【完全ガイド】会葬返礼品と香典返しの違い・マナー・選び方

2025.5.29

  • 葬儀
  • 費用

弔事における贈答文化は、日本人の礼節や信仰心を色濃く反映しています。その中でも「会葬返礼品」と「香典返し」は、参列者や香典をいただいた方への感謝を伝えるための重要な慣習です。しかし、これらの違いやマナー、適切な選び方を理解するのは簡単ではありません。本記事では、両者の違い、マナー、選び方に加え、それぞれの歴史的背景や、香典辞退後にいただいた場合の対応まで、包括的に解説します。

会葬返礼品と香典返しの違いとは?

まず最初に理解すべきは、会葬返礼品と香典返しの基本的な違いです。以下の表にまとめました。

項目会葬返礼品香典返し
渡す相手葬儀・通夜に参列した人全員香典をいただいた人
渡す時期葬儀・通夜当日四十九日法要後
金額の目安500〜1,000円香典の1/3〜半額
表書き御会葬御礼、志など志、満中陰志など
添えるもの礼状(簡易)礼状(丁寧)

このように、目的やタイミング、対象者が異なるため、それぞれのマナーを正しく理解し、適切に対応することが大切です。

会葬返礼品のマナー

掛け紙の水引と表書き

会葬返礼品には、掛け紙をかけるのが一般的です。水引は「結び切り」を使用し、色は黒白または双銀が一般的ですが、西日本では黄白を用いることもあります。表書きは「御会葬御礼」や「志」とするのが一般的です。

礼状のマナー

返礼品には、感謝の気持ちを伝える礼状を添えるのがマナーです。礼状は、故人の名前、喪主の名前、日付、感謝の言葉を簡潔に記載します。弔事の文書では、句読点を用いず、忌み言葉や重ね言葉を避けることが求められます。

渡すタイミング

会葬返礼品は、葬儀や通夜の当日に、参列者が帰る際にお渡しするのが一般的です。受付で記帳後に手渡しすることが多く、遺族が直接渡すことが難しい場合は、受付係が対応します。

金額相場

会葬返礼品の相場は、500円〜1,000円程度です。参列者全員に渡すため、比較的安価な品物を選ぶのが一般的ですが、地域や葬儀の規模によって異なる場合もあります。

香典返しのマナー

喪主は香典を出さない

香典は、葬儀に参列する方が出すものであり、喪主が香典を出す必要はありません。ただし、喪主とは別に施主(葬儀費用を負担する人)がいる場合には、喪主も香典を出すことがあります。

掛け紙の水引と表書き

香典返しの掛け紙も、黒白または双銀の結び切りが一般的です。表書きは「志」が一般的で、西日本では「満中陰志」を用いることもあります。

お礼状のマナー

香典返しには、お礼状を添えるのがマナーです。お礼状には、香典をいただいたことへの感謝、四十九日法要が無事に終わったことの報告、書面での挨拶となることへのお詫びなどを記載します。

渡すタイミング

香典返しは、四十九日法要後1ヶ月以内に贈るのが一般的です。ただし、近年では葬儀当日にお渡しする「当日返し」も増えています。当日返しの場合は、香典の金額に応じた品物を用意するのが難しいため、一律の品物を用意し、高額な香典をいただいた方には後日改めてお礼をすることがあります。

金額相場

香典返しの相場は、いただいた香典の1/3〜半額程度が一般的です。高額な香典をいただいた場合は、半返しにこだわらず、1/3〜1/4程度でも差し支えないとされています。

香典返し・会葬返礼品の選び方

香典返し・返礼品は「消えもの」を選ぼう

弔事の返礼品には、「消えもの」と呼ばれる、使い切れる品物が好まれます。お茶や海苔、タオル、石けん、焼き菓子などが一般的です。これらは、日常的に使用でき、後に残らないことから、弔事の返礼品として適しています。

よく選ばれる商品

お茶セット:仏教の供物としても使え、消えもので実用的 焼き菓子:年齢問わず喜ばれ、日持ちするものが多い タオル:毎日使う実用品であり、清潔感・実用性が高い 石けん・洗剤:「清め」の意味があり、残らない消耗品として適当 カタログギフト:好みに合わせて選べる自由度が高く、高額香典向け

高額な香典への香典返しはカタログギフトがおすすめ

高額な香典をいただいた場合、カタログギフトを贈るのも一つの方法です。カタログギフトは、受け取った方が自分の好みに合わせて品物を選べるため、喜ばれることが多いです。

