棺の選び方とは?種類別の特徴とサイズ、費用、後悔しない選び方を解説

2025.7.11

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はじめに:棺を選ぶ前に知っておきたいこと

終活を進める中で、多くの方が「自分らしい最期を迎えるにはどうすればいいか」と考えます。その中でも「棺選び」は重要なテーマのひとつです。棺は故人の体を納め、最期の旅立ちを見送るための器であり、儀式の一部としての意味も持ちます。 棺の役割は単なる器ではありません。お通夜や告別式の際に参列者の目に触れる「最後の演出」であり、見た目や質感、素材にはその人らしさやご家族の思いが反映されるものです。選ぶ棺によって、儀式全体の印象が大きく変わることもあります。 では、棺は誰が、いつ選ぶのでしょうか。一般的には葬儀を執り行う喪主や遺族が葬儀社と相談して決めることが多いですが、近年では生前にご本人が選ぶケースも増えています。これは「終活」の一環として、自分らしい旅立ちを準備するという考え方が浸透してきた結果とも言えます。 ただし、棺選びは情報が少なく、限られた時間の中で判断を迫られることが多いのも事実です。葬儀社にすべてを任せる前に、基本的な知識を押さえておくことで、「選ばされる」のではなく「納得して選ぶ」ことができます。 葬儀の現場では、悲しみや混乱の中で棺を即決しなければならない場面もあります。そうしたときに後悔しないためには、素材や形状、費用の目安、選ぶ基準などを事前に理解しておくことがとても大切です。

棺の種類とそれぞれの特徴

棺にはさまざまな種類があり、主に「素材」と「形状」で分類されます。

【素材別】棺の主な種類

木棺 木材を使った棺は、最もポピュラーで広く使用されています。素材としては、桐、杉、ヒノキなどが使われ、木の種類によって価格帯や見た目の印象が異なります。 桐:軽量で湿気に強く、見た目も上品。高価格帯のものが多い 杉:ナチュラルで素朴な印象。中価格帯 ヒノキ:香りが良く高級感があり、価格も高め 木棺は「故人を自然に還す」というイメージにも合っており、和風の儀式との相性が良いのも特徴です。 布張棺(布棺) 外装に布を貼り付けた棺で、装飾性が高く、柔らかい印象を与えます。布地の柄や色を選べることもあり、華やかで優美な雰囲気を演出したいときに選ばれる傾向があります。特に女性のご遺体に用いられることが多いですが、男性用にもシンプルで落ち着いたデザインがあります。 エンバー棺 木材チップなどを固めた成型材で作られた棺で、製造コストが抑えられているため、価格は比較的安価です。「見送りにはお金をかけず、必要最低限でいい」と考える方に適しています。また、見た目も十分に整っているため、葬儀の場で不自然になることもありません。 エコ棺(ダンボール棺) リサイクル素材や段ボールを使ったエコロジー志向の棺で、環境負荷が低く、コストも安いのが特徴です。軽量で扱いやすく、火葬も問題なく行えます。自然葬や環境への配慮を大切にしている方に人気があります。ただし、水濡れや湿気には注意が必要なため、保管場所や使用タイミングを事前に考えておくことが求められます。

【形状別】見た目の違いと用途

箱型 最も一般的な形状で、長方形の直線的なデザインです。無駄がなくシンプルな印象で、どの宗教・宗派でも使いやすいというメリットがあります。 山型 蓋の中央部分が盛り上がったデザインで、立体感があり、より格式を感じさせる印象になります。見送りの場で少し華やかにしたい方に選ばれることが多いです。 かまぼこ型 蓋に丸みをもたせたデザインで、柔らかさと穏やかさを演出できます。曲線的なフォルムが視覚的にも優しく、特に女性や子どもに用いられる傾向があります。 インロー型 上下の部品がしっかりとかみ合う構造で、気密性が高い棺です。しっかりと閉じられる安心感があり、保冷性能にも優れています。密閉性を重視したい場合に適しています。 コフィン型 西洋風の六角形または八角形のデザインで、日本の伝統的な棺とは異なる印象を与えます。個性を重視したい方や、生前から海外文化に親しんでいた方などに好まれます。選ぶ際には、火葬炉のサイズや搬送手段に適合するかも確認が必要です。

