孤独死・事故死の特殊清掃、実は○○万円以上かかることも?間取り別・状況別の費用相場と見積もり時の注意点とは

孤独死・事故死の特殊清掃、実は○○万円以上かかることも?間取り別・状況別の費用相場と見積もり時の注意点とは

公開日: 1970.1.1     更新日: 2025.7.31

特殊清掃は“お金”と“心”のケアも必要なサービス

孤独死や事故死、自殺、事件現場などによって残された現場は、一般の清掃とは桁違いの作業が必要です。消臭・除菌・体液の除去・害虫駆除といった専門技術と装備を要する作業には、金銭的負担だけでなく、精神的な負担も伴います。遺族や管理会社が直面する「悲しみ」と「現実的対応」の間で、何を選び、どう進めるべきか。本記事では、間取りや状況別でかかる特殊清掃費用の実態と、遺品整理や原状回復との関連、そして業者選定やメンタル面のケアに関して、段階を追って詳しく解説します。


特殊清掃の費用はいくら?目安と費用の決まり方

特殊清掃の費用は一律ではなく、いくつもの要因が絡み合っています。そのため、見積りをとる際には次のポイントに着目することが重要です。

間取り

間取りが広いほど清掃範囲が広がり、時間も人手も費用も比例して増加します。

  • ワンルームや1K:比較的コンパクトで作業時間も短く、15万円〜35万円が目安
  • 1LDK以上:部屋数や清掃対象が複数になるため、30万円〜80万円に及ぶことも
  • 戸建て・複数階:階段や複数室の清掃が必要になると、80万円以上は珍しくありません

発見までの時間・汚染度

体液や血液が長期間放置されるほど浸透が進み、臭気も強くなるため、除去や脱臭の工程が増加します。

  • 発見が早ければ軽度対応で済むケースも
  • 数週間以上放置されていた場合、材質への浸透が起こり、張替なども視野に入るため高額化しやすい

作業内容・範囲

各作業作業に応じて専門技術や高額機材が必要です。それぞれ単独の作業としても見積りが可能ですが、複数同時に行う場合は効率的に行えるケースもあり、割引が出ることもあります。

地域・交通費

都心部は人件費が高く、地方では交通費や出張費がかかるケースがあります。また宿泊が必要な場合も追加費用が発生します。


作業内容ごとの費用相場

特殊清掃を構成する主な作業ごとの概算費用を見ていきます。清掃業者との打ち合わせでそれぞれの工程があらかじめ見積項目に含まれているか確認しましょう。

作業内容

概算費用の目安

内容のイメージ説明

消臭・除菌処理

3万円~

強弱のある消臭剤や衛生用薬剤を部屋全体に散布・拭き取り。換気できない密閉空間では濃度調整が必要。

体液・血液の除去

5万円~

専用防護服・工具を使い、床・壁・家具に浸透した体液を分解剤で除去。

害虫駆除(ハエ・ウジ・ゴキブリなど)

5万円~10万円

発生源の特定、殺虫剤散布、卵の除去、清掃の再確認まで。大型害虫が出た場合は別途見積が必要。

オゾン脱臭機の使用

2万円~8万円

オゾン濃度を管理しながら数時間運転。使用後は換気・安全確認も含む。

原状回復工事(リフォーム、床・壁張替)

10万円~50万円以上

クロス、フローリング、畳などの張替え。現場状況や面積によって価格が大きく変動。

複数作業をまとめて依頼する場合は、一工程ずつ別途請求よりも費用を抑えられるケースがあります。


遺品整理とセットでかかる費用のイメージ

遺品整理と特殊清掃は連携しやすいため、セットで依頼されることが多いです。まとめて依頼することで次のようなメリットがあります。

  • 個別依頼よりワンストップで進められ、手間が少ない
  • 清掃後に遺品の整理・供養を同時にできる
  • 作業時間の重複を減らし、料金割引にもつながるケースがある

費用例

  • 軽度の清掃+遺品整理
    • 清掃:8万円
    • 遺品整理:5万円
    • 合計:13万円程度
  • 中〜重度の清掃+遺品整理
    • 清掃:25万円
    • 遺品整理:15万円
    • 合計:40万円以上

