
読経とは何をしているのか?葬儀や法事で唱えられるお経の意味と役割、心構えなどをわかりやすく解説
公開日: 1970.1.1 更新日: 2025.8.21
目次
はじめに
読経とは何をしているのか?
イメージで理解する読経の構造
なぜ葬儀や法事で読経するの?
故人への祈りと導き
生者への慰めと整理
イメージで理解する二重構造
お経の中身には何が書かれているの?
悟りへの道(八正道など)
生と死の真実(無常・苦・空など)
煩悩と救済
日本でよく読まれる代表的なお経
般若心経
法華経
浄土三部経(阿弥陀経など)
読経にはどんな“効果”があるの?
宗教的効果:死者の魂を鎮め、極楽へ導く
心理的効果:残された人の心を落ち着かせ、死を受け入れる時間
教育的効果:お釈迦様の教えを「声」にすることで、私たち自身が学び直す機会
読経中、参列者はどうすればいい?
静かに聞くことが最も大切な参加の仕方
合掌と礼拝:基本的な作法を押さえる
数珠の使い方も確認しておこう
自分でお経を読んでもいいの?
宗派によって異なるが、在家の読経も推奨されている場合が多い
家庭での供養や朝夕の祈りとしての読経
聞くだけでも供養になるという考え
読経の歴史と、お経ができた背景
口伝から始まった仏教の教え
経典としての編纂と発展
日本への伝来と宗派ごとの経典の形成
合掌や礼拝に込められた意味とは?
合掌=「仏様・故人に敬意を表す」行為
礼拝=「祈り」「尊敬」の気持ちを表す体の動作
「形式」ではなく「心を表す所作」であることを忘れずに
宗派ごとに異なる読経のスタイル
「よくわからないまま参列していた」人に伝えたいこと
“わからない”からこそ、知ることに意味がある
宗教的意味だけでなく、「気持ちの整理」にもつながる
まとめ:読経を通して、故人と自分自身に向き合う
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はじめに
「お坊さんが読んでいるけど、何をしているのかよく分からない」――
多くの人が葬儀や法事の場で抱く素朴な疑問です。読経はただの形式ではなく、深い精神性を持つ行為です。本記事では、読経の意味・背景に加え、参加者としての心構えまで丁寧に掘り下げて解説します。
仏教初心者の方、葬儀・法事に参列予定の方にとって、知識と心構えを持つことで気持ちの向き合い方が変わります。まずは「読経とは何をしているのか?」という基本から始めましょう。
読経とは何をしているのか?
読経とは、僧侶が仏教の経典(お経)を声に出して唱える行為を指します。文字に起こされた教えを、声を通じて儀式の場に届け、そこに集まる人々の心へ響かせる儀式的行為です。
イメージで理解する読経の構造
- 声に出す:音の振動が空間に広がり、聴覚を通じて心へ働きかけます。
- リズムを持つ:一定の間隔で繰り返される節回しは、まるで心を調律するようです。
- 意味が込められる:お経の内容には仏教の深い教えがまとまっており、それが音として伝わります。
読経の場は、単なる「読む場所」ではなく、「聞く人の心を整える場」です。お経の音と節回しが場を浄化し、参列者の心を静める役割を果たします。
なぜ葬儀や法事で読経するの?
読経は故人のためだけではなく、残された人々のためにも行われます。その意義は二重構造的です。
故人への祈りと導き
仏教では、死は終わりではなく成仏への道の始まりとされます。読経は故人が迷わず浄土へ旅立てるよう、仏の加護を願い導く儀式です。音と意味が故人の魂に届き、霊的な支えとなる役割を担います。
生者への慰めと整理
残された遺族や参列者にとって、死の瞬間は心理的に非常に大きな衝撃を伴います。読経のリズムや祈りがその心を包みこみ、悲しみを静め、無常(あらゆるものが移り変わること)への受け入れをサポートします。
イメージで理解する二重構造
対象 | 目的 | 方法 |
故人 | 成仏の導き | お経の意味と音を届ける |
遺族・参列者 | 心を鎮め、死を受け入れる助け | 仏教の教えを繰り返す節回し |
お経の中身には何が書かれているの?
