退職金が振り込まれたら最初にやるべきこと|損しないための使い方と注意点を徹底解説

退職金が振り込まれたら最初にやるべきこと|損しないための使い方と注意点を徹底解説

公開日: 2025.7.3     更新日: 2025.7.16

目次

はじめに:退職金が振り込まれた今、不安なのは当然です

「嬉しいけど怖い」──そんな気持ちに寄り添うために

長年働いてきたご褒美ともいえる退職金。振り込まれた瞬間、「ついに自分の手元にまとまったお金が届いた」と嬉しくなる一方で、「このお金、どう使えばいいのだろう?」「失敗してなくなったらどうしよう…」という不安に駆られる人も少なくありません。

特に、これまで毎月決まった収入があった生活から一転、年金や貯蓄でのやりくりにシフトするタイミングは、人生の大きな分岐点です。退職金はその後の生活を大きく左右する存在。焦って使い方を決めることは、将来の安心を損なうリスクになりかねません。

退職金は第二の人生を支える大切な資金

退職金は「老後資金の一部」であり、「一時的な収入」ではありません。長いリタイア生活を支える貴重な資金源です。だからこそ、一時の感情や勢いで使ってしまうのではなく、全体像を見渡しながら冷静に計画を立てることが重要です。

また、退職金は税金や制度の違いによって、実際に使える金額が変わる場合もあるため、まずは「今手にしたお金の中身」を正しく理解することがスタートラインになります。

本記事でわかること(使い道、税金、避けたい失敗例など)

本記事では、退職金が振り込まれた直後に確認すべき基本情報から、損をしない使い方、避けるべき失敗例、そして将来設計のヒントまでを網羅的に解説します。単にお金を「使う」視点だけでなく、「守る」「育てる」視点も含め、今後の人生を支える上で本当に役立つ情報をお届けします。

退職金が振り込まれた直後に確認すべき4つのポイント

金額や振込名義の確認

まず最初にやるべきは、実際に振り込まれた金額と名義の確認です。退職金は通常、給与とは別の項目で振り込まれることが多く、「退職一時金」「功労金」「退職手当」などの名目が振込人名に記載されています。

稀に手当や給与と混在していたり、手違いで間違った口座に入金されるケースもあるため、金額が正しいか、明細と照らし合わせて確認することが重要です。

また、振込名義や金額が正しくても、通帳に「入金日」や「支給日」が記録として残るため、将来の税務処理や相談時の資料としても記録は必ず保存しましょう。

明細と税金の記載内容をチェック

退職金の明細には、支給額、退職所得控除、源泉徴収税額などの詳細が記載されています。これらは単なる「数字の羅列」ではなく、今後の税務申告や資産運用を考えるうえで非常に重要なデータです。

特に注目すべきは、「退職所得控除」が適用されているか、「退職所得の受給に関する申告書」を事前に提出していたかどうかです。これによって源泉徴収額が大きく異なる場合があります。

退職金は通常の所得とは異なり、一定の控除が設けられ、税制上有利な仕組みになっています。ただし、申告書を出していない場合には、通常の所得と同様に課税され、結果的に大きな税額を引かれる可能性があるため注意が必要です。

退職金の制度(退職一時金/DB/DC/中退共)を把握

自分の退職金がどの制度に基づいて支払われているかを理解することも大切です。主な制度としては以下の4つがあります。

制度名

特徴

退職一時金

会社から一括で支給される退職金。税制優遇あり。

DB(確定給付企業年金)

企業が年金額を保証する。将来の年金受け取り型。

DC(確定拠出年金)

運用次第で受取額が変わる。自分で資産管理する。

中退共(中小企業退職金共済制度)

中小企業が利用。共済機構が運営・支給。

自分が受け取った退職金がどの制度に該当するかを知ることで、受け取り方法や今後の管理方針が変わってきます。特にDCの場合、運用に関する判断が求められるため、放置せず対応を検討することが必要です。

