現代でも古墳に埋葬できる?その可否・方法・実例を徹底解説

2025.5.20

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はじめに|「古墳に眠りたい」と願う現代人が増えている理由とは

古墳は、日本古来の埋葬文化を象徴する遺産であり、その壮麗な形状や歴史的背景に惹かれる人は少なくありません。近年では、「古墳に埋葬されたい」「古墳のような墓に眠りたい」と願う人々が増加しています。その理由には、現代社会の中で急速に変化する死生観や供養観、そして自然との調和を重視する価値観の広がりが関係しています。 たとえば、従来の石碑を伴う墓地に代わり、自然に近い形での埋葬方法を選ぶ人が増えています。古墳はその代表格であり、樹木葬や散骨と同様、「永遠に自然と一体となる」というイメージを持たせる埋葬形態として再評価されています。 また、古墳という存在自体が、古代の王や権力者を象徴する記念碑的な性格を持つため、そこに眠ることは「歴史の一部になる」というロマンも与えます。個性や自己表現を重視する現代人にとって、そうした意味付けは非常に魅力的に映るのです。

そもそも古墳とは何?

古墳の定義と歴史的背景

古墳とは、3世紀中頃から7世紀後半にかけて、日本列島各地に築かれた墳丘を有する墓の総称です。規模や形状には様々なバリエーションがあり、有名なものとしては前方後円墳、円墳、方墳、八角墳などが存在します。とくに前方後円墳は、大和政権の権力者が葬られたとされ、最も象徴的な形といえるでしょう。 これらの古墳は、単なる個人の墓というよりは、社会的・政治的権力の象徴であり、地域社会における支配構造を可視化したモニュメントでもありました。周囲には葺石や埴輪が配置され、副葬品として武具や装飾品が多数納められるなど、その時代の文化や技術を知る貴重な手がかりにもなっています。 考古学的に見ても古墳は重要で、多くは国や自治体によって史跡や文化財として保護されており、学術的にも観光資源としても高い価値を持っています。

現代人が古墳に惹かれる理由

古墳に惹かれる現代人の動機はさまざまですが、大きく分けると以下のような要素が見えてきます。 歴史的ロマン:古墳は歴史の重みを感じさせる象徴であり、そこに自分の存在を重ねることに魅力を感じる。 自然との調和:石材中心の近代墓地に比べて、土と緑で構成された古墳は自然回帰的なイメージを持ち、環境への配慮とも相性が良い。 個性と選択の自由:画一的な墓地に代わるオリジナリティの高い埋葬形態を求める傾向が強まり、古墳というユニークな選択肢に注目が集まっている。 永続性への希求:「永遠の眠り」というコンセプトに対して、古墳という永続性のある構造体がぴったりと重なる。 これらの要素が重なり、「古墳に埋葬されたい」と考える人は、年齢や宗教観を問わず増えているのが現状です。

現代において古墳に納骨できるのか?

文化財としての古墳には納骨できない理由

まず大前提として、現存する古墳、すなわち3~7世紀に築造されたものは、ほぼすべてが文化財として指定されており、法律によって厳しく保護されています。文化財保護法によれば、史跡の改変・破壊・新たな使用は原則として禁止されています。 つまり、既存の古墳に新たに納骨することは、事実上不可能です。これは、学術的な価値や景観の維持、地域文化の保護などの観点からも当然の措置といえます。 また、文化財に指定されていない場合でも、行政が景観保全や開発規制を設けている地域では、新たな埋葬行為が制限される可能性があります。したがって、古墳そのものに納骨したいという希望は、現代ではかなりハードルの高い願望といえるでしょう。

現代に建てられた古墳型納骨施設とは

そこで登場するのが、「現代型古墳」とも呼ばれる、古墳の形状を模して新たに設計された納骨施設です。これらは歴史的な古墳ではなく、民間事業者や宗教法人が現代の技術と法制度に基づいて新たに造成したものです。 たとえば、神道式の祭祀が行われる神社霊園、あるいは宗教不問の永代供養墓として設計された前方後円墳型の樹木葬などがその代表です。これらは墳丘の形状こそ古墳に似せていますが、構造は墓地法や火葬法に則った現代仕様となっており、納骨堂や地下の合葬施設を備えている場合もあります。 このような現代古墳では、自然の中での埋葬や宗教儀式が融合し、従来の墓地にない「象徴性」と「物語性」を持った供養の場として、注目されています。

