
合祀墓とは?費用・メリット・デメリットや永代供養との違いまでやさしく解説
公開日: 2024.8.13 更新日: 2025.7.16
目次
はじめに:「お墓は必要?」という悩みに応える“合祀墓”という選択肢
「お墓を継ぐ人がいない」「子どもに負担をかけたくない」という悩みは、近年特にシニア世代の方々にとって大きなテーマです。日本では少子化が進み、核家族化も進行しているため、従来の「家単位のお墓」の継承が難しくなっています。また、自分が亡くなった後に子どもや孫に“墓守り”という負担を残すことにためらいを感じる方も増えています。
こうした背景から、合祀墓という新たな供養のかたちが注目を集めています。合祀墓は費用が抑えられ、管理の手間もかからず、無縁仏になるリスクを回避できるため、「必要最低限で大切な人を供養したい」「家族に負担をかけたくない」という思いに応える選択肢です。
この記事では、合祀墓とは何か、仕組みや費用、ほかの供養方法との違い、メリット・デメリット、決断前に確認すべきポイントなどを丁寧に深掘りします。専門用語はわかりやすく説明し、読み進めやすい構成でお届けしますので、供養方法の判断材料としてお役立てください。
合祀墓とは?仕組みと読み方を解説
合祀墓(ごうしぼ/ごうし)とは、複数の方の遺骨をひとつの場所にまとめて納骨し、合同で供養する方式です。一人ひとり個別に骨壺で管理するのではなく、遺骨を骨壺から取り出して合葬し、一つの納骨スペースで長期間供養します。
この方式では、個別の墓標や区画がなく、遺骨を取り出すことは原則できません。その代わり、寺院や霊園が永代供養を約束することで、将来的にも供養を続けてもらえるという特徴があります。
言葉の似たものとして「合葬墓(がっそうぼ)」という呼び方もありますが、意味合いや実際の運用に大きな違いはありません。施設によって呼び方が異なり、「合祀」や「合葬」のどちらかを使うケースがあります。
また、合祀墓は一般的に「永代供養墓」の一種と見なされます。永代供養とは、寺院や霊園が供養責任を負い、将来にわたって供養が継続される形態を指します。つまり、合祀墓は永代供養の仕組みの中で「合同での納骨・供養」を行う形式です。
合祀墓を選ぶ人が増えている理由とは
現代において合祀墓が選ばれる背景には、家族形態や価値観の変化、ライフスタイルの変容があります。
お墓の継承者がいない家庭が増え、自分たちの代で供養を終えたいという声が増えています。さらに、土地・墓石・工事費・管理費などがかかる一般墓に比べて、合祀墓は圧倒的に費用を抑えることができます。相続の煩雑さや将来的な維持負担を避けたいというニーズにも応えられます。
価値観の面でも、「家単位」から「個人単位」への変化が進んでいます。かつては代々続く家墓が当たり前でしたが、近年では「自分らしい供養」「自然に還る供養」「簡素で負担の少ない供養」を望む方が増えています。宗教や宗派に縛られずに選べる点も、合祀墓が注目される理由のひとつです。
合祀墓の主な種類と供養スタイル
合祀墓の形式にはいくつか種類があり、それぞれ供養スタイルや利用者ニーズによって異なります。代表的なものを以下に整理します。
納骨堂型
主に屋内施設に設けられるケースが多く、悪天候でもお参りしやすいのが特徴です。アクセスが良い都市部の霊園や寺院で採用されることが多く、自動搬送式のタイプではプレート形式の納骨区画に続き、最終的に合祀される方式もあります。
樹木葬型
墓石を使わず、樹木や花に囲まれた自然環境に遺骨を埋葬して供養します。自然志向の方や環境回帰を重視する方に適しています。合祀型の樹木葬では、一定期間個別スペースで供養したあとに合同埋葬されるケースもあります。
慰霊碑型
モニュメントや慰霊碑の下に複数の遺骨を納めて供養する形式です。寺院の境内や霊園の敷地内にあることが多く、「大きな石碑のそばに名前が記される」「合同慰霊式典が行われる」といった特徴があります。
それぞれの形式には以下のような違いがあります:
種類 | 特徴 | 利用者の傾向 |
納骨堂型 | 屋内で安心・アクセス良好 | 都市部在住/天候を避けたい方 |
樹木葬型 | 自然環境で静かに供養 | 自然志向/シンプル志向の方 |
慰霊碑型 | 記名や合同式典が可能 | 形式や儀式を重視する方 |
合祀墓の費用相場とその内訳
合祀墓にかかる費用は、全国平均で1体あたり約3万円~10万円前後です。具体的に含まれている費用項目は以下の通りです。
- 納骨手数料(遺骨の受入れ・埋葬手続き)
- 永代供養料(供養の継続費用)
- 銘板や名札の掲示費(施設によって異なる)
- 管理費用(清掃や合同供養に係る運営費含む場合あり)
一般墓と比較すると、墓地の購入(数十~数百万円)、墓石代(建墓価格)、年間管理費(数万円)などがかからないため、数十万円から数百万円の差が生じることも珍しくありません。
費用の差を生む主な要因は次の通りです:
