
年末年始の空き巣対策|長期不在でも安心して家を守るための実践ガイド
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年末年始は、帰省や旅行で家を長期間空ける機会が増えます。楽しい計画の一方で、留守中の防犯対策を忘れてはいけません。警察庁のデータからも、長期休暇中は侵入窃盗、いわゆる空き巣の被害が増加する傾向にあることがわかります。日頃から気をつけていても、年末年始特有の長期不在は防犯上の隙を生み出しやすいため、特に注意が必要です。
本記事では、なぜこの時期に空き巣が増えるのかという理由から、すぐに始められる具体的な対策、出発直前のチェックポイントまでを解説します。防犯対策は、高価なシステムに頼るだけではありません。「狙わせない環境づくり」が何よりも重要です。初めての方でも実践しやすい内容をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
年末年始に空き巣が増える理由
年末年始に空き巣被害が多発する背景には、この時期ならではの社会的な動きや環境の変化が大きく関係しています。空き巣犯は行き当たりばったりで犯行に及ぶことは少なく、犯行しやすい条件が揃った家を冷静に探しています。年末年始はその「犯行しやすい条件」が揃いやすいのです。
長期不在の家庭が増える
最大の理由は、物理的に家が無人になる時間が長くなることです。普段は誰かしらが在宅している家庭でも、帰省や旅行で家族全員が出払ってしまうケースが増加します。空き巣犯にとって、もっとも恐れるのは「住人との鉢合わせ」や「通報されること」です。そのため、不在が確実な家は侵入のリスクが極めて低く、絶好のターゲットとなります。数日間の留守は、侵入に十分な時間を確保できるため、犯行を大胆にさせる要因となります。
近隣の警戒意識が弱まりやすい
年末年始は地域全体が慌ただしくなり、普段とは異なる人の動きが発生します。親戚が集まって宴会をしていたり、旅行客が行き交ったりすることで、見知らぬ人物が歩いていても「誰かの親戚だろうか」「配達業者だろうか」と解釈されやすく、不審者として認識されにくくなります。また、近隣住民自身も帰省や旅行で不在にしていることが多く、地域ぐるみの監視の目(相互監視機能)が著しく低下します。誰にも見咎められずに犯行現場まで接近できる環境が、空き巣にとって有利に働きます。
SNSの投稿で不在がわかる
現代特有の要因として、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用が挙げられます。「今日からハワイに行きます」「実家でのんびりしています」といったリアルタイムの投稿は、空き巣犯に対して「今、この家は留守です」「あと数日は帰ってきません」と全世界に向けて宣言しているようなものです。特に、過去の投稿から住所や生活圏が特定できるような情報を発信している場合、ターゲットとしてリストアップされる危険性が高まります。
冬季の防犯弱点が露呈する
季節的な要因も見逃せません。冬は日没が早く、午後5時頃にはあたりが暗くなります。周囲から見えにくくなる時間が夏場に比べて圧倒的に長いため、犯行のチャンスが増加します。また、厚手のコートやマフラー、マスクをしていても不自然ではないため、顔を隠して移動していても怪しまれにくいという点も、空き巣にとっては好都合な条件となります。さらに、寒さゆえに窓を閉め切っている家が多く、隣家からの物音が聞こえにくいことも、ガラス破りなどの音が出る手口を助長させます。
年末年始に多い侵入手口と狙われる家の特徴
敵を知ることは対策の第一歩です。ここでは、具体的にどのような手口で侵入されるのか、そしてどのような家が狙われやすいのか、その特徴を深掘りします。
窓からの侵入(ガラス破り)
侵入窃盗の手口として圧倒的に多いのが、窓からの侵入です。全体の半数以上を占めるとも言われています。
