
株式相続の手続き完全ガイド:上場・非上場別に徹底解説
公開日: 2024.10.29 更新日: 2025.7.24
目次
株式相続の流れと基本ステップ
1. 被相続人の株式の把握
2. 相続人の確定と遺産分割協議
3. 名義変更の手続き
上場株式の場合
非上場株式の場合
4. 準確定申告の実施(4ヶ月以内)
5. 相続税の申告と納税(10ヶ月以内)
6. 相続後の株式活用(売却・譲渡)
株式相続に関わる期限と時効
相続放棄の期限
名義変更に明確な期限はないが、早期対応が望ましい
相続税・準確定申告の期限
株式相続における時効の考え方
株式を相続で名義変更するときの手続き
上場株式の名義変更手続き
1. 相続人の証券口座を開設
2. 必要書類の提出
3. 名義変更の実施
非上場株式の名義変更手続き
1. 発行会社への連絡と確認
2. 必要書類の準備と提出
3. 名義変更の完了
名義変更にかかる期間と注意点
株式相続にかかる税金と費用
上場株式の評価方法と相続税
【具体例】
非上場株式の評価方法と相続税
【具体例】
税額の試算と節税制度
節税制度の代表例
手続きにかかる実務的な費用
株式相続で注意すべきポイント
1. 株式は分割できない資産
2. 非上場株式は譲渡制限がある場合が多い
3. 名義変更が完了するまで配当金や議決権を得られない
4. 相続人間のトラブルが起きやすい
5. 相続後の活用・処分にも制限がある
まとめ
株式を相続することになった場合、「何から手を付ければよいのか分からない」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。預貯金や不動産と異なり、株式は証券会社や発行会社など第三者を介した手続きが必要であり、上場株と非上場株で必要書類や流れも大きく異なります。また、相続税の申告や名義変更の期限、税務上の評価方法など、注意すべきポイントが多く存在します。
さらに、相続財産としての株式はその評価額によっては相続税の大きな負担となることもあり、適切な対応を怠ると後々トラブルに発展するケースもあります。特に非上場株の場合、相続人が経営に関わっていない限り手続きが長引いたり、会社から承認が得られなかったりといった障害も発生しかねません。
本記事では、株式相続における一連の手続きや期限、名義変更の具体的な方法、税金の計算方法、さらには注意すべきリスクについて、初めての方でもわかりやすいように段階的に解説していきます。相続の負担を最小限に抑えるために、ぜひ参考にしてください。
株式相続の流れと基本ステップ
株式の相続手続きは、預貯金や不動産と異なり、上場・非上場の別によっても流れが大きく異なります。以下では、全体の流れを6つのステップに分けて解説します。

1. 被相続人の株式の把握
相続手続きの第一歩は、被相続人が保有していた株式の種類と数量を確認することです。
- 上場株式か非上場株式かを判別
- 証券会社の口座があるか
- タンス株(紙の株券)ではないか
- 証券会社から残高証明書を取得
- 非上場株式は発行会社に確認し、株主名簿などで保有状況を調査
2. 相続人の確定と遺産分割協議
株式の相続には、相続人全員の合意が不可欠です。
- 相続人を戸籍で確認し、法定相続人を確定
- 遺産分割協議を実施
- 誰がどの株式を取得するかを明記した「遺産分割協議書」を作成
※協議書は名義変更や税申告の際に提出が必要になるため、正確に記載することが重要です。
3. 名義変更の手続き
株式を正式に相続するには、名義を相続人へ変更する必要があります。
上場株式の場合
証券会社に提出する主な書類
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本
- 被相続人と相続人の関係がわかる書類
- 相続人の印鑑証明書
→ 相続人名義の証券口座を新たに開設し、株式を移管。
非上場株式の場合
- 発行会社に名義変更を申請
- 会社の承認が必要なケースもあり
- 株主名簿の書き換えをもって完了
4. 準確定申告の実施(4ヶ月以内)
被相続人が死亡した年の所得(年金収入、株の配当、売却益など)がある場合、相続人が代理で所得税の申告を行う「準確定申告」が必要です。
- 申告期限:死亡日から4ヶ月以内
- 提出者:相続人全員の連名
- 提出先:被相続人の住所地の管轄税務署