お経とは、釈迦(お釈迦様)の教えを弟子たちがまとめたものです。内容は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の3つのテーマが軸となっています。
悟りへの道(八正道など)
正しい見方、思い方、言葉、行い、生活、努力、心の集中、瞑想などを通じて苦しみを乗り越え、悟りに至る道を示しています。
生と死の真実(無常・苦・空など)
すべてのものが一時的で変化し続けること(無常)、そのことから生じる苦しみ、そして実体がないこと(空)を説き、苦しみから解放される道筋を示します。
煩悩と救済
人間の煩悩(欲望や執着)から自由になるための方法や、すべての存在に仏性(仏として目覚める可能性)があるという信仰について述べています。
唱えることで、教えが自分自身の心に届き、心の中で仏教的な考え方を再確認する機会になります。
日本でよく読まれる代表的なお経
日本の葬儀や法事でよく唱えられるお経には、特定の宗派で重視されるものが多くあります。ここでは代表的なものを挙げてみましょう。
般若心経
- 内容:"空"の教えを簡潔にまとめた経典。
- 特徴:最も短く、浄土真宗を除く多くの宗派で唱えられる。
- イメージ:心の中の「何もない」という透明さを体験する。
法華経
- 内容:すべての人間に仏性があると説き、説法の力で悟りへ導く。
- 特徴:日蓮宗で特に重視され、大きな声で説かれることも。
- イメージ:すべての人が仏となる可能性を信じる心の開放。
浄土三部経(阿弥陀経など)
- 内容:阿弥陀仏の極楽浄土への信仰を中心に、死後の安らかな世界を描く。
- 特徴:浄土宗や浄土真宗で重要とされ、「南無阿弥陀仏」を中心とする。
- イメージ:極楽浄土への希望と安心感。
多くの宗派で共通して重要視される点は、「供養」と「教えの伝達」という目的です。それぞれのお経がもつ背景や響きを知ることで、参列者としての心も整いやすくなります。
読経にはどんな“効果”があるの?
読経は宗教的な意味合いだけでなく、心理的にも非常に大きな効果を持ちます。仏教的な視点から見ると、読経には三つの主要な効果があると考えられます。
宗教的効果:死者の魂を鎮め、極楽へ導く
読経は、亡くなった方の魂が迷うことなく浄土(極楽)へと導かれるよう祈る行為です。たとえば、浄土宗では「南無阿弥陀仏」と唱えることで阿弥陀仏に救われるとされ、その中で読経はその信仰を支える重要な実践です。
仏の名を唱え、教えを声に出すことで、その場を「仏の世界」と重ね合わせるような精神的空間が形成され、故人の魂が安らかに旅立つことを助けると信じられています。
心理的効果:残された人の心を落ち着かせ、死を受け入れる時間
人は死に直面したとき、心の整理に時間を要します。読経のゆったりとしたリズム、静かに響く声は、喪失の混乱を和らげ、悲しみを静かに受け入れていく助けとなります。
音の響きに身を任せ、言葉の意味がわからなくとも、空間に満ちる「祈りの雰囲気」に心が自然と穏やかになっていくのです。これは現代の心理療法でいうところの「マインドフルネス」に近い要素でもあります。
教育的効果:お釈迦様の教えを「声」にすることで、私たち自身が学び直す機会
読経を通して私たちは、仏教の根本的な考え方――無常、因果、慈悲――などを自然に学び取ることができます。言葉を通じて、自分の人生観や死生観を見つめ直す機会にもなります。
とくに、日常生活の中で死について考える機会が少ない現代社会において、葬儀や法要での読経は「生きる意味」を静かに問い直す貴重な時間となります。
読経中、参列者はどうすればいい?
