喪中のお正月、どう過ごす?控えるべき行事と許される習慣を徹底解説

喪中のお正月、どう過ごす?控えるべき行事と許される習慣を徹底解説

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年末年始は、日本の伝統文化が色濃く表れる季節行事のひとつです。家族が集まり、おせち料理を囲んで新年を祝い、初詣に出かける――そんな賑やかで華やかな正月の光景が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

しかし、大切な家族や近親者を亡くした年は、「喪中(もちゅう)」となり、通常通りのお正月を過ごすことができなくなります。喪中期間中は慶事を控えるとされており、特に正月という大きな祝いの行事には注意が必要です。

とはいえ、「具体的に何を控えるべきなのか?」「まったく何もしないのがマナーなのか?」「そもそも喪中とはどのような意味があるのか?」といった疑問を抱く方も少なくありません。また、喪中はがきを送ったにもかかわらず年賀状が届いてしまったときの対処法に悩むケースも多いです。

この記事では、「喪中時のお正月の過ごし方は?控えること・おこなってもよいこと」というテーマのもと、喪中の基礎知識から、正月の迎え方、やっていいこと・控えるべきこと、さらに年賀状に対する対応まで、具体的かつ実践的に解説していきます。

喪中であっても、故人を偲びながら心穏やかに新年を迎えることは可能です。形式にとらわれすぎず、故人への敬意と家族の気持ちを大切にした、現代的かつバランスの取れた過ごし方を提案します。

喪中とは?

「家族や近親者などの大切な人を亡くした後に、一定の期間、故人を偲びながら日常生活の中で祝いごとを控える期間を指します。
これは、古くからの習慣である「喪に服す(ものにふくす)」という考え方に基づいており、死という重大な出来事に対して、日常の振る舞いを慎むことで、哀悼の意を表すと同時に、心の整理を行う意味合いがあります。

また、「服喪(ふくも)」という言葉もありますが、これは「喪に服すこと」を制度的・形式的に示す表現で、かつては続柄によって具体的な服喪期間が定められていた時代もありました(明治時代の服喪令など)。現在では法的拘束はありませんが、社会的なマナーとして、一定期間の祝い事を控える風習として広く残っています。

現代では宗教的な義務というよりも、社会的慣習や心理的配慮として理解されることが多く、厳密な決まりがあるわけではありませんが、一般的なマナーとして「喪中」が広く受け入れられています。

喪中の期間はどのくらい?

喪中の長さは明確に定められているわけではありませんが、一般的には故人が亡くなってから1年間(12か月間)が目安とされています。これは「一周忌」までの期間と一致しており、その間は祝い事を避けることが望ましいとされています。

喪中の対象となる親族の範囲

喪中の対象となる親族の範囲についても、厳格な法律があるわけではなく、個人や家庭の考え方、故人との関係性によって異なります。ただし、多くの場合は以下のように設定されます。

続柄

喪中の対象となることが多いか

両親

◎(必ず喪中)

配偶者

◎(必ず喪中)

子ども

◎(必ず喪中)

兄弟姉妹

○(一般的に喪中)

祖父母

○(家庭による)

おじ・おば

△(関係性による)

いとこ・甥・姪

△(通常は喪中にしない)

家族との精神的距離や生活の密接さも考慮されるため、例えば祖父母と同居していた場合などは、祖父母の死去でも喪中とするのが自然です。

喪中と忌中の違い

喪中とよく混同されがちな言葉に「忌中(きちゅう)」があります。これは、喪中の中でも特に故人の死後、最初の49日間(仏教では「忌明け」まで)を指し、より厳粛な期間とされています。

用語

意味

期間の目安

忌中

死後直後の穢れを避ける期間

49日間(仏教の場合)

喪中

故人を偲び慶事を控える期間

約1年間(12か月)

忌中の間は、法要や弔問など仏事中心の生活が行われ、特に派手な行動やイベントへの参加を控えるのが通例です。忌中が明けても、喪中が続いている間は、基本的には祝い事全般を控える姿勢が求められます。

喪中に正月行事を控える理由

宗教的背景

神道では、「死」は穢れ(けがれ)とされ、神聖な空間に持ち込むことを忌避する考え方があります。正月に飾られる門松やしめ飾りは、年神様を迎えるための清らかな準備であり、穢れを持つ喪中の家ではこれらを飾ることが不適切とされるのです。

また、神社への初詣も年神様との接触を意味するため、喪中の間は参拝を控えるべきとされてきました。これは、死を連想させる行動が神聖な場所にそぐわないと考えられているためです。

