初めてでも安心!遺言書の書き方と必要な手続き・書類を徹底解説

2025.6.25

  • 相続
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「自分が亡くなった後、家族に迷惑をかけたくない」「相続でもめてほしくない」——そんな思いから注目されているのが「遺言書」です。日本では少子高齢化や多様な家族構成の広がりとともに、相続に関するトラブルも増加傾向にあります。そのなかで、遺言書を活用して財産分配や意思を明確に示しておくことは、残された家族の混乱を避ける大きな手助けになります。 しかし、「そもそも遺言書って何を書けばいいの?」「書き方を間違えると無効になると聞いたけど大丈夫?」「専門家に頼むべきかどうか迷っている」など、遺言書に関する不安や疑問を持つ方は少なくありません。 遺言書は、ただ思いを綴ればよいというものではなく、法的な形式を満たしていなければ無効になる可能性もあります。だからこそ、正しい知識を持ち、自分に合った形式で、確実に意志を残すことが大切です。 この記事では、遺言書の基本的な種類から、それぞれの特徴と注意点、具体的な作成手順、そして専門家に相談するメリットまで、実践的な情報をわかりやすく整理して解説します。初めて遺言書を検討する方から、すでに準備を始めている方まで、幅広い読者の不安を解消するための情報を網羅的にご紹介します。

遺言書の種類と特徴

遺言書は、法的に有効な形式で作成されていなければ、その内容が実現されない可能性があります。日本の法律では、正式な遺言の方式として3つの形式が認められています。それぞれに特徴があり、状況に応じて最適な形式を選ぶことが重要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名をすべて手書きで記し、押印することで成立する最も手軽な方式です。2020年の民法改正により、財産目録については自筆でなくてもパソコン等で作成可能となり、その各ページに署名・押印することで要件を満たせるようになりました。 メリット:  ・費用がかからず、自宅で手軽に作成可能  ・自分一人で作成でき、内容を秘密にしておける  ・思い立った時にすぐ書き直しや追加ができる柔軟性 デメリット:  ・法的要件を満たしていないと無効になる可能性が高い  ・書いたことを誰にも伝えていないと、死後に見つからないリスクがある  ・相続開始後に家庭裁判所の「検認」が必要となり、手続きが煩雑  ・紛失・改ざん・偽造のリスクが常にある

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が遺言の内容を聞き取り、公証役場で作成・保管する方式です。証人2名の立ち会いが必要で、原則として遺言者が口頭で内容を伝えます。原本は公証役場に保管され、本人と証人には正本・謄本が交付されます。 メリット:  ・公証人が法的要件を確認するため、無効となるリスクが極めて低い  ・原本が公証役場に保管され、紛失・改ざんのリスクがない  ・家庭裁判所の検認が不要で、相続手続きがスムーズ  ・内容が明確に記録され、相続人間の争いを予防できる デメリット:  ・作成には手数料がかかる(財産額に応じて変動)  ・証人2名の立ち会いが必要(ただし、公証役場で紹介も可能)  ・遺言内容が証人や公証人に知られるため、完全な秘密性は保てない

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公証役場で遺言の存在だけを証明してもらう形式です。遺言書の内容は本人以外には知られませんが、遺言書の存在自体を公証人と証人2名に確認してもらいます。 現在ではあまり利用されておらず、実務上も普及していない形式です。複雑な手続きと、内容の法的有効性を確認できない点から、公正証書遺言や自筆証書遺言のほうが現実的な選択肢といえます。

遺言書に書けること

遺言書は、遺産の配分を決定するだけでなく、民法で定められた複数の重要な事項について法的効力を持たせることができる文書です。遺言で決めることができる内容は、財産に関することにとどまらず、家族関係や後継者指定など、多岐にわたります。ここでは、具体的に遺言書で何を定められるのか、その内容を詳しく見ていきましょう。

相続分の指定と遺産分割方法の指定

遺言者は、法定相続分とは異なる割合で、相続人に対して相続分を指定することができます。たとえば、「長男に土地をすべて、次男に金融資産を分ける」など、個別の事情を反映した分配が可能です。さらに、遺産をどのように分割するか、具体的な方法を指定することもできます。これにより、相続人間の争いや混乱を未然に防ぐことができます。