棺のサイズ

棺のサイズは、故人の体格や火葬場の設備との兼ね合いから、選定において非常に重要なポイントです。見た目や素材に目が行きがちですが、サイズの適合が不十分だと、搬送時や火葬時に思わぬトラブルが生じることもあります。 標準サイズとその目安 一般的な成人用棺の標準サイズは、長さ約180cm、幅約55cm、高さ約40cm程度です。これは日本人男性の平均的な体格に合わせたサイズであり、大多数の方に適しています。ただし、体格が特に大きい方や身長が高い方の場合、標準サイズでは対応しきれないことがあります。 身長が高い方、体格が大きい方は事前に確認を 棺が小さすぎると、遺体を無理に収めることになり、ご遺族の心情にも配慮を欠く結果となります。葬儀社に相談する際は、必ず故人の身長・体格について正確に伝えることが重要です。葬儀前に火葬場の設備制限と棺の内寸を照らし合わせて確認しておきましょう。 子ども用、女性向けにコンパクトなサイズも存在 小柄な女性や子ども用の棺も市販されており、これらは標準より一回り小さなサイズになっています。必要に応じて選択肢に入れることで、無理のない納棺と、より自然な旅立ちの演出が可能になります。 火葬場ごとに対応サイズに上限があるため要確認 日本国内の火葬場は、設計時に平均的な棺サイズを前提にしています。そのため、特注サイズや西洋型(コフィン型)などサイズが異なる棺を使用する際には、火葬場で対応可能かどうかを事前に確認する必要があります。地方によっては火葬炉のサイズが限られていることもあるため、遠方での火葬を予定している場合には特に注意が必要です。

棺の費用相場と価格の決まり方

棺の価格は大きく幅があります。葬儀にかかる費用全体の中でも棺は一定の割合を占めるため、予算とのバランスを取るうえで正しい理解が欠かせません。 一般的な価格帯(5万〜30万円) 日本国内で販売されている棺の多くは、5万円〜30万円の間で提供されています。費用の差は主に素材、装飾、構造、ブランドなどにより生じます。以下に、代表的な価格帯の棺とその特徴をまとめます。

価格帯棺の種類・特徴
5万〜10万円エンバー棺・エコ棺、装飾少なめの木棺
10万〜20万円一般的な木棺、布張棺、山型棺
20万〜30万円高級木材使用の木棺、装飾性の高い布張棺、デザイン棺

高価な棺と安価な棺の違い 高価な棺には、希少な木材や丁寧な手工芸的装飾が施されていたり、ブランド化された製品であったりと、デザイン面や素材面での品質の違いがあります。また、装飾金具や内装(布地の質感など)も価格に影響を与えます。一方で、安価な棺でも、必要最低限の機能と見た目を備えており、決して「粗末」な印象にはなりません。葬儀の目的や価値観に応じて、最適な選択を行うことが重要です。 素材・装飾・形状が価格に影響 同じ素材でも、加工方法や装飾の有無で価格が変動します。たとえば桐材でも、無垢材と合板では価格が異なり、装飾が多く施された布張棺は、同サイズのシンプルな木棺より高額になる傾向があります。 セット料金に含まれているケースもあるので注意 葬儀プランに棺の費用が含まれている場合があります。葬儀会社によっては、「基本プランに標準棺が含まれ、オプションで変更可能」という形式を取っていることがあるため、セット内の棺の種類と価格帯を確認しておくことが大切です。また、「セット内の棺は選べるのか」「差額がどれだけかかるのか」といった点も事前に把握しておきましょう。

こんな人にはこんな棺がおすすめ

棺の選択には、価格や素材だけでなく、故人の生前の人柄や価値観、葬儀全体の雰囲気も大きく影響します。ここでは、目的や性格、葬儀スタイル別におすすめの棺を紹介します。どのような選択が適しているのかを考えるヒントにしてみてください。