源泉徴収の有無と、確定申告の必要性をざっくり知る

退職金にかかる税金は、給与所得とは異なる「退職所得」として扱われるため、退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、原則として源泉徴収のみで課税が完了します。その場合、確定申告は不要となるのが一般的です。

しかし、以下のようなケースでは確定申告が必要になる可能性があります。

  • 申告書を提出していなかった
  • 他の退職金と合算される場合(転職を繰り返したなど)
  • 医療費控除や寄付金控除などで還付申告を行いたい場合

税務署や税理士への確認、またはFPとの相談を通じて、自身の状況を正確に把握することが大切です。税金を正しく処理することが、後々の資金管理の基盤となります。

退職金の振込タイミングと「振り込まれない時」の対処法

一般的な支給時期(退職後1〜2ヶ月)

退職金が実際に振り込まれるまでの期間は、勤務先の規模や制度によって異なりますが、多くの場合は退職後1〜2ヶ月以内が一般的です。企業によっては、退職月の翌月末や翌々月の給与支給日と同じタイミングで一括支給されることもあります。

また、公務員や大企業では「退職金支給規程」に基づき、申請や社内手続きを経て支給されるため、思っているよりも時間がかかるケースがあります。

このように「振り込まれるタイミング」に幅があるため、退職前に「いつ」「どの口座に」「いくら」が振り込まれるのかを確認しておくと、精神的な安心につながります。

遅れている場合の問い合わせ先と注意点

もし退職から2ヶ月以上経っても入金が確認できない場合は、早めに勤務先の人事部や総務部へ問い合わせましょう。単なる事務処理の遅れや申請漏れであることも多いため、まずは事実確認が重要です。

問い合わせ時には以下のポイントを押さえるとスムーズです。

  • 退職金の支給予定日と支給方法(振込 or 書面通知)
  • 必要書類の提出状況(退職所得申告書など)
  • 支給に関する社内規定や手続きの進捗

一方で、退職時のトラブル(会社都合退職、懲戒解雇など)があった場合には、支給条件の確認も必要です。就業規則や退職金規程により、減額・不支給になる可能性があるため、書類やメールでのやりとりは保存しておきましょう。

退職金の請求は5年以内に忘れずに

退職金の請求権には「消滅時効」が存在します。多くの企業では、支給日から5年以内に請求しなければ権利が消失する可能性があります。たとえば、「会社から通知が来るのを待っていたら何年も過ぎていた」というケースでは、原則として請求できなくなるリスクがあります。

退職後に転居して会社からの連絡を受け取れなかった、あるいは支給制度の存在自体を知らなかった場合でも、「自分で気づく責任」が問われることになります。特に中小企業や非正規雇用者の場合は、退職金制度自体が任意であることもあり、制度の有無や加入状況を退職前に確認することが極めて重要です。

そのため、退職後も5年の間は明細や退職金に関する書類を保管し、入金が確認できない場合には早めのアクションが必要です。

絶対に避けたい「退職金の3大失敗」

全額をローン返済にあててしまった

退職金を受け取った瞬間、最初に思いつく使い道の一つが「住宅ローンの完済」です。たしかに、ローンを完済すれば月々の支払い負担が減り、精神的にも楽になると感じるでしょう。しかし、すべての退職金をローン返済に回してしまうと、手元に現金が残らず、急な医療費や生活費の不足に対応できなくなるリスクがあります。

特に老後は、予測不能な支出が発生しやすい時期です。たとえば、高額な入院費や介護サービス、子どもの支援など、ある程度の「流動性のある資産」が必要となります。現金で持っておくお金と、返済に充てるお金のバランスを考えることが重要です。

仮に住宅ローンを完済するにしても、「金利が高い」「残りの期間が短い」など、経済的合理性を分析した上で判断すべきです。一時の安心感に惑わされず、将来を見据えた資金設計が求められます。