特定の相続人を廃除・廃除の取消し

遺言者は、特定の相続人を「遺留分」を除いて相続から外すこと(廃除)も可能です。これは、暴力・虐待・著しい非行などがあった場合に限り、有効となります。また、過去に行った廃除を取り消す(取消し)ことも、遺言によって可能です。これにより、相続人の範囲を遺言者の意志で調整することができます。

遺贈(相続人以外への財産の譲渡)

遺贈とは、法定相続人以外の第三者に財産を遺す行為であり、遺言によって指定することが可能です。たとえば、内縁の配偶者や介護を担ってくれた知人、特定の慈善団体などへの金銭的支援を遺言で実現することができます。遺贈には、すべての財産を包括的に与える「包括遺贈」と、特定の財産のみを譲渡する「特定遺贈」があります。

子の認知

婚姻関係外で生まれた子どもを遺言で認知することができます。これにより、その子は法律上の相続人となります。生前には認知を行わなかったが、死後はきちんと法的地位を与えたいという場合に有効な手段です。

未成年後見人の指定

未成年の子どもがいる場合、その親権者が亡くなった後の「後見人」を遺言で指定することができます。後見人は、未成年者の財産管理や生活面のサポートを行う重要な存在です。信頼できる親族や第三者をあらかじめ指定しておくことで、子どもにとって最良の環境を確保できます。

祭祀承継者の指定

遺言では、自身の墓地・仏壇・位牌など「祭祀財産」を誰が継承するかも定めることができます。これは一般的な財産分与とは異なり、慣習的・宗教的な側面も含むため、家族の中で希望する者を明確にしておくことが望まれます。 このように、遺言書には相続財産の分配だけでなく、家族関係や個人的な希望を法的に明確化できる力があります。遺言を活用することで、相続をめぐる混乱を回避し、遺された家族への思いやりを形にすることができるのです。

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言の作成

公正証書遺言は、法律の専門家である「公証人」が遺言の作成に関与する方式で、もっとも法的に確実性の高い遺言書とされています。自筆証書遺言と異なり、無効になるリスクが極めて低く、家庭裁判所の検認も不要なため、遺言の執行がスムーズに進みます。ただし、その分、手続きには準備が必要で、証人の手配や書類の整備も求められます。以下に、公正証書遺言を作成する一般的な流れを詳しく解説します。

1. 遺言内容の整理と意思確認

まずは、自分がどのように財産を分配したいか、相続人に何を伝えたいかを整理します。必要であれば、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談することで、希望を法的に実現可能な形に落とし込むことができます。遺言者が高齢の場合や病気の場合は、意思能力が明確であることを確認することも重要です。

2. 公証役場への事前相談・必要書類の準備

遺言作成を希望する公証役場に連絡し、事前相談の予約を取ります。ここでは、遺言の大まかな内容や準備書類についての指示を受けます。以下が一般的に必要とされる書類です:  ・遺言者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)  ・遺言者の戸籍謄本  ・相続人の戸籍謄本(または住民票)  ・財産の内容がわかる資料(登記簿謄本、不動産評価証明書、預金通帳のコピーなど)  ・遺贈する場合は受遺者の住所・氏名等 準備すべき資料は遺言の内容によって変わるため、詳細は公証人の指示に従ってください。

3. 証人の手配

公正証書遺言には、遺言者以外に2名の証人が必要です。証人には以下のような要件があります:  ・成年であること  ・遺言の利害関係者でないこと(相続人や受遺者、その配偶者などは不可) 証人は遺言の内容を知る立場になるため、信頼できる人物を選ぶ必要があります。どうしても自分で選べない場合は、公証役場で紹介してもらえるケースもあります(紹介料がかかる場合があります)。

4. 公証人による遺言書作成と署名・押印

すべての準備が整ったら、公証役場で遺言作成の日程を調整します。当日は遺言者本人と証人2名が立ち会い、公証人が遺言内容を口頭で確認・読み上げながら、正式に文書を作成します。その後、遺言者と証人が署名・押印し、公正証書遺言が完成します。 作成された遺言書の原本は公証役場に保管され、遺言者には正本または謄本が交付されます。遺言者の死後、相続人はこの謄本を使って遺言を実行に移すことができます。

