
目次
葬儀における「志(こころざし)」とは?
「志」の読み方と本来の意味
香典返しや挨拶状で使われる理由
「志=感謝の気持ち」をあらわす表現であること
香典返しののし紙に「志」と書く理由
香典に対するお礼と弔意への感謝
宗教・宗派に関係なく使える表現
「志」はどんな立場の人でも使いやすい言葉
のし紙における「志」の表書きマナー
表書きの正しい書き方
文字色は薄墨?黒?
筆や筆ペン、印刷でもよいのか?
香典返しに使うのし紙・包装紙の選び方
水引の種類と選び方
のし飾りのない「掛け紙」を使う理由
内のしと外のし、どちらが正しい?
控えめな包装紙を選ぶ理由とそのマナー的意味
香典返しを渡す際のマナー
手渡しする場合:添えるべき一言とは?
郵送する場合:御礼状の添え方と書き方のポイント
お礼状で「志」とどう結びつけるか
「志」と似た表現との違いを理解する
「満中陰志」との違い(主に仏式・関西圏)
「忌明志」「粗供養」「偲び草」など地域・宗派による違い
「寸志」「茶の子」など弔事以外での使い方との混同に注意
地域や宗派で異なる「志」の使い方
仏教・神道・キリスト教ごとの違い
関東と関西での表現差
迷った時の確認方法
感謝の気持ちを伝える香典返しのあり方
品物の選び方(カタログギフト、お茶・お菓子など)
故人の好みにちなんだ返礼品も選択肢
「志」の表記にふさわしい丁寧さとは
まとめ:「志」の意味を知って、失礼のない香典返しを
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葬儀や法要の後に行う香典返しでよく用いられる表書きが「志(こころざし)」です。日常生活ではあまり使うことのない言葉のため、「なぜ香典返しに『志』と書くのか」「『満中陰志』や『忌明志』とはどう違うのか」と迷う方も多いでしょう。香典返しは遺族から参列者への感謝の気持ちを表す大切な儀礼であり、表書きやマナーに誤りがあると、せっかくの誠意が伝わりにくくなることもあります。
本記事では、「志」の正しい意味から、香典返しに使われる理由、のし紙の表書きマナー、包装や御礼状の作法、地域や宗派ごとの違いまで、わかりやすく詳しく解説していきます。
葬儀における「志(こころざし)」とは?
「志」の読み方と本来の意味
「志」は「こころざし」と読みます。本来は「心に思い描いた目標や願い」「相手への誠意や厚意」を意味する言葉です。日常生活では「志を立てる」「志を共にする」といった形で使われることが多く、まさに心のあり方を示す日本語ならではの表現といえます。
葬儀における「志」は、この本来の意味を踏まえ、「遺族の感謝の気持ち」を象徴する言葉として使われています。特に香典返しや御礼状の表書きとして広く定着しています。
香典返しや挨拶状で使われる理由
香典返しに「志」と記す理由は、香典をいただいたことへのお礼を、形式ばらずに丁寧に伝えられるためです。「志」という一文字には、相手への感謝と故人を偲ぶ気持ちの両方を込められるため、宗教・宗派を問わず幅広く用いられています。
挨拶状でも同様に「志をお受け取りいただければ幸いです」といった形で使われ、受け取った方に「感謝の心」を理解してもらえる役割を果たしています。
「志=感謝の気持ち」をあらわす表現であること
香典返しの本質は「いただいたご厚意に対して感謝の意を表すこと」です。そのため、表書きに「御礼」や「謝礼」といった直接的な表現を使うのではなく、「志」と表記することで、相手に押し付けがましくなく、柔らかい印象を与えることができます。
また、「志」という言葉は、故人や遺族の「誠意ある心」を表すため、参列者にとっても受け取りやすい表現となっています。
香典返しののし紙に「志」と書く理由
香典に対するお礼と弔意への感謝
香典返しにおいて「志」と記す最大の理由は、香典をいただいたことに対するお礼と、弔意を示していただいたことへの感謝を同時に表せるからです。単に「お返し」という意味合いではなく、「故人を思ってくださったお気持ちに心から感謝しています」という遺族の気持ちを、簡潔かつ丁寧に伝える表現が「志」なのです。
宗教・宗派に関係なく使える表現
「志」は仏教・神道・キリスト教など、いずれの宗教や宗派にも共通して使える表現です。例えば、仏式では「満中陰志」、神式では「偲び草」、キリスト教では「記念品」などの表現もありますが、「志」であれば宗派を限定せず、多くの場面に適応できます。そのため、宗教が異なる弔問客が混在する現代の葬儀において、とても便利で誤解のない表記といえます。
「志」はどんな立場の人でも使いやすい言葉
香典返しを贈る相手は、親族や親しい友人に限らず、仕事関係者や近隣の方々など多岐にわたります。関係性の深さに応じて言葉を使い分けるのは難しいですが、「志」という表現は格式ばらず、それでいて失礼にならないため、幅広い相手に使いやすいのが特徴です。

のし紙における「志」の表書きマナー
表書きの正しい書き方
香典返しののし紙では、上段に「志」と記します。下段には贈り主の名前を書くのが一般的です。
- 個人名で贈る場合:フルネーム
- 喪主が代表で贈る場合:「○○家」
- 連名にする場合:家族全員の名前を並べるか、代表者の名前の下に「外一同」と記載
これにより、誰からの返礼かが一目でわかり、相手に失礼がありません。
文字色は薄墨?黒?