- 必要書類:源泉徴収票、支払調書、医療費控除明細など
※申告漏れや期限超過により、延滞税や加算税が課されることがあります。
5. 相続税の申告と納税(10ヶ月以内)
株式の相続では、評価額に基づいて相続税が発生する場合があります。
- 申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」
- 上場株式は「相続発生日の終値」などで評価
- 非上場株式は「類似業種比準方式」「純資産価額方式」など複雑な計算が必要
※申告には専門家(税理士等)への相談が推奨されます。
6. 相続後の株式活用(売却・譲渡)
相続した株式をそのまま保有するか、売却するかも重要な判断ポイントです。
- 売却する場合は譲渡所得税が発生
- 相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」あり(3年以内の売却が条件)
このように、株式の相続には正確な資産把握、協議、名義変更、税務申告といった多段階の対応が求められます。手続きを円滑に進めるためには、早い段階からの準備と専門家への相談が不可欠です。
株式相続に関わる期限と時効
株式の相続において、「いつまでに何をしなければならないのか」という期限や時効は、相続全体の中でも重要なポイントです。特に名義変更や放棄、税務申告などの手続きには、期限や手順に関する法的な制約があるため、正確な理解が求められます。
相続放棄の期限
相続の開始(被相続人の死亡)を知った日から3か月以内に、相続を「承認する」か「放棄する」かを決定しなければなりません。この期間を「熟慮期間」と呼びます。
- 家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要がある
- 期限を過ぎると自動的に「単純承認」となり、すべての財産と負債を相続したとみなされる
- 株式が債務やリスクを含む場合は特に慎重な判断が必要
名義変更に明確な期限はないが、早期対応が望ましい
株式の名義変更には、法律上の明確な期限は設けられていません。しかし、実務上は以下のような理由から、可能な限り速やかに手続きを進めることが推奨されます。
- 相続人間の紛争を防止する
- 株主配当や株主総会の通知などの権利を確実に受け取る
- 会社や証券会社が名義変更の受付に期限を設けている場合がある
また、相続人が複数いる場合、全員の合意が必要になるため、調整に時間がかかるケースもあります。
相続税・準確定申告の期限
相続税の申告(10ヶ月以内)および準確定申告(4ヶ月以内)については、前章「株式の相続の流れとは」で詳細に解説しています。どちらも期限を過ぎると延滞税や加算税の対象となるため、早めの対応が重要です。
株式相続における時効の考え方
法律上、相続そのものに明確な「時効」があるわけではありませんが、民法上の「相続回復請求権」の時効や、相続登記・名義変更に関連する実務上の問題は存在します。
- 遺産分割が長期間未了で放置されていると、他の相続人から異議が出る可能性がある
- 配当金の受領など実質的な所有行為がある場合は、時効の成立が認められにくい
- 名義が被相続人のまま長期間放置されると、後の手続きで追加書類が求められることもある
これらの事情からも、相続開始後はできるだけ速やかに各種手続きを進めるのが望ましいです。
株式を相続で名義変更するときの手続き
株式を相続した場合、実際にその株式を保有・管理・売却できるようにするには、名義変更の手続きが必要です。この手続きは、上場株式と非上場株式で方法や必要書類が異なるため、それぞれのケースに分けて詳しく解説します。
上場株式の名義変更手続き
上場株式の名義変更は、被相続人が口座を開設していた証券会社を通じて行われます。以下の流れで手続きを進めます。
1. 相続人の証券口座を開設
- 相続人名義の証券口座が必要です。未開設の場合は、まず口座を開設します。
2. 必要書類の提出
証券会社に提出する主な書類は以下の通りです。
- 被相続人の除籍謄本(死亡の記載があるもの)
- 相続人全員の戸籍謄本(続柄の確認用)
- 相続人の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 名義変更依頼書(証券会社指定の書式)
