見守り契約とは?できること・できないこと・任意後見との違いをわかりやすく解説

2025.5.28

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はじめに|任意後見契約だけでは不安な方へ

高齢化社会が進む中、将来の生活に対する不安を抱える方が増えています。特に、認知症などで判断能力が低下した際の備えとして「任意後見契約」を結ぶ方も多いでしょう。しかし、任意後見契約だけでは、すべての不安を解消することは難しい場合があります。 任意後見契約は、本人の判断能力が低下した後に効力を発揮する契約です。そのため、契約を結んだだけでは、実際に必要な時に適切に機能するかどうか不安を感じる方も少なくありません。 そこで注目されているのが「見守り契約」です。見守り契約は、判断能力がしっかりしているうちから支援体制を整えることができる契約で、任意後見契約と併用することで、より安心した生活を送ることが可能になります。 この記事では、見守り契約の概要やできること・できないこと、任意後見契約との違い、併用のメリットなどをわかりやすく解説します。

見守り契約とは?

見守り契約とは、本人が判断能力を有している間に、第三者と契約を結び、定期的な連絡や訪問を通じて生活状況や健康状態を確認してもらう契約です。この契約は、任意後見契約が効力を発揮する前段階での支援体制を整えることを目的としています。

契約の目的と背景

高齢者の一人暮らしが増加する中、孤立や詐欺被害のリスクも高まっています。見守り契約は、以下のような目的で活用されています。   ₋・孤立防止₋:定期的な連絡や訪問により、社会的なつながりを維持し、孤立を防ぐ。   ₋・詐欺被害の予防₋:日常の変化を早期に察知し、不審な取引や行動に対して早めに対応する。   ₋・任意後見契約の円滑な移行₋:判断能力の低下を早期に発見し、適切なタイミングで任意後見契約を発効させる。

誰と誰が契約する?

見守り契約は、本人と第三者(受任者)との間で結ばれます。受任者には、以下のような人が考えられます。   ₋・親族や知人₋:信頼できる家族や友人。   ₋・専門職₋:司法書士、行政書士、社会福祉士などの専門家。 受任者は、定期的な連絡や訪問を通じて、本人の生活状況や健康状態を確認し、必要に応じて家族や関係者に報告します。

任意後見契約との違い

任意後見契約と見守り契約の主な違いは、契約の効力が発生するタイミングと内容です。   ₋・任意後見契約₋:本人の判断能力が低下した後に効力を発揮し、財産管理や身上監護を行う。   ₋・見守り契約₋:本人の判断能力があるうちから開始し、定期的な連絡や訪問を通じて見守りを行う。 見守り契約は、任意後見契約が効力を発揮する前段階での支援体制を整えることで、スムーズな移行を可能にします。

任意後見契約と見守り契約の併用メリット

任意後見契約だけでは対応が難しい場面もあります。見守り契約を併用することで、以下のようなメリットが得られます。

後見の開始時期を的確に判断できる

任意後見契約は、本人の判断能力が低下した際に効力を発揮しますが、そのタイミングを的確に判断することは難しい場合があります。見守り契約を結ぶことで、受任者が定期的に本人の状況を確認し、判断能力の低下を早期に察知することができます。これにより、適切なタイミングで任意後見契約を発効させることが可能になります。

詐欺・悪質商法の被害防止

高齢者を狙った詐欺や悪質商法の被害が増加しています。見守り契約を結ぶことで、受任者が定期的に本人の生活状況を確認し、不審な取引や行動を早期に発見することができます。これにより、被害を未然に防ぐことが可能になります。

受任者や関係者との信頼関係の構築

見守り契約を通じて、受任者と本人との間に信頼関係を築くことができます。定期的な連絡や訪問を通じて、受任者が本人の価値観や生活スタイルを理解し、将来的な支援に備えることができます。また、家族や関係者との連携も強化され、支援体制が整います。

