お盆の迎え火・送り火はいつする?マンションでもできる?意味・やり方を徹底解説

お盆の迎え火・送り火はいつする?マンションでもできる?意味・やり方を徹底解説

公開日: 1970.1.1     更新日: 2025.8.13

はじめに

お盆の風習のひとつである「迎え火」。先祖の霊を迎える儀式として古くから行われてきましたが、実際にどのような意味を持ち、いつ、どのように行うのか、あらためて詳しく知りたいと感じている方も多いのではないでしょうか。とくに現代では、都市部のマンションや賃貸住宅に住む人が増え、従来のように玄関先で火を焚くことが難しい家庭も少なくありません。そのため「火を焚けない場合はどうすればよいのか」「宗派によって違いはあるのか」といった疑問を抱く方も多いでしょう。

この記事では、迎え火と送り火の基本的な意味や由来から、日程、実際のやり方、マンションでも行える代替方法までを徹底的に解説します。お盆を迎える準備として、ぜひ参考にしてください。

迎え火・送り火とは?

迎え火とは、お盆の初日にご先祖様の霊が迷わず帰ってこられるよう、玄関先などで火を灯して道しるべとする習わしです。一方、送り火はお盆の終わりにご先祖様を再びあの世へ送り届けるために行います。

火を焚くことには、「闇を照らし、霊が迷わず来られるようにする」という意味が込められています。灯された火や煙が目印となり、ご先祖様が安心して家に帰ってこられると信じられてきました。

また、迎え火や送り火は単なる形式的な行事ではなく、家族がそろって先祖を想い、感謝の気持ちを伝える時間でもあります。忙しい現代社会では、日常的にご先祖様を意識する機会が少ないかもしれませんが、お盆という節目を通じて、改めてその存在に思いを馳せることができるのです。

お盆のはじまりと迎え火の意味

お盆は、仏教の行事として広く知られていますが、その起源は古代の祖霊信仰にさかのぼります。先祖の霊を迎え入れ、一定期間家族とともに過ごした後、再び見送るという流れは、時代や宗派を超えて受け継がれてきました。

迎え火は、そのお盆の始まりを告げる儀式です。一般的には8月13日の夕方、玄関先や門前で火を焚きます。この火によってご先祖様が迷わず家に帰ってこられると考えられています。迎え火には単なる「道しるべ」としての意味だけでなく、「明かりをともして霊を心から歓迎する」という温かい気持ちも込められているのです。

送り火は、お盆の終わりである16日に行われます。家族と過ごしたご先祖様の霊を、再びあの世に帰すために火を焚くのです。迎え火と送り火は対をなす行事であり、その両方を行うことで、お盆の供養はひとつの流れとして完結します。

迎え火・送り火の由来と仏教的背景

迎え火・送り火の風習は、平安時代以前の民間信仰が起源とされています。日本には古くから、亡くなった人の霊が家族のもとへ戻ってくると信じられてきました。農耕社会では祖先の加護を強く意識する傾向があり、季節の節目に霊を迎えて感謝する行事が行われていたのです。

その後、仏教が伝来すると、盂蘭盆会(うらぼんえ)と呼ばれる祖先供養の行事と融合しました。盂蘭盆会は、釈迦の弟子・目連尊者が亡き母を救うために行った供養が起源とされ、祖先の霊を慰めるために行う行事です。この仏教行事と日本古来の祖霊信仰が結びつき、現在の「お盆」が形作られました。

また、地域によって呼び名や形式も異なります。例えば、「精霊迎え」や「迎え盆」と呼ぶところもあり、宗派によっては迎え火を重視しない場合もあります。京都の大文字焼きのように、送り火を大規模な行事として行う地域もあります。こうした背景を知ることで、迎え火・送り火が単なる形式ではなく、長い歴史と信仰の中で育まれてきた大切な行事であることが理解できます。

迎え火はいつやる?具体的な日時と地域差

迎え火を行う時期は、全国一律ではなく地域によって異なります。一般的には8月13日の夕方に迎え火を焚き、16日の夕方に送り火を行うケースが多いですが、都市部や一部地域では異なる日程で実施されることもあります。

基本はお盆初日の夕方

多くの地域では、迎え火は8月13日の午後4時から6時頃に行われます。これは日が落ちる前後の時間帯で、霊が迷わず家に帰ってこられるようにとの配慮です。送り火は16日の夕方に行うのが一般的です。

地域によって異なる日程

地域ごとに「7月盆」と「8月盆」に分かれるのも特徴です。

地域

お盆の時期

備考

東京など都市部

7月13日〜16日(新暦盆)

江戸時代の流通事情から新暦が定着

多くの地方

8月13日〜16日(旧暦盆に近い)