納骨が可能な古墳の条件

現代において納骨が可能な古墳型施設には、いくつかの条件があります。 墓地としての正式な許可を得ていること:地方自治体による認可を受けた墓地であることが前提です。 安全性と構造基準を満たしていること:地盤や施設の構造が災害などに対して安全に設計されている必要があります。 維持管理体制が整っていること:永代供養であっても、草木の手入れ、祭祀の継続、納骨記録の保存などがなされる体制が求められます。 宗教的な柔軟性:宗教不問の施設であるか、特定宗教の形式に沿った埋葬が可能かを確認する必要があります。

こうした条件を満たした古墳型納骨施設であれば、法的にも実務的にも安心して埋葬することが可能です。次章では、その具体的な流れを詳しく見ていきます。

現代古墳で納骨するまでの流れ

現代での納骨可能な古墳の探し方と契約の手順

現代古墳に納骨するためには、まず施設の情報収集から始めます。インターネット上には、多くの霊園や供養施設の公式サイトがあり、古墳型納骨墓についての詳細を公開しています。比較検討する際は、以下のポイントを確認するのが良いでしょう。 墳丘の大きさや形状(前方後円墳、八角墳など) 個別納骨か合祀納骨か 永代供養の有無とその内容(供養の頻度、管理体制など) 宗教形式(神道式、仏教式、宗教不問など) 設備(納骨堂、祭壇、見晴らしの良さなど) 施設見学を受け入れている霊園も多いため、実際に足を運んでみるのもおすすめです。見学時には職員から直接説明を受けられるため、疑問点を解消しやすく、安心して契約に進むことができます。 契約の流れは一般的に以下の通りです。 資料請求・現地見学 プランの選択(個人用、夫婦用、家族用など) 契約書の記入・提出 必要書類の準備(火葬許可証、戸籍謄本など) 支払い手続き(銀行振込、分割払い可能な場合も) 納骨日や祭祀の希望がある場合は、契約時にあわせて相談しておくとスムーズです。

契約後の準備と納骨方法

契約が完了すると、納骨に向けた具体的な準備が始まります。一般的には以下のようなステップを踏みます。 納骨予定日の調整(季節や家族の都合を考慮) 必要な儀式の選択(神道式の納骨祭、仏教式の法要など) 遺骨の状態確認(粉骨が必要な場合もある) 納骨方法には大きく分けて以下の2種類があります。 【個別納骨】 古墳の表面や地下にある個別の埋葬室に、骨壺を納める方式です。区画ごとに区切られており、名前の刻印が可能です。ペットと一緒に入れる区画を提供する霊園もあります。 【合祀納骨】 一つのスペースに複数人の遺骨をまとめて埋葬する方式です。個人の区画はありませんが、費用を抑えられることや、後継ぎ不要で管理不要な点が特徴です。一度納骨すると返還できない点には注意が必要です。 納骨の際には、墓誌への彫刻(名前・命日など)を行う場合もあり、別途費用が発生します。また、祭祀を省略することも可能ですが、伝統的な儀式を望む場合は霊園側と事前に調整が必要です。

費用の目安と留意点

現代古墳での納骨にかかる費用は、選択する施設やプランによって異なりますが、以下の項目で構成されるのが一般的です。 永代使用料:墓所を永続的に使用する権利。個別区画で20万~50万円前後が相場。 管理費:草木の手入れや施設維持のための費用。年額で数千円~1万円程度、または一括払いの場合もあり。 納骨料:遺骨を墓所に納める作業費。1万~3万円が多い。 墓誌彫刻料:名前を墓誌に刻むための費用。1~3万円程度。 植栽維持費:樹木や芝の維持管理費。数千円から。 合祀墓を選ぶとこれらの費用が圧縮され、10万円台から利用可能な施設もあります。さらに、粉骨処理や儀式費用などオプション料金が別途必要となるケースもあるため、トータルの見積もりを事前にしっかり確認することが大切です。 費用の安さだけで選ぶのではなく、「どのような形で供養されるのか」「自分らしい最期を迎えられるか」という視点を持つことが重要です。自らの信念や希望に沿った供養ができる場所を見つけることが、現代古墳を選ぶ上での最大のポイントと言えるでしょう。