見守り契約でできること・できないこと

見守り契約は、本人の判断能力があるうちから支援体制を整える契約ですが、できることとできないことがあります。

見守り契約でできること

  ₋・定期的な電話や訪問による安否確認₋:受任者が定期的に本人と連絡を取り、健康状態や生活状況を確認します。   ₋・家族や関係者への報告₋:本人の同意のもと、受任者が家族や関係者に状況を報告します。   ₋・必要に応じて任意後見開始の相談・情報提供₋:判断能力の低下が見られた場合、受任者が任意後見契約の発効について相談や情報提供を行います。   ₋・日常の相談対応や見守り記録の共有₋:本人からの相談に対応し、見守りの記録を共有します。

見守り契約でできないこと

  ₋・本人に代わる契約行為や財産管理₋:見守り契約では、受任者が本人に代わって契約行為や財産管理を行うことはできません。   ₋・身の回りの介護・家事などの実務₋:介護や家事などの実務は、別途サービスを利用する必要があります。   ₋・亡くなった後の手続き(葬儀・行政手続きなど)₋:本人の死亡後の手続きは、見守り契約の範囲外です。 これらの対応が必要な場合は、「財産管理委任契約」や「死後事務委任契約」などを併せて検討することが一般的です。

見守り契約の主な内容

見守り契約は、本人と受任者との間で自由に内容を決めることができます。以下に、契約書に盛り込む主な内容と雛型の一例を紹介します。

契約書に盛り込む主な内容

  ₋・契約の目的₋:見守り契約の目的や背景を明記します。   ₋・連絡・訪問の頻度₋:定期的な連絡や訪問の頻度や方法を取り決めます。   ₋・報告先(家族・親族など)₋:本人の同意のもと、報告先を指定します。   ₋・任意後見契約との連携方針₋:任意後見契約との連携方法や発効のタイミングを明記します。   ₋・緊急連絡先の指定₋:緊急時の連絡先を指定します。   ₋・情報の取り扱いや秘密保持に関する取り決め₋:個人情報の取り扱いや秘密保持に関する取り決めを明記します。

雛型構成の一例

  ₋1.契約の目的₋:見守り契約の目的や背景を明記します。   ₋2.契約期間₋:契約の期間や更新の条件を明記します。   ₋3.連絡・訪問の方法と頻度₋:定期的な連絡や訪問の方法と頻度を取り決めます。   ₋4.報告先の指定₋:本人の同意のもと、報告先を指定します。   ₋5.任意後見契約との連携₋:任意後見契約との連携方法や発効のタイミングを明記します。   ₋6.緊急時の対応₋:緊急時の対応方法や連絡先を明記します。   ₋7.報酬と支払い方法₋:受任者への報酬や支払い方法を明記します。   ₋8.契約の終了事由₋:契約の終了条件や手続きを明記します。   ₋9.その他の取り決め₋:個人情報の取り扱いや秘密保持に関する取り決めを明記します。 実際の契約書は、専門家(司法書士や行政書士など)と相談しながら、自分の状況に合わせて調整することが重要です。画一的な雛型に頼るのではなく、自身のニーズや信頼関係を反映させた内容にすることで、より実効性のある契約になります。

見守り契約の締結方法

見守り契約は比較的自由度が高い契約であり、当事者間での合意に基づいて柔軟に設計することが可能です。ただし、将来的なトラブルを避けるためにも、手続きは慎重に進める必要があります。

契約の流れ

見守り契約を結ぶ際の一般的な流れは、次のとおりです。   ₋・目的の整理と希望内容の検討₋      まずは、自分がどのような目的で見守り契約を結びたいのかを明確にします。たとえば、「定期的に様子を見てほしい」「判断能力が低下した際に任意後見への移行をスムーズにしたい」など、自分の希望内容を書き出してみましょう。      ₋・契約相手の選定(親族・知人・専門職など)₋      次に、見守り契約を結ぶ相手を選びます。信頼できる親族や知人が適任であればそれが理想ですが、身近に適任者がいない場合は、専門職(司法書士、行政書士、社会福祉士など)に依頼することもできます。      第三者としての中立性や専門性を考慮して選ぶと安心です。   ₋・契約書の作成と締結(必要に応じて公正証書化)₋      合意内容が固まったら、契約書を作成します。口約束ではなく書面にすることで、後々のトラブルを防ぐことができます。さらに、内容に確実性を持たせるために「公正証書」として作成することも可能です。これは公証人役場で手続きします。

見守り契約

誰に依頼できる?