農繁期を避けたため

沖縄・奄美など

旧暦7月13日〜15日

旧暦を重視する風習

このように、同じ「迎え火」であっても、地域によって日程はかなり違います。そのため、実際には自分の住んでいる地域や実家の風習に従うのが最も自然です。

家庭の事情に合わせた調整も可能

伝統的には夕方に行うとされますが、仕事や家庭の事情でその時間に行えない場合もあるでしょう。その場合、日中に迎え火をしても問題ありません。大切なのは「気持ちを込めて迎えること」であり、時間に厳密でなくても心を込めた供養であれば十分に意味があります。

迎え火のやり方と必要なもの

迎え火を行うにあたっては、伝統的な手順と必要な道具があります。

基本の手順(自宅で行う場合)

  1. お盆飾り(仏壇や精霊棚)を準備する

  2. 8月13日の夕方に玄関先や庭で火を焚く

  3. 火を灯したら手を合わせ、ご先祖様をお迎えする

  4. お盆期間中は提灯を灯して霊を迎えておく

  5. 16日の夕方に送り火を焚き、ご先祖様を送り出す

この一連の流れで、お盆の供養は完結します。

用意するもの

迎え火を行うためには、いくつかの道具が必要です。

  • おがら(麻の茎)
    迎え火で最も一般的に使用される素材。火をつけると煙が立ち昇り、その煙をご先祖様が目印にするといわれています。

  • ほうろく(素焼きの皿)または金属皿
    おがらを焚くための皿。耐熱性があり、火を安全に扱うために欠かせません。

  • ライターやマッチ
    火を灯すための道具。安全のため、着火が簡単にできるものを用意すると安心です。

  • 盆提灯(室内用)
    迎え火や送り火と併せて使用することで、より丁寧な供養になります。最近ではLED提灯も普及しています。

火のつけ方・消し方の注意

迎え火は神聖なものであると同時に、火を扱うため安全への配慮が欠かせません。

  • 火をつけたら風下に立ち、煙が家に向かうようにする

  • 子どもや高齢者がそばにいる場合は、必ず大人が管理する

  • 消火は水をかけて確実に行い、火種が残らないようにする

  • 強風や雨の日は無理せず、代替方法を検討する

こうした注意を守ることで、安全かつ心のこもった迎え火を行うことができます。

火を焚けない場合の代替方法

現代の住宅事情では、火を実際に焚くことが難しいケースが増えています。特にマンションや賃貸住宅では、ベランダや玄関先での火気使用が禁止されていることが多く、安全面や近隣への配慮から火を焚くことをためらう方も少なくありません。そのような場合でも、迎え火の気持ちを大切にできる代替方法があります。

火気NGのマンション・賃貸でもできる迎え火

方法1:盆提灯を灯す

最も一般的で安全な代替方法が盆提灯を使うことです。提灯に明かりを灯すことで、ご先祖様が迷わず家に帰れるよう導く意味を持たせられます。特にLED提灯であれば火を使わないため、火災の心配もなく安心して利用できます。玄関や仏壇、精霊棚のそばに置くと雰囲気も出ます。

方法2:キャンドルやロウソクで代用

火を使うことが許可されている住宅であれば、小さなキャンドルやロウソクを耐熱皿に乗せて使用する方法もあります。ベランダや玄関先に置くと、迎え火の代わりとして十分に機能します。ただし、火災報知器の作動や風による危険を避けるため、短時間で消すように心がけましょう。

方法3:形式だけ整える(気持ちが大事)

どうしても火を使えない場合は、形式を整えるだけでも問題ありません。たとえば、部屋の明かりをつけて「この灯りが迎え火である」と意識して手を合わせる方法です。迎え火はあくまで「先祖を迎えるための象徴」ですから、実際に火を焚かなくても、気持ちを込めて行えば十分な供養になります。

迎え火 代替手段

宗派・地域による違い

迎え火・送り火の習慣は全国共通ではなく、宗派や地域によって考え方や方法に違いがあります。

宗派による考え方の違い

たとえば、浄土真宗では迎え火を行わないことがあります。浄土真宗の教えでは、ご先祖様はすでに極楽浄土に往生しているとされ、霊が現世に戻ってくるという考えがないためです。その代わり、法要や念仏によって供養を行います。

一方で、曹洞宗や真言宗など他の宗派では、迎え火を行う家庭も多く、提灯や迎え火を焚いて霊を迎えるのが一般的です。

地域ごとの風習と特色

地域によっても特色が見られます。たとえば京都では有名な「五山の送り火(大文字焼き)」があり、町全体でご先祖様を送り出す壮大な行事となっています。また、沖縄や奄美地方では旧暦のお盆が今でも主流で、伝統的な踊りや料理を伴って霊を迎えます。

さらに、都市部では火を焚く習慣が薄れ、提灯や灯りを代用する家庭が増えています。逆に地方の一部では、今も庭先でおがらを焚いて迎え火を行う風習が残っています。

このように、迎え火・送り火は単なる儀式ではなく、その土地の歴史や宗教観を反映する文化でもあるのです。

よくある質問と不安への答え

迎え火や送り火を行う際には、多くの人が共通して抱く疑問や不安があります。ここでは代表的な質問とその答えを紹介します。

午前中や昼間に迎え火をしてもよい?

