絶対に避けるべき言葉とは?忌み言葉の一覧と正しい挨拶マナー

2025.7.1

  • マナー

葬儀という場面では、悲しみに包まれた遺族や参列者への配慮が何よりも大切です。その中でも「言葉の選び方」は、相手の心に寄り添う上で大きな意味を持ちます。特に「忌み言葉(いみことば)」と呼ばれる、不吉や繰り返しを連想させる言葉は、使用を避けるべきとされています。こうした言葉は、知らずに使ってしまうと相手に不快な思いをさせてしまう可能性があり、社会的マナーとしても注意が必要です。 現代では、形式よりも個人の思いや背景を重視する傾向が高まっているとはいえ、葬儀は多くの人が共通の価値観と文化の中で行う儀式です。言葉の力を軽視せず、慎重に言葉を選ぶことが、遺族への敬意を表す第一歩と言えるでしょう。 本記事では、忌み言葉の基本的な意味から、葬儀における具体的なNG表現、宗派による違い、そして適切な言い換え例までを詳しく解説します。葬儀での挨拶や会話に自信を持ち、故人への敬意と遺族への思いやりを形にするためのガイドとして、ぜひご活用ください。

忌み言葉とは?

忌み言葉とは、特定の場面や状況において使用を避けるべきとされる言葉のことを指します。特に葬儀の場では、「死」「苦しみ」「繰り返し」「終わり」「不幸」などを直接的に連想させる言葉が忌み言葉として忌避されます。これらの言葉は、聞く人の心に痛みや不安を与える恐れがあり、遺族の心情に寄り添うためにも慎重な配慮が求められます。 忌み言葉は日本語独特の文化的感性から生まれたもので、「言霊(ことだま)」という考え方が背景にあります。言霊とは、言葉には魂が宿っており、発した言葉が現実を動かすという日本古来の思想です。この考え方により、葬儀など神聖な儀式の場では、縁起が悪いとされる言葉は「言ってはいけないもの」として扱われるのです。 たとえば、「重ね重ね」「また」「再三再四」「繰り返し」などの表現は、不幸が再び訪れることを連想させるため、縁起が悪いとされます。同様に、「死ぬ」「死亡」「絶える」など直接的な死を連想させる表現も避けられます。これらの言葉は、たとえ事実を表していても、遺族の感情に寄り添うという観点からは適切ではありません。 また、忌み言葉は単なるマナーや形式ではなく、故人と遺族への敬意を示すための言葉の選び方でもあります。誰もが経験する可能性のある葬儀の場において、こうした文化的背景を理解し、適切な言葉遣いを心がけることは、社会人としての重要な素養の一つと言えるでしょう。

忌み言葉を避けるべき場面

避ける場面

忌み言葉は、単に語感が悪いから避けるのではなく、特定の場面における心情や文化的配慮のために使用を控えるべき表現です。特に葬儀という場では、遺族の悲しみを癒すどころか、無神経に響いてしまう可能性があります。ここでは、忌み言葉を避けるべき具体的な場面について詳しく見ていきましょう。

通夜・葬儀での挨拶

通夜や葬儀での挨拶の場面は、最も言葉に気をつけなければならない場の一つです。参列者が遺族に声をかけるとき、「また来ます」「重ね重ねお悔やみ申し上げます」などの表現は、忌み言葉として不適切とされています。これらは「不幸が繰り返される」ことを連想させるため、避けるべきです。 また、弔辞においても「死」「絶える」「悲惨」など、直接的で生々しい表現は避け、「ご逝去」「ご永眠」「お浄土へ旅立たれた」などの婉曲的な表現が用いられるのが一般的です。

香典や供花に添えるメッセージ

香典に添える手紙や供花の立札には、簡潔でありながらも丁寧な表現が求められます。ここでも「再三」「繰り返し」「重ねて」などの言葉は避け、「心より哀悼の意を表します」など定型的で無難な表現が好まれます。 香典返しに対するお礼の手紙などでも、仏事特有の言い回しに注意が必要です。「お世話になっております」など通常のビジネス表現は避け、時候の挨拶も抑えめにし、故人への追悼の意を前面に出すべきです。

弔問の電話・会話

突然の訃報を受けて電話で遺族に連絡をとる場合なども、言葉には一層の注意が必要です。「なんで亡くなったんですか?」などの問いかけは無神経に受け取られる恐れがあります。理由を知りたい気持ちがあっても、まずは「突然のことで驚いております。心よりお悔やみ申し上げます」といった哀悼の意を表すのが先です。 また、訪問時の何気ない会話にも注意が必要です。「まだ若かったのに」「急だったね」「びっくりしたよ」など、一見すると同情や驚きの気持ちを表しているように聞こえる言葉でも、遺族によっては不快に感じる場合があります。とくに「若かった」は、遺族にとっては「もっと生きてほしかった」という気持ちと重なり、辛さを増幅させてしまうことがあります。

