
社葬とは?|流れ・準備・マナーまで担当者必見のガイド
公開日: 2025.7.25
目次
社葬とは?
社葬の目的
社葬と一般葬の違いを比較する
主催者の違い
目的の違い
費用の違い
参列者の違い
社葬の3つの形式を解説
1. 合同社葬
2. 企業単独社葬
3. 社内葬
選択のポイント
社葬の準備から当日までの流れ
1. 故人の逝去と社葬の実施決定
2. 社葬委員会の設立と担当者の選任
3. 式場・日程・宗教形式の決定
4. 式次第と関係者への通知・弔辞の準備
5. 式当日の運営
6. 式後のフォローアップ
社葬に参列する際のマナーを確認
服装のマナー
男性の場合
女性の場合
受付でのふるまい
焼香のマナー
その他の注意点
社葬での弔電とお香典の基本
弔電の送り方
宛名の書き方
弔電の文例(企業名義)
弔電の文例(個人名義)
弔電の手配のタイミング
お香典のマナー
表書きのマナー
金額の相場(香典を受け付ける場合)
封筒とふくさの使い方
渡し方と受付対応
企業としての対応・配慮
まとめ
経営者や役員など企業の中核を担っていた人物が亡くなった際、会社が主体となって執り行う葬儀が「社葬(しゃそう)」です。これは単なる個人の葬儀ではなく、企業としての敬意を表し、社内外に故人の功績を伝える重要なセレモニーです。
しかしながら、一般の葬儀とは異なり、社葬には特有のマナーや段取りが存在します。実施する企業にとっては、事前準備から当日の進行、アフターフォローまで多岐にわたる業務が求められ、初めて担当する方にとっては戸惑う場面も多いでしょう。また、参列者側も、企業葬儀ならではの振る舞いや服装、弔意の示し方に注意が必要です。
本記事では、「社葬とは何か?」という基本的な定義から、一般葬との違い、さまざまな社葬の種類、準備と進行の流れ、参列時のマナー、弔電・お香典の扱い方まで、担当者・参列者の両視点で詳しく解説していきます。これを読めば、社葬の全体像をつかみ、自信をもって対応できるようになります。
社葬とは?
社葬とは、企業や団体が主催し、組織の一員として故人を追悼するための葬儀形式です。主に創業者、取締役、会長、社長など、企業に大きな影響を与えた人物が対象となり、企業の名において故人の功績を称え、社会的に弔意を表す公的な儀式として行われます。
社葬の目的
社葬の第一の目的は、企業として故人の功績を称え、正式な形で哀悼の意を表すことです。同時に、社葬は社外に向けたメッセージでもあり、企業がどのような人物を評価し、どのような文化を持っているかを示す場にもなります。また、社内的には、社員が一丸となって故人を偲ぶことで、組織としての一体感を強める効果も期待されます。
さらに、社葬は取引先、関係団体、行政、報道機関など多方面の関係者を迎える場となるため、企業の信用やイメージに直結する重要なイベントでもあります。準備の段階から運営に至るまで、ビジネス上の視点とマナーの両面が求められるのが特徴です。
社葬と一般葬の違いを比較する
一般葬と社葬には、目的や主催者、参列者、費用の面で明確な違いがあります。以下にポイントごとに解説します。
主催者の違い
- 一般葬は遺族が主催する私的な葬儀です。
- 社葬は企業が主催し、組織的に執り行います。
この違いによって、関係者の役割分担や運営体制も大きく異なります。
目的の違い
- 一般葬は個人としての故人を悼み、家族や親族が中心となって行われます。
- 社葬は故人の業績を公にたたえ、組織全体として弔意を表す儀式です。
社葬では企業の対外的なイメージも問われるため、式の運営には広報的・儀礼的な視点が必要です。
費用の違い
- 一般葬では費用は基本的に遺族が負担し、香典などで一部補われます。
- 社葬では企業が費用を負担します。祭壇費、会場費、弔問者対応、返礼品など多くのコストがかかるため、社内での会計処理や税務上の取り扱いにも注意が必要です。
参列者の違い
- 一般葬には親族や友人、近隣住民などが中心に参列します。
- 社葬には役員、社員のほか、取引先、株主、行政関係者、報道関係者など社外の重要人物も数多く参列する傾向があります。