勧誘されるままに運用商品を契約してしまった

退職金の入金後、多くの人が遭遇するのが、銀行や証券会社、保険会社からの「退職金特別プラン」の提案です。高利回りや「元本保証」などの甘い言葉に惹かれて契約してしまうケースがありますが、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

よくある例が、外貨建て保険や仕組債といった複雑な金融商品です。これらは一見魅力的に見えても、為替リスクや途中解約時の元本割れなど、想定外の損失を被る可能性が高い商品です。特に「長期契約かつ解約しにくい商品」は、高齢者にとって柔軟性がないという点で非常にリスクが高い選択になります。

退職金は大きな金額であるがゆえに、営業担当者にとっては非常に魅力的なターゲットになります。商品の説明が専門的で理解できない場合は、「一旦持ち帰る」「第三者に相談する」ことを徹底しましょう。

誰に相談すべきか見極めず相談してしまった

退職後、「お金の相談はプロに任せよう」と考えるのは自然な流れです。しかし、「誰に相談するか」の選定を誤ると、取り返しのつかない損失を被ることになりかねません。

例えば、銀行の窓口担当者や保険の営業職員は「自社の商品を販売すること」が業務です。つまり、相談を通じて中立的なアドバイスをもらえるとは限らず、あくまで販売目的が背景にあることを理解しておく必要があります。

一方、独立系ファイナンシャルプランナー(IFA)や、税理士・信頼できる社労士などの「中立な立場」の専門家は、商品販売に直接関与せず、顧客の利益を最優先にした助言をしてくれる可能性が高いです。

「この人は何を目的に助言しているのか?」という視点で相談相手を選ぶことが、退職金を守るうえでの重要なポイントです。焦って誰かに頼る前に、信頼できる助言者をじっくり見極めましょう。

退職金の失敗を避けるために

退職金の正しい使い方|5つのステップで安心設計

今後の収支と生活費を「見える化」

退職金の有効な使い道を考えるためには、まず今後の「収入と支出のバランス」を把握することが不可欠です。収入としては、年金(厚生年金・国民年金・企業年金など)や不動産収入、投資収益が挙げられます。一方、支出には日々の生活費、住宅維持費、医療・介護費、レジャーや旅行費用、交際費などが含まれます。

これらをリスト化して、「月々いくら足りるのか」「何年分の生活費をカバーできるか」を数字で可視化することで、退職金の使い道に明確な基準ができます。また、将来のインフレや金利変動にも備えるため、シナリオごとの資金計画を立てるのが理想的です。

エクセルや家計簿アプリを活用し、支出の固定費と変動費を分類したうえで、最低限必要な生活費と余裕資金を区別することで、冷静な判断ができるようになります。

住宅ローン・医療・介護・子ども支援の優先度整理

退職金で一度に解決したくなる項目としてよく挙がるのが、住宅ローンの残債や医療・介護費用、子どもへの支援などです。これらはすべて重要ですが、すべてを同時に満たすのは現実的ではない場合もあります。だからこそ、「どれを優先すべきか」を考える必要があります。

たとえば、住宅ローンの金利が低く、支払い負担がさほど大きくないのであれば、無理に完済する必要はないかもしれません。それよりも、将来の医療・介護に備えた資金を確保しておく方が安心です。

また、子どもへの援助についても、親の老後資金を圧迫してまで支援することは、かえって将来の負担(介護・金銭援助)を子どもに残すことになりかねません。お金の配分は「今ではなく、将来を見据えて」「感情ではなく、優先度で」決めるのがポイントです。

短期用・中期用・長期用にお金を分ける

退職金を一つの口座にまとめたままにしておくと、「まとまったお金があるから大丈夫」と錯覚しやすく、無計画な支出につながる危険性があります。そこで有効なのが、「使う時期」に応じた資金の仕分けです。