法要・回忌法要の案内状やお礼状

法要の案内状では、「亡くなられた」「死去した」などの表現は避け、「ご逝去」「ご命日」など丁寧な表現を用いることが望ましいです。また、「忌明け」「満中陰」など、宗教的・儀式的な言葉を使う場合もありますが、宗派に応じた言葉遣いにすることも忘れてはなりません。 お礼状においても、忌み言葉を避けるだけでなく、遺族の感謝の気持ちを誠実に伝えることが重要です。「重ね重ね」などの表現は避け、「このたびは誠にありがとうございました」「ご厚情を賜り、心より御礼申し上げます」など、気持ちがこもりつつも慎み深い言葉を選ぶようにしましょう。 このように、忌み言葉を避けるべき場面は、葬儀の核心に関わる挨拶から、文書、電話、訪問に至るまで多岐にわたります。相手の心に寄り添うという意識を持って言葉を選ぶことが、社会人としての礼節であり、人としての思いやりの表れなのです。

避けたい忌み言葉一覧

葬儀の場において避けるべき「忌み言葉」には、大きく分けていくつかのカテゴリがあります。それぞれのカテゴリには文化的な背景があり、遺族の心情や宗教的な意味合いにも配慮した表現が求められます。この章では、よく使われる忌み言葉を分類し、なぜ避けるべきなのかを具体的に解説します。

直接的な死や不幸を表す言葉

このカテゴリの言葉は、死や消滅をストレートに伝える表現であり、遺族に対して過度な現実感や不快感を与える恐れがあります。

忌み言葉理由
死ぬ、死亡生々しい表現で遺族の心をえぐる可能性がある
亡くなるやや婉曲的だが、より柔らかい表現が好まれる
絶える、消える存在の終焉や喪失感を直接的に連想させる

苦痛・困難を想起させる言葉

故人が苦しんで亡くなったような印象を与える表現は、遺族に不要な心理的負担を与えるため、避けるのが望ましいとされています。

忌み言葉理由
苦しい、四苦八苦苦痛や不幸な最期を想像させる
九死に一生危機や死の直前といった劇的な連想を引き起こす

重ね言葉(不幸の繰り返しを暗示)

「重ね言葉」は同じ語を繰り返すことにより、不幸が重なる・続くことを連想させるため、葬儀の場では特に慎重に避けられます。

忌み言葉理由
重ね重ね不幸が重なるイメージを与えるため不適切
また、再び再発・再来を想起させ、再度の不幸を暗示する
再三再四繰り返しやしつこさを連想させるため縁起が悪い

終焉・消滅を示す言葉

故人の存在が完全に「終わった」「消えた」と受け取られる表現は、死を「断絶」として捉えてしまうため避けるべきです。

忌み言葉理由
終わる、終える人生の「終焉」を露骨に感じさせてしまう
消える、失う存在そのものが消失した印象を与える

忌み数字に関連する表現

日本語では、数字の語呂合わせによって忌避されるものがあります。葬儀では、これらの数字を用いた金額・品数にも注意を払うべきです。

忌み数字理由
4(し)「死」を連想させる発音
9(く)「苦」を連想させる発音

たとえば、香典で「4,000円」や「9,000円」を包む、供花を「4本」「9本」にするなどは避け、「5,000円」や「3本」などに調整するのがマナーです。 このように、忌み言葉は単なるNGワードリストではなく、日本文化に根ざした「相手を思いやる言語マナー」の一部です。特に葬儀という場面では、遺族の感情や宗教的背景に最大限の配慮を払いながら言葉を選ぶことが、礼節と敬意の現れになります。

宗派によって異なるNG表現

浄土真宗

避けるべき表現:  ・ご冥福をお祈りします  ・成仏されますように  ・安らかにお眠りください 使える自然な表現:  ・このたびは誠にご愁傷さまでございます  ・ご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます  ・謹んで哀悼の意を表します ※宗教的な成仏・冥福は不要とされるため、一般的な弔意表現にとどめるのが望ましいです。

日蓮宗

避けるべき表現:  ・ご冥福をお祈りします  ・成仏されますように  ・ご往生されたこと、心よりお祈り申し上げます 使える自然な表現:  ・心よりお悔やみ申し上げます  ・ご逝去を悼み、静かにお祈り申し上げます ※厳密には冥福・往生などの仏教用語を避けるべきとされますが、一般的な表現であれば柔軟に受け入れられるケースもあります。

神道

避けるべき表現:  ・ご冥福をお祈りします  ・成仏されますように  ・ご往生されたこと 使える自然な表現:  ・ご霊前に哀悼の意を捧げます  ・心よりお悔やみ申し上げます  ・謹んでご逝去を悼みます ※「御霊」「祖霊」など神道的な表現は控えめに使われるため、一般的な表現が適しています。

真言宗・天台宗(密教系)

避けるべき表現:  ・ご冥福をお祈りします(使われることもあるが無難ではない)  ・安らかにお眠りください(宗教的ニュアンスとずれる) 使える自然な表現:  ・謹んでお悔やみ申し上げます  ・ご逝去の報に接し、深くお悔やみ申し上げます  ・故人のご功績を偲び、心より哀悼の意を表します