- 掃き出し窓: 庭やベランダに面した大きな窓は、死角になりやすく狙われます。
- トイレ・浴室の窓: 「小さい窓だから人間は入れないだろう」「換気のために開けておきたい」という油断を突かれます。格子があっても、外されて侵入されるケースがあります。
- 2階の窓: 「2階なら大丈夫」という思い込みは危険です。雨どいや物置、カーポートの屋根を足場にして容易に登ってくることがあります。
無施錠の玄関・勝手口
驚くべきことに、空き巣被害の多くが「無施錠(鍵のかけ忘れ)」によるものです。「ちょっと近くのコンビニまで」「ゴミ出しの間だけ」という数分、数十分の隙を犯人は見逃しません。特に年末年始は、大掃除や買い出し、来客対応などで出入りが激しくなり、つい施錠をおろそかにしがちです。オートロック付きのマンションであっても、ゴミ出しの際などに無施錠の部屋を狙う「居空き」や「忍び込み」が発生しています。
郵便物・宅配物の放置で不在がバレる
ポストから新聞や年賀状、チラシが溢れ出ている家は、一目で「長期間留守にしている」と判断されます。新聞が数日分溜まっている様子や、不在連絡票が複数枚入っている状況は、住人が家に戻っていない確実な証拠となります。
一人暮らし・単身者の部屋
単身世帯は、家族世帯に比べて生活パターンが読みやすく、留守になる時間帯が明確です。年末年始に帰省する場合、部屋が完全に無人になることが確定的なため、狙われやすくなります。特に、女性の一人暮らしと悟られるようなカーテンの色や柄、洗濯物の干し方はリスクを高めます。オートロックマンションの高層階であっても、屋上からベランダに侵入する「下がり蜘蛛」という手口が存在するため、油断は禁物です。
留守中の対策(個人宅向け)
ここからは、具体的な対策について解説します。高額な警備システムを契約しなくても、個人の工夫と市販の防犯グッズで防御力は十分に高めることができます。
留守に見せない工夫
最も効果的な防犯は「家に誰かがいる気配」を演出することです。犯人は捕まるリスクを極端に嫌うため、在宅の可能性がある家はターゲットから外します。
- 照明の自動化: タイマー機能付きの照明器具や、スマートプラグを利用して、夕方から就寝時間帯にかけてリビングの明かりがつくように設定します。
- テレビやラジオの音: スマートスピーカーやタイマーを活用し、定期的に音を流すことも効果的です。
- カーテンの工夫: 昼間も雨戸やシャッターを閉めっぱなしにすると、かえって長期不在を強調することになります。レースのカーテンは見えにくいものを選び、遮光カーテンと組み合わせて、室内の様子(無人であること)を隠します。
- 郵便物の停止: 新聞販売店に連絡して配達を一時停止するほか、郵便局に「不在届」を提出すれば、最長30日間、郵便物を局で保管してもらえます。
SNS・ネット投稿の取り扱いに注意
情報のコントロールも重要な防犯対策です。楽しい旅行の思い出は、帰宅してから投稿するのが鉄則です。
- リアルタイム投稿を避ける: 「今、空港です」「これから◯◯へ行きます」といった投稿は控えます。
- 位置情報をオフにする: 写真に位置情報(ジオタグ)が付与されていないか確認します。
- 背景に注意する: 自宅周辺で撮影した写真に、特徴的な建物や電柱の住所表示が写り込んでいないか注意します。
- 公開範囲を限定する: 友人限定公開にするなど、不特定多数に見られない設定を活用します。
物理的な防犯対策
「侵入に5分以上かかれば約7割の泥棒が諦める」というデータがあります(警察庁「住まいる防犯110番」)。物理的な障害物を増やし、時間を稼ぐことが重要です。
- 補助錠の追加: 窓のサッシの上部または下部に補助錠を取り付けます。クレセント錠だけでは簡単に破られますが、上下に鍵があることで解錠の手間と時間を増やせます。100円ショップで手に入る簡易的なものでも、ある程度の抑止効果があります。