清掃の程度や遺品の量によっては更に高額になる可能性があります。遺族や親族の希望により、供養や形見分けなど個別対応も増える分、料金も変動します。


【地域別】特殊清掃の費用相場と特徴

地域によって労働力や物流、人件費に差があり、費用相場に違いが出ます。

首都圏(東京都・神奈川・埼玉・千葉)

  • ワンルーム:20万円〜35万円
  • 1LDK以上:40万円前後〜
  • 特徴:即日対応業者が多く、品質・スピード重視。土日祝でも対応可能な業者が多い。

関西圏(大阪・兵庫・京都・奈良)

  • ワンルーム:15万円〜30万円
  • 1LDK以上:30万円〜70万円
  • 特徴:丁寧で親切な対応を売りにする業者が多く、追加サービスも柔軟

地方都市(例:松江・高松・岡山など)

  • ワンルーム:15万円〜25万円
  • 1LDK以上:30万円前後〜
  • 特徴:交通費・宿泊費の追加が発生することがあるため事前確認が重要。対応に日数がかかることも。


特殊清掃の費用は誰が払う?負担者のパターンと注意点

特殊清掃にかかる費用は高額になりがちですが、その負担者は状況によって異なります。以下に一般的なパターンと注意点を整理します。

持ち家の場合
孤独死や事故死、自殺があった物件が持ち家であれば、その家の相続人が費用を負担するのが一般的です。相続放棄を行う前であれば、相続人の責任となります。相続放棄を検討している場合は、特殊清掃を含めた不動産管理全般について弁護士への相談をおすすめします。

賃貸住宅の場合
賃貸物件の場合、基本的には大家や連帯保証人が負担します。孤独死による清掃費用や原状回復費は借主の遺族が必ずしも負担する必要はなく、契約内容によります。最近は「孤独死特約」などが契約書に盛り込まれているケースも増えているため、管理会社に確認することが大切です。

保険での補償
近年増えているのが火災保険や家財保険、家主賠償責任保険による補償です。例えば、家主賠償責任保険では、孤独死による清掃費用や原状回復費が一部~全額補償されるケースもあります。加入保険の内容を事前に確認し、保険会社へ相談することで費用負担を軽減できる可能性があります。

相続放棄を検討するケース
遺産よりも負債や費用が上回る場合は相続放棄を選ぶ方もいます。その際、特殊清掃費用を相続人が支払う義務があるかは法律相談が必要です。放棄前に清掃業者へ依頼した場合でも、そのタイミングや契約者によって責任が異なります。

注意点

  • 保険適用には事前の審査や書類提出が必要なため、時間的余裕をもって手続きすること。
  • 清掃前に誰が費用を負担するか、関係者間で明確にしておくこと。
  • 契約内容や保険規約を必ず読み込み、曖昧な点は問い合わせること。


悪徳業者に注意!よくあるトラブル事例と見抜き方

特殊清掃は専門性が高く、一般消費者が価格や作業内容を判断しにくいため、悪徳業者が介入しやすい業界でもあります。以下によくあるトラブル事例とその見抜き方をまとめます。

よくあるトラブル事例

  • 見積もり時と違う内容で後から高額な追加料金を請求
  • 遺品の盗難や不法投棄
  • 清掃後にも強い臭いや汚れが残っている
  • 見積書の内容が不明瞭、契約書がないまま作業開始

見抜き方のポイント

  • 特殊清掃士資格や産業廃棄物処理業などの許認可を保有しているか
  • 過去の実績や作業事例を公開しているか(事例写真など)
  • 見積書に作業項目ごとの内訳が明記されているか
  • 電話やメール問い合わせ時の対応が礼儀正しく迅速かどうか

信頼できる業者は、こちらの不安や疑問に対して丁寧かつ具体的に答えてくれます。時間をかけて比較することが、結果的には費用とトラブル回避につながります。


急ぎの場合でも安心して依頼するための準備と流れ

特殊清掃が必要な現場は、急を要する場合がほとんどです。臭いや害虫発生、近隣住民からのクレームを避けるためにも、迅速な対応が求められます。以下の準備と流れを押さえておくと安心です。