忌み言葉ではないが避けるべき言葉

葬儀の場では、「忌み言葉」ほど明確に禁止されていないものの、聞く人の心情や状況を考えると使用を避けるべき表現が数多くあります。これらは場の空気を損ねたり、遺族の悲しみに触れたりする恐れがあるため、慎重な配慮が求められます。 この章では、そんな「忌み言葉ではないが不適切とされる」代表的な言葉やフレーズについて解説し、どういった言い換えが望ましいかを紹介します。

1. 過度な驚きや詮索を含む言葉

NG表現理由適切な言い換え
えっ、本当に?信じられない!遺族の心情を逆なでし、驚きを共有する意図が裏目に出やすいこのたびは突然のことでお悔やみ申し上げます
何があったの?どうして亡くなったの?死因の詮索は無神経と受け取られることが多いお辛い中、お疲れさまです。ご無理なさらずに

2. 無意識に相手の感情を軽んじる言葉

NG表現理由適切な言い換え
もう年だったから仕方ないね死を軽視していると受け取られる可能性があるご長寿とはいえ、お別れはお辛いことと存じます
天国で見守ってくれてるよ宗教的な価値観を押しつけかねない故人を偲び、心より哀悼の意を表します

3. 遺族を急かす・不安にさせる言葉

NG表現理由適切な言い換え
落ち込んでばかりじゃいけないよ遺族の気持ちに寄り添っておらず、軽視される印象どうかご無理なさらず、ゆっくりお過ごしください
次の準備もしないとね葬儀直後に次の行動を促すのは不適切お手伝いできることがあれば、何なりとお知らせください

4. 自分語りや場違いな軽口

NG表現理由適切な言い換え
私も昔、親を亡くしたけどね会話の主語が自分に移ってしまい、遺族の悲しみに寄り添えないご心中をお察しします。今はどうかご無理なさらずに
暗い話はやめて明るく送り出しましょう意図は良くても不謹慎と受け取られやすい故人の思い出を大切にしながら、見送らせていただきます

忌み言葉の言い換え例

忌み言葉は単に使ってはいけない言葉というだけでなく、相手に対する思いやりの形を示す表現の工夫でもあります。ここでは、実際の会話や弔辞、手紙などでありがちな忌み言葉を、より自然で相手の心に寄り添った表現に言い換える具体例をご紹介します。

1. 「死ぬ」「亡くなる」など直接的な表現の言い換え

忌み言葉自然な言い換え例
死ぬ・死亡ご逝去・ご永眠・旅立たれました
亡くなるご逝去されました・ご生涯を全うされました

2. 「苦しい」「つらい」など感情的な表現の言い換え

忌み言葉自然な言い換え例
苦しいお気持ちお辛いお気持ちとお察しします
大変でしたねご心労いかばかりかと拝察いたします
悲惨な出来事ご不幸な出来事・ご不運なご状況

※相手の心情に寄り添いつつ、過剰な表現を避けることがポイントです。

3. 重ね言葉の言い換え(不幸の繰り返しを暗示)

忌み言葉自然な言い換え例
重ね重ね改めまして、心より、深く
またお伺いしますあらためてご挨拶に伺います
再三お世話になりましたこれまでのご厚情に深く感謝申し上げます

※重ね言葉を避ける代わりに、感謝や誠意を丁寧な単語で表現しましょう。

4. 「終わる」「絶える」など人生の断絶を感じさせる言葉

忌み言葉自然な言い換え例
終わりましたご生涯を全うされました
絶えてしまいましたご命を閉じられました
全てが終わりましたお役目を果たされました

※人生を肯定的に捉え、敬意をもって表現することが大切です。

まとめ

葬儀の場において、言葉の選び方は故人への敬意と、遺族への思いやりを形にする大切な手段です。本記事では、葬儀のマナーとして避けるべき「忌み言葉」やその背景、さらには宗派による違い、自然な言い換え表現まで幅広く解説しました。 まず、「忌み言葉」とは単なるタブー語ではなく、日本人の死生観や文化に根ざした配慮の表現です。たとえば、「死」「重ね重ね」「また」などの言葉は、不吉さや不幸の再来を想起させるため、使用を避けるべきとされています。 また、浄土真宗や神道など、宗派によって特定の言葉(「ご冥福をお祈りします」「成仏されますように」など)が教義にそぐわない場合もあり、無意識に使ってしまうと、遺族の感情を傷つけることがあります。このような背景を理解し、宗教色を抑えた中立的で丁寧な表現(例:「謹んでお悔やみ申し上げます」など)を使うことが望ましいとされます。 さらに、「忌み言葉」ではなくても使用を避けるべき言葉、たとえば「何があったの?」「もう年だったから仕方ないね」といった無神経に聞こえる表現も紹介しました。こうした言葉は遺族の感情に無配慮であると受け取られる可能性があり、避けることがマナーの一環といえます。 最も重要なのは、形式的な正しさではなく、「その場にふさわしい心遣い」です。言葉の持つ力を理解し、故人と遺族への敬意と配慮をもって言葉を選ぶことが、現代における葬儀マナーの本質だといえるでしょう。

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