一般的には夕方に行うのが習わしですが、家庭の都合で時間をずらしても問題はありません。お盆の行事は形式よりも心が大切です。昼間に迎え火をしても、ご先祖様を思う気持ちが込められていれば十分な供養となります。

やり忘れてしまった場合、どうすれば?

迎え火を行い忘れたとしても、気づいた時点で手を合わせてお迎えすれば大丈夫です。「バチが当たるのでは」と心配する必要はありません。ご先祖様は形式よりも心を見てくださると考えられています。

雨や台風で火が焚けないときは?

無理に火を焚く必要はありません。盆提灯やロウソク、あるいは部屋の明かりを代用して迎え火の気持ちを表すことができます。天候に左右されず、安全に行うことを優先してください。

不在で迎え火ができない場合は?

旅行や帰省などで迎え火を行う時間に不在となる場合、出発前に仏壇や精霊棚に手を合わせて気持ちを伝えておくとよいでしょう。また、提灯を灯しておく方法や、帰宅後に改めてお参りする方法もあります。

ペットのための迎え火もできる?

近年では、家族同様に大切にしてきたペットのために迎え火を行う家庭もあります。小さなロウソクや提灯を灯し、名前を呼んで迎えるなど、人と同じように供養することで気持ちが伝わります。ペットもまた大切な家族であり、心を込めた迎え方をすれば十分です。

迎え火の前に準備しておきたいこと

迎え火を迎える前には、いくつかの準備を整えておくとスムーズに行えます。

仏壇や精霊棚の掃除・設置

お盆を迎える前に仏壇や精霊棚をきれいに掃除し、ご先祖様を迎える準備を整えます。埃や汚れを取り除き、清浄な空間を用意することで、霊を丁重に迎える心が表れます。

盆提灯・お供え物・お花などの準備

迎え火に合わせて盆提灯を飾り、お供え物を準備します。果物や季節の野菜、故人が好きだった食べ物を用意する家庭も多いです。花は菊やほおずきが定番で、明るい雰囲気を添えてくれます。

迎え火に必要な道具の確認と買い出し

おがら、ほうろく、ライター、提灯など、迎え火に必要な道具を事前に揃えておきましょう。最近はスーパーやホームセンター、仏具店などで「お盆セット」として販売されていることも多く、初心者でも安心です。

このように事前準備を整えることで、迎え火を落ち着いて行うことができます。

形式より「気持ち」が大切。現代らしい迎え方も

お盆の迎え火・送り火は、日本の伝統的な風習として長く受け継がれてきましたが、現代の生活環境や住宅事情によって、その形は変わりつつあります。かつては多くの家庭が庭や門口で火を焚いて霊を迎えましたが、都市部のマンションや防火対策が厳しい住宅では、それが難しいケースも増えています。

そのため、最近では盆提灯やLEDライトを使用したり、照明やロウソクを代用する家庭が一般的になってきました。形式的に火を焚かなくても、ご先祖様を迎える心が込められていれば十分に意味のある供養となります。

また、家族全員が集まることが難しい場合でも、オンラインで集まって手を合わせたり、遠方の親戚が同じ時間にそれぞれの場所で迎え火を意識するなど、現代的な工夫も見られます。こうした新しい形は、伝統を大切にしながらも、時代や環境に合わせて柔軟に対応していく姿勢の表れといえるでしょう。

「正しくやらなければならない」という気負いは必要ありません。むしろ、「できる範囲で、心を込めて」という気持ちこそが、迎え火と送り火において最も大切な要素です。大切なのは、ご先祖様を敬い、日々の感謝を伝えることです。

まとめ

迎え火・送り火は、お盆にご先祖様を迎え、感謝の心を伝える儀式です。その起源は古代の祖霊信仰にさかのぼり、仏教の盂蘭盆会と融合することで今日の形が作られました。基本的には8月13日の夕方に迎え火を焚き、16日の夕方に送り火を行いますが、地域によっては7月や旧暦のお盆を採用している場合もあります。

迎え火を行う際は、おがらやほうろくなど伝統的な道具を使うのが一般的ですが、マンションや賃貸など火を焚けない環境では、盆提灯やキャンドル、さらには照明を利用するなどの代替方法も広く行われています。宗派や地域による違いもあるため、家庭ごとの事情や信仰に応じて柔軟に対応することが大切です。

何より重要なのは、形式や道具にとらわれすぎず、ご先祖様を想う「気持ち」を込めて行うことです。お盆は、一年の中でもご先祖様と深くつながれる大切な機会です。伝統を大切にしつつも、自分たちの暮らしに合った形で迎え火・送り火を行い、先祖との絆を感じる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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