弔事における筆文字は、葬儀当日や通夜では「薄墨」で書くのが伝統とされます。これは「涙で墨が薄れた」という意味合いを持つためです。しかし、香典返しののし紙では、四十九日後や忌明けに贈ることが多いため、通常は濃い黒墨で記します。印刷や筆ペンを用いる場合も、黒字が基本となります。
筆や筆ペン、印刷でもよいのか?
本来は毛筆が望ましいとされますが、現代では筆ペンや印刷も一般的に受け入れられています。特に多人数分を用意する香典返しでは印刷の需要が高く、マナー違反にはなりません。ただし、手書きの方がより丁寧な印象を与えるため、可能であれば筆ペンで記すと良いでしょう。
香典返しに使うのし紙・包装紙の選び方
水引の種類と選び方
香典返しの水引には、「結び切り」や「あわじ結び」が用いられます。これらは「繰り返さない」という意味を持ち、弔事にふさわしい結び方です。地域によっては白黒や双銀(白銀)の水引を用いる場合もあります。
のし飾りのない「掛け紙」を使う理由
慶事とは異なり、弔事の返礼では「のし飾り」は付けません。そのため、香典返しでは「掛け紙」と呼ばれる、シンプルなのし紙を使用します。これは「祝い事ではない」という意味を明確にするためです。
内のしと外のし、どちらが正しい?
香典返しの場合、多くは「内のし」が選ばれます。包装紙の内側に掛け紙をかけることで、控えめな印象となり、弔事にふさわしい落ち着いた雰囲気を保てます。ただし、地域や葬儀社の習慣によっては「外のし」を推奨する場合もあるため、事前に確認すると安心です。
控えめな包装紙を選ぶ理由とそのマナー的意味
香典返しでは、華美な柄や鮮やかな色の包装紙は避け、落ち着いた無地や地味な色調のものを選ぶのが一般的です。これにより、遺族の慎ましい気持ちを表現でき、参列者にも誠実さが伝わります。
香典返しを渡す際のマナー
手渡しする場合:添えるべき一言とは?
香典返しを直接手渡しする場合は、単に品物を渡すのではなく、必ず一言添えることが大切です。代表的な言い方としては次のような表現があります。
- 「このたびはご丁寧なお心遣いをいただき、誠にありがとうございました。ささやかではございますが、志のしるしとしてお納めください。」
- 「生前中は大変お世話になり、心より感謝申し上げます。本日は志の品をお持ちしましたので、どうぞお受け取りください。」
このように、「志」という言葉を自然に盛り込みながら感謝を伝えると、形式的になりすぎず丁寧な印象を与えられます。
郵送する場合:御礼状の添え方と書き方のポイント
近年は遠方の親戚や友人には郵送で香典返しを贈るケースが増えています。その際は必ず御礼状を添えることがマナーです。御礼状には以下の内容を盛り込みましょう。
- 故人の逝去を知らせる言葉
- 香典への感謝
- 四十九日など忌明けの報告
- 志の品をお贈りする旨
- 今後の変わらぬお付き合いを願う結びの言葉
【御礼状文例】
謹啓 このたびはご丁重なるご弔意を賜り、心より御礼申し上げます。
本日、○○(故人名)の忌明法要を滞りなく相済ませました。
つきましては、ささやかではございますが志の品をお送りいたしますので、どうぞお受け取りください。
今後とも変わらぬお付き合いのほどお願い申し上げます。
令和○年○月吉日
このように記すことで、形式を保ちながらも感謝の気持ちを伝えることができます。
お礼状で「志」とどう結びつけるか
御礼状の中では「志」という言葉を用いて、香典返しの品を感謝のしるしとして贈っていることを明示します。これにより、相手に「形式的なお返し」ではなく「心からの御礼」であることが伝わります。
「志」と似た表現との違いを理解する
「満中陰志」との違い(主に仏式・関西圏)