5. 費用の支払い

公正証書遺言の費用は、主に3つの要素で構成されます。 【1】公証人手数料(財産額により変動) 公正証書遺言の作成費用は、相続・遺贈の対象となる財産の評価額に応じて定められており、1件あたりの財産ごとに計算される仕組みです。これは公証人手数料令に基づき、全国共通の料金体系で運用されています。

財産価額手数料(基本)
100万円以下5,000円
100万円超〜200万円以下7,000円
200万円超〜500万円以下11,000円
500万円超〜1,000万円以下17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下29,000円
5,000万円超〜1億円以下43,000円
1億円超〜3億円以下43,000円+超過部分ごとに13,000円加算
3億円超〜10億円以下95,000円+超過部分ごとに11,000円加算

さらに、遺言加算として、1億円以下のケースでは一律11,000円が加算されます。つまり、例えば総額2,000万円の財産を指定する遺言の場合、23,000円+11,000円=34,000円が公証人手数料となります。 【2】証人の日当 遺言作成には、法律上、証人2名の立ち会いが必要です。これを自分で用意できない場合、公証役場などで証人を紹介してもらうことが可能です。  ・一般的な証人紹介料:1人あたり6,000〜15,000円程度 信頼できる第三者を証人にすることが望ましいですが、難しい場合は専門家や公証役場の紹介サービスを利用することで、作成作業をスムーズに進めることができます。 【3】専門家報酬(依頼する場合) 公正証書遺言の作成は、個人でも可能ですが、相続関係が複雑な場合や法律上のリスクがあると感じた場合は、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談・依頼するケースが増えています。  ・相場は20万円〜50万円程度(内容や地域、専門家の経験により異なる) 専門家に依頼することで、法的に確実かつ希望を反映した内容の遺言が作成されるため、将来的なトラブル防止につながります。

自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言の作成

自筆証書遺言は、もっとも手軽に作成できる遺言形式です。費用もかからず、思い立ったその日に一人で書くことができる点が最大の魅力です。しかし、形式的な要件を欠いてしまうと無効になるおそれがあるため、手軽さの裏には細心の注意が求められます。ここでは、自筆証書遺言を確実に作成・保管するための流れをステップごとに解説します。

1. 遺言内容の検討・整理

まず最初に、自分の財産の内容と、誰に何を遺すのかを整理します。以下のような要素を考慮すると、スムーズに内容を決定できます:  ・財産の種類と所在(不動産、預貯金、有価証券など)  ・相続人の構成(配偶者、子ども、兄弟姉妹など)  ・特定の人に遺贈したい財産があるか  ・遺言執行者の指定が必要か  ・子の認知や後見人の指定など、家族関係の法的整理が必要か メモや財産目録を先に作っておくと、遺言の内容が明確になり、誤解や抜け漏れを防ぐことができます。

2. 本文の手書き作成

民法第968条に基づき、自筆証書遺言には以下の形式的要件があります  ・全文を遺言者本人が手書きで記すこと(代筆やパソコン不可)  ・日付を明記すること(「2025年6月23日」など具体的に)  ・氏名を署名すること  ・押印すること(実印・認印は問わないが拇印は避けるべき) これらを1つでも欠くと、遺言の効力が認められなくなるおそれがあります。形式には最大限注意しましょう。

3. 財産目録の作成(一部電子化可能)

2020年の民法改正により、遺言書に添付する財産目録は、自筆でなくても構わないことになりました。パソコンやワープロで作成したリストや、不動産の登記事項証明書・預金通帳のコピーを利用することも可能です。ただし、その各ページに遺言者の署名・押印が必要です。  ・複数の銀行口座、不動産などがある場合に便利  ・誤記・重複を防ぎ、相続人の理解を助ける

