年賀状じまい

年賀状じまいとは?終活としてのスマートなやめ方・伝え方・文例集を公開

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お正月に届く年賀状には、旧年中の感謝や新年の挨拶、そして相手への気遣いが込められており、家族や友人、仕事関係など、さまざまな人との絆を深める役割を果たしてきました。

しかし、近年では少しずつこの風習に変化が生まれています。高齢化社会の進行、デジタルコミュニケーションの普及、終活という考え方の浸透により、「年賀状のやめどき」について悩む方が増えてきているのです。

特に人生の終盤に差しかかった方にとっては、年賀状のやり取りの見直しは「終活(しゅうかつ)」の一環として捉えられることも多くなっています。人生を振り返り、大切な人々に想いを伝える最終章の一つとも言えるでしょう。

本記事では、年賀状じまいの意味や背景、実際の伝え方、適切なタイミング、注意点や文例に至るまで、幅広く解説していきます。年賀状をやめたいと考えている方が、失礼にならず、そして相手にも理解してもらえる方法で「卒業」できるよう、丁寧にナビゲートしていきます。

年賀状じまいとは?

「年賀状じまい」とは、これまで続けてきた年賀状のやり取りを終了し、その旨を相手に丁寧に伝えることを指します。年賀状を出すのを一方的にやめるのではなく、相手に対して失礼のないよう、今後は年始の挨拶を控える旨をあらかじめ伝えるのが一般的です。

日本では、年賀状は新年の挨拶を交わす大切な習慣として長く続いてきました。家族や親族、友人、職場の関係者など、さまざまな人とのつながりを保つ役割も担っており、特に年に一度しか会わない人との連絡手段として重要視されてきました。

年賀状じまいには、個人の事情に応じたさまざまな背景があります。次章では、実際に年賀状じまいを考える主な理由について詳しく見ていきます。

年賀状じまいを考える理由

1. 年齢や健康状態による負担の増加

理由として最も多いのが、高齢や健康上の問題です。年を重ねるにつれ、手書きでの宛名書きや文章作成、印刷作業、郵便局への持ち込みなどの一連の作業が身体的に負担となっていきます。

また、視力の低下や手先の衰え、印刷機器の扱いが難しくなることもあり、「年賀状を準備する気力がなくなった」という声も多く聞かれます。

2. 人間関係の整理と終活の一環

「終活」という言葉が浸透する中で、人間関係の整理の一つとして年賀状じまいを選ぶ人も増えています。年賀状のやり取りだけが続いている相手に対し、自分の意思で一線を引き、すっきりとした人間関係を築きたいという思いが背景にあります。

終活では、財産や持ち物だけでなく、人との関係も見直す対象です。年賀状のやり取りをやめることは、単に作業を減らすだけでなく、精神的な整理にもつながります。

3. デジタルコミュニケーションの普及

LINEやメール、SNSといったデジタルツールが一般化したことで、年賀状の役割が薄れてきているのも、年賀状じまいを考える理由のひとつです。

特に若い世代とのやり取りは、紙の年賀状よりもデジタルメッセージの方が主流となりつつあります。こうした変化の中で、「無理に形式を守る必要はない」と感じる人も多くなってきました。

また、スマートフォンを使いこなす高齢者も増え、紙にこだわらない交流方法を自然に受け入れる人も増加傾向にあります。

4. 経済的・環境的な理由

年賀状の印刷、はがき代、郵送料などは、毎年の積み重ねで一定のコストになります。送付先が多い人ほど、印刷の手間や金銭的負担が大きくなり、これを機に「年賀状じまい」を検討するきっかけとなります。

また、近年では紙資源の使用削減や環境配慮の観点から、年賀状を見直す動きも見られるようになってきました。特に企業や自治体の中には、環境保護やペーパーレス化を掲げて、役員・従業員による年賀状送付を控える方針を打ち出すケースもあります。

たとえば、ソフトバンク株式会社や三東工業社、株式会社ソーゴなどが、環境への配慮を理由のひとつとして年賀状廃止を表明しています。これらの事例は、企業のSDGs(持続可能な開発目標)や働き方改革の流れの中で出てきたものであり、一定の影響を個人の意識にも与えていると考えられます。