質素な葬儀を希望する方:エコ棺やシンプルな木棺

「できるだけ費用を抑えたい」「身内だけで静かに送りたい」という希望を持つ方には、段ボール製のエコ棺や、装飾を抑えたシンプルな木棺が向いています。見た目は質素でも、清潔感や自然さを大切にしたい方におすすめです。特に、自然に還ることを重視する人にはぴったりです。

見送りに華やかさを求める方:布張棺、山型棺など装飾性が高いもの

故人を華やかに、優雅に送りたいというご遺族には、外装が美しい布張棺や、蓋に立体感のある山型棺がよく選ばれます。ピンクや紫などの柔らかい色合いや花柄模様をあしらった布張棺は、特に女性に好まれる傾向があります。式場での見栄えを重視する場合にも適した選択肢です。

自然葬やエコ志向の方:再生素材を使ったエコ棺

環境問題に意識が高い方や、自然葬を希望している方には、再生紙や段ボールで作られたエコ棺が最適です。見た目も現代的なデザインのものが増えており、軽量で扱いやすく、火葬にも対応しています。自然との共生を意識した最後のメッセージを込めたい方にぴったりです。

宗教的・文化的なこだわりがある方:寺院や宗派に相談を

宗教や宗派によっては、使用できる棺に制限がある場合があります。たとえば、一部の仏教宗派では装飾が少ないシンプルな木棺を勧めることがありますし、キリスト教式ではコフィン型の棺が好まれることもあります。このような場合には、葬儀を行う寺院や教会にあらかじめ相談し、伝統や戒律に従った棺を選ぶことが必要です。

個性を大切にしたい方:デザイン棺・コフィン型など独自性のある選択を

「自分らしく旅立ちたい」「他の人とは違う棺を選びたい」という方には、色付きの棺やイラストが施されたデザイン棺、洋風で特徴的なコフィン型の棺が向いています。特注品を作成することも可能で、生前に好きだった花や風景、趣味にちなんだ意匠を取り入れることもできます。こうした棺は、個性を尊重した最後のメッセージとして、ご家族や参列者の印象にも深く残ることでしょう。

棺を選ぶ際の流れと注意点

棺の選択は、単に「価格」や「見た目」で決めるものではありません。葬儀全体の流れの中でどのように選び、どんな点に注意すべきかを理解しておくことが大切です。

葬儀会社に依頼する際の確認事項

棺は通常、葬儀社が用意してくれるセットプランの中に含まれていることが多く、葬儀プランのグレードに応じて自動的に棺の種類が決まってしまうこともあります。そのため、葬儀社と打ち合わせを行う際には、以下のような点を必ず確認しておきましょう。 ・棺の種類は選べるか ・追加費用が発生するか ・サイズのバリエーションはあるか ・納期や在庫状況はどうか 事前に準備しておくと安心な情報(故人の身長、希望の形式など) 棺を選ぶうえで、故人の身長・体格・宗教観・希望する葬儀スタイルなどは、重要な情報です。これらを事前に把握しておくことで、葬儀社とのやりとりがスムーズになり、納得感のある選択が可能になります。また、エンバーミング(遺体の防腐処理)を行う場合などは、棺内の気密性も考慮する必要があります。 インターネットやカタログでの購入は注意点も多い 最近では、インターネットで棺を購入する人も増えています。価格が比較的安価で種類も豊富というメリットはありますが、搬送方法や納期、サイズの適合、火葬場での使用可否などに注意が必要です。また、事前に実物を見ることができないため、写真と実物の印象が異なるというリスクもあります。利用を検討する際は、信頼できる業者かどうかをしっかり確認しましょう。 副葬品を入れる予定がある場合は、サイズにゆとりを持つこと 棺の中に副葬品(故人が生前愛用していた品物や手紙など)を入れたい場合は、棺内に十分なスペースがあるかを確認しましょう。特に、布団を厚く敷いたり、多数の品物を入れると、棺の内寸を圧迫することがあります。副葬品の素材や数にも注意を払い、事前に家族で共有しておくことが望まれます。 棺に入れてはいけないもの(ビニール製品・金属・スプレー缶など) 火葬時の安全性を確保するため、棺の中に入れてはいけないものがあります。代表的な禁止物は以下の通りです。 ビニール・プラスチック類 金属製のもの(時計・メガネ・アクセサリーなど) スプレー缶・電池・ライターなどの爆発の恐れがあるもの これらは火葬炉を破損する恐れがあるだけでなく、有害なガスを発生させることもあるため、必ず葬儀社の指示に従いましょう。