- 立地:都市近郊やアクセスの良い場所は高額になりがち
- 施設の形態:納骨堂や樹木葬、慰霊碑などによって価格帯が異なる
- 運営主体:宗教法人や民間霊園で料金体系やサービス水準が異なる
- 含まれるサービス範囲:供養式典の頻度、銘板掲示の有無、管理期間など
例えば、地方の寺院にある合祀墓では1体3万円程度で済むことがありますが、都心部では10万円以上になる場合もあります。契約前には費用内訳や追加料金の有無をしっかり確認することが大切です。
合祀墓のメリットとは?家族と自分を安心させる理由
合祀墓には、従来の個別墓や永代供養墓にはない特有のメリットがあります。とくに重要なのが、「経済的負担の軽減」と「供養の安心感」の両立です。
費用が安い
合祀墓の大きな魅力は、圧倒的な費用の安さです。個別の墓地を購入する場合、墓石や永代使用料だけで数十万円~数百万円かかりますが、合祀墓なら数万円で永代にわたる供養が可能です。これにより、「供養はしたいが金銭的な負担を減らしたい」という人の希望に応えます。
管理が不要で後の負担が少ない
合祀墓では、霊園や寺院がすべての管理・供養を代行します。墓地の掃除や草むしり、年回忌の準備などをする必要がないため、子や孫への負担を大幅に軽減できます。「将来、誰かに墓守りをしてもらう必要がない」ことは、多くのシニア世代にとって大きな安心材料となります。
無縁仏になる心配がなく、永代にわたり供養される安心感
合祀墓は永代供養が前提のため、たとえ家族や親族が亡くなっても、霊園・寺院側が責任を持って供養を続けます。これにより、無縁仏として放置されることがなく、自分の死後も尊厳ある供養が続くことが保証されます。
宗教不問で利用できる場所が多い
従来のお墓は宗派や宗教による制限がある場合もありますが、合祀墓の多くは宗教不問で受け入れられています。これにより、特定の宗教に属していない方でも利用しやすくなっており、信仰の有無にかかわらず幅広い選択肢として検討できます。
お墓の承継者がいなくても供養が続く
承継者がいない場合、従来の墓は「無縁墓」となって撤去されるリスクがあります。合祀墓では契約時に永代供養を含むため、将来的にお墓の行き場を心配する必要がなく、「自分の代で完結する」供養として選ばれています。
自然回帰の選択肢も可能
特に樹木葬型の合祀墓では、墓石を建てずに自然の中で埋葬されるため、「自然に還る」という思想を持つ方には最適です。生前の「自然と一体になりたい」「環境に配慮した形で供養されたい」といった想いに応えられる点も、現代的なニーズと言えるでしょう。
合祀墓のデメリットと注意点
合祀墓には多くの利点がある一方で、決して万能ではなく、いくつかの注意点があります。供養方法としての性質上、個別墓と比べて不自由さや心の抵抗を感じる方もいます。以下に代表的なデメリットをまとめます。
合祀後は遺骨を取り出すことができない
合祀墓では、納骨後に遺骨を個別に取り出すことは原則としてできません。一度合同で埋葬されると、物理的・運用上の理由から再分離が不可能です。そのため、「あとから遺骨を他の場所に移すかもしれない」「将来、家族が改葬を望む可能性がある」という場合には、慎重に検討すべきです。
個別の墓標がない/他人と一緒に眠ることへの心理的抵抗
合祀墓では、遺骨は一括して埋葬され、個別の墓石やプレートが設けられないことが一般的です。場合によっては名前も掲示されないため、手を合わせる場所が明確でないことに不安を覚える方もいます。また、他人と一緒に眠ることに対して心理的な違和感を持つ方も少なくありません。
親族間での意見の相違(「家のお墓がなくなること」への反発)
家族や親戚の間で、「代々のお墓を守るべき」と考える人がいる場合、合祀墓の選択が対立の火種になることもあります。とくに田舎の実家で伝統的な供養を重んじている親族がいる場合、「家の墓をやめること」への反発が予想されます。
故人の意向とズレてしまうケースも
生前に故人が明確に供養の形式を指定していた場合、家族がその希望を無視して合祀墓を選ぶと、あとから後悔が残る可能性があります。合祀墓を選ぶ前には、生前の意思確認やエンディングノートの共有が非常に重要です。
合祀墓の決断前に確認しておきたい3つのポイント
合祀墓の申し込みや契約を決める前に、必ず確認すべきポイントが3つあります。後悔しない選択をするためにも、これらを事前に明確にしておくことが大切です。
合祀後の供養方法と場所(定期的に供養が行われるか)
合祀墓といっても、その供養の内容は施設ごとに異なります。年1回の合同供養法要がある場合もあれば、毎日読経されるところもあります。また、施設の管理状態や、供養の雰囲気、見学のしやすさなども重要です。契約前に施設見学を行い、供養の頻度・内容・場所の雰囲気を確認しましょう。
家族や親族の理解は得られているか
