社葬とは?|流れ・準備・マナーまで担当者必見のガイド

社葬とは?|流れ・準備・マナーまで担当者必見のガイド

公開日: 2025.7.25

経営者や役員など企業の中核を担っていた人物が亡くなった際、会社が主体となって執り行う葬儀が「社葬(しゃそう)」です。これは単なる個人の葬儀ではなく、企業としての敬意を表し、社内外に故人の功績を伝える重要なセレモニーです。

しかしながら、一般の葬儀とは異なり、社葬には特有のマナーや段取りが存在します。実施する企業にとっては、事前準備から当日の進行、アフターフォローまで多岐にわたる業務が求められ、初めて担当する方にとっては戸惑う場面も多いでしょう。また、参列者側も、企業葬儀ならではの振る舞いや服装、弔意の示し方に注意が必要です。

本記事では、「社葬とは何か?」という基本的な定義から、一般葬との違い、さまざまな社葬の種類、準備と進行の流れ、参列時のマナー、弔電・お香典の扱い方まで、担当者・参列者の両視点で詳しく解説していきます。これを読めば、社葬の全体像をつかみ、自信をもって対応できるようになります。

社葬とは?

社葬とは、企業や団体が主催し、組織の一員として故人を追悼するための葬儀形式です。主に創業者、取締役、会長、社長など、企業に大きな影響を与えた人物が対象となり、企業の名において故人の功績を称え、社会的に弔意を表す公的な儀式として行われます。

社葬の目的

社葬の第一の目的は、企業として故人の功績を称え、正式な形で哀悼の意を表すことです。同時に、社葬は社外に向けたメッセージでもあり、企業がどのような人物を評価し、どのような文化を持っているかを示す場にもなります。また、社内的には、社員が一丸となって故人を偲ぶことで、組織としての一体感を強める効果も期待されます。

さらに、社葬は取引先、関係団体、行政、報道機関など多方面の関係者を迎える場となるため、企業の信用やイメージに直結する重要なイベントでもあります。準備の段階から運営に至るまで、ビジネス上の視点とマナーの両面が求められるのが特徴です。

社葬と一般葬の違いを比較する

一般葬と社葬には、目的や主催者、参列者、費用の面で明確な違いがあります。以下にポイントごとに解説します。

主催者の違い

  • 一般葬は遺族が主催する私的な葬儀です。

  • 社葬は企業が主催し、組織的に執り行います。

この違いによって、関係者の役割分担や運営体制も大きく異なります。

目的の違い

  • 一般葬は個人としての故人を悼み、家族や親族が中心となって行われます。

  • 社葬は故人の業績を公にたたえ、組織全体として弔意を表す儀式です。

社葬では企業の対外的なイメージも問われるため、式の運営には広報的・儀礼的な視点が必要です。

費用の違い

  • 一般葬では費用は基本的に遺族が負担し、香典などで一部補われます。

  • 社葬では企業が費用を負担します。祭壇費、会場費、弔問者対応、返礼品など多くのコストがかかるため、社内での会計処理や税務上の取り扱いにも注意が必要です。

参列者の違い

  • 一般葬には親族や友人、近隣住民などが中心に参列します。

  • 社葬には役員、社員のほか、取引先、株主、行政関係者、報道関係者など社外の重要人物も数多く参列する傾向があります。

社葬は、単なる葬儀という枠を超えた「企業文化の表現の場」として機能するため、その影響範囲は極めて広範です。

このように、社葬は一般葬と異なる多くの側面を持っており、企業の社会的責任や価値観を可視化する重要な儀礼といえます。運営には戦略的な配慮が求められ、担当者には相応の準備と理解が不可欠です。

社葬の3つの形式を解説

社葬にはいくつかの種類があり、企業の規模や方針、故人の地位や功績、参列者の範囲などによって適切な形式が選ばれます。ここでは代表的な3つの形式「合同社葬」「企業単独社葬」「社内葬」について、それぞれの特徴と違いを詳しく見ていきましょう。

