「手水の儀」って何?神社参拝でやるあれの正しいやり方

「手水の儀」って何?神社参拝でやるあれの正しいやり方

公開日: 2024.11.1     更新日: 2024.12.10

日本の神社や寺院を訪れると目にする「手水舎」。ここで行われる「手水の儀」は、参拝者が心身を清め、神仏に向き合う準備を整えるための作法です。しかし、具体的な手順や作法を正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?また、神社と寺の参拝方法には微妙な違いがあるため、初めて訪れる際には戸惑うことも多いでしょう。

この記事では、手水の儀に関する詳細な説明を通じて、その目的や意味、正しい手順、神社と寺の参拝方法の違い、そして参拝時のマナーと注意点を解説します。これを読めば、どんな場面でも自信を持って参拝できるようになり、より豊かな時間を過ごせるはずです。

1. 手水の儀の目的と意味

手水の儀とは?

手水(ちょうず)とは、神社や寺院を訪れる際に、参拝前に水を使って手や口を清める作法を指します。この作法は、日本の伝統的な宗教文化に深く根差しており、参拝者が神聖な空間に足を踏み入れる前に行う大切な準備です。

手水を行う場所は「手水舎(ちょうずや、てみずしゃ)」と呼ばれ、多くの場合、神社や寺院の入り口付近に設置されています。この手水舎で身を清めることによって、参拝者は心身を整え、穢れを払い、祈りを捧げる準備をします。

手水舎には、大きな水槽と柄杓(ひしゃく)が備えられており、誰でも簡単に手水を行えるようになっています。この清めの作法には、神仏への感謝を表現するだけでなく、日常生活で溜まった心身の穢れを落とし、神聖な行いにふさわしい状態にするという意味合いが込められています。手水の作法をしっかりと行うことは、参拝の始まりとしてとても重要です。

目的

手水の儀の主な目的は、心身の穢れ(けがれ)を払い、清らかな状態で神仏に向き合うことです。この作法の背景には、古代日本の宗教的信仰が深く関係しています。日本では、水は「清め」の象徴とされてきました。この考え方は、古代の禊(みそぎ)や雨乞いの作法においても見られます。禊とは、川や海で体を洗い流して穢れを取り除く行いのことで、手水の儀はその簡略化された形として現代に受け継がれているのです。

意味

手水の儀には、以下のような深い意味が込められています

・清浄な状態の確立

手水を通じて、自分自身の心を穏やかに整えることができます。現代の忙しい日常生活の中で溜まりがちなストレスやネガティブな感情を一度リセットし、神仏の前で清らかな状態で祈る準備をします。

・作法の実践

手水を丁寧に行うことで、神仏に対する誠意を示すことができます。この行いは、単なるマナーや形式ではなく、自分自身の心を込めて清めることで、神仏とのつながりを深める方法の一つです。

・文化の伝承

手水の儀は、日本独特の伝統的な参拝作法の一つとして、訪れる人々に深い印象を与えます。この作法を通じて、日本人の自然や神仏を尊ぶ精神、そして丁寧さや清らかさを重んじる文化的な価値観に触れることができます。

2. 手水の正しい手順と作法

手水の具体的な手順

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手水は以下の6つのステップに分かれます。スムーズに行えるよう、事前に覚えておくと便利です。

1.柄杓(ひしゃく)を右手で持つ

手水舎にある柄杓を右手で持ち、適量の水をすくいます。このとき、勢いよく水をすくうのではなく、静かに行うことが大切です。

2.左手を清める

柄杓を右手で持ったまま、左手に水を流します。しっかりと水をかける意識を持ちましょう。

3.右手を清める

次に、柄杓を左手に持ち替え、右手に水を流します。

4.口をすすぐ

再び柄杓を右手に持ち替え、左手に少量の水を受け取ります。この水を口に含み、静かにすすぎます。水は飲まず、口を清めるだけです。すすいだ後は地面に静かに吐き出します。すすいだ水を水盤に戻すのは避けましょう。