  • 短期用:1年以内に使う予定のある資金(生活費、税金、車の買い替えなど)
  • 中期用:3〜5年以内に使う予定の資金(住宅修繕、介護準備など)
  • 長期用:老後の備え、運用に回す資金

このように時期ごとに分けて考えることで、生活資金と運用資金を混同することなく、安全かつ効率的な資金管理ができます。特に長期用の資金は、必要時期まで使う予定がなければ、資産運用やインフレ対策の対象とすることも検討できます。

銀行・証券・保険からの提案はすぐ決めない

退職金が振り込まれると、銀行や証券会社、保険会社から「退職金運用セミナー」「特別金利キャンペーン」などの提案が増加します。これらは一見魅力的に見えますが、商品ごとにリスク・手数料・拘束期間が異なるため、十分な理解と比較が欠かせません。

特に注意すべきは、営業担当者の「一括運用」「長期商品推し」の姿勢です。多くの場合、営業側の販売ノルマが背景にあり、必ずしも顧客にとって最適な商品とは限りません。

どんな提案を受けた場合でも、その場で即決するのではなく、「家族に相談する」「別の専門家にも意見を求める」など、一呼吸置いた対応がトラブルを防ぐ鍵です。

必要に応じて、家族と専門家(FP・税理士)と話す

退職金の使い道は、自分一人で抱え込むよりも、信頼できる家族や専門家と一緒に考える方が、より客観的かつ実践的な判断ができます。たとえば、配偶者や子どもに将来の介護や相続をお願いする場合には、あらかじめ資金計画を共有しておくことが大切です。

また、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)や税理士に相談すれば、税金面や資産運用のリスクを具体的に確認することができ、合理的な選択肢を見つけやすくなります。

相談相手を選ぶ際には、「特定の商品を売らない中立的な立場」であるかを見極めることが肝要です。大切な退職金を守るには、信頼できる第三者の目が必要です。

老後の安心のために:退職金を「守る」「増やす」考え方

元本保証型商品の活用(定期預金・国債など)

退職金の管理において、まず意識すべきは「減らさない」ことです。老後は収入源が限られるため、損失を出すと生活の根幹が揺らぎます。そこで、元本保証型の商品をベースに資金を配置する戦略が有効です。

たとえば、定期預金は利率こそ低いものの、元本が保証されており、流動性も比較的高いため「短期・中期資金」の置き場として適しています。また、個人向け国債(変動10年など)はインフレ対応の金利設計がされており、リスクが非常に低く、退職金の保全に適した選択肢です。

安全性を第一に考える場合は、預金保険制度(元本1,000万円とその利息まで保護)にも注意を払い、複数の金融機関に分散することも検討しましょう。

少額から始める投資信託・分散投資の基本

退職金をすべて現金で持っていると、インフレによって実質的な購買力が目減りしていくリスクがあります。そこで、長期的な資産保全を考えるうえで、「一部を運用する」ことも重要です。

特に少額からスタートできる投資信託は、初心者でも分散投資ができるため、リスクを抑えながら資産の成長を目指すことが可能です。以下のような構成が基本となります。

  • 国内債券型:安定性重視
  • 国内株式型・海外株式型:成長性を期待
  • バランス型:複数資産への自動分散

重要なのは、一度に多額を投入せず、必要な生活資金を除いた「長期保有可能な余裕資金」で少しずつ運用を始めることです。また、NISA(少額投資非課税制度)を活用することで、運用益を非課税にでき、効率的に資産形成を進めることができます。

詐欺や不正商品に引っかからないための心構え

退職金を受け取ったばかりの人は、資産を狙う詐欺や悪質な販売のターゲットになりやすい傾向があります。特に「絶対に儲かる」「限定商品」「早い者勝ち」といった言葉には注意が必要です。