読経の場に居合わせると、「何をすればよいのか分からない」と戸惑う方も多いでしょう。特別な知識や技術は不要ですが、最低限のマナーと心構えを知っておくと安心です。
静かに聞くことが最も大切な参加の仕方
読経中に参列者が最も意識すべきことは「静かに耳を傾ける」ことです。大きな動きや私語を控え、読経の響きに心を集中させることで、空間の一体感が生まれます。
合掌と礼拝:基本的な作法を押さえる
読経の前後には「合掌(がっしょう)」や「礼拝(らいはい)」といった仏教的作法が行われます。合掌は両手を胸の前で合わせ、心を込めて祈る動作。礼拝は頭を下げて敬意を表す所作です。
これらの行為には「仏や故人への敬意を表す」「自分の心を整える」という意味が込められており、簡単でありながら大変意義深い所作です。
数珠の使い方も確認しておこう
数珠(じゅず)は仏事の際に用いられる仏具で、念仏や読経の回数を数える意味や、心を落ち着ける道具として使われます。手にかける方法は宗派によって異なりますが、基本的には左手にかけて合掌するのが一般的です。
特に決まりに縛られる必要はありませんが、仏事の場では「場を尊重する姿勢」を持つことが何よりも大切です。
自分でお経を読んでもいいの?
「お経はお坊さんが読むもの」と思い込んでいる方も多いかもしれませんが、実は一般の人が自分で読経することも可能です。
宗派によって異なるが、在家の読経も推奨されている場合が多い
たとえば浄土真宗では、在家信者が日常的に「正信偈」などを唱える習慣があり、家庭の仏壇での読経も奨励されています。真言宗や天台宗でも、在家が読経や写経を通じて仏道を実践することは広く認められています。
家庭での供養や朝夕の祈りとしての読経
家庭に仏壇がある場合、朝夕の読経が日課となっている家庭も少なくありません。亡き人への祈り、家族の無事を願う気持ちを込めて声に出すことで、日々の心の支えになります。
内容が難しく感じられる場合は、音読するだけでも十分です。「読めば読むほど意味が深まる」のがお経の特徴でもあります。
聞くだけでも供養になるという考え
宗派によっては、「聞くだけでも仏の功徳に預かれる」という教えもあります。つまり、唱えることが難しくても、読経の場に静かに身を置き、耳を傾けるだけでも十分な供養になるのです。
読経の歴史と、お経ができた背景
読経の歴史をたどると、それは仏教のはじまり、すなわちお釈迦様(ゴータマ・シッダールタ)の教えに行き着きます。お釈迦様は、紀元前5世紀ごろに現在のインドに生まれ、多くの弟子たちに説法を行いました。
口伝から始まった仏教の教え
お釈迦様の死後、弟子たちはその教えを正確に伝えるために「口伝(くでん)」によって記憶し、口から口へと継承していきました。この口伝がのちに「経(きょう)」と呼ばれる仏教の教典の礎になります。
最初の経典は、文字によって記録されたものではなく、全てが人の記憶に頼っていたのです。そのため、初期の仏教徒は正確な発音や節回し、唱える順序に非常に注意を払いながら読誦(どくじゅ)を行っていました。
経典としての編纂と発展
紀元前3世紀ごろには、インドのアショーカ王によって仏教が保護されるようになり、教えが文字として記録され始めます。このとき書き起こされたのが、現代に残る最古の仏典群です。
それ以降、仏教はスリランカ、東南アジア、中国を経て、日本へと伝来します。中国では漢訳仏典として翻訳され、日本ではそれがさらに和訳され、多様な宗派によって選別・整備されていきました。
日本への伝来と宗派ごとの経典の形成
日本には6世紀ごろ、百済を通じて仏教が伝えられました。当初は国家の保護宗教として栄え、奈良時代には南都六宗、平安時代には天台宗・真言宗、鎌倉時代には浄土宗・日蓮宗・禅宗などが成立し、それぞれに重視する経典が異なっていきます。
このようにして、現在の葬儀や法事で用いられる「読経」は、千数百年にわたる仏教の歴史と文化の積み重ねによって形成されてきたものなのです。
合掌や礼拝に込められた意味とは?