一方、仏教では「死」を穢れとみなす概念は希薄であるため、寺院への参拝についてはそこまで厳格な制限はありません。しかし、日本の慣習として「喪中は祝い事を控える」という文化が広く受け入れられているため、仏教徒であっても正月行事を控えることが多くなっています。

社会的な配慮とマナーとしての慣習

喪中に正月行事を控えるのは、宗教的な理由だけではありません。大切な人を亡くして日が浅い家族にとって、世間の「おめでとうございます」の雰囲気に無理に合わせることは、精神的な負担になることもあります。こうした心情を尊重し、「喪中の間は静かに過ごす」ことが美徳とされているのです。

また、周囲の人に対しても、喪中であることを示すことで、「現在は慶事に参加できない」ことを丁寧に伝えることができます。これは、お付き合いや人間関係において誤解や失礼を避ける意味でも重要です。

喪中の正月の過ごし方

喪中の正月には、「何を控え、何ならしてもよいのか」という判断が求められます。家族の悲しみに配慮しつつも、新年を迎えるために必要な心構えと具体的な行動指針を知っておくことは、大きな助けになります。

控えること

喪中に控えるべき行動の多くは、「祝い事」や「吉兆」を意味するものです。以下は代表的なものとその理由です。

行事・風習

控える理由

門松・しめ飾りの設置

年神様を迎える慶事の意味があり、喪中には不適切とされる

初詣(特に神社)

神聖な空間に死の穢れを持ち込まないため

おせち料理

祝い膳としての意味が強いため、質素な食事が推奨される

お年玉

本来は新年の慶事にあたるが、現代では家庭によって柔軟に対応されている

年始の挨拶

「あけましておめでとうございます」は慶事の表現であり、喪中には適さない

お年玉はどうするべきか?

現代においては子どもにとってのお年玉が楽しみであることや、「喪中」の意味を十分に理解できない年齢であることから、家庭ごとの判断で柔軟に対応するケースが増えています。

たとえば、「お祝い」ではなく「文具代」「お小遣い」「図書カード代」などの名目に変更する、ポチ袋のデザインを無地や落ち着いた色にする、のしや水引を使わないなどの工夫が推奨されています。また、表書きを「お年玉」とせずに白紙や「御礼」などに変える例もあります。

「あけましておめでとうございます」といった言葉を避け、控えめな挨拶を添えると、形式だけでなく心情面でも配慮が伝わります。お年玉を渡すかどうかは、家庭の宗教観・地域の慣習・親戚との関係・子どもの年齢や状況などを総合的に考慮して決めることが大切です。

年始の挨拶は控えめに、または避ける

喪中の間は、「あけましておめでとうございます」といった年始の挨拶は慶事の言葉であるため、原則として避けるのがマナーです。

やむを得ず挨拶を交わす必要がある場合でも、「本年もよろしくお願いいたします」や「寒さ厳しき折、どうぞご自愛ください」といった形式ばらない表現にとどめるのが望ましいとされています。

また、メールや年賀状の代わりに寒中見舞いを使うことで、年始のご挨拶を控えながらも礼節を保つ手段として活用できます。

おこなってもよいこと

一方で、喪中でもまったく何もしてはいけないわけではありません。故人を偲びながら、新しい年を穏やかに迎えるための行動は、むしろ大切にされるべきです。

以下は、喪中でも無理なくできる過ごし方の例です。

1. 仏壇や墓前へのお供え

故人に新年の報告をする意味で、仏壇やお墓にお供え物をすることは非常に丁寧な行動です。白い花や季節の果物など、華美すぎないものが好まれます。形式にとらわれず、心からの思いを込めることが大切です。

2. 静かな食事で新年を迎える

派手なおせちは避けても、普段通りの食事で年を越すことは問題ありません。特別な料理を避けることで、形式よりも家族の気持ちを優先できます。年越しそばなど、静かで落ち着いた食事を通して新年を迎えるご家庭もあります。

3. 寺院への参拝

仏教では死を穢れとは見なさないため、寺院への初詣やご挨拶は問題ありません。ただし、神社とは違い、「お祝い」ではなく「祈り」の場として参拝する意識が求められます。

参拝の際には、合掌や故人の冥福を祈る言葉を心に浮かべながら、静かに手を合わせると良いでしょう。

家庭によって異なる「正解」

喪中の過ごし方に絶対的な正解はありません。大切なのは、家族の気持ちを尊重し、故人に対する敬意を忘れないことです。

たとえば、

  • 子どもにお年玉をどう渡すか
  • いつも初詣に行っていたけれど今年はどうするか
  • 年越しのタイミングをどう迎えるか

これらはすべて、喪中という状況において「無理なく、心穏やかに」行えるかどうかを軸に判断することが大切です。

家庭ごとの価値観や地域の慣習が大きく影響するため、「〇〇してはいけない」という厳密なルールにとらわれず、自分たちにとって自然な形で過ごす工夫が求められます。

喪中に年賀状が送られてきたら?