社葬は、単なる葬儀という枠を超えた「企業文化の表現の場」として機能するため、その影響範囲は極めて広範です。
このように、社葬は一般葬と異なる多くの側面を持っており、企業の社会的責任や価値観を可視化する重要な儀礼といえます。運営には戦略的な配慮が求められ、担当者には相応の準備と理解が不可欠です。
社葬の3つの形式を解説
社葬にはいくつかの種類があり、企業の規模や方針、故人の地位や功績、参列者の範囲などによって適切な形式が選ばれます。ここでは代表的な3つの形式「合同社葬」「企業単独社葬」「社内葬」について、それぞれの特徴と違いを詳しく見ていきましょう。
1. 合同社葬
合同社葬は、複数の企業・団体・自治体などが合同で主催する社葬です。たとえば、経済団体と所属企業が共同で行う場合や、同一業界の複数社が協力して実施するケースがあります。
特徴
- 費用や手間を複数の組織で分担できる
- 大規模な葬儀となりやすく、社会的影響も大きい
- 司会進行や挨拶順など、調整事項が増える
適用例
- 地域経済に大きな影響を与えた経営者や、業界を代表する人物など
2. 企業単独社葬
最も多く採用されるのが、企業単独で主催する社葬です。1社の責任で企画・運営を行い、取引先や関係者を招いて故人を偲びます。
特徴
- 組織の方針や文化を反映しやすい
- 自由度が高く、規模や進行も調整しやすい
- 社葬委員会を設け、社内外の連携が必要
適用例
- 企業創業者、歴代社長、会長など、社の象徴的な人物の葬儀
3. 社内葬
社内葬は、社外には通知せず、社員や関係者のみで簡素に執り行う社葬形式です。コストや時間を抑えつつ、社内で故人を偲ぶことを目的としています。
特徴
- 小規模・短時間で実施可能
- 遺族の意向を尊重しつつ、社としての弔意を示せる
- 公的な意味合いは薄く、比較的カジュアル
適用例
- 現役の中間管理職や長年勤続した従業員など、社内での弔意を表す場として活用される
選択のポイント
それぞれの社葬形式にはメリット・デメリットがあるため、企業の文化、故人の立場、社外への影響度などを踏まえた慎重な検討が必要です。費用と工数、対外的な印象、社内外の反応を総合的に評価することが求められます。
社葬の準備から当日までの流れ

社葬は一大イベントであり、準備から当日、そして式後の対応に至るまで、多くの工程が関係します。特に企業が主催する場合、遺族や関係者との連携、社内外への連絡、式の進行管理など、担当者に求められる業務は非常に多岐にわたります。ここでは社葬の一般的な流れを時系列に沿って詳しく解説します。
1. 故人の逝去と社葬の実施決定
まず、訃報を受けた企業では、社葬を行うかどうかを経営陣が協議して決定します。ここで重要なのは、遺族の意向を尊重することです。社葬を希望するか、家族葬や密葬にしたいのか、遺族との話し合いが最初のステップとなります。
2. 社葬委員会の設立と担当者の選任
社葬の実施が決まったら、社内で社葬委員会を設立します。委員長には社長または役員クラスが就任し、広報、総務、人事、法務、経理、営業などから担当者が選任され、役割を分担します。
主な役割例
- 総務:会場手配、式の運営全般
- 広報:社外への告知、報道対応
- 経理:費用管理、香典返しの処理
- 法務:遺族との契約確認、会計処理の法的整合性
- 人事:社内通知、社員対応
3. 式場・日程・宗教形式の決定
故人の宗教や信仰、遺族の希望を考慮し、適切な式場と形式(仏式、神式、キリスト教式、無宗教式など)を選びます。葬儀場やホテル、会館などの予約とともに、葬儀社との打ち合わせを行い、進行スケジュールや装飾、参列者対応の基本設計を固めます。
4. 式次第と関係者への通知・弔辞の準備
式の構成(開式・弔辞・焼香・閉式など)を策定し、誰がどのタイミングで登壇するかを決定します。弔辞を依頼する際は、取引先代表、役員、労働組合代表など、立場や関係性に応じて配慮が必要です。
並行して、以下の通知を行います
