしてもらうなど、丁寧な扱いを心がけましょう。

4. 鏡餅を遊び道具にする

小さな子どもがいる家庭では、鏡餅を「おままごと」や「おもちゃ」として扱ってしまうことがあります。しかし、鏡餅は神聖なものとされており、遊びの対象にするのは失礼とされています。特に、形が崩れたり汚れたりすることは避けたいところです。

子どもにも「これは神様にお供えした特別なものだよ」と優しく伝えることで、自然と行事への敬意や理解が深まります。

鏡開きの料理や食べ物

鏡開きでいただくお餅には、年神様から授かった力を体内に取り込み、一年の無病息災や家内安全を祈願するという意味があります。ただの食事ではなく、日本古来の「神と人をつなぐ食文化」の一環として、丁寧にいただくことが大切です。

1. おしるこ・ぜんざい

もっともポピュラーな鏡開きの料理が「おしるこ」や「ぜんざい」です。甘く煮た小豆に餅を入れていただくこの料理は、全国的に広く親しまれています。

小豆には「魔除け」「邪気払い」の意味があり、縁起の良い食材とされています。そこに鏡餅を加えることで、年神様の力を取り込み、心身ともに温まる料理となるのです。

特に寒さが厳しい1月には、身体を芯から温める一杯としても重宝されます。家庭では、ゆであずき缶を使って簡単に作れるのも嬉しいポイントです。

2. きなこ餅

香ばしいきな粉と砂糖をまぶした「きなこ餅」も、子どもから大人まで人気のある食べ方です。甘さ控えめにしたり、黒ごまや青のりを加えたりすることで、バリエーション豊かに楽しめます。

きな粉には大豆由来の栄養が含まれており、たんぱく質やカルシウム、食物繊維も豊富です。おやつ感覚でいただけるため、小腹が空いたときにもぴったりの一品です。

3. 餅入り雑煮風スープ

伝統的なお雑煮とは別に、洋風スープや中華スープに餅を入れて楽しむ「アレンジ雑煮」もおすすめです。根菜や鶏肉、豆腐などを加えると、食べごたえのある栄養満点な一品に。

  • コンソメベース+餅+ほうれん草+チーズ
  • 中華スープ+餅+白菜+春雨
  • 味噌仕立て+餅+根菜+きのこ

こうしたアレンジは、食べ飽きてしまったお餅を新鮮に楽しむ方法として人気があり、特に若い世代に受け入れられやすいのが特徴です。

4. 焼き餅と醤油・海苔

シンプルながら根強い人気を誇るのが、「焼き餅+醤油+海苔」の組み合わせです。香ばしく焼けた餅にしょうゆを染み込ませ、パリッとした海苔で巻いて食べるスタイルは、まさに日本の原風景を感じさせる食べ方です。

フライパンやトースターでも簡単に調理できるため、朝食や軽食にもぴったりです。さらに、餅を小さめに切って焼くことで、子どもでも食べやすくなります。

まとめ

鏡開きは、単なるお正月の終わりを告げる行事ではなく、年神様への感謝と新しい年の健康・繁栄を祈る、意味深い日本の伝統文化です。その意味や背景を正しく理解し、マナーやしきたりを尊重することで、形式だけでなく“心を込めた”鏡開きが実現します。

この記事では、「鏡開きとは何か」「いつ行うのか」「正しいやり方」「避けるべき行為」、そして「お餅のおいしい食べ方」まで、鏡開きにまつわる情報を網羅的にご紹介してきました。

鏡開きとは、年神様からの力をいただくという大切な行いです。鏡餅を下げる日は地域によって異なりますが、全国的には1月11日に行うのが一般的とされています。そして、鏡餅は包丁などの刃物で切るのではなく、木槌や手で「開く」という行為が重視されます。これは単なる食事の準備ではなく、縁起を大切にする日本人の感性を今に伝える方法でもあります。

また、鏡開きでは、神様に感謝の気持ちを込めて鏡餅をいただくことが大切です。おしるこやきなこ餅、雑煮風スープ、焼き餅など、さまざまな形で鏡餅をおいしく食べる工夫が可能であり、家族や仲間と一緒に食事を楽しむことで、心もあたたまる時間になります。

現代では、伝統行事が形だけになりがちな中で、鏡開きは「立ち止まって感謝し、願いを込める」貴重な機会です。2025年の鏡開きには、ぜひこの記事でご紹介した知識を活かして、ご家庭や職場で日本文化の豊かさを実感する時間を過ごしてみてください。

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