代表的な詐欺の手口には以下があります。

  • 高齢者向けに送られるDMでの投資勧誘
  • 金融機関を装った電話やメール
  • 架空の不動産投資や未公開株の案内

詐欺師は「公的機関を装う」「専門的な用語で信用させる」「家族に内緒でと言う」など、心理的に不安を煽る手口を使ってきます。少しでも怪しいと感じたら、即決せずに誰かに相談する、情報をネットで検索してみる、消費者センターに連絡するなどの行動が必要です。

保険の見直しと、新規加入の注意点

退職後は、会社の団体保険から脱退することが一般的であり、これを機に「保険の見直し」が必要になります。新たな医療保険や介護保険の提案を受けることも多くなりますが、本当に必要な保障を見極めることが大切です。

老後において最も優先すべきは、「入院費・手術費の備え」と「介護に対する支援」です。一方で、死亡保障や貯蓄型保険は既に十分な資産がある場合、コストに見合わない可能性があります。

また、高齢になるほど新規契約は不利(保険料が高い、保障が限定される)になりがちです。新規契約をする前に、既存の保険の活用や、現金で備えるという選択肢も含めて検討しましょう。

「相談していい専門家」と「距離を置くべき相手」

退職金の運用や管理について、専門家の力を借りることは非常に有効です。しかし、誰に相談するかによって結果が大きく変わります。

信頼できる専門家の特徴には以下があります。

  • 商品を販売しない立場(独立系FP、税理士など)
  • リスクとメリットの両方を説明してくれる
  • 資産全体のバランスで助言する

一方で、避けるべき相談相手には以下のような特徴があります。

  • 特定の金融商品だけを勧める
  • 強引な契約や即決を求める
  • 「今ならお得」「絶対損しない」などの表現を使う

専門家選びは、家族や知人の紹介、相談実績の確認、初回面談での印象などを基に、慎重に進めましょう。信頼できる相談先を見つけることが、退職金を守りながら育てるための第一歩となります。

家族や将来のために:これから考えておきたいこと

家計の再設計(年金・介護・医療・住居費など)

退職後の生活は、それまでとは大きく異なる家計構造になります。毎月の安定した給与がなくなり、代わりに年金や貯蓄を中心とした資金運用が必要になります。そのため、収入の見直しと支出の精査を前提に、家計を再設計することが不可欠です。

主な固定支出項目は以下のようになります。

  • 住居費(持ち家でも固定資産税や修繕費は継続)
  • 医療費(加齢に伴い増加傾向)
  • 介護費用(将来的に在宅介護または施設利用の可能性)
  • 通信費・光熱費・食費などの日常生活費
  • 趣味や旅行などの余暇費用

これらに対して、収入として期待できるのは主に公的年金と個人年金です。毎月の収支が黒字であれば理想的ですが、赤字の場合はどの費目を抑えるか、またはどの貯蓄を切り崩すかをあらかじめ決めておくと、精神的な不安を軽減できます。

将来の医療・介護費用については、平均的な支出モデルや介護保険制度の範囲を踏まえて「備えの額」を想定しておくことが、老後資金の見える化にもつながります。

老後資金の「見える化」と「シミュレーション」

老後資金に関する最大の不安は、「いつまでに、いくら必要か」が見えにくいことです。これを克服するには、ライフプラン表やキャッシュフロー表を作成し、将来の資金繰りをシミュレーションすることが重要です。

例えば以下のような表を活用すると、視覚的に資金の過不足を把握できます。

年齢

年金収入

その他収入

生活費

医療・介護費

旅行・趣味

年間収支

貯蓄残高

65

200万円

50万円

250万円

30万円

20万円

-50万円

3,000万円

66

200万円

50万円

250万円

35万円

15万円

-50万円

2,950万円

このようにして毎年の収支を把握しておけば、「資産が減るペース」「資金が尽きる可能性のある年齢」などが明確になり、対策を立てやすくなります。

FPなどの専門家に依頼すれば、より精緻なシミュレーションを行うことも可能です。自分のライフスタイルに即した老後設計の土台として、ぜひ活用したい手法です。

家族への情報共有と万一への備え(遺言・任意後見など)

