自然葬とは?特徴や種類・メリット・デメリットを徹底解説!

自然葬とは?特徴や種類・メリット・デメリットを徹底解説!

公開日: 2024.4.19     更新日: 2025.2.14

現代社会において、従来の墓地埋葬に代わる新たな選択肢として「自然葬」が注目を集めています。少子高齢化や核家族化が進む中、「お墓の管理が負担になる」「故人を自然に還したい」と考える人が増えており、それに伴い自然葬の需要も年々高まっています。

本記事では、自然葬とは何か、その種類や特徴、費用、手続き、法律、注意点について詳しく解説していきます。さらに、メリット・デメリットについても詳しく掘り下げ、どのような人に自然葬が向いているのかを考察します。

自然葬とは

自然葬とは、墓石を使用せず、遺骨を自然環境に還す葬送方法の総称です。日本においては、遺骨を粉末状(粉骨)にし、山や海、森林などに撒く方法が一般的です。

従来の墓地埋葬と異なり、お墓の維持管理が不要であり、自然環境に優しい供養方法として注目されています。近年では、樹木葬や海洋葬をはじめとする様々な種類の自然葬が提供されており、個人の価値観や希望に応じた選択が可能になっています。

自然葬の特徴

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・墓石を持たず、自然環境に遺骨を還す

・樹木葬や海洋散骨など、さまざまな種類がある

・お墓の管理が不要で、後世に負担をかけない

・費用が比較的安価である(墓地埋葬に比べてコストが低い)

・宗教や宗派に関係なく自由に選択できる

・近年では、環境保護の観点からも注目されている

なぜ自然葬が注目されているの?

自然葬が注目を集める背景には、社会的・経済的・環境的な要因が複雑に絡み合っています。

お墓の管理が負担になる時代

従来の墓地埋葬では、墓石の購入費用・管理費用・定期的な墓参りの必要性など、経済的・時間的負担が発生します。

特に核家族化が進む現代では、「お墓を継ぐ人がいない」「遠方に住んでいて管理が難しい」といった理由で、墓地埋葬を避ける人が増えています。

費用負担を抑えたい人が増えている

墓地を購入し、墓石を建てる場合、100万円〜300万円程度の費用がかかることが一般的です。

一方で、自然葬は数万円〜数十万円で済むケースが多く、費用面での負担を軽減できる点が大きな魅力です。

環境保護の観点からの注目

近年、環境意識の高まりとともに、「自然に還る」という考え方が広がっています。

特に、樹木葬は森林保護や緑化に貢献するため、エコ意識の高い人々から支持を受けています。

宗教や価値観の多様化

従来の墓地埋葬は仏教的な要素が強いですが、自然葬は特定の宗教に縛られず、自由に選択できる点が特徴です。

無宗教の人や、特定の宗派にこだわらない人にとっても、自然葬は魅力的な選択肢となります。

日本における自然葬の歴史と背景

日本では、古代から自然に還る葬送方法(風葬や鳥葬)が一部地域で行われていましたが、江戸時代以降、寺院を中心とした檀家制度が普及し、墓石を建てる形式の埋葬が一般的になりました。さらに、1948年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」によって、墓地以外での埋葬が制限されるようになり、従来の自由な葬送方法は大きく制約を受けました。

このような背景から、近代以降は墓石を建てる埋葬方法が主流となっています。

しかし、1990年代に入り、自然葬への関心が再び高まるようになりました。

・1991年:日本で初めての海洋散骨が実施される

・1999年:樹木葬が日本で正式に導入される

・2000年代:宇宙葬や空中散骨など、新たな自然葬の形が登場

現在では、全国各地で自然葬のための霊園や専門業者が増え続けており、選択肢が広がっています。

自然葬のメリット・デメリット

自然葬には、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点もあります。ここでは、自然葬の利点と課題を詳しく解説します。

メリット

お墓の管理が不要

従来のお墓は、定期的な清掃や供花、墓石のメンテナンスが必要で、特に遠方に住んでいる場合は管理が難しくなります。しかし、自然葬は墓石がないため、管理の負担がほぼゼロになります。

継承者が不要

子どもや孫がいない場合でも安心して供養できる

定期的な墓参りが不要

遠方でも心の中で供養ができる

費用を抑えられる

墓地埋葬には、墓石代・永代供養費・管理費などが必要ですが、自然葬はそれらの費用が不要な場合が多く、総額で比較すると数十万円〜数百万円の差が出ることもあります。

環境に優しい

墓石を建てる必要がないため、環境負荷を低減できます。特に樹木葬では植樹が行われ、森の再生に貢献できることが大きなメリットです。

宗教・宗派を問わない

従来のお墓は、仏教の宗派ごとに管理される場合が多いですが、自然葬は宗教・宗派を問わずに実施できるため、信仰の自由度が高いのも特徴です。

デメリット

供養の仕方が通常と異なる

一般的なお墓があると、家族はお盆やお彼岸に訪れて供養できますが、自然葬では「手を合わせる場所」がない場合が多いため、供養の形をどうするか考える必要があります。

家族や親族の理解が必要

従来の墓地埋葬が一般的なため、「自然葬だと供養にならないのでは?」と親族が反対するケースもあります。事前に家族とよく話し合い、理解を得ることが重要です。

法的規制や地域ルールがある

自然葬は法律で禁止されているわけではありませんが、自治体ごとに条例やガイドラインが異なるため、散骨を行う際は事前に確認が必要です。

自然葬の種類

自然葬にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や費用、法的な制約が異なります。

樹木葬

樹木葬(じゅもくそう)は、墓石を建てずに、樹木を墓標とする埋葬方法です。

・遺骨を土に還し、樹木をシンボルとする

・墓地を持たないため、管理の手間がかからない

・自然環境に優しく、森林保全に貢献できる

種類

費用相場

特徴

合祀型(合同埋葬)