ただし、現時点では環境意識のみを主たる理由にして年賀状じまいを選ぶ個人は少数と見られ、実際には「負担の軽減」や「人間関係の整理」といった動機と合わせて判断されているケースが多いのが実情です。

5. 喪中やライフイベントによる見直し

身内の不幸や介護・入院、転職・退職など、人生の大きな節目をきっかけに、年賀状のあり方を見直すこともあります。

たとえば、喪中をきっかけに一度年賀状をやめてみたところ、再開する必要性を感じなかったというケースや、退職後に仕事関係の年賀状の負担がなくなったことから「この機にすべて終了しよう」と考える人も少なくありません。

年賀状じまいを伝える最適な時期はいつ?

・最後の年賀状で伝える

最も一般的でスムーズなのが、最後に出す年賀状の中でその旨を伝える方法です。つまり、「今年の年賀状が最後になります」ということを年賀状の文面に含めることで、相手に失礼なく意志を伝えることができます。

ただし、年賀状は本来、新年の喜びや希望を伝える便りでもあるため、あまりに事務的または唐突な表現では、相手に驚きや寂しさを与えてしまう可能性があります。楽しい文面を期待している受け手にとっては、年賀状じまいの知らせはネガティブな印象を与えかねないため、より一層の配慮が求められます

そのため、感謝の気持ちをしっかり伝えつつ、あくまで控えめに、丁寧な表現で伝えるよう心がけましょう。

・年賀状を出さない場合は寒中見舞いで

すでに年賀状を出さない選択をしている場合、相手に何の連絡もなく年賀状が届かないと、失礼に思われる可能性があります。そうした場合は、寒中見舞い(1月7日〜2月初旬頃)を使って丁寧に伝えるのが効果的です。