「満中陰志(まんちゅういんし)」とは、仏教の関西地方を中心に用いられる表現で、四十九日の法要を終えた忌明けに贈る香典返しを指します。「志」と比べると、より仏式に限定された用語であり、宗派や地域によっては馴染みが薄い場合もあります。
「忌明志」「粗供養」「偲び草」など地域・宗派による違い
- 忌明志:関東を中心に用いられることが多く、四十九日や忌明けの返礼品に記す。
- 粗供養:関西や四国地方で見られ、法要の参列者に対して贈る表書き。
- 偲び草:神道で用いられることがあり、「偲ぶ心を形にした品」という意味。
このように、同じ香典返しでも、地域や宗派によって使う言葉が異なります。
「寸志」「茶の子」など弔事以外での使い方との混同に注意
「寸志」や「茶の子」は慶事や日常の贈り物で使われる表現であり、弔事に用いるのは不適切です。特に「寸志」はビジネスシーンでの心付けに使うため、香典返しとは意味が異なります。誤用を避けるためにも注意が必要です。
地域や宗派で異なる「志」の使い方
仏教・神道・キリスト教ごとの違い
- 仏教:四十九日後の返礼に「志」や「満中陰志」を使用。
- 神道:五十日祭後に「偲び草」や「志」と表記することが多い。
- キリスト教:香典返しに相当する慣習は少ないが、記念品として「志」を用いる場合もある。
関東と関西での表現差
関東では「志」「忌明志」が多く使われ、関西では「満中陰志」や「粗供養」が一般的です。この違いを理解しておくと、地域に合わせた適切な表書きが選べます。
迷った時の確認方法
地域性や宗派によって判断が難しい場合は、葬儀社や仏具店に相談するのが最も安心です。プロに確認することで、失礼のない表記や包装を整えることができます。
感謝の気持ちを伝える香典返しのあり方
品物の選び方(カタログギフト、お茶・お菓子など)
香典返しの品物は「消えもの」と呼ばれる、使えば残らないものが一般的です。
- 定番:お茶・コーヒー・海苔・お菓子
- 最近人気:カタログギフト(受け取った方が自由に選べる)
- 高齢者向け:日常で役立つ食品や飲料
「志」という言葉に込められた感謝の気持ちを伝えるためには、相手が受け取りやすく、負担にならない品を選ぶことが大切です。
故人の好みにちなんだ返礼品も選択肢
最近では、故人が生前好きだったお茶やお菓子を返礼品に選ぶご家庭も増えています。形式的な品物に加え、「故人を偲んでいただきたい」という気持ちが込められるため、受け取った方により深い印象を与えられるでしょう。
「志」の表記にふさわしい丁寧さとは
香典返しの本質は「感謝と誠意を示すこと」にあります。たとえ高額な品物でなくても、
- 適切なのし紙を選ぶ
- 丁寧な包装を心がける
- 御礼状を添える
といった心配りがあれば、十分に「志」の意味を伝えることができます。
まとめ:「志」の意味を知って、失礼のない香典返しを
香典返しに使われる「志」という言葉は、単なる慣習的な表現ではなく、故人を偲んでくださった方々への感謝と敬意を込めた重要な表現です。「志」を表書きに用いることで、宗派や立場を問わず、受け取る方に誠意を伝えることができます。
のし紙や水引の種類、文字の色、内のしか外のしかといった細やかなマナーを守ることも大切です。また、香典返しの品物は高価である必要はなく、相手が受け取りやすいものを選び、御礼状を添えることで、より丁寧な気持ちが伝わります。
地域や宗派によって「満中陰志」や「忌明志」「粗供養」といった表現が使われる場合もありますが、迷ったときは葬儀社や仏具店などの専門家に相談すれば安心です。
香典返しは、遺族が故人に代わって参列者へ感謝を伝える大切な儀礼です。正しい意味とマナーを理解し、心を込めて準備することで、形式だけにとどまらない「志」の気持ちをしっかりと届けることができるでしょう。
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