1. 合同社葬

合同社葬は、複数の企業・団体・自治体などが合同で主催する社葬です。たとえば、経済団体と所属企業が共同で行う場合や、同一業界の複数社が協力して実施するケースがあります。

特徴

  • 費用や手間を複数の組織で分担できる

  • 大規模な葬儀となりやすく、社会的影響も大きい

  • 司会進行や挨拶順など、調整事項が増える

適用例

  • 地域経済に大きな影響を与えた経営者や、業界を代表する人物など

2. 企業単独社葬

最も多く採用されるのが、企業単独で主催する社葬です。1社の責任で企画・運営を行い、取引先や関係者を招いて故人を偲びます。

特徴

  • 組織の方針や文化を反映しやすい

  • 自由度が高く、規模や進行も調整しやすい

  • 社葬委員会を設け、社内外の連携が必要

適用例

  • 企業創業者、歴代社長、会長など、社の象徴的な人物の葬儀

3. 社内葬

社内葬は、社外には通知せず、社員や関係者のみで簡素に執り行う社葬形式です。コストや時間を抑えつつ、社内で故人を偲ぶことを目的としています。

特徴

  • 小規模・短時間で実施可能

  • 遺族の意向を尊重しつつ、社としての弔意を示せる

  • 公的な意味合いは薄く、比較的カジュアル

適用例

  • 現役の中間管理職や長年勤続した従業員など、社内での弔意を表す場として活用される

選択のポイント

それぞれの社葬形式にはメリット・デメリットがあるため、企業の文化、故人の立場、社外への影響度などを踏まえた慎重な検討が必要です。費用と工数、対外的な印象、社内外の反応を総合的に評価することが求められます。

社葬の準備から当日までの流れ

社葬 流れ

社葬は一大イベントであり、準備から当日、そして式後の対応に至るまで、多くの工程が関係します。特に企業が主催する場合、遺族や関係者との連携、社内外への連絡、式の進行管理など、担当者に求められる業務は非常に多岐にわたります。ここでは社葬の一般的な流れを時系列に沿って詳しく解説します。

1. 故人の逝去と社葬の実施決定

まず、訃報を受けた企業では、社葬を行うかどうかを経営陣が協議して決定します。ここで重要なのは、遺族の意向を尊重することです。社葬を希望するか、家族葬や密葬にしたいのか、遺族との話し合いが最初のステップとなります。

2. 社葬委員会の設立と担当者の選任

社葬の実施が決まったら、社内で社葬委員会を設立します。委員長には社長または役員クラスが就任し、広報、総務、人事、法務、経理、営業などから担当者が選任され、役割を分担します。

主な役割例

  • 総務:会場手配、式の運営全般

  • 広報:社外への告知、報道対応

  • 経理:費用管理、香典返しの処理

  • 法務:遺族との契約確認、会計処理の法的整合性

  • 人事:社内通知、社員対応

3. 式場・日程・宗教形式の決定

故人の宗教や信仰、遺族の希望を考慮し、適切な式場と形式(仏式、神式、キリスト教式、無宗教式など)を選びます。葬儀場やホテル、会館などの予約とともに、葬儀社との打ち合わせを行い、進行スケジュールや装飾、参列者対応の基本設計を固めます。

4. 式次第と関係者への通知・弔辞の準備

式の構成(開式・弔辞・焼香・閉式など)を策定し、誰がどのタイミングで登壇するかを決定します。弔辞を依頼する際は、取引先代表、役員、労働組合代表など、立場や関係性に応じて配慮が必要です。

並行して、以下の通知を行います

  • 社内:社員へのメール・掲示などで告知

  • 社外:取引先、関係団体、報道機関への訃報通知と案内状の送付

5. 式当日の運営

式当日は以下のような役割が想定されます

  • 受付係:香典の受け取り、芳名帳管理

  • 会場案内係:誘導、座席配置の案内

  • 式進行係:司会、タイムキープ、緊急対応

  • 遺族・来賓対応係:控室対応、休憩場所の案内など

担当者は全体の進行を把握しつつ、突発的なトラブル(遅延、来賓の欠席、機材不具合など)にも冷静に対応できる体制を整えておく必要があります。

6. 式後のフォローアップ

社葬後には、以下のような後処理が必要です

  • 香典返しの発送(遺族と連携し、タイミングと内容を確認)