年賀状を控えた理由と感謝の気持ちを簡潔に伝えることで、誤解を避けることができます。

・事前に知らせるという選択肢

関係性の深い相手や、毎年必ずやり取りをしている人には、年賀状のやり取りを終了する旨を事前に伝えておくのもひとつの方法です。

特に、相手が年賀状の準備を始める前(11月〜12月初旬)に伝えることで、相手が無駄な労力をかけずに済むため、配慮ある対応として好印象を持たれることが多いです。

タイミングを間違えると誤解される

年賀状じまいのタイミングを間違えると、相手が不快に感じたり、誤解を招いたりすることがあります。

特に、年賀状が来るのを楽しみにしている高齢の親族や、長年交流が続いている旧友などには、唐突な終了は避け、前もって配慮のある伝え方をすることが大切です。

年末年始のスケジュールに合わせて

年賀状じまいを伝えるにあたっては、年内に届くように準備・投函するのが理想です。年末年始のスケジュールを踏まえて、余裕を持って行動しましょう。

時期

対応内容

11月下旬〜12月中旬

年賀状じまいの文面準備、印刷、宛名書き

12月20日頃まで

年賀状じまいを含めた年賀状の投函

1月7日〜2月初旬

年賀状を出していない相手への寒中見舞い対応

年賀状じまいの伝え方

ここでは、年賀状じまいを上手に伝えるためのポイントと注意点について解説します。


感謝の気持ちを必ず添える

年賀状じまいの文面で最も大切なのは、「今までありがとうございました」という気持ちを必ず伝えることです。

年賀状は、相手との関係性を長年支えてきたコミュニケーションの一つ。突然やめることを一方的に宣言するような印象を与えると、関係が悪化するおそれもあります。

そのため、まずはこれまでの交流に対する感謝を伝えた上で、年賀状のやり取りを終了する旨を伝えるのが礼儀です。

柔らかい言葉を使う

「やめる」「終了する」といった直接的な表現は、角が立つことがあります。代わりに、

  • 「控えさせていただく」
  • 「ご容赦いただきたい」
  • 「本年をもちまして」

といった柔らかく丁寧な表現を使うことで、相手に対する敬意が伝わりやすくなります。

一方的に断ち切らない表現を意識する

年賀状じまいは、必ずしも人間関係を断つことを意味するものではありません。そこで、

  • 「今後も変わらぬお付き合いをお願い申し上げます」
  • 「引き続きご交誼のほど、よろしくお願いいたします」

などの文言を添えると、手段は変わっても関係を大切にしていきたいという意思表示となり、相手に安心感を与えます。

相手との関係性に応じた伝え方を選ぶ

相手によって、伝え方のトーンや詳細を調整することも大切です。

相手のタイプ

伝え方のポイント

親しい友人・親戚

個別に一言添えたり、電話でフォローするのも効果的

仕事関係者

ビジネスライクに簡潔かつ丁寧に伝える

高齢の方や疎遠な相手

配慮を込めてややフォーマルな表現にする

口頭・電話・メールでも可

ハガキだけでなく、口頭や電話、メールなどで伝える方法もあります。特に、直接顔を合わせる機会がある場合は、口頭で伝えることでより気持ちが伝わりやすくなります。

ただし、ビジネス関係やフォーマルなやり取りには、やはり書面(年賀状や寒中見舞いなど)での伝達が基本となります

SNSやメールへの移行を伝える場合

年賀状じまい後も関係を続けたい場合は、今後の連絡手段について一言添えると親切です。

例:

  • 「今後はメールやSNSでご挨拶させていただきます」
  • 「LINEでのやり取りを続けられたらうれしいです」

これにより、単に「やめる」ではなく「形を変える」だけだという印象を与えやすくなります

丁寧すぎるくらいがちょうどいい

年賀状じまいは、どんなにさりげなく伝えても、相手にとっては少なからず驚きや寂しさを感じさせるものです。だからこそ、文面や言葉遣いは丁寧すぎるくらいでちょうどいいとも言えます。

礼儀正しさと誠意が感じられる伝え方をすることで、年賀状じまいもスムーズに受け入れてもらえるでしょう。

年賀状じまいの注意点

ここでは、実際に年賀状じまいを行う際に、特に気をつけたいポイントをトラブル回避の観点から整理して解説します。

1. 突然やめると相手が驚く

前触れなく年賀状をやめると、相手は「何かあったのか」と心配になったり、疎遠にされたと感じたりすることがあります。
長年のやり取りが続いていた相手ほど、事前の予告や一度の挨拶があるかどうかで印象が大きく変わります

できるだけ、「本年をもって年賀状を控えさせていただきます」と一言伝える機会を設けるようにしましょう。

2. 一斉送信だと冷たい印象を与えることも

テンプレートを使った年賀状じまいの文面を一律に送ると、相手によっては「事務的で冷たい」と感じる可能性もあります。

特に親しい友人や、感情のやり取りが多かった相手には、一言でも個別のメッセージを添えると誠意が伝わります。対応に差をつけることも、配慮の一つです。

3. 仕事関係は慎重な判断が必要

取引先や上司、業界関係者との年賀状じまいには、個人判断ではなく職場全体の方針に合わせることが基本です。

最近では企業として年賀状を廃止するケースも増えていますが、相手によってはビジネスマナーとして年賀状のやり取りを重視する人もいます。
可能であれば、「社として年賀状を控える方針となったため」といった伝え方が望ましいでしょう。

4. 表現によっては誤解を招く恐れがある

「やめます」「送りません」といった言い方は、強く響くことがあり、人間関係の終了と誤解されるリスクがあります。

そうした誤解を避けるためにも、「控えさせていただきます」「一区切りとさせていただきます」など、柔らかく距離を取る表現を心がけましょう。
また、「今後も変わらぬお付き合いをお願い申し上げます」と添えることで、関係を続ける意思を明示できます。