5万〜30万円

他の遺骨と一緒に埋葬されるため、個別の墓標がない

個別型(家族用区画)

30万〜100万円

自分専用の区画が確保されるため、家族が墓参りしやすい

ポイント

・「合祀型」と「個別型」のどちらが適しているかを考える

・希望する場所の環境や管理体制を確認する

・将来的な供養の方法について家族と話し合う

海洋葬・海洋散骨

海洋葬(かいようそう)は、遺骨を海に散布する方法です。

・遺族が船に乗り、沖合で遺骨を散布する

・個人散骨(自分たちだけで行う)か、合同散骨(複数の遺族と一緒に行う)かを選択できる

種類

費用相場

特徴

個人散骨

15万〜50万円

遺族だけで船をチャーターして行う

合同散骨

3万〜15万円

他の家族と一緒に行うため費用が安い

日本では海洋散骨を禁止する法律はありませんが、一部の自治体ではガイドラインを設けています。

空中葬

空中葬(くうちゅうそう)とは、遺骨を粉末状(粉骨)にし、気球や飛行機、ヘリコプターなどを利用して空に撒く散骨方法です。

・地上ではなく「空」に還すことで、自由な旅立ちの象徴になる

・遺族が葬送を見届けることができる

・海や山、湖などの特定の場所に限定せず、広範囲で散骨できる

種類

費用相場

特徴

バルーン葬

20万〜50万円

特殊な気球を利用して空に還す

航空散骨(ヘリ・飛行機)

30万〜80万円

上空から指定の場所へ散骨

注意点

・天候に左右されるため、実施日が変更になる場合がある

・法的規制はないが、自治体によっては独自のガイドラインがある

宇宙葬

宇宙葬(うちゅうそう)は、遺灰の一部をカプセルに入れ、ロケットや人工衛星に搭載して宇宙へ送る葬送方法です。

アメリカの企業を中心に、日本国内でもサービスを提供する業者が増えてきています。

種類

費用相場

特徴

ロケット搭載型

50万〜150万円

小型カプセルに入れて宇宙へ打ち上げ

人工衛星搭載型

100万〜200万円

人工衛星と共に宇宙軌道を周回

メリット

・他にはないユニークな葬送方法

・「宇宙へ還る」というロマンを実現できる

・宗教や墓地の制約を受けない

デメリット

・費用が高額

・ロケットの打ち上げスケジュールが影響するため、日程が決めづらい

風葬・土葬

風葬(ふうそう)とは、遺体を自然の力(風・雨・動物など)に委ね、風化させる葬送方法です。

かつて日本の一部地域で行われていましたが、現在、「墓地、埋葬等に関する法律」により遺体を墓地以外で放置することが禁止されており、事実上風葬は行えません。

土葬(どそう)は、遺体を棺に納め、直接土に埋める埋葬方法です。

明治時代以前は一般的でしたが、現在は「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」により、許可を受けた場所でしか行えません。

自然葬の流れ

自然葬を行うには、事前の準備や適切な手続きが必要です。ここでは、自然葬を進める際の流れを詳しく解説します。

①自然葬の種類を選ぶ

まずは、どの種類の自然葬を選ぶかを決める必要があります。

ポイント

・遺族が供養しやすいか

・法的な制約や自治体のルールを確認する

・費用や実施場所を考慮する

②業者や専門家に相談

自然葬は、専門業者を通じて行うのが一般的です。

ポイント

・実績や評判が良い業者を選ぶ

・料金体系が明確で追加費用が発生しないか確認

・適切な許可や手続きを代行してくれるかチェック

また、遺族と相談して方針を決めることも重要です。

③火葬・粉骨の手続き

日本では、遺骨を自然葬として散骨する場合、粉骨(パウダー状にすること)が推奨されます。

そのため、事前に火葬後の遺骨を粉骨できる業者に依頼する必要があります。

方法

・手作業で粉骨(家族が立ち会うことも可能)