棺選びで後悔しないために

棺の選定は、故人の最後の旅をどのように演出するかという大切な決断です。選ぶ基準は人それぞれですが、「どの棺が最も良いか」という絶対的な答えはありません。大切なのは、自分たちの想いや故人の価値観と、実際の選択がどれだけ合致しているかです。ここでは、後悔しない棺選びのためのポイントをまとめます。 「見た目」「費用」「納得感」のバランスをどうとるか 棺を選ぶとき、多くの方が「見た目」と「費用」のどちらを重視すべきか迷います。見た目にこだわれば費用が上がり、費用を抑えれば質素になりすぎる。このジレンマは非常に一般的です。 しかし、最も大切なのは「納得感」です。たとえシンプルな棺でも、「これが故人にふさわしい」と思えるなら、それが最良の選択です。反対に、高価な棺であっても「なんとなく選んだ」「業者の勧められるままに決めた」という場合、後悔が残ることもあります。見た目、費用、納得感――この3つの要素を天秤にかけて、何に最も価値を置くかを家族で話し合うことが、後悔を防ぐ最大の鍵になります。 葬儀全体の流れや価値観に合わせた選択を 棺は、葬儀全体の中の一部です。どんな規模の葬儀を行うのか、どのような宗教・儀式に基づくのか、家族葬なのか一般葬なのかといった全体像に合わせて棺を選ぶことが重要です。 たとえば、家族だけの静かな式であれば、シンプルで落ち着いた木棺が適しているかもしれません。反対に、多くの参列者を招いて故人を華やかに送りたい場合は、装飾のある布張棺や山型棺がふさわしいでしょう。 業者任せにせず、家族でよく話し合うことが大切 棺選びを含む葬儀の準備は、時間に追われる中で進められることが多く、つい「葬儀社に任せてしまえば安心」と思いがちです。確かに、プロの知識と経験に頼ることは有効ですが、最終的な決定は遺族が行うべきものです。 故人の意思や家族の思いをしっかり反映させるためには、「どういう形で送りたいか」を家族全員で話し合うことが必要です。生前に本人と話す機会があればベストですが、難しい場合でも、家族の誰かが中心になって話を進めるだけで、納得度は大きく違ってきます。

まとめ

棺選びは、単なる形式的な選択ではなく、故人の人生と向き合う大切なプロセスです。どの棺が正解というものはなく、大切なのは「どんな想いで選ぶか」です。 棺の種類には、素材や形状によってさまざまな特徴があり、それぞれに価格や意味合いが異なります。また、サイズの適合や副葬品の有無、宗教・文化的な配慮など、確認すべきポイントは多岐にわたります。 予算の範囲内であっても、「自分たちにとってしっくりくるかどうか」「故人らしさを表現できるかどうか」という視点を大切にしましょう。そのためには、葬儀社の説明を鵜呑みにするのではなく、基本的な知識を持ち、家族でしっかりと話し合うことが不可欠です。 事前に準備しておくことで、葬儀の当日に慌てることなく、落ち着いて判断することができます。棺は、故人との最期の時間を彩る大切な要素です。分からないことや迷うことがあれば、遠慮せずに葬儀社に相談することで、納得のいく選択ができるでしょう。自分らしい終活、そして大切な人への思いやりのある送り方を実現するために、棺選びについてじっくりと考える時間を持つことをおすすめします。

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