父の日には「父の日参り」を。お墓参りで伝える感謝と尊敬の気持ち

2025.6.12

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6月の第3日曜日、「父の日」。この日に、すでに亡くなったお父さんを偲び、感謝の気持ちを込めて手を合わせる——そんな過ごし方が、いま静かに広がりを見せています。それが「父の日参り」です。 家族のために尽くしてくれた父に、亡きあとでも想いを伝えたい。言葉では伝えきれなかった感謝や尊敬の気持ちを、静かに形にする——それがこの新しい風習の根底にある考え方です。 本記事では、この「父の日参り」をテーマに、その背景や由来、供えるべきもの、適した花や贈り物について詳しくご紹介していきます。また、父の日参りの位置づけをより深く理解するために、父の日の起源や、他の家族に関する参りとの比較にも触れながら、現代における新たな供養のかたちを紐解いていきます。

父の日参りとは?

父の日参りとは、毎年6月の第3日曜日に行われる「父の日」に、すでに亡くなった父親や義父を偲び、感謝の気持ちを込めてお墓や仏壇を訪れる行為です。近年、この新しい供養のかたちが、静かに人々の心に根付き始めています。 一般的な父の日といえば、生きている父親にプレゼントを渡したり、感謝の言葉を伝えたりする日です。しかし、父親がすでに他界している場合、そうした直接的な感謝の表現は叶いません。だからといって、感謝の気持ちそのものがなくなるわけではありません。むしろ、年齢を重ねるごとに増す「感謝の重み」は、生前には伝えられなかった想いをより強くすることもあります。 父の日参りは、そうした気持ちに応える新しい供養のかたちとして注目されています。具体的には、以下のような形で行われることが多いです ・墓地や納骨堂を訪れ、花や供物を手向ける ・仏壇の前で手を合わせ、日常の報告や感謝を心の中で語りかける ・家族がそろって故人を偲ぶ食卓を囲む ・故人が好きだったものを並べて「記憶の祭壇」をつくる 形式には決まりがなく、それぞれの家庭の事情や想いに応じた自由な形が受け入れられています。重要なのは、「形」ではなく「心」。父という存在に改めて向き合い、感謝や尊敬の気持ちを確かめる機会として、父の日参りは静かに広がりを見せているのです。 また、母の日に行う「母の日参り」との対比で注目されることもあります。母の日参りは先に定着し始めた風習ですが、それに触発されて父の日にも同様の想いを込めたいという動きが広まり、今では各地の霊園や仏具店でも「父の日参り」の提案がされるようになっています。 家族の形が多様化し、死後の供養に対する考え方も変化する中、「父の日参り」はこれからさらに定着していくと考えられています。故人への敬意と感謝をかたちにする方法として、現代のニーズに応える意味ある文化なのです。

父の日の由来は?

父の日の始まりは、20世紀初頭のアメリカにさかのぼります。その背景には、一人の娘の深い父親への愛情と感謝がありました。 1909年、アメリカ・ワシントン州スポケーンに住むソノラ・スマート・ドッドという女性が、母の日の存在に触発され、「父親にも感謝を伝える日が必要ではないか」と提案したのがきっかけです。彼女の父、ウィリアム・ジャクソン・スマートは、南北戦争の退役軍人であり、妻に先立たれた後は男手ひとつで6人の子どもたちを育て上げました。 ドッドは、そんな父の献身に報いたいという思いから、地元の教会に「父に感謝を捧げる日」を提案。1910年6月19日に、世界で初めての「父の日」の式典が開催されました。当初は限られた地域の小さな取り組みでしたが、徐々に全米に広がりを見せ、1972年、当時のリチャード・ニクソン大統領によって正式にアメリカの国民の祝日として制定されました。 このアメリカでの動きが、やがて世界中に広がり、日本にも伝わることになります。日本では1950年代から百貨店などの商業施設が「父の日」のプロモーションを開始し、徐々に一般家庭にも定着。現在では、6月の第3日曜日が「父の日」として広く知られ、贈り物や感謝の言葉を通じて父に想いを伝える文化が根づいています。 この由来からも分かるように、父の日は「親に対する尊敬と感謝の気持ち」を形にする日です。母の日に比べると、やや影の薄い印象があった父の日ですが、近年では家庭内での父親の役割の見直しや、感謝を伝えることの意義が再評価されており、より積極的に父を讃える動きが広がっています。 そして、故人となった父に想いを馳せる「父の日参り」は、この由来とも深くつながっています。生前に語れなかった感謝を、亡くなってからも形にして伝える——その行為は、まさに父の日の本質的な精神に立脚したものと言えるでしょう。

父の日参りでお供えするもの

父の日参りにおいて、何を供えるかは「どんな想いを届けたいか」によって大きく異なります。一般的には、故人が生前に好んでいたものを中心に選ぶのが基本ですが、単に“好きだったから”という理由だけでなく、故人との思い出や感謝の気持ちを反映させるような品選びが心を打ちます。