現場状況の伝達
業者に連絡する際は、以下の情報をできる限り詳細に伝えます。

  • 間取りや部屋数
  • 汚染状況(体液や血液の有無、臭いの強さ)
  • 発見までの時間(○日間放置されていた、など)
  • 希望作業範囲(清掃のみ、遺品整理も含めるか)

即日見積もり依頼
写真をメールやLINEで送ることで、即日見積もりが可能な業者も増えています。現場確認のために訪問が必要な場合もありますが、最近はオンライン対応を進める業者もあるため、まずは相談を。

保険会社や管理会社への連絡
特殊清掃費用が保険でカバーされる可能性があるため、早めに保険会社にも状況を連絡しておきましょう。また、賃貸物件であれば管理会社にも速やかに連絡し、必要な手続きや承諾を得ておく必要があります。

立ち会いが難しい場合の対応
遠方に住んでいたり、精神的に現場立ち会いが難しい場合は、代理立ち会いや鍵の預かり対応が可能な業者を選びます。郵送で鍵を送る方法や、事前契約で対応してもらうことも一般的です。


費用を抑えるための現実的な工夫

高額になりがちな特殊清掃費用をできる限り抑えるための工夫も重要です。実践的な方法を以下にまとめます。

相見積もりの取得
最低でも2~3社から見積もりを取得し、価格と作業内容を比較検討しましょう。価格だけでなく、対応スピードや作業項目の明確さ、追加料金の有無も比較ポイントです。

早期対応による汚染拡大の防止
汚染が進む前に早めに対応することで、消臭や除菌にかかる工程を最小限に抑えることができます。発見直後に迅速な連絡を行うことが、最も現実的なコスト削減方法です。

清掃と原状回復を一括依頼
清掃と原状回復(リフォームやクロス張替えなど)を同時に依頼することで、割引を受けられるケースもあります。別々の業者に依頼するより、時間とコストを節約できます。

費用を抑えるための現実的な工夫


遺族にとって重要なもう一つの視点:心のケアと供養対応

孤独死や事故死の現場は、単なる清掃対象ではありません。遺族にとっては、大切な家族を失った悲しみの現場でもあります。そのため、単に汚れや臭いを除去するだけでなく、心のケアや供養への配慮が求められます。

心のショックと金銭負担
遺族は精神的ショックと金銭負担の両方を同時に抱えることが多いです。特殊清掃業者の中には、心理カウンセラーと提携し、遺族へのメンタルケアを行うサービスを提供しているところもあります。

遺品整理と供養対応
仏壇・写真・手紙など、思い出の品をどう扱うかも重要です。手厚いサービスを提供する業者は、遺品の仕分けや供養、僧侶の手配までワンストップで対応してくれます。

近隣住民や管理会社とのトラブル回避
臭いや害虫発生による近隣トラブルを避けるためにも、迅速で丁寧な対応が必須です。また、清掃後に「消臭証明書」を発行する業者もあり、後のトラブル防止に役立ちます。


まとめ|費用・対応力・信頼性を総合的に比較して納得のいく選択を

特殊清掃は、単に部屋をきれいにするだけの作業ではありません。遺族や関係者にとっては精神的な負担を伴う非常に繊細な状況であり、費用面だけを基準に選ぶことはリスクが伴います。そのため、費用・対応力・信頼性という三つの視点を総合的に比較し、自分たちにとって最も納得できる選択をすることが重要です。

具体的には、まず複数の業者から相見積もりを取り、作業内容や費用の内訳が明確であるかを確認します。追加料金の有無や、見積もり後の契約内容も事前にしっかりチェックすることがトラブル防止につながります。また、家財保険や家主賠償責任保険などの適用を検討し、費用負担を軽減できる可能性がないかも確認しておきましょう。

対応スピードも重要な要素です。汚染が進む前に早期に対応することで、結果的に作業工程が簡単になり、費用も抑えられることがあります。急ぎの場合でも信頼できる業者を選ぶためには、口コミや実績、資格の有無なども確認しておくと安心です。

さらに、遺品整理や供養対応までワンストップで請け負ってくれる業者を選べば、遺族が抱える精神的負担も軽減できます。単に「安さ」だけで選ぶのではなく、「対応の質」「安心感」「心のケア」を総合的に評価し、最も自分たちに合った業者を見つけることが、特殊清掃を依頼する際のベストな選択となるでしょう。


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