- 防犯フィルム: 窓ガラスに厚手の防犯フィルムを貼ることで、ガラスを割れにくくします。全面に貼るのが理想ですが、クレセント錠周辺だけでも効果があります。
- ワンドア・ツーロック: 玄関や勝手口は、主錠だけでなく補助錠を活用し、一つのドアに二つの鍵をかけます。
- センサーライト: 人の動きを感知して点灯するライトを玄関や勝手口、死角になる窓辺に設置します。光による威嚇は非常に効果的です。
- 簡易防犯カメラ: 最近では、配線不要で設置できる電池式やソーラー式の防犯カメラが安価で販売されています。「録画中」のステッカーを貼るだけでも心理的なバリアになります。
出かける前のチェックポイント
- 窓の施錠: 居室だけでなく、トイレ、浴室、小窓など、人が通れる大きさの窓はすべて施錠されていますか。
- 補助錠のセット: 設置した補助錠はすべてロック状態になっていますか。
- 足場の撤去: 庭やベランダに、脚立やゴミ箱など、2階への足場になるような物が置かれていませんか。
- 貴重品の保管: 通帳、印鑑、現金、貴金属は、仏壇の引き出しやタンスといった分かりやすい場所ではなく、金庫や分散させた隠し場所に移動させましたか。
- 合鍵の撤去: 植木鉢の下や郵便受けの中など、屋外に「置き鍵」をしていませんか。
企業・事務所向けの年末年始防犯対策
年末年始は、一般家庭だけでなく、オフィスや店舗、工場なども空き巣(事務所荒らし・出店荒らし)の標的になります。長期間無人になることが確定しており、かつ金目のものがある可能性が高いためです。
休業告知の貼り紙は避ける
店頭や入り口に「12月30日から1月4日まで年末年始休業とさせていただきます」といった貼り紙をすることは、顧客サービスとしては必要ですが、防犯上は「この期間は誰もいません」と泥棒に教えているようなものです。
- 貼り紙の内容: 期間を具体的に書く必要がある場合は、外から簡単に見えない位置に掲示するか、ウェブサイトやメールでの通知に留める工夫が必要です。
- 電話対応: 留守番電話のメッセージでも、具体的な不在期間を告げるのは避け、「本日の営業は終了しました」といった一般的な内容にするか、転送電話を活用します。
現金・貴重品の管理を見直す
「年末の集金で現金が手元にある」「新年のお年玉や経費精算用の現金を置いておく」といったケースは非常に危険です。
- 現金を置かない: 原則として、休業前にすべての現金を銀行に入金し、事務所内に現金を残さないようにします。
- 金庫の管理: 金庫がある場合でも、バールでこじ開けられたり、金庫ごと持ち去られたりする被害があります。床に固定するタイプの金庫を使用するか、あえて金庫には重要書類のみを入れ、現金は別の場所に保管するなどの対策をとります。
- パソコン・データの管理: ノートパソコンやタブレット端末は盗難されやすいため、鍵のかかるキャビネットに収納します。顧客データなどの情報漏洩リスクも考慮する必要があります。
出入りの管理
年末の大掃除や片付けで、普段とは異なる人の出入りがあるかもしれません。
- 鍵の管理: 従業員や清掃業者、アルバイトスタッフなどが持っている合鍵の所在を再確認します。退職者が鍵を持ったままになっていないかも確認が必要です。
- 最終退出者のルール: 最終日に誰が最後に退出するのかを明確にし、施錠確認とセキュリティシステムのセットを確実に行うよう徹底します。
設備点検
長期休暇前には、防犯設備の動作確認を行います。
- 防犯カメラ: 正常に録画されているか、ハードディスクの容量は十分か、レンズが汚れていないかを確認します。
- センサー類: 警備会社と契約している場合は、センサーが正常に作動するかテストを行います。
- 外回りの整理: 敷地内に燃えやすいものを放置しない(放火対策)、侵入の足場になるものを片付けるなど、外周の点検も行います。
「留守を悟られない工夫」具体例