4. 保管方法の選択

完成した自筆証書遺言は、適切に保管しなければ意味がありません。主な保管方法は以下の2つです: 自宅保管  ・手軽だが、紛失・改ざん・未発見のリスクがある  ・鍵付きの引き出しや耐火金庫などに保管するのが望ましい  ・相続人に存在を知らせておくことが重要 法務局での保管制度(2020年7月開始)  ・保管手数料:1通あたり3,900円  ・家庭裁判所の検認が不要になる  ・死後、相続人が「遺言書情報証明書」の発行を受けられる  ・提出は本人のみ、事前予約と本人確認が必要 安全性と確実性を考えると、法務局による保管制度の利用が強く推奨されます。

5. 信頼できる人への通知

遺言書の存在と保管場所を、家族または信頼できる第三者に伝えておくことで、死後にスムーズに発見・実行されやすくなります。とくに自宅保管を選んだ場合は、誰にも伝えていなかったことで相続手続きが進まないというケースもあるため注意が必要です。

遺言書の例文(基本型)

以下は、法的要件を満たす標準的な自筆証書遺言の例文です。内容や形式に迷った場合は、この例を参考にしながら、実情に合わせて修正してください。 令和7年6月23日 私は、次のとおり遺言します。 1.私の所有する東京都港区○○の土地および建物は、長男○○○○に相続させる。 2.預貯金は、次男○○○○と長女○○○○に等分して相続させる。 3.私のすべての遺産についての遺言執行者として、○○○○(友人)を指定する。 上記のとおり、遺言する。 東京都○○区○○町1丁目1番1号 山田 太郎(署名) 印

専門家に依頼するメリット

遺言書の作成は自分ひとりでも行えますが、法的なリスクや将来のトラブルを避けるために、専門家のサポートを受けるという選択肢は非常に有効です。以下では、その代表的なメリットを4つの視点から簡潔に紹介します。

1. 法的ミスの防止

遺言書には民法で定められた厳格な形式要件があります。例えば「日付の不備」「押印漏れ」「曖昧な表現による財産の特定ミス」など、素人判断では見落としがちな項目も多くあります。専門家に相談することで、こうした形式的な不備を避け、有効性の高い遺言書を確実に作成することができます

2. 内容の明確化とトラブル予防

遺言は遺産の分配だけでなく、家族への思いや配慮を伝える大切な手段でもあります。専門家は遺言者の意図を丁寧に整理し、法律的にも誤解のない表現に落とし込んでくれるため、相続人間の解釈の違いによる争いを防ぐ効果があります。

3. 実務面での支援と負担軽減

遺言書の作成には、戸籍・登記簿・預金情報などさまざまな書類の取得・整理が必要になります。これらを専門家が代行してくれることで、時間や手間の負担を大きく減らすことができます。また、公正証書遺言の場合には、公証役場との連絡や証人手配なども任せることが可能です。

4. 費用と価値のバランス

専門家の報酬相場は内容や依頼先によって異なりますが、おおよそ10万円〜30万円程度です。確かに安い金額ではありませんが、将来的な相続トラブルを防ぎ、遺志を確実に実現するという価値を考えれば、十分に見合う投資といえるでしょう。

まとめ

遺言書は、自分の死後に財産をどのように分配し、どのような思いを家族に託すかを法的に明確にする重要な文書です。本記事では、遺言書の種類ごとの特徴や作成方法、実際の手続きの流れ、さらには専門家を活用するメリットまで幅広く解説しました。 遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。手軽さを重視するなら自筆証書遺言、確実性と安全性を優先するなら公正証書遺言が適しています。また、遺言書では財産の分配だけでなく、相続人の指定、子の認知、遺言執行者の選任など、さまざまな意思を法的に残すことが可能です。 近年では、法務局による自筆証書遺言の保管制度や、専門家のサポートサービスも充実してきており、以前よりも遺言作成のハードルは確実に下がっています。一方で、法的な形式や内容に不備があると無効になってしまうリスクも依然として存在するため、正しい知識と慎重な対応が求められます。 遺言書は、残された家族への「最後のメッセージ」であり、トラブルを未然に防ぐ「思いやりのかたち」です。自分の意思を確実に未来へつなぐためにも、早めの準備と、必要に応じた専門家への相談をおすすめします。

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