古墳型納骨を提供する事業者の紹介

現在、日本国内ではいくつかの事業者が、古墳型納骨を特色とする霊園や供養施設を運営しているようです。以下では、代表的な3つの事業者を、所在地、特徴、納骨形式、供養形式、費用の概要、利用対象という共通の軸に基づいて紹介します。

株式会社前方後円墳

所在地:香川県高松市・千葉県野田の霊園にて古墳型墓所を展開 特徴:神道形式に基づく本格的な古墳型納骨施設を展開しており、名称通り「古墳墓」を提供。古墳には三種の神器(鏡・剣・勾玉)を模した副葬品が埋蔵され、伝統と格式を重んじた設計がなされています。 納骨形式:個別納骨(永代祭祀墓・地下納骨堂)、および合祀納骨に対応。芝生に覆われた古墳の地表下や内部施設に納骨可能。家族単位での隣接区画利用やペット納骨にも対応している霊園あり。 供養形式:神道式の御霊祭(みたままつり)を年2回開催。全埋葬者の名前を神主が唱え、厳かな神式の祭祀を行う。仏教式の法要にも対応可能。 費用の概要:永代使用料、納骨料、墓誌彫刻料、植栽維持費を含む一括払い制。永代祭祀墓の使用期間は20年で、10年単位の延長が可能。合祀墓は使用期限なし。承継者不要・年会費不要。 利用対象・条件:宗教不問、檀家義務なし。生前申込も可能。後継者のいない方にも対応。

公益財団法人新宮霊園

所在地:福岡県粕屋郡新宮町 特徴:「自分らしく、永遠に」をテーマに、多様な納骨ニーズに応える霊園。中でも古墳型永久墓は、前方後円墳型の巨大な墳丘(全長53m・高さ3.5m)を再現し、自然と共生する埋葬様式を提供。 納骨形式:完全個別納骨。遺骨は個室区画に土中埋葬され、長い年月をかけて自然に還る設計。合祀は行わず、埋葬者ごとに区画が用意される。 供養形式:月1回の定期供養を霊園側が永続的に実施。供養内容は宗教色を抑えた形で、どの信仰の方でも利用可能。 費用の概要:申込金28万円、永久管理費7.7万円。それ以降の費用は不要。供養や維持管理は全て霊園が行い、遺族や承継者の負担は発生しない。 利用対象・条件:後継者不要、宗教不問。生前予約も可能。単身者や子どもに負担をかけたくない方に特に好適。

みたまやすらぎの里稲足神社霊園

所在地:東京都あきる野市 特徴:稲足神社が運営する霊園で、自然豊かな丘陵地に前方後円墳型・八角墳型の古墳型樹木葬「ときは」を造成。樹木葬と古墳の融合を図った設計で、「とこしえに変わらない」静謐な眠りを象徴。 納骨形式:合祀型を基本とし、一定期間個別で納骨堂に納めた後、古墳型合葬墓に改葬する二段階プランも提供。納骨堂の使用は5年単位で最大20年まで延長可能。 供養形式:神道形式の祭祀が中心。御神体が墳墓に奉安され、祭壇を通じてお墓参りや祈りが行える。個別供養や年中行事にも参加可能。 費用の概要:合葬墓「ときは」の使用料は1柱15万円。納骨堂を併用するプランは、5年で10万円+「ときは」使用料15万円の合計25万円。以降、10万円/5年で延長可能。 利用対象・条件:宗教不問、承継者不要。生前契約可。都市近郊でアクセスしやすく、静かな自然に囲まれた環境を求める方に適している。

このように、それぞれの事業者は異なる宗教的背景や設計思想を持ちながらも、古墳という歴史的構造を現代に蘇らせ、個人の尊厳ある埋葬を支える取り組みを行っています。選択にあたっては、供養形式の適合性、費用体系、将来的な管理の安心感などを総合的に判断することが重要です。

古墳以外の象徴的な埋葬の選択肢

古墳型納骨は、その歴史的意義と象徴性において特別な位置を占めますが、近年の供養形態は多様化しており、古墳以外にも多くの象徴的な埋葬スタイルが選ばれています。ここでは、代表的な代替例をいくつか紹介します。