- 社内:社員へのメール・掲示などで告知
- 社外:取引先、関係団体、報道機関への訃報通知と案内状の送付
5. 式当日の運営
式当日は以下のような役割が想定されます
- 受付係:香典の受け取り、芳名帳管理
- 会場案内係:誘導、座席配置の案内
- 式進行係:司会、タイムキープ、緊急対応
- 遺族・来賓対応係:控室対応、休憩場所の案内など
担当者は全体の進行を把握しつつ、突発的なトラブル(遅延、来賓の欠席、機材不具合など)にも冷静に対応できる体制を整えておく必要があります。
6. 式後のフォローアップ
社葬後には、以下のような後処理が必要です
- 香典返しの発送(遺族と連携し、タイミングと内容を確認)
- 御礼状・報告書の作成と送付
- 社内への結果報告と評価
- 会計処理と精算
- メディア対応(必要であれば記者発表)
これらの対応を通じて、社葬が単なる形式で終わらないよう、企業としての誠意と丁寧さを示すことが重要です。
社葬に参列する際のマナーを確認
社葬は企業が主催する公式な儀礼であり、参列する際には一般葬以上に慎重なマナーが求められます。取引先や他企業の関係者が多く集まる場でもあるため、ビジネスマナーと葬儀マナーの両方を意識することが重要です。ここでは、服装・受付対応・焼香の流れを中心に、参列時に気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
服装のマナー
社葬では、男女ともに略式礼装または準喪服が基本とされます。特に役員や代表者として出席する場合は、より正式な装いが求められます。
男性の場合
- 黒のスーツ(光沢のないもの)
- 白シャツ、黒のネクタイ
- 黒の革靴、黒の靴下
女性の場合
- 黒のワンピースまたはスーツ(ひざ下丈、装飾控えめ)
- 黒のストッキング、パンプス(低めのヒール)
- 派手なアクセサリーは避け、結婚指輪程度にとどめる
ネイルや髪型、香水も控えめにするのがマナーです。また、バッグや小物類も黒で統一すると印象が良くなります。
受付でのふるまい
社葬では、受付で芳名帳に記帳し、香典を渡すのが一般的です。企業名と氏名を正確に記載し、丁寧な所作を心がけましょう。
ポイント
- 名刺を提出する場合は、受付の指示に従う
- 一礼してから香典を渡す(「このたびはご愁傷様です」の一言を添える)
- 芳名帳には社名+氏名を明記する
受付係は企業関係者であることが多く、ここでの印象がビジネスにも影響する可能性があります。
焼香のマナー
焼香の作法は宗派によって若干異なりますが、社葬では仏式が多く、以下のような流れが一般的です
1.焼香台の前で一礼
2.数珠を左手に持ち、右手で抹香をつまむ
3.抹香を香炉にくべる(1〜3回、宗派によって異なる)
4.合掌して一礼
5.退席時にも故人に向かって一礼
焼香の順番が回ってくるまでの間も、無駄話をせず静かに待機し、厳粛な雰囲気を保ちましょう。
その他の注意点
- 式中は携帯電話をマナーモードか電源オフにする
- 写真撮影は原則禁止(遺族や企業側の許可がある場合を除く)
- 式後の会話は控えめにし、会場外で挨拶を交わす
社葬は形式的なイベントではなく、故人への敬意を表し、企業としての姿勢を反映する場です。自身の立場や役割をわきまえ、誠実な態度で参列することが求められます。
社葬での弔電とお香典の基本
社葬において、弔電やお香典は故人や遺族への哀悼の意を示す重要な手段です。ただし、社葬は企業間の儀礼性が強く、形式やマナーを誤ると企業イメージに影響を与える可能性もあります。この章では、社葬にふさわしい弔電の書き方とお香典の扱い方について、正しいマナーと実用的な例文を交えて詳しく解説します。
弔電の送り方
社葬への弔電は、企業または個人の名前で送ることができ、企業間の儀礼として特に重視されます。以下の点に注意しましょう。
宛名の書き方
- 宛名は「○○株式会社 御社葬ご担当者様」または「○○株式会社 総務部御中」など、主催する企業名義で送ります。
- 故人個人に宛てるのではなく、主催者(企業)宛てに送るのがマナーです。