父の日参り お供え物

1. 食べ物・飲み物

生前、父親がよく口にしていた食べ物や飲み物は、最もポピュラーなお供え物です。たとえば ・ビールや日本酒:晩酌の思い出がある場合は特に意味深い供物となります。 ・甘いもの:和菓子、羊羹、プリンなど、甘党の父にはぴったりです。 ・好物だった料理のミニチュア:最近では、リアルな食品サンプルのような仏壇用供物も人気です。

2. 果物や野菜

果物は見た目にも華やかで供養に適しています。リンゴ、バナナ、みかんなどの定番に加えて、季節の果物を選ぶことで、父の日らしい季節感も演出できます。また、畑仕事や家庭菜園が趣味だった父には、収穫物のような野菜も「ありがとう」の気持ちを表すアイテムになります。

3. タバコ・コーヒーなど嗜好品

「父と言えばこれだった」と思い出せるような嗜好品があれば、それも供えることで、より個人的で温かみのある供養になります。仏壇用のミニタバコや、コーヒー豆、インスタントコーヒーなども定番です。

4. 手紙やメッセージカード

言葉にできなかった想いを「手紙」という形で供える人も少なくありません。「ありがとう」「もっと話したかった」「今でも大事に思っている」——そうした言葉は、たとえ声に出せなくても、紙に書いて手を合わせることで、心の整理につながることがあります。

5. 仏具・線香・キャンドル

お参りに欠かせない線香やロウソクも、父の日らしさを取り入れたものが選ばれています。最近では、バラの香りやビールの香りがする線香なども販売されており、趣向を凝らすことで「お父さんらしさ」を表現することができます。

お供え物の注意点

父の日参りでは、心を込めた供物選びが大切ですが、いくつか注意すべき点もあります: ・傷みやすいものは避ける:特に気温が高い時期は、生ものや水分の多い食材は避けましょう。 ・宗派や地域の風習を確認する:仏教、神道、キリスト教など、宗教によって供物の内容に制限があることがあります。地域によっては果物に意味を持たせる風習もあるため、事前に家族や親族と相談を。 ・火の取り扱いに注意する:線香やロウソクを使う際は、火の後始末を忘れずに行いましょう。墓地や霊園では火気厳禁の場所もあるため、事前の確認が重要です。 ・酒やジュースなどを墓石にかけない:アルコール類や甘い飲料を墓石に直接かけるのは厳禁です。石材を傷める原因となり、風化や変色の原因になります。供えるだけにとどめ、手を合わせて感謝の気持ちを伝えましょう。 ・花や品物は持ち帰る配慮を:霊園や公園墓地などでは、お供え物をそのまま放置するのはマナー違反となる場合があります。参拝後は、食品やゴミをきちんと持ち帰るようにしましょう。

父の日参りにおすすめの花

花は、言葉では伝えきれない感謝や敬意の気持ちを故人に届けるための、静かで美しい手段です。父の日参りにおいても、花は欠かせない供え物のひとつとして多くの人が手向けています。ここでは、父の日参りにふさわしい花を種類別に紹介するとともに、選び方のポイントや注意点も解説します。

1. 白いバラ

父の日の発祥には、一輪の白いバラが深く関わっています。アメリカで父の日を提唱したソノラ・スマート・ドッド夫人は、亡き父の墓前に白いバラを供えたことから、父の日という文化が始まりました。以降、アメリカでは「亡き父には白いバラ、健在の父には赤いバラを贈る」という習慣が生まれました。 白いバラは「純粋」「尊敬」「祈り」といった花言葉を持ち、静かに想いを伝えたいときにふさわしい供花です。日本でも白いバラは仏花として問題なく使え、落ち着いた印象が仏壇や墓前によく合います。 ただし、バラには棘があるため、墓前に供える際には棘を取り除く配慮を忘れないようにしましょう。棘のある植物は、痛みや死を連想させるとして供花に適さないとされる場合があります。スプレーバラなど棘の少ない品種や、処理された花を選ぶのが安心です。

2. 黄色いバラ

日本では、父の日に贈る花として黄色いバラがよく知られています。明るく温かみのある色合いは「感謝」「献身」「友情」といった花言葉を持ち、父への親しみと尊敬を込めて選ばれます。 明るい雰囲気を演出したいときに最適ですが、白いバラと同様に棘の扱いには注意が必要です。棘を丁寧に取り除くか、棘の少ない品種を選ぶと、墓前でのマナーも安心です。

3. 白いカーネーション

白いカーネーションは、母の日だけでなく、故人を偲ぶ供花としても定番です。「無償の愛」「敬愛」といった花言葉があり、穏やかな気持ちで父を思い出す場面にふさわしい花です。清楚で控えめな印象が、仏壇や墓前の空気感にしっくりと合います。