喪中はがきを送っていたにもかかわらず、年賀状が届いてしまう――これは喪中の正月によくある状況です。送った相手が喪中を見落としていたり、喪中の事実を知らなかったりする場合には、どう対処すればよいのか戸惑う方も多いでしょう。

ここでは、喪中の際に年賀状が届いた場合のマナーある対応方法や、寒中見舞いの書き方、さらには送る時期や表現の注意点まで詳しく解説します。

なぜ年賀状が届いてしまうのか?

喪中はがきを出していても、年賀状が届いてしまう理由はいくつかあります。

  • 喪中はがきが相手に届く前に年賀状を出してしまった
  • 相手が住所録を更新しておらず、喪中を知らなかった
  • 家族内で喪中の事実が共有されていなかった
  • 年賀状の代筆や一括印刷で気づかなかった

つまり、悪意ではなく、単なる行き違いや情報不足によることがほとんどです。感情的にならず、落ち着いて対応することが大切です。

年賀状への返信は必要?

喪中の場合、年賀状に対してすぐに返事を出す必要はありません。ただし、相手が気を遣って送ってくれたと感じられる場合や、長年の付き合いがある相手であるなら、寒中見舞いで返信するのが丁寧な対応とされています。

寒中見舞いは、年賀状に代わる冬のご挨拶として、喪中の人が送る挨拶状としても正式な手段です。年賀状のお礼や喪中の事情を伝えつつ、今後の関係を穏やかに保つ役割も果たします。

寒中見舞いを出すタイミングとマナー

寒中見舞いは「寒の入り」から「立春」までの期間に出すのが基本です。

  • 送る期間: 1月7日(松の内明け)〜2月4日(立春前日)
  • 喪中で年賀状の返信として出す場合: 年賀状が届いた1〜2週間以内を目安に準備

この期間外に送ると季節外れとなり、やや不自然に感じられることがあります。特にビジネス関係では時期にも注意を払いましょう。

寒中見舞いの書き方と例文

文面はできるだけ淡々と、丁寧で控えめな表現が好まれます。派手なデザインや華美な装飾は避け、落ち着いたトーンのはがきを選びましょう。

例文(一般向け)

寒中お見舞い申し上げます。
ご丁寧な年賀状をいただき、ありがとうございました。
実は昨年〇月に〇〇(故人との関係)が永眠いたしましたため、年頭のご挨拶をご遠慮申し上げました。
寒さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。

例文(ビジネス向け)

寒中お見舞い申し上げます。
ご丁寧なご挨拶を賜り、誠にありがとうございました。
昨年〇月、近親者が他界し、年始のご挨拶を控えさせていただきました。
本年も変わらぬご厚誼のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

表現に迷った場合は、市販の寒中見舞いテンプレートや、文例集を参考にするとよいでしょう。

寒中見舞いで避けるべき表現

  • 「あけましておめでとうございます」:喪中には不適切
  • 派手な賀詞(謹賀新年、賀正など):年賀状特有の祝い表現は避ける
  • 華やかなイラスト(門松、鶴亀、初日の出など):デザインにも注意

あくまで「喪中であることに対するお知らせと感謝の気持ち」を淡々と伝えるのが目的です。テンションの高い祝賀ムードは避けましょう。

まとめ

喪中とは、家族や親しい人の死を悼み、一定期間祝い事を控える習わしです。特に正月のような華やかな行事は、神道的にも「死の穢れ」とされ、避けるべきとされています。そのため、門松やしめ飾りの設置、神社への初詣、おせち料理、そして「あけましておめでとうございます」といった挨拶も控えるのが一般的です。

お年玉についても、本来は新年を祝う意味があるため慎むべきとされていますが、子どもの気持ちや理解を考慮して、「お小遣い」など別の名目で渡すなど、現代では柔軟に対応する家庭も増えています。

一方で、仏壇やお墓へのお供え、寺院への参拝、寒中見舞いによる挨拶などは、喪中でも問題なく行える行動です。年賀状が届いてしまった場合は、感情的にならず、寒中見舞いで感謝と状況を丁寧に伝えることが、円滑な人間関係を保つ手段になります。

喪中の正月に大切なのは、「何をしてはいけないか」ではなく、「どうすれば故人を敬い、家族の気持ちに寄り添えるか」という姿勢です。形式にとらわれず、穏やかで思いやりのある過ごし方を選ぶことが、現代における喪中の理想的なあり方といえるでしょう。


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