5.左手を再度清める

口をすすいだ後、もう一度左手に水をかけて清めます。

6.柄杓を清める

最後に、残った水で柄杓を清めます。柄杓を立て、柄の部分に水を流して清めた後、元の位置に戻します。

注意点とマナー

・一連の動作を一つの柄杓で行う

水を使いすぎず、必要な分だけ使うのが基本です。

・静粛に行う

水を勢いよく撒いたり、音を立てたりするのは控えましょう。

・順番を守る

混雑時には、他の参拝者の順番を待ち、譲り合いの精神を持つことが重要です。

・柄杓に直接口をつけない

口をすすぐ際には、柄杓に直接口をつけることは避けましょう。左手に水を受けて口に運ぶのが正しい作法です。柄杓は共用の道具であるため、清潔さを保つ配慮が求められます。

・手水が終わった後の行動に注意する

手水を終えた後は、ハンカチやタオルで手を軽く拭き、濡れた手で神社の設備を触らないようにしましょう。ただし、ハンカチの使用が禁止されていない限り、拭くことを躊躇する必要はありません。また、清めた手で顔や髪に触れると再び汚れてしまうので注意が必要です。トイレを利用した場合は、手水舎で再度清めるとより丁寧な参拝となります。

3. 手水舎がない場合や手水舎が汚れている場合

神社や寺院を訪れる際、手水舎が設置されていない場合や、手水舎が汚れている、または清掃が十分でない場合があります。このような状況でも、清めの意識を持ち、適切な対応をすることで丁寧な参拝を行うことが可能です。以下に、それぞれの場合の対処法を紹介します。

ペットボトルや水筒の水を利用する

手水舎がない、または汚れている場合は、ペットボトルや水筒に入れて持参した水を使って手を清めるのがおすすめです。少量の水を手や指先にかけ、周囲を濡らさないよう注意しながら行いましょう。清潔で使いやすい水を自分で用意することで、どのような状況でも清めの作法を実践できます。また、静かで目立たない場所で行うことが望ましいです。

ウェットティッシュや除菌シートを使用する

ウェットティッシュや除菌シートも、手水舎がない、または汚れている場合の便利な代替手段です。手や指を丁寧に拭き取ることで、簡易的に清めることができます。除菌シートを使えば、衛生面での安心感も得られます。ただし、使用後のゴミは必ず持ち帰り、境内に捨てることは避けましょう。また、他の参拝者や神社の雰囲気に配慮し、目立たないように静かに行うことが大切です。

手水舎が汚れている場合の対応

手水舎自体が汚れている場合は、無理にその水を使う必要はありません。不衛生な手水舎の水を使用すると、体調を崩したり、清める目的が達成されない可能性があります。このような場合は、ペットボトルの水やウェットティッシュを代わりに使用するのが良い選択肢です。また、手水舎に水が溜まっていない場合や、柄杓が使えない場合も同様に、自分で用意したアイテムを活用してください。

4. 神社と寺の参拝方法の違い

日本には、神社と寺という二つの宗教施設があり、それぞれ異なる参拝作法が存在します。神社は主に神道の神々を祀る場所であり、寺は仏教の信仰の場として多くの人々が訪れます。それぞれの文化や信仰に基づいた作法で参拝することが求められます。以下に、神社と寺の参拝方法について詳しく説明します。

神社の参拝手順

神社では、神道の教えに基づいた「二礼二拍手一礼」という作法が基本です。この形式的な参拝方法は、日本の伝統文化として受け継がれています。

1.鳥居をくぐる前に一礼

鳥居は神域と俗世を分ける象徴的な門であり、神社の入り口です。鳥居をくぐる前には、神聖な空間に入るために一礼を行います。また、参道の中央は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、神様が通る道とされていますので、道の端を歩くように心がけましょう。

2.手水の儀を行う

手水舎で手と口を清めることで、心身を整え、穢れを祓います。正しい手順を守ることで、清らかな状態で参拝が可能となります。

3.参拝の作法(「二礼二拍手一礼」)