樹木葬

樹木葬は、遺骨を墓石の代わりに樹木の下に埋葬する方法で、自然回帰志向の強い埋葬形態です。遺骨は通常、骨壺に入れたまま土中に埋葬するか、粉骨後に直接土に還す方法が取られます。シンボルツリーを個別に植樹する場合もあれば、共同で一つの大きな木を囲む形で埋葬されることもあります。 自然と一体になることへの共感や、墓石を持たないという点で管理費がかからないことから、多くの人に選ばれています。また、環境負荷の低さも近年のSDGs意識の高まりと相まって注目されています。

散骨

散骨は、海洋や山林、樹林地など自然環境に遺骨を撒く形式の埋葬です。法的には火葬後の遺骨を粉骨し、節度ある方法で散骨することが求められており、主に海洋散骨が一般的です。 個人が自然の一部として還元されるという考え方に魅力を感じる人が多く、宗教にとらわれず、自由なスタイルでの最期を望む方に人気があります。一方で、遺族がお参りできる場所が無くなることや、近隣住民とのトラブルを避けるための配慮が必要です。

ガーデン墓

ガーデン墓は、芝生や草花に囲まれた庭園風の墓地で、石碑を設けず、ナチュラルな景観の中で供養が行われる形式です。欧米式の共同墓地に近いスタイルで、都市部でも整備が進められており、見た目にも優しく、心理的な負担が軽減されるという利点があります。 個別区画にプレートを設置する形式や、合葬式のものもあり、価格帯も広く、多様なニーズに対応しています。自然志向でありながら、遺族のための記念碑的要素も残したいという方には好適な選択肢です。

これらの埋葬方法はすべて、現代人の「自分らしさ」や「環境との共生」といった価値観に基づいており、古墳型納骨と同様に象徴的な意味を持ちうる新しい供養の形です。

記憶としての墓をどう考えるか

従来、墓は遺族が故人を偲ぶ「場所」としての役割を担ってきました。しかし、ライフスタイルの変化や少子化、都市化の進展により、物理的な墓所を持たない供養のあり方も広まりつつあります。 たとえば、近年では「デジタル墓」と呼ばれる、インターネット上にメモリアルページを設けるサービスが登場しています。ここでは写真や動画、故人へのメッセージなどを家族や友人が投稿でき、時と場所を問わず供養を行える利便性があります。 また、遺灰を人工ダイヤモンドに加工して身につけたり、メモリアルアートとして残す方法も人気です。これらは「モノ」ではなく、「記憶」や「想い」を中心とした供養を実現する手段であり、物理的な墓を持つことが難しい人や、より個性的な供養を望む人にとって、大きな意味を持ちます。 このように、「墓は場所ではなく記憶の器」という認識が広がる中、供養の形はますます多様化しています。古墳という象徴的な形式を選ぶにせよ、無形の記憶に残す形を選ぶにせよ、最も重要なのは故人の人生と尊厳をいかに表現し、受け継ぐかという視点なのです。

古墳に納骨するという選択肢の本質とは

現代における古墳型納骨は、単なるユニークな埋葬方法にとどまりません。それは「生きた証を、歴史の中に刻む」選択であり、自然との調和、永続性、そして精神的な安らぎを追求する現代人にとって極めて象徴的な選択肢です。 古墳は、かつて権力者や有力者の墓として、社会の中心的存在であった人々の魂を祀る場でした。その伝統を現代に受け継ぎつつ、個人の意思や価値観を尊重する形で再構築されたのが、今日の古墳型納骨施設です。 私たちは今、画一的な供養から多様で柔軟な供養へと価値観を移行させています。宗教や形式に縛られることなく、自分らしい「終の住処」を自ら選ぶ時代が到来しているのです。古墳型納骨は、その自由と象徴性を見事に体現した選択肢といえるでしょう。 また、現代古墳は「場所」としての墓に加え、供養の儀式や空間の持つ精神的な価値、さらには社会や家族に対するメッセージ性も含んでいます。歴史や文化とのつながりを感じながら、個の人生を静かに締めくくる場として、これほどふさわしい場所はありません。 もちろん、古墳以外にも多くの魅力的な埋葬スタイルが存在します。樹木葬、散骨、デジタル供養など、選択肢は時代とともに広がっていますが、大切なのは「自分にとって最も自然で納得のいくかたち」を見つけることです。 古墳に納骨するという選択肢は、歴史に寄り添いながら、自分らしく最期を迎えるための一つの道です。今後もこうした象徴的で本質的な供養の形は、さらに注目を集めていくことでしょう。

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