4. リンドウ

リンドウは「誠実」「正義」「愛情」といった花言葉を持ち、堅実な生き方をした父親を偲ぶ花として人気があります。深い青紫の花色は控えめで上品。仏壇や墓前に供えると、静かな祈りの場をさらに引き立ててくれます。

5. ヒマワリ

ヒマワリは、「信頼」「尊敬」「憧れ」といった前向きな花言葉を持つ夏の花です。明るい性格だった父、笑顔が印象的だった父を思い浮かべながら手向ける花として選ばれます。特に子どもたちと一緒に参る場面では、ヒマワリの親しみやすさが心をなごませてくれます。

6. その他のおすすめの花

・トルコキキョウ:淡く優しい色合いで、長持ちしやすく品もある。和洋いずれにも合う。 ・ユリ:清らかさと威厳の象徴。大輪で存在感があり、敬意を強く表現したいときに最適。 ・キク:仏花の代表格。白や黄色を基調とした種類は長く保ち、宗派を問わず使える。

花を選ぶときのポイント

供える花は、見た目や花言葉だけでなく、父が生前に好きだった花を選ぶのも非常に良い方法です。故人の好物や趣味と同様、「父らしさ」や「思い出」を反映した花を手向けることで、より心のこもった供養になります。 また、「父と見た景色に咲いていた花」「父が庭で育てていた花」など、個人的な記憶に基づいた選び方も、供養の場をより深いものにしてくれるでしょう。 花は感謝の言葉と同じくらい、想いを伝える力を持っています。黄色いバラで明るく感謝を、白いバラで静かに敬意を——。花の色や種類を選ぶことは、故人との心の対話の一環です。何を選べばいいかわからないときは、「父らしさ」と「届けたい気持ち」に立ち返ることが、もっともふさわしい一輪を見つけるヒントになるはずです。

父の日参りだけじゃない?亡き家族を偲ぶ家族供養のかたち

本コラムでもたびたび触れてきたように、父の日参りは故人である父に感謝を伝える機会として定着しつつあります。では、このように特定の家族に想いを向ける「家族参り」は、他にも存在するのでしょうか? ここでは、父の日参りと同じく、家族との個人的な関係性に基づくお参りに絞って紹介します。

1. 母の日参り

既に本記事でも取り上げた「母の日参り」は、父の日参りと対になる存在として知られています。母の日(5月の第2日曜日)に、亡き母を偲んで花を供えるこの習慣は、家族単位の供養として自然な流れで広がってきました。 特に白いカーネーションを供える文化は古くから根付いており、形式張らずに個人の想いを形にできる点で、父の日参りと同様、現代の供養スタイルに合った「家族参り」の代表例といえるでしょう。

2. 祥月命日参り

故人が亡くなった月日と同じ日が巡る「祥月命日(しょうつきめいにち)」は、日本の伝統的な供養文化の中でも特に大切にされている日です。亡き家族を偲ぶこの日に墓参りを行う「祥月命日参り」は、故人とのつながりを再確認し、心の中で語り合う貴重な時間となります。 たとえば6月15日が命日であれば、毎年6月15日が祥月命日です。この日にお墓を訪れたり、仏壇に手を合わせたりすることで、家族それぞれの記憶と想いが共有され、形式にとらわれない個人供養の場が生まれます。 また、父の日や母の日などの年中行事とは異なり、祥月命日は故人と自分だけの特別な記念日です。そのため、故人の好きだった食べ物や音楽、思い出の写真などを用意して「その人らしさ」を尊重する供養が行われることも多くあります。

まとめ

本記事では、父の日に亡き父を偲ぶ「父の日参り」という新しい供養のかたちを中心に、その起源や意味、供える花や贈り物の選び方まで、幅広くご紹介しました。 父の日参りは、年に一度、形式ばらずに個人としての父と向き合い、感謝を伝える日として、現代の生活にも自然に取り入れやすい供養スタイルです。特に、黄色いバラや白いバラといった花に込めた想い、棘の処理やマナーへの配慮、故人の好みに合わせた選び方など、細やかな心遣いがその価値をより深いものにしてくれます。 また、母の日参りや祥月命日参りなど、父の日参りと共通する「家族と向き合う日」は他にも存在し、それぞれが私たちにとって大切な「感謝を届ける節目」になり得ます。形式ではなく気持ちを優先するこれらの参りは、忙しい日常のなかでも、亡き家族を想う時間を取り戻すための貴重な手段となっています。 供養のあり方が多様化する現代において、自分なりのやり方で故人を偲ぶことは決して特別なことではなくなってきました。家族との記憶を大切にしたいと思ったそのときが、想いを形にする絶好のタイミングです。

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