※提出書類は証券会社ごとに多少異なるため、事前確認が必須です。
3. 名義変更の実施
- 証券会社が書類を確認後、相続人名義への株式移管が行われます。
- 複数人で相続する場合、それぞれの相続人名義の口座に分割移管されます。
非上場株式の名義変更手続き
非上場株式の名義変更は、株式を発行した会社が管理している株主名簿を通じて行われます。こちらは会社ごとに対応が異なるため、直接問い合わせる必要があります。
1. 発行会社への連絡と確認
- 相続の発生と名義変更希望を会社に連絡します。
- 必要書類や手続きの流れ、承認の有無を確認します。
2. 必要書類の準備と提出
一般的に求められる書類は以下の通りです。
- 被相続人の戸籍謄本および除籍謄本
- 相続人の戸籍謄本および印鑑証明書
- 遺産分割協議書または遺言書
- 株券(発行がある場合)
- 株主名簿書換請求書(会社指定書式)
※会社が「譲渡制限付株式」の場合、取締役会の承認が必要となるケースがあります。
3. 名義変更の完了
- 会社が提出書類を確認し、株主名簿の記載変更をもって名義変更が完了します。
- 名義変更が完了すると、配当金の受け取りや議決権行使などの権利を相続人が取得します。
名義変更にかかる期間と注意点
- 手続き完了までの期間は、証券会社や発行会社、書類の不備の有無により異なりますが、2週間〜1か月程度が目安です。
- 書類に不備があると大幅に遅れる可能性があるため、丁寧な準備が不可欠です。
- 特に非上場株式は会社との調整が必要であり、早めのアクションが望まれます。
株式相続にかかる税金と費用
株式を相続する際には、評価額に応じて相続税が課されるほか、名義変更や手続きに伴う費用も発生します。特に、上場株式と非上場株式では評価方法が大きく異なるため、正確な算定と専門家への相談が必要です。ここでは、それぞれの評価方法と具体的な計算例、加えて手続きにかかる実務的な費用について詳しく解説します。
上場株式の評価方法と相続税
上場株式は、次の4つの価格のうち、最も低いものを1株あたりの評価額として用います。
- 相続発日の終値
- 相続発日を含む月の月平均終値
- 前月の月平均終値
- 前々月の月平均終値
この評価額に株数を掛け合わせた金額が、相続税計算における上場株式の課税評価額となります。
【具体例】
被相続人が2025年5月10日に死亡し、A社の株式を1,000株保有していたとします。A社株の価格は以下の通りだった場合:
- 5月10日の終値:3,200円
- 5月の月平均終値:3,180円
- 4月の月平均終値:3,150円
- 3月の月平均終値:3,170円
この中で最も低い「4月の月平均終値3,150円」が評価額として採用されます。
評価額=3,150円 × 1,000株 = 3,150,000円
この3,150,000円が、相続財産として税務申告における評価額となります。
非上場株式の評価方法と相続税
非上場株式の評価は、会社の規模や株主の立場(支配株主か少数株主か)によって以下の3つの方法から適用されます。
- 類似業種比準方式:同業の上場企業の財務指標と比較
- 純資産価額方式:会社の資産と負債から算定
- 配当還元方式:主に少数株主向け、配当金を基準に評価
会社規模に応じて以下のように使い分けます。
- 大会社:類似業種比準方式
- 中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の折衷
- 小会社:純資産価額方式
- 少数株主:配当還元方式(特例)
【具体例】
B社(非上場企業)における評価例
- 1株あたりの評価(類似業種比準方式):10,000円
- 1株あたりの評価(純資産方式):30,000円
- 折衷割合(類似9:純資産1)
この場合、評価額は:
10,000円×0.9 + 30,000円×0.1 = 12,000円/株
保有株数が1,000株なら、評価額は 12,000,000円 となります。
税額の試算と節税制度
株式の評価額に応じて、相続税が以下のように課税されます(税率は課税価格によって10%〜55%)。
節税制度の代表例
- 取得費加算の特例:相続から3年以内に売却すると、納めた相続税を取得費に加算可能(譲渡所得税が軽減)
- 事業承継税制の特例:非上場株式の相続において、一定の条件下で相続税の納税猶予が認められる