5. じまい後のフォローを忘れない

年賀状じまいを伝えたにもかかわらず、相手から年賀状が届くことは少なくありません。そうした場合、寒中見舞いなどで一言お礼やお詫びを伝えると印象がよくなります

「じまいしたから無視する」のではなく、あくまで丁寧に対応することが、相手への敬意を保ち、長い付き合いを続けるための鍵となります。

このような注意点を意識することで、年賀状じまいは相手との関係を損なうことなく、自然で円満な形で行うことができます。

年賀状じまいの文例集

年賀状じまいを伝える際には、相手との関係性や状況に応じて、適切な文面を選ぶことが大切です。ここでは、個人向けからビジネス向けまで、さまざまなシチュエーションに対応できる文例をご紹介します。すべて、感謝・丁寧さ・配慮を基本に構成されています。

基本の文例

これまで長きにわたり年賀状のご厚意を賜り、誠にありがとうございました。
誠に勝手ながら、本年をもちまして年始のご挨拶を控えさせていただくことにいたしました
今後とも変わらぬご交誼のほど、よろしくお願い申し上げます。

この文例はフォーマルかつ一般的で、個人・ビジネス問わず幅広く利用できます。

親しい友人・知人向け

長年にわたり、心のこもった年賀状をありがとうございました。
年齢的なこともあり、今後は年賀状でのご挨拶を控えさせていただくことにしました。
これからも変わらず仲良くしていただけるとうれしいです。

よりカジュアルで温かみのある文面にしたい場合に適しています。

高齢者向け(体調・終活を理由にするケース)

これまでいただいたたくさんのご厚情に、心より感謝申し上げます。
高齢に伴い、筆を取るのが難しくなってまいりましたので、年賀状でのご挨拶は本年限りとさせていただきます。
どうかご理解いただけますよう、お願い申し上げます。

体力や生活環境の変化を理由にすることで、納得感を与える文面です。

終活の一環として伝える場合

終活の一環として、身の回りの整理を進めております。
その一環として、年賀状でのご挨拶も本年限りとさせていただきたく存じます。
これまでのご厚情に深く感謝申し上げますとともに、今後とも変わらぬご交誼をお願い申し上げます。

終活という言葉をあえて用いることで、意図が明確になります。

ビジネス関係者向け

日頃より大変お世話になっております。
誠に勝手ながら、業務の簡素化に伴い、今後は年賀状でのご挨拶を控えさせていただくことといたしました。
引き続き変わらぬご厚情を賜りますよう、お願い申し上げます。

業務都合を理由とすることで、ビジネス上のマナーを保ちつつ丁寧に伝えることができます。

寒中見舞いで伝える場合

寒さ厳しき折、いかがお過ごしでしょうか。
本年より、年賀状によるご挨拶を控えさせていただくことにいたしました。
これまでのご厚情に感謝申し上げますとともに、今後ともよろしくお願いいたします。

すでに年賀状を出さなかった場合のフォローに適した文例です。

一言添えるだけで使える短文例

  • 本年をもちまして、年始のご挨拶は控えさせていただきます。
  • 長らくのご厚情に感謝申し上げます。今後は年賀状を失礼させていただきます。
  • 今後は年賀状に代えて、日頃のご縁を大切にさせていただければ幸いです。

既存の文面に加えて使える、短くても丁寧な印象を与える一言です。

この文例集を活用することで、伝え方に迷うことなく、相手に失礼のない年賀状じまいが可能になります。状況に応じて、言い回しや文体を調整しながらご使用ください。

まとめ

年賀状じまいとは、年賀状のやり取りをやめるだけでなく、これまでの感謝を丁寧に伝え、相手との関係を大切にしたまま一つの節目を設ける行為です。

高齢や終活、デジタル化の進展などを背景に、年賀状のあり方を見直す人が増えており、年賀状じまいは自然な流れとして受け入れられつつあります。

実際に年賀状じまいを行う際には、感謝の言葉を忘れず、柔らかな表現で相手に意図を伝えることが大切です。タイミングは年末や寒中見舞いの時期が適しており、相手の立場に配慮した方法で伝えることが求められます。

文例を参考にしながら、自分の言葉で誠意をもって伝えることができれば、失礼なく、円満に年賀状じまいを行うことができるでしょう。つながりを断つのではなく、形を変えて関係を続けていく――それが、年賀状じまいの本質です。

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