見守り契約の受任者や契約書の作成支援は、以下のような専門家が対応可能です。   ₋・司法書士₋:任意後見契約や財産管理も含めた総合的な支援が可能です。   ₋・行政書士₋:契約書の作成支援に長けており、法的文書の作成を代行します。   ₋・社会福祉士・ケアマネジャー₋:福祉的な視点から支援内容を検討できます。   ₋・信託会社や市民後見人団体₋:一部では見守り契約に対応したサービスを提供しているところもあります。 また、任意後見契約や死後事務委任契約と同時に進めることで、生活全体の支援体制を包括的に設計することが可能になります。

見守り契約のよくある併用パターン

見守り契約は、単独で締結する場合もありますが、他の契約と組み合わせることで、より包括的な支援体制を構築できます。以下に、代表的な併用パターンを紹介します。

パターン① 見守り契約+任意後見契約

このパターンは、判断能力が低下する前から備えたい人に最適です。見守り契約により、日常の安否確認や生活状況の報告が行われ、必要なタイミングでスムーズに任意後見契約が発効されます。将来の変化に対応しやすいのが大きなメリットです。

パターン② 見守り契約+任意後見契約+死後事務委任契約

こちらは、生前から死後までの全ての局面を網羅した支援体制です。判断能力のあるうちは見守り契約でサポートを受け、能力が低下したら任意後見契約が発効。さらに死後の葬儀や行政手続きなども、死後事務委任契約で対応します。身寄りのない方や、家族に負担をかけたくない方に特に適しています。

パターン③ 見守り契約+死後事務委任契約

判断能力の低下時には家族が対応することを前提とし、それ以外の時期と死後の備えとして、見守り契約と死後事務委任契約を組み合わせるケースです。家族が遠方に住んでいる場合や、判断能力のあるうちの孤立・不安を軽減したい方に向いています。

自分は見守り契約を結ぶべき?判断ポイント

見守り契約が必要かどうかは、各人の生活環境や将来の見通しによって異なります。以下のような状況に当てはまる方は、見守り契約を検討する価値があります。   ₋・任意後見契約はあるけれど不安が残っている₋    任意後見契約を結んだものの、実際に判断能力が低下するまでの間に、どのように備えておけばよいのか不安を抱えている方。   ₋・身寄りがない/遠方に家族がいる₋    近くに頼れる家族や知人がいない、または子どもが遠方に住んでいて頻繁に様子を見に来られない場合、見守り契約により生活状況の定期的なチェックが受けられます。   ₋・詐欺や孤立が心配₋    高齢者を狙った犯罪や悪質商法の被害を未然に防ぐためには、第三者による見守りが非常に有効です。   ₋・実際にどのように契約が機能するかを第三者に見守ってほしい₋    任意後見契約の発効前から、支援者との信頼関係を築き、将来的な円滑な支援の実現を目指す場合、見守り契約は重要なステップとなります。

まとめ|安心を「今から」つくる見守り契約

見守り契約は、将来的な任意後見契約が効力を発揮するまでの「空白の時間」を埋める、大変有効な制度です。判断能力があるうちから第三者の見守りを受けることで、生活の安心感が高まり、必要に応じて後見制度へのスムーズな移行が可能になります。 現代社会では、高齢者の孤立や判断能力の低下に伴う問題が増加しています。そのようなリスクに対し、あらかじめ支援体制を整えておくことは、安心した暮らしの第一歩です。 見守り契約は、単独でも他の契約と併用しても活用できる柔軟性の高い制度です。自分の将来の備えとして、まずは信頼できる専門家や支援者に相談し、自分に合った形での導入を検討してみてください。 備えは早ければ早いほど安心につながります。自分の意志で、今から始める支援体制づくりが、将来の安心を確かなものにします。

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