葬儀や法事の場で自然と行われる「合掌」や「礼拝」。これらの動作は、仏教において単なる儀礼ではなく、深い意味を持つ所作です。
合掌=「仏様・故人に敬意を表す」行為
両手を胸の前で合わせる合掌の姿勢は、仏様に対する尊敬と、亡き人への感謝や祈りを表す最も基本的な行為です。
仏教では、右手は仏を、左手は自分を表すとされ、両手を合わせることで「仏と自分が一つになる」ことを意味します。つまり、合掌は単に敬意を表すだけでなく、自分自身の心を仏に向けて開く行為でもあるのです。
礼拝=「祈り」「尊敬」の気持ちを表す体の動作
礼拝とは、頭を下げたり、体を折ってひれ伏すような動作のことで、インドや中国の古代宗教にも見られる伝統的な所作です。仏教では、仏や祖先に対する深い敬意を込めて行われます。
動作としてはシンプルですが、心の姿勢が最も重要です。形を整えることで、心の内面も自然と整っていきます。
「形式」ではなく「心を表す所作」であることを忘れずに
現代社会では、合掌や礼拝が形骸化していると感じる人もいるかもしれません。しかし、これらの所作の本質は「心の現れ」です。たとえ不慣れでも、心を込めることでその意味は十分に伝わります。

宗派ごとに異なる読経のスタイル
読経と一口にいっても、仏教には多くの宗派があり、それぞれの教えや目的によって読経のスタイルが異なります。ここでは主な宗派とその特徴を紹介します。
宗派 | 読経の特徴 |
真言宗 | 「真言(マントラ)」を多用し、神秘的な音の力を重視する。 |
浄土真宗 | 阿弥陀仏への信心を重視し、読経よりも「念仏(南無阿弥陀仏)」を中心に据える。 |
曹洞宗・臨済宗(禅宗) | 読経は修行や座禅の一環であり、静けさや集中力を大切にする。 |
日蓮宗 | 法華経を中心とした力強い読経と題目(南無妙法蓮華経)の唱和が特徴。 |
それぞれの宗派で唱えるお経や節回し、声の調子、所作などに違いがあり、それらを知ることで、葬儀や法事に対する理解も一層深まります。
参列の際は、自分がどの宗派の儀式に参加しているのかを知ることが、読経への理解を助ける大きなヒントになります。
「よくわからないまま参列していた」人に伝えたいこと
多くの人が、読経や仏事に対して「難しい」「宗教的すぎてよく分からない」と感じているかもしれません。しかし、それはごく自然なことです。
“わからない”からこそ、知ることに意味がある
現代社会では、宗教に関する知識が日常から遠ざかっているため、知らないことがあって当たり前です。ただし、「知らないから関係ない」と思うのではなく、「知らないからこそ、知ってみよう」という姿勢が大切です。
少しでも知識を持つことで、読経や葬儀・法要の時間が「ただ過ぎていく時間」ではなく、「自分自身の心と向き合う時間」へと変わります。
宗教的意味だけでなく、「気持ちの整理」にもつながる
読経の意味を知ることで、亡くなった方との最後の別れをしっかりと受け止め、自分の心の整理を進める助けにもなります。知識は感情を深め、感情は理解を広げるのです。
まとめ:読経を通して、故人と自分自身に向き合う
読経は、ただの儀式ではなく、故人への祈りと自分自身の内面を見つめ直す時間です。仏の教えを声に出し、静かにその意味を受け取ることで、私たちは死と向き合い、生きる意味を再確認することができます。
参列者として特別なことをする必要はありません。ただ、心を込めてその時間を過ごすこと。それが何よりも大切な「供養」なのです。
仏教の深い理解がなくても、読経の意味を少しでも知るだけで、葬儀や法要の時間は大きく変わります。次にその場に立ち会うときには、「ただ聞く」のではなく、「心で向き合う」姿勢を持ってみてください。きっと、そこに新しい気づきと安らぎが見つかるはずです。
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