  • 御礼状・報告書の作成と送付

  • 社内への結果報告と評価

  • 会計処理と精算

  • メディア対応(必要であれば記者発表)

これらの対応を通じて、社葬が単なる形式で終わらないよう、企業としての誠意と丁寧さを示すことが重要です。

社葬に参列する際のマナーを確認

社葬は企業が主催する公式な儀礼であり、参列する際には一般葬以上に慎重なマナーが求められます。取引先や他企業の関係者が多く集まる場でもあるため、ビジネスマナーと葬儀マナーの両方を意識することが重要です。ここでは、服装・受付対応・焼香の流れを中心に、参列時に気をつけるべきポイントを詳しく解説します。

服装のマナー

社葬では、男女ともに略式礼装または準喪服が基本とされます。特に役員や代表者として出席する場合は、より正式な装いが求められます。

男性の場合

  • 黒のスーツ(光沢のないもの)

  • 白シャツ、黒のネクタイ

  • 黒の革靴、黒の靴下

女性の場合

  • 黒のワンピースまたはスーツ(ひざ下丈、装飾控えめ)

  • 黒のストッキング、パンプス(低めのヒール)

  • 派手なアクセサリーは避け、結婚指輪程度にとどめる

ネイルや髪型、香水も控えめにするのがマナーです。また、バッグや小物類も黒で統一すると印象が良くなります。

受付でのふるまい

社葬では、受付で芳名帳に記帳し、香典を渡すのが一般的です。企業名と氏名を正確に記載し、丁寧な所作を心がけましょう。

ポイント

  • 名刺を提出する場合は、受付の指示に従う

  • 一礼してから香典を渡す(「このたびはご愁傷様です」の一言を添える)

  • 芳名帳には社名+氏名を明記する

受付係は企業関係者であることが多く、ここでの印象がビジネスにも影響する可能性があります。

焼香のマナー

焼香の作法は宗派によって若干異なりますが、社葬では仏式が多く、以下のような流れが一般的です

1.焼香台の前で一礼


2.数珠を左手に持ち、右手で抹香をつまむ


3.抹香を香炉にくべる(1〜3回、宗派によって異なる)


4.合掌して一礼


5.退席時にも故人に向かって一礼

焼香の順番が回ってくるまでの間も、無駄話をせず静かに待機し、厳粛な雰囲気を保ちましょう。

その他の注意点

  • 式中は携帯電話をマナーモードか電源オフにする

  • 写真撮影は原則禁止(遺族や企業側の許可がある場合を除く)

  • 式後の会話は控えめにし、会場外で挨拶を交わす

社葬は形式的なイベントではなく、故人への敬意を表し、企業としての姿勢を反映する場です。自身の立場や役割をわきまえ、誠実な態度で参列することが求められます。

社葬での弔電とお香典の基本

社葬において、弔電やお香典は故人や遺族への哀悼の意を示す重要な手段です。ただし、社葬は企業間の儀礼性が強く、形式やマナーを誤ると企業イメージに影響を与える可能性もあります。この章では、社葬にふさわしい弔電の書き方とお香典の扱い方について、正しいマナーと実用的な例文を交えて詳しく解説します。

弔電の送り方

社葬への弔電は、企業または個人の名前で送ることができ、企業間の儀礼として特に重視されます。以下の点に注意しましょう。

宛名の書き方

  • 宛名は「○○株式会社 御社葬ご担当者様」または「○○株式会社 総務部御中」など、主催する企業名義で送ります。

  • 故人個人に宛てるのではなく、主催者(企業)宛てに送るのがマナーです。

弔電の文例(企業名義)