退職金や資産運用の内容、保険、遺産に関する情報は、本人しか知らない状態になっていることが多く、万一の事態が発生した際に家族が困るケースが多発しています。これを防ぐには、「情報の共有」と「法的備え」が欠かせません。

たとえば、以下のような項目をノートやエンディングノートにまとめておくと良いでしょう。

  • 銀行口座・証券口座・保険契約の一覧
  • 各種パスワード・連絡先
  • 遺言書の有無と保管場所
  • 医療や延命治療に関する希望
  • 任意後見契約や尊厳死宣言などの意向

遺言書については、自筆で作成する場合には法的形式を満たす必要があるため注意が必要です。より確実を期すなら、公正証書遺言の作成を検討すると安心です。また、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、「任意後見契約」を事前に結んでおくことで、信頼できる家族や第三者に財産管理を託すことができます。

こうした備えを怠ると、家族間のトラブルや遺産分割の混乱を招く恐れがあります。退職後の時間を活かして、「何をどう共有するか」を丁寧に整理しておくことが、家族にとっても大きな安心になります。

金融資産だけでなく、人生設計も“アップデート”する

退職金の活用を考えるとき、お金の管理に注目が集まりがちですが、本当に大切なのは「どんな人生を送りたいか」という視点です。つまり、退職金はあくまで人生設計を実現するための手段であり、目的ではありません。

たとえば、これから新たな趣味に取り組みたい、地域活動やボランティアに参加したい、セカンドキャリアを考えているという人もいるでしょう。そうした希望を明確にし、「何に時間とお金を使うか」を見直すことで、退職金の使い道にも納得感が生まれます。

人生100年時代において、退職は「終わり」ではなく「始まり」です。資産の配分と同じように、「時間の配分」や「役割の選択」にも意識を向けることで、充実した第二の人生を築くことができます。

まとめ:退職金は「焦らず・守って・育てる」

今すぐ使うより、まずは落ち着いて全体を見直す

退職金が振り込まれると、「まとまったお金が入った」という安心感と同時に、「すぐに何かしないといけないのでは」という焦りが生まれがちです。しかし、もっとも重要なのは、まず全体を俯瞰して冷静に計画を立てることです。

退職金は、人生の次のステージを支える貴重な資産です。一時的な感情や不安に流されて使ってしまうのではなく、生活費、医療・介護費、趣味、家族支援など、「何に・いつ・どれくらい」使うのかを丁寧に見直すことから始めましょう。

一歩引いた視点と冷静な判断が、安心の老後につながる

退職後は、誰もが多かれ少なかれ経済的な不安や将来への不透明感を感じます。そんな時こそ、「一歩引いた視点」で自身の状況を見つめ直し、「何が本当に必要か」「どこまでリスクを取れるか」「誰と相談すべきか」を考えることが、安心した老後の礎となります。

情報はあふれていますが、すべてを鵜呑みにするのではなく、信頼できる専門家や家族の意見を取り入れ、自分に合った判断を重ねることが大切です。

中立な第三者の意見を取り入れることで、後悔しない選択ができる

銀行や証券会社の担当者からはさまざまな提案があるかもしれません。しかし、彼らの立場は「販売する側」であり、必ずしも中立的な立場とは限りません。だからこそ、信頼できるファイナンシャルプランナー(FP)や税理士、公的機関の相談窓口など、「第三者の視点」を活用することが、失敗を防ぐ最善の手段となります。

退職金は、ただ守るだけではなく、適切に「育てる」視点を持つことも必要です。そのためには、焦らず、段階的に判断し、必要であれば専門家の知見を取り入れながら、無理のない資産設計を進めていきましょう。

退職金は、あなたの未来と家族の安心を守る大切な資産です。正しく向き合い、賢く活かして、第二の人生を豊かに、穏やかに歩んでいきましょう。

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