歴史的背景:返礼文化のルーツを知る

会葬返礼品の歴史

会葬返礼品の起源は、江戸時代にまでさかのぼります。当時、葬儀に参列してくれた人々への感謝の気持ちを表すため、簡素な品物を手渡す習慣が生まれました。これが「会葬御礼」として定着し、現代の会葬返礼品の基礎となっています。 当時の返礼品は、手ぬぐいや煎餅などの簡素な日用品が多く、これらには「無事に葬儀を終えられたことへの感謝」や「今後の付き合いもよろしくお願いする」という意味が込められていました。特に、当時は家族や親戚、地域社会との結びつきが非常に強く、返礼品はそうした絆を再確認するための重要なツールでもありました。 時代が進むにつれ、都市化とともに葬儀のスタイルも変化し、会葬返礼品もより形式化・簡素化されていきます。現代では、包装やデザインにも配慮された商品が多く、特に小型で持ち帰りやすく、かつ日常的に使えるアイテムが主流です。具体的には、タオルセット、焼き菓子、お茶セットなどが多く見られます。また、近年ではエコ意識の高まりから、無駄のない実用品や地元特産品などを選ぶ喪家も増えています。

香典返しの歴史

香典返しは、時代によって大きくその形式が変化してきました。平安・鎌倉時代の貴族社会では、贈り物文化が礼儀の中心にありました。葬儀に参列した貴族同士は、豪華な供物や金品を贈り合い、それに対する返礼もまた、相応の品位を求められていたのです。 江戸時代には、この文化が庶民にも広がり、町人階級でも香典返しが一般化。仏教の「布施」と「回向(えこう)」の精神を背景に、香典に対する感謝と故人の冥福を祈る意味合いがより強まりました。特に四十九日法要を「忌明け」の重要な節目と捉え、この機に香典返しを行う習慣が広く根付きました。 明治以降、郵便制度の発展とともに、遠方から香典を送ってくれるケースが増加し、香典返しを郵送するスタイルが確立。これにより、挨拶状を添えて丁寧に返礼する「書中をもって礼に代える」という形式が普及しました。 現代では、カタログギフトやオンライン返礼の利用も増え、より柔軟で受け取り手に配慮したスタイルが浸透していますが、「半返し」「三分の一返し」といった伝統的な考え方も根強く残っています。

よくあるケース:実際に起こりやすいシチュエーションとその対応

ケース1:香典辞退をしたのに受け取った

状況:「香典はご遠慮いたします」と明記したにもかかわらず、現金書留や手渡しで香典をいただいた。 対応方法: ・相手の気持ちを尊重して受け取り、お礼状に「本来は辞退しておりましたが、お気持ちをありがたく頂戴いたしました」と一文を加える。 ・状況に応じて簡素な返礼品(お茶・焼き菓子など)を贈る。 ・形式にこだわらず、手書きの礼状だけで済ませるのも一つの方法。

ケース2:参列者の人数が予想以上で返礼品が足りなかった

状況:用意した返礼品の数よりも多くの参列者が来てしまった。 対応方法: ・返礼品を後日郵送する旨を伝える。 ・名簿を元に対応漏れのないように整理し、礼状を添えてお詫びと感謝を記載する。 ・予備を10〜20%多めに用意しておくと安心。

ケース3:高額な香典を1人だけいただいた

状況:親戚や上司などから、想定よりもはるかに高額な香典を受け取った。 対応方法: ・他の方と一律の返礼品では不公平になるため、別途カタログギフトや高級茶などで対応する。 ・礼状もより丁寧な文面にし、別送の旨を明記する。

ケース4:香典返しのタイミングを逃してしまった

状況:四十九日法要後、しばらくしてから香典返しの手配を思い出した。 対応方法: ・「遅くなり失礼しました」のお詫びを一言添え、なるべく早く返送する。 ・返礼品よりも、誠意あるメッセージが重要。形式ではなく「心」でカバーできる部分もある。

まとめ:返礼の心は「かたち」より「こころ」

会葬返礼品や香典返しの本質は、いただいた弔意への「感謝の気持ち」をかたちにすることにあります。形式にとらわれすぎることなく、故人を想い、相手への配慮をもって丁寧に対応する――その誠実な姿勢こそが、もっとも大切なマナーと言えるでしょう。

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