・二礼

姿勢を正し、腰を90度近く曲げて深いお辞儀を2回行います。

・二拍手

胸の高さで両手を合わせ、右手を少し下にずらした状態で2回拍手をします。

・祈願

両手を合わせたまま、心を込めて祈ります。

・一礼

最後に、心を込めて深いお辞儀を1度行い、参拝を締めくくります。

4.鳥居を出る前に一礼

参拝後、鳥居を出る際に再度一礼してから神社を後にします。

寺の参拝手順

寺では仏教の教えに基づき、「合掌」と「一礼」を基本とした静かな参拝作法が重視されます。神社と異なり、静粛な雰囲気を大切にすることがポイントです。

1.山門で一礼

寺の入り口である山門は、仏教の世界と俗世を分ける門です。山門をくぐる前には、静かに一礼を行い、仏教の聖域に入る準備をします。

2.手水の儀(手水舎で清める)

手水舎がある寺では、手と口を清めることが基本ですが、省略されている場合もあります。その場合は、静かに祈りを捧げて心を整えましょう。

3.参拝の作法(「一礼・合掌」)

・お賽銭を入れる

賽銭箱にお賽銭を静かに入れます。金額ではなく、心を込めることが大切です。

・合掌して一礼

胸の前で両手を合わせ、静かに一礼をします。

・祈願

合掌したまま、心の中で感謝や祈りを捧げます。願い事だけでなく、日々の感謝を伝えるのが仏教的な特徴です。

・再度一礼

祈りを終えた後、もう一度静かに一礼をして参拝を終えます。

4.山門を出る前に一礼

寺を出るときも、山門を出た後に軽く一礼します。

5. 参拝時のマナーと注意点

参拝をより丁寧に行うためには、以下のマナーと注意点を押さえておくことが大切です。これらを意識することで、より心地よい参拝ができ、周囲の参拝者や施設にも配慮した行動が取れるようになります。

服装の注意

参拝時には、神聖な空間にふさわしい服装を心がけましょう。カジュアルすぎる服装や露出の多い服装は避け、清潔感のある服を選ぶことが大切です。特に正式な参拝や儀式に参加する場合は、スーツや和装などきちんとした服装が望ましいです。

写真撮影のルール

多くの神社や寺院では写真撮影が許可されていますが、御神体や本殿など、撮影禁止のエリアも存在します。案内表示をよく確認し、ルールを守りましょう。また、他の参拝者の邪魔にならないよう配慮し、静かに撮影を行うことが求められます。

御朱印のマナー

御朱印をいただく際には、事前に御朱印帳を用意し、対応する係の方に感謝の気持ちを伝えましょう。混雑している場合は、順番を守り、譲り合いの精神を持つことが大切です。また、御朱印帳の表紙や中身を清潔に保ち、乱雑な状態で持ち込まないように心がけましょう。

境内での飲食や喫煙

神社や寺院の境内では、飲食や喫煙を避けましょう。特に参道や手水舎の近くでは控えるのがマナーです。必要な場合は、指定された場所で行うか、境内を出た後に行うことをおすすめします。

子ども連れでの参拝

小さなお子さんと一緒に参拝する場合は、静かに過ごせるよう配慮をしましょう。走り回ったり、大声を出したりしないよう注意し、周囲の雰囲気を損なわないよう心がけます。また、事前に手水の作法を教えてあげることで、一緒に正しい参拝を体験することができます。

境内の設備への配慮

参拝中や手水の儀を終えた後、濡れた手で境内の設備や扉などに触れないよう注意しましょう。ハンカチやタオルを持参して手を拭くことで、清潔さを保ちながら設備を大切に扱うことができます。

まとめ

手水の儀は、神社や寺院で参拝前に心身を清める大切な作法であり、正しい手順や対応を知ることが重要です。手水舎がない場合でも、ペットボトルやウェットティッシュを活用するなどの代替手段があります。また、神社と寺では参拝方法が異なり、「二礼二拍手一礼」や「合掌・一礼」など、それぞれの信仰に応じた作法を守る必要があります。さらに、服装や写真撮影、御朱印の受け方などのマナーを心がけ、清らかな状態で神仏に向かうことが豊かな参拝につながります。

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