貴社におかれましては、永年にわたり御社の発展に多大なるご尽力をされた○○様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
謹んで故人のご冥福をお祈り申し上げます。

弔電の文例(個人名義)

ご訃報に接し、驚きと深い悲しみに堪えません。
生前のご厚情に心より感謝申し上げ、謹んで故人のご冥福をお祈りいたします。

※個人名義の場合でも、会社名+部署名+氏名を記載すると丁寧です。

弔電の手配のタイミング

式の前日までに届くよう、遅くとも2日前には手配するのが理想です。NTTの弔電サービスや、インターネットで申し込める弔電サイトを利用すれば、即日・翌日配達も可能です。

お香典のマナー

社葬では、お香典を会社名義または個人名義で渡すのが一般的ですが、香典辞退の通知がある場合には一切持参しないのがマナーです

表書きのマナー

  • 「御霊前」「御香典」「御仏前」(宗教形式によって使い分け)

  • 法人名義:「○○株式会社 代表取締役 ○○ ○○」

  • 個人名義:「○○株式会社 ○○部 ○○ ○○(フルネーム)」

金額の相場(香典を受け付ける場合)

名義・立場

金額の目安

一般社員(個人名義)

5,000〜10,000円

上司・管理職(個人)

10,000円前後(役職や関係性に応じて)

企業名義・役員名義

30,000〜50,000円(親密な場合は10万以上)

※「4」や「9」に関連する金額(例:4千円、9千円など)は避け、奇数を意識するのが一般的な慣習です。

封筒とふくさの使い方

  • 黒白または双銀の水引のある香典袋を使用。

  • 香典袋は必ずふくさに包んで持参し、受付で丁寧に取り出して渡します。

  • 中袋には金額・住所・氏名(または会社名)を正確に記入。

渡し方と受付対応

  • 受付では、ふくさから香典を出し、「このたびはご愁傷様です」と一言添えて丁寧に渡します。

  • 芳名帳には社名、部署名、氏名を正確に記載。

  • 名刺を求められる場合もあるので、あらかじめ用意しておくと安心です。

企業としての対応・配慮

企業名義で弔電や香典を出す場合には、社内の総務・法務・経理などと調整し、以下のポイントを事前に確認しておくと安心です。

  • 社内の慣例と過去の対応履歴

  • 他部署・他役員との金額のバランス(重複・過不足の防止)

  • 税務上の取り扱い(経費処理の可否)

  • 「香典辞退」の有無の確認

このように、社葬では弔電・香典ともに形式とマナーを重視した対応が求められます。遺族や主催企業に対する配慮を怠らず、誠実かつ丁寧な姿勢を持つことが、企業としての信頼を高める大切なポイントです。

まとめ

社葬は単なる葬儀ではなく、企業としての敬意や姿勢を社内外に示す重要な儀式です。そのため、形式や手続き、マナーに至るまで、多角的な配慮と的確な準備が求められます。

担当者としては、社葬の種類や流れを把握し、故人の功績や遺族の意向、会社の文化に即した形で計画を進めることが重要です。社葬委員会の設置、役割分担、通知の仕方、式当日の運営、さらには式後の対応に至るまで、抜け漏れのない体制づくりが求められます。

一方、参列者としても、社葬ならではのマナーを理解しておくことで、故人への敬意と企業への配慮を的確に表現できます。服装、受付での言葉、焼香の作法、弔電・香典の取り扱いまで、細やかな気遣いが求められる場面です。

特に香典については、「香典辞退」の有無を事前に確認し、金額や表書きのマナーを踏まえたうえで準備する必要があります。弔電についても、格式を意識した文例や適切な宛名設定が求められます。

社葬は、企業の顔としての側面を持つセレモニーです。この記事でご紹介した内容を参考に、冷静かつ丁寧に準備・対応を進めることで、故人への敬意を表しつつ、企業としての信頼や品格を保つことができるでしょう。

この記事を共有

  • Xでシェア

  • LINEでシェア

  • Facebookでシェア