弔電の文例(企業名義)
貴社におかれましては、永年にわたり御社の発展に多大なるご尽力をされた○○様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
謹んで故人のご冥福をお祈り申し上げます。
弔電の文例(個人名義)
ご訃報に接し、驚きと深い悲しみに堪えません。
生前のご厚情に心より感謝申し上げ、謹んで故人のご冥福をお祈りいたします。
※個人名義の場合でも、会社名+部署名+氏名を記載すると丁寧です。
弔電の手配のタイミング
式の前日までに届くよう、遅くとも2日前には手配するのが理想です。NTTの弔電サービスや、インターネットで申し込める弔電サイトを利用すれば、即日・翌日配達も可能です。
お香典のマナー
社葬では、お香典を会社名義または個人名義で渡すのが一般的ですが、香典辞退の通知がある場合には一切持参しないのがマナーです。
表書きのマナー
- 「御霊前」「御香典」「御仏前」(宗教形式によって使い分け)
- 法人名義:「○○株式会社 代表取締役 ○○ ○○」
- 個人名義:「○○株式会社 ○○部 ○○ ○○(フルネーム)」
金額の相場(香典を受け付ける場合)
名義・立場 | 金額の目安 |
一般社員(個人名義) | 5,000〜10,000円 |
上司・管理職(個人) | 10,000円前後(役職や関係性に応じて) |
企業名義・役員名義 | 30,000〜50,000円(親密な場合は10万以上) |
※「4」や「9」に関連する金額(例:4千円、9千円など)は避け、奇数を意識するのが一般的な慣習です。
封筒とふくさの使い方
- 黒白または双銀の水引のある香典袋を使用。
- 香典袋は必ずふくさに包んで持参し、受付で丁寧に取り出して渡します。
- 中袋には金額・住所・氏名(または会社名)を正確に記入。
渡し方と受付対応
- 受付では、ふくさから香典を出し、「このたびはご愁傷様です」と一言添えて丁寧に渡します。
- 芳名帳には社名、部署名、氏名を正確に記載。
- 名刺を求められる場合もあるので、あらかじめ用意しておくと安心です。
企業としての対応・配慮
企業名義で弔電や香典を出す場合には、社内の総務・法務・経理などと調整し、以下のポイントを事前に確認しておくと安心です。
- 社内の慣例と過去の対応履歴
- 他部署・他役員との金額のバランス(重複・過不足の防止)
- 税務上の取り扱い(経費処理の可否)
- 「香典辞退」の有無の確認
このように、社葬では弔電・香典ともに形式とマナーを重視した対応が求められます。遺族や主催企業に対する配慮を怠らず、誠実かつ丁寧な姿勢を持つことが、企業としての信頼を高める大切なポイントです。
まとめ
社葬は単なる葬儀ではなく、企業としての敬意や姿勢を社内外に示す重要な儀式です。そのため、形式や手続き、マナーに至るまで、多角的な配慮と的確な準備が求められます。
担当者としては、社葬の種類や流れを把握し、故人の功績や遺族の意向、会社の文化に即した形で計画を進めることが重要です。社葬委員会の設置、役割分担、通知の仕方、式当日の運営、さらには式後の対応に至るまで、抜け漏れのない体制づくりが求められます。
一方、参列者としても、社葬ならではのマナーを理解しておくことで、故人への敬意と企業への配慮を的確に表現できます。服装、受付での言葉、焼香の作法、弔電・香典の取り扱いまで、細やかな気遣いが求められる場面です。
特に香典については、「香典辞退」の有無を事前に確認し、金額や表書きのマナーを踏まえたうえで準備する必要があります。弔電についても、格式を意識した文例や適切な宛名設定が求められます。
社葬は、企業の顔としての側面を持つセレモニーです。この記事でご紹介した内容を参考に、冷静かつ丁寧に準備・対応を進めることで、故人への敬意を表しつつ、企業としての信頼や品格を保つことができるでしょう。
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