・機械で微細なパウダー状にする

粉骨を済ませた後、散骨の準備を行います。

④埋葬または散骨

選んだ自然葬の方法に応じて、埋葬または散骨を行います。

樹木葬:指定の区画に遺骨を埋め、木を植える

海洋散骨:専門の船を使い、沖合で散骨

空中葬・宇宙葬:気球やロケットを利用して遺灰を撒く

この際、環境への配慮が必要な場合もあるため、適切な方法で行うことが重要です。

⑤遺族の供養方法を決める

自然葬では、従来のお墓のような「参拝場所」がないため、供養の仕方を考える必要があります。

供養方法の例

・故人の好きだった場所で手を合わせる

・記念樹やメモリアルプレートを設置する

・命日に家族で集まり故人を偲ぶ

家族の理解を得た上で、故人を偲ぶ新しい供養の形を考えていきましょう。

自然葬を選ぶ際の注意点

自然葬は、従来の墓地埋葬とは異なる供養方法であるため、実施する前に注意すべき点がいくつかあります。ここでは、自然葬を選ぶ際の重要なポイントについて詳しく解説します。

家族や親族の理解を得る

自然葬は近年注目されている供養方法ですが、まだ一般的ではなく、家族や親族の理解を得ることが難しい場合もあります。特に、年配の親族は「お墓がないと供養できない」と考えることが多く、反対されるケースも少なくありません。

ポイント

・自然葬のメリットを丁寧に説明する(管理負担の軽減、環境への配慮など)

・供養の新しい形を提案する(記念樹を植える、故人の好きな場所に行くなど)

・実際に自然葬を選んだ人の事例を紹介する

・家族が納得できる供養の方法を一緒に考える

特に重要なのは、「故人の意思が反映されているかどうか」です。生前に自然葬を希望していた場合、その旨を親族にしっかり伝えることで理解を得やすくなります。

信頼できる業者に依頼する

自然葬は、信頼できる業者に依頼することが非常に重要です。悪質な業者に依頼してしまうと、適切な散骨が行われなかったり、追加費用を請求されたりする可能性があります。

ポイント

・過去の実績や口コミを確認する(公式サイトやレビューサイトをチェック)

・費用の内訳が明確かどうかを確認する(見積もりを出してもらう)

・必要な許可や手続きを代行してくれるか確認する

・散骨後のアフターサポートがあるか確認する(証明書の発行、供養の相談など)

また、可能であれば、実際に業者の担当者と会って話をするのも良い方法です。直接相談することで、信頼できる業者かどうかを判断しやすくなります。

供養方法をどうするか考える

自然葬は「お墓を持たない供養方法」であるため、従来のお墓参りとは異なる形で故人を偲ぶ方法を考える必要があります。

供養の方法(例)

・記念樹を植える(樹木葬の場合)

・海を眺めながら手を合わせる(海洋散骨の場合)

・命日に家族で集まり、故人の思い出を語る

・遺品や写真を飾るスペースを自宅に作る

自然葬を選んだ場合でも、故人を思う気持ちを大切にし、家族が納得できる供養の方法を見つけることが重要です。

自然環境への影響を考慮する

自然葬は「自然に還る」ことを目的とした供養方法ですが、実施の際には環境への影響を考慮する必要があります。

ポイント

・海洋散骨の場合、海に浮遊しないよう粉骨する

・金属製の骨壺などは使用せず、自然に分解されるものを選ぶ

・散骨を行う場所が、他の人の迷惑にならないよう配慮する

特に、海洋散骨の場合は、漁業関係者や地元住民の意見を尊重し、適切な場所を選ぶことが重要です。

自然葬に関するQ&A

自然葬について、多くの方が疑問に思うポイントをQ&A形式で解説します。

Q. 自然葬はどこでできる?

A. 現在、日本全国に自然葬を実施できるエリアが増えています。

樹木葬

東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県などの都市部を中心に、多くの霊園で対応しています。

海洋散骨

東京湾、相模湾、駿河湾、日本海、瀬戸内海など全国各地で実施可能です。

空中葬・宇宙葬

専門業者による全国対応で利用可能です。

一部自治体では散骨に関する条例やガイドラインを設けている場合があります(例:北海道長沼町や埼玉県秩父市)。そのため、事前に業者や自治体に確認することが重要です。

Q. 自然葬に向いている人・向いていない人は?

自然葬に向いている人

・お墓の管理負担をなくしたい人

・環境に配慮した供養をしたい人

・費用を抑えたい人

・宗教にこだわらない人

自然葬に向いていない人

・伝統的なお墓参りを大切にしたい人

・家族や親族が反対している場合

Q. 散骨は自分でやってもいいの?

A. 散骨は法律で禁止されていないため、自分で行うことも可能です。ただし、法的リスクや環境への配慮を考えると、専門業者に依頼するのが望ましいです。

個人で散骨する際の注意点

・必ず遺骨を粉末状にし、骨片が見えないようにする(粉骨)。

・公共の場所(公園・観光地など)や他人の所有地では行わない。

・地元自治体の条例や規制を確認する。

適切な手続きを踏み、マナーを守ることでトラブルを防ぎましょう。

まとめ

自然葬は、お墓の管理負担を軽減し、故人を自然に還す新しい供養の形です。しかし、選択する際には家族の理解を得ること、業者を慎重に選ぶこと、環境への配慮をすることが重要になります。

自然葬は、これからの時代に合った新しい供養の方法として、今後さらに普及していく可能性があります。この記事を参考に、ぜひ自分や家族にとって最適な供養の形を見つけてください。

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