家族や親族が合祀墓という形式をどう受け止めているかを確認しましょう。特に、親やきょうだい、子どもなど近しい人たちが「もっと伝統的な供養を望んでいた」と思っている場合、トラブルにつながることもあります。家族会議を開き、しっかりと説明して納得を得ることが大切です。
将来的に継承者が出る可能性は本当にないか(今後のお墓ニーズの見直し)
「今は継承者がいない」と考えていても、将来的に状況が変わることがあります。結婚や転居、家族関係の変化により、「墓守りを引き受けてもいい」と言ってくれる人が現れる可能性もゼロではありません。数年単位で将来を見越し、本当に“墓じまい”の最終判断なのかを再確認しましょう。

永代供養・納骨堂との違いを理解しておこう
合祀墓を検討する上で、多くの方が混同しがちなのが「永代供養墓」や「納骨堂」との違いです。これらはすべて「お墓の維持管理を本人や家族が行わなくてもよい」点で共通していますが、遺骨の扱いや費用、供養スタイルには大きな違いがあります。
以下の表に、それぞれの違いを整理してみましょう。
供養形式 | 遺骨の扱い | 墓標の有無 | 費用の目安 | 管理負担 | 特徴 |
合祀墓 | 他人と一緒に納骨、取り出し不可 | なし(名前掲示は施設により異なる) | 約3〜10万円 | なし | 永代供養前提。管理不要。費用最安。 |
納骨堂 | 個別のスペースに納骨、期限後に合祀される場合あり | あり(個別の区画がある) | 約20〜50万円(期限付き) | 少ない | 屋内型。天候に左右されずお参り可能。 |
永代供養墓(個別型) | 一定期間個別で供養、その後合祀される | あり(一定期間) | 約30〜100万円以上 | 少ない | 一時的に個別供養可能。合祀まで猶予あり。 |
このように、合祀墓は他と比べても最も費用が抑えられ、なおかつ完全に管理不要な点が大きな特徴です。一方で、納骨堂や個別型永代供養墓は、個別の空間を持ちたい方や一定期間は個人の墓所を保ちたい方に向いています。
選ぶポイントは「費用」「管理の負担」「遺骨の取り扱い(取り出し可否)」「供養のスタイル(個別か合同か)」です。合祀墓はすべて合同であるため、遺骨の所在や他者との共有に抵抗がある方には向かないかもしれません。一方で、「跡継ぎがいない」「自分の代で供養を終えたい」と考える方にとっては、合理的かつ安心できる選択肢です。
合祀墓を選ぶと、家族のこんな不安も軽くなる
合祀墓を選ぶことで得られるメリットは、本人だけでなく家族にも大きな安心感をもたらします。ここでは、家族にとっての心理的な負担軽減のポイントを紹介します。
子や孫への「墓守り」の負担がなくなる
これまでの供養スタイルでは、代々墓を受け継ぐのが前提でした。しかし、現代では子ども世代が遠方に住んでいたり、そもそもお墓に対して関心が薄かったりするケースも多く見られます。合祀墓であれば、将来にわたってお墓の掃除や供養の準備を頼む必要がなく、子ども世代にとって大きな負担軽減となります。
遺骨の行き先が明確になることで、自分の死後にも安心感
「自分が死んだ後、どこに納骨されるのか分からない」という不安を持つ人は少なくありません。合祀墓を事前に選んでおくことで、自分の遺骨がきちんと供養される場所と仕組みが確定し、生前にその安心感を得ることができます。
“自分の代で終わらせる”という判断の納得感
代々の墓があっても、後を継ぐ人がいないという家庭は少なくありません。そこで、合祀墓という形で供養を完了させることは、「自分の代で終わらせる」という現実的な選択になります。これは、子どもや親族に気兼ねなく生き、そして逝くための大きな納得感につながります。
「亡くなった後も迷惑をかけない」という思いに応える選択肢
多くの方が、死後のことを考える中で「できるだけ人に迷惑をかけたくない」と考えています。合祀墓は、その思いに対して明確な解決策を提示してくれます。事前に契約しておけば、子どもや家族が手続きをする必要も最小限で済みますし、供養も自動的に行われます。このような安心感が、合祀墓を選ぶ大きな動機となるのです。
まとめ:合祀墓は、費用も安心感も両立できる現代の供養のかたち
合祀墓は、今の日本社会における家族構成や価値観の変化に適した供養の方法です。
- 費用が安く、経済的に安心できる
- お墓の管理が不要で、家族の負担を減らせる
- 無縁仏にならず、永代にわたって供養が続く
- 宗教にとらわれず、自分らしい供養が選べる
一方で、「遺骨が取り出せない」「個別の墓標がない」といった点には注意が必要です。自分や家族の希望と照らし合わせながら、納得のいく選択をすることが重要です。
まずは情報収集から始めましょう。合祀墓を扱う霊園や寺院の資料を取り寄せたり、現地見学を通じて雰囲気を体感したりすることが、最良の決断への第一歩となります。将来を見据えた供養の形を、自分の言葉と意思で選ぶ──それが、合祀墓を選ぶという現代的な選択肢の本質です。
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