これらの特例は適用条件が複雑なため、専門家(税理士など)との連携が不可欠です。
手続きにかかる実務的な費用
名義変更や証明書取得に際して、以下のような実費も発生します。
- 戸籍謄本・除籍謄本:1通あたり450円前後
- 印鑑証明書:1通あたり300円前後
- 郵送費、書類の翻訳・認証手数料(国外に証券会社がある場合)
- 証券会社や発行会社への名義変更手数料(0〜数千円程度、会社により異なる)
株式相続で注意すべきポイント
株式の相続は、単なる資産の移転にとどまらず、税金や法的手続き、株式の性質による制約など、さまざまな注意点があります。特に非上場株式では、会社との関係性や経営上の要素が絡むため、慎重な判断が求められます。ここでは、上場・非上場に共通するリスクや注意点、事前に確認しておくべきポイントについて解説します。
1. 株式は分割できない資産
株式は不動産や預貯金と異なり、1株単位での分割が難しく、特に非上場株式では売却や譲渡の自由度が低いため、相続人間での分け方に悩むケースがあります。
- 複数人で均等に分けられない場合、代償分割(現金で調整)や換価分割(売却して分配)が必要
- 遺産分割協議が不成立になると、名義変更ができず配当も凍結される可能性
2. 非上場株式は譲渡制限がある場合が多い
非上場企業では、株主の変更に会社の承認が必要な「譲渡制限付株式」となっていることが一般的です。
- 相続の場合は承認不要なケースもあるが、名義変更には会社への書類提出が必要
- 株主としての地位を持つことに経営責任や税務リスクが伴うことも
3. 名義変更が完了するまで配当金や議決権を得られない
相続手続き中の株式は、名義が被相続人のままになっており、相続人による権利行使が制限される場合があります。
- 配当金が発生しても一時的に受け取りができない
- 株主総会などの議決権を行使できない期間が生じる
※名義変更の完了が遅れることで、実質的な不利益を被る可能性もあるため、手続きは早めに行うべきです。
4. 相続人間のトラブルが起きやすい
株式は評価額が変動する資産であり、分割の難しさも相まって、相続人間の対立が生じやすい項目です。
- 株価の変動で不公平感が生まれる
- 会社経営に関与するか否かで意見が対立
- 感情的な対立から協議が長引くケースも
トラブル回避のためには、生前の段階で遺言書の作成や事前の話し合いを行っておくことが有効です。
5. 相続後の活用・処分にも制限がある
相続した株式を売却・譲渡する場合にも注意が必要です。
- 上場株式は市場価格で自由に売却できるが、譲渡益に課税される
- 非上場株式は買い手が限られ、流動性が極めて低い
- 事業承継を伴う場合は、経営責任や従業員対応が発生する
必要に応じて、他の相続財産で相続税を納め、株式は保有し続けるなどの選択肢を検討することもあります。
まとめ
株式の相続は、預貯金や不動産の相続とは異なる特有の手続きや注意点が多く存在します。特に、株式が上場か非上場かによって相続の流れや評価方法、税額の算定方法が大きく異なる点は重要なポイントです。相続人は、まず被相続人の保有株式を正確に把握し、証券口座や株主名簿などの確認から手続きを始める必要があります。
次に、相続人間で遺産分割協議を行い、合意に基づいて名義変更を実施します。上場株式では証券会社を通じた移管手続きが必要で、非上場株式では会社の承認や株主名簿の書き換えが求められることもあります。名義変更が完了するまでは、配当金や議決権など株主としての権利が制限されるため、できるだけ早期の対応が求められます。
また、相続税や準確定申告に関しても期限が定められており、申告漏れや遅延がペナルティの対象になるため、注意が必要です。上場株式は相続時点の市場価格をベースに評価され、非上場株式は会社の財務状況や業種によって複雑な評価方法が適用されます。これらの点からも、早い段階で税理士や弁護士といった専門家の力を借りることが、相続をスムーズに進めるうえで不可欠です。
株式相続は、相続人の知識や判断力によって大きく結果が左右される分野です。適切な知識と計画をもって臨むことで、家族間のトラブルを防ぎ、資産の継承を円滑に行うことが可能となります。
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