ここでは、さらに踏み込んで、泥棒に「あれ?この家、人がいるかもしれない」と思わせるための実践的かつ具体的なテクニックを紹介します。
夜間の点灯を自動化する
単に電気をつけっぱなしにするのではなく、「生活感のある点灯」を演出します。
- ランダム点灯: 最近のシーリングライトには「留守番モード」が搭載されているものがあり、設定した時間帯の中でランダムに点灯・消灯を繰り返します。
- 複数の部屋で時間差をつける: スマートプラグなどを活用し、17時にリビングを点灯、18時にキッチンの電気を点灯、23時にすべて消灯して寝室の豆電球をつける、といったシナリオを設定できれば完璧です。
電話・インターホン対策
固定電話の呼び出し音が鳴り続けることは、不在を知らせるサインになります。
- 電話の音を消す: 呼び出し音量を最小にするか、留守番電話の呼び出し回数を短く設定します。
- インターホンの録画機能: 最新のインターホンには、押されると自動でスマホに通知が届き、外出先から音声で対応できる機種があります。これに応答できれば、在宅を装うことができます。
- 防犯ステッカー: インターホン付近に「防犯カメラ作動中」「警備システム設置」などのステッカーを目立つように貼ります。本物でなくても、泥棒に心理的なプレッシャーを与えます。
ごみ出しで不在を示さない
年末最後のゴミ収集日に出し忘れたからといって、次の収集日(年始)のためにゴミを家の外やベランダに出しておくのは危険です。
- ゴミの保管: ゴミ袋が外に積まれていると、生活反応がないことが露呈します。生ゴミなどは密閉して室内で保管し、外から見える場所には置かないようにします。
旅行・帰省前に必ず確認したい防犯チェックリスト
出発当日はバタバタしてしまうものです。以下のリストを活用して、漏れのないように対策を行ってください。
カテゴリ | チェック項目 | 確認 |
戸締まり | 全ての窓(トイレ・浴室・2階含む)の鍵を閉めたか | □ |
戸締まり | 玄関・勝手口はツーロック(主錠+補助錠)になっているか | □ |
窓周り | 窓のサッシに補助錠を設置・ロックしたか | □ |
窓周り | カーテンや雨戸の状態は不自然ではないか(昼夜のバランス) | □ |
設備・機器 | タイマー照明の設定は完了し、動作するか | □ |
設備・機器 | インターホン・固定電話の設定を変更したか | □ |
郵便・新聞 | 郵便局への不在届、新聞店への停止連絡は済ませたか | □ |
貴重品 | 通帳・印鑑・現金・カード類は分かりにくい場所へ隠したか | □ |
貴重品 | スペアキー(置き鍵)を屋外に放置していないか | □ |
外周り | 庭やベランダに足場となるもの(脚立・箱など)がないか | □ |
外周り | 車や自転車の鍵は施錠されているか | □ |
情報管理 | SNSに不在がわかる投稿をしていないか(家族含む) | □ |
火の元 | ガスの元栓は閉めたか、電気のプラグ(不要なもの)は抜いたか | □ |
まとめ
年末年始の空き巣対策は、決して他人事ではありません。楽しい休暇から帰ってきたときに、荒らされた我が家を目にする絶望感は、金銭的な被害以上に大きな精神的ダメージを住人に与えます。しかし、本記事で紹介したように、泥棒の心理を逆手に取った「留守を悟られない工夫」と「侵入に時間をかけさせる物理的な対策」を組み合わせることで、被害のリスクは大幅に低減させることができます。
防犯対策とは、家の鍵をかけるという物理的な行為だけでなく、情報の管理や生活の工夫を含めた総合的な備えです。帰省や旅行の準備リストの中に、必ず「防犯対策」を組み込んでください。しっかりとした準備を行い、憂いのない状態で、素晴らしい年末年始をお過ごしください。
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