士業とは?8士業・10士業の違いと職種一覧をやさしく解説

2025.5.23

  • 相続

「士業」という言葉を耳にしたことはあるものの、実際にどのような職業が含まれているか、明確に説明できる人は少ないかもしれません。士業とは、弁護士や税理士など、国家資格を取得して一定の専門知識とスキルをもとに業務を行う専門職の総称で、日本社会において重要な役割を果たしています。特に「8士業」や「10士業」という用語は、企業活動や個人の生活に密接に関わる専門職を体系的に分類するものであり、それぞれの特徴や違いを正しく理解することが、適切な専門家の選定や業務依頼の第一歩となります。 本記事では、8士業、10士業と呼ばれる国家資格者の職種を丁寧に解説し、それぞれの業務内容、違い、企業における活用方法、さらには依頼する際の注意点までを詳しく紹介します。士業の分類と特徴を深く理解することで、あなたやあなたのビジネスにとって最適な専門家を見つける手助けとなるでしょう。

士業とは

「士業(しぎょう)」とは、特定の専門分野で国家資格を有し、その知識と技能を活かして業務を遂行する職業の総称です。語尾に「士」がつく職業であることからこのように呼ばれ、代表的な例として「弁護士」「税理士」「司法書士」「行政書士」などが挙げられます。これらは法務・財務・労務・不動産・知的財産など、個人や企業の重要な資産や権利に関わる領域で活動しており、その職責から国家による資格制度と厳格な業務規定が設けられています。

士業の主な特徴

士業の特徴は主に以下の点に集約されます。  ₋・国家資格が必要₋:業務に従事するためには、所定の国家試験に合格し、必要な登録手続きを経ることが義務付けられています。  ₋・独占業務がある₋:士業の中には、資格保有者のみに許される「独占業務」(例:弁護士による訴訟代理、税理士による税務申告代理)があります。  ₋・高度な専門性₋:法律、税制、会計、労働法、不動産、知財など、対象分野が高度に専門化されており、継続的な学習と実務経験が求められます。  ₋・信頼性と倫理性₋:顧客の重要な情報を扱うため、職業倫理や守秘義務が厳格に課されています。

士業の役割と社会的意義

士業の最大の社会的役割は、「公正」「安全」「信頼」の確保にあります。たとえば、弁護士は法的な争いの公正な解決を促し、税理士は正確な納税を通じて国の財政基盤を支え、社労士は健全な労働環境の構築に貢献します。これらの活動を通じて、個人の権利保護や企業の持続的成長、さらには法治国家としての機能維持に寄与しているのです。

士業の種類と発展

時代の変化とともに士業の種類や役割も進化しています。従来の「8士業」「10士業」といった分類に加えて、ITやグローバル化の影響を受けた新たな専門分野も注目されています。たとえば、情報セキュリティに関する法律対応、国際取引における関税・輸出入手続き、外国人雇用や在留資格などの対応は、行政書士や通関士、中小企業診断士などの士業の新たな活躍の場となっています。 また、少子高齢化や多様化する働き方の中で、社会福祉士や精神保健福祉士のような福祉系士業の需要も高まっており、士業は単なる法務や税務の専門家にとどまらず、社会課題に対応する専門家集団としての性格を強めつつあります。

8士業とは?

「8士業」は、個人や中小企業が日常的に関わる法務・行政・税務・労務・不動産・知的財産の分野を支える専門職の集まりで、それぞれに国家資格と独自の業務範囲が定められています。以下では、8士業すべてについて、具体的な業務内容や特徴、他士業との違いを詳しく解説します。

1. 弁護士

 ₋・業務範囲₋:民事・刑事の訴訟代理、法律相談、契約書の作成・レビュー、企業法務、遺言・相続問題の対応など  ₋・特徴₋:士業の中でも唯一、裁判所での訴訟代理権を全面的に持つ国家資格。法律問題全般に対応可能。  ₋・他士業との違い₋:司法書士は簡易裁判所に限って訴訟代理が可能だが、弁護士はすべての裁判所で活動できる。

2. 司法書士

 ₋・業務範囲₋:不動産登記、商業登記、成年後見制度の支援、簡易裁判所における訴訟代理(一定条件下)  ₋・特徴₋:登記に特化した専門家。不動産や会社の法的手続きを正確に行う。  ₋・弁護士との違い:訴訟代理は簡裁まで。複雑な訴訟や法的争いは弁護士の領域。

3. 行政書士

 ₋・業務範囲₋:官公庁への各種許認可申請書類の作成(建設業、風俗営業、飲食業など)、外国人の在留資格手続き、遺言書の起案など  ₋・特徴₋:行政手続きのプロフェッショナル。書類作成に関する権限が広い。  ₋・司法書士・弁護士との違い₋:登記や訴訟代理はできないが、行政に対する手続きで活躍。

4. 税理士

 ₋・業務範囲₋:税務相談、税務申告の代理、税務調査の立ち会い、会計帳簿の作成・記帳指導  ₋・特徴₋:税務における独占業務があり、個人・法人の納税義務の履行を支援。  ₋・公認会計士との違い₋:公認会計士が会計監査の専門家であるのに対し、税理士は税務の実務に特化。

5. 社会保険労務士(社労士)

 ₋・業務範囲₋:社会保険・労働保険の手続き、就業規則の作成、労務相談、助成金の申請支援など  ₋・特徴₋:労働法規や社会保険制度に精通。企業の人事労務の健全化を図る。  ₋・行政書士との違い₋:似た手続きを扱うが、社労士は「労務」に特化し、企業内部に深く関与する。

6. 弁理士

 ₋・業務範囲₋:特許、実用新案、意匠、商標などの出願代理、知的財産に関する相談・係争対応  ₋・特徴₋:技術・デザイン・ブランドの保護に特化した知的財産の専門家。  ₋・弁護士との違い₋:弁理士は出願・登録の手続きに強く、特許訴訟などは弁護士との連携が必要。

7. 土地家屋調査士

 ₋・業務範囲₋:不動産の表示に関する登記、土地の境界測量、建物の新築・増築に伴う登記手続き  ₋・特徴₋:土地や建物の「物理的状態」に関わる登記のプロ。測量士とは異なる法的手続きを担う。  ₋・司法書士との違い₋:登記の対象が異なり、司法書士は「権利」、調査士は「表示」が担当領域。

8. 海事代理士

 ₋・業務範囲₋:船舶の登記、登録、海難事故の報告、船員の雇用契約などの手続き代理  ₋・特徴₋:海運・航行・港湾関連業務の法務に関するスペシャリスト。港湾関連企業や船会社で活躍。  ₋・行政書士との違い₋:海事代理士は、海運関連に特化し、船舶登記など独自の手続きに対応。

10士業とは?

「10士業」とは、もともとの「8士業」から「海事代理士」を除き、新たに「公認会計士」「中小企業診断士」「不動産鑑定士」の3つの国家資格者を加えた構成です。これにより、従来の法務・税務・登記などに加えて、財務監査・経営戦略・不動産評価といった企業経営の中核を担う分野が包括されるようになりました。 この10士業は、企業の経営環境が複雑化する中で、経営者が抱える課題に対してより高度で実践的なサポートを提供できる体制として注目されています。それぞれの士業は明確な専門領域を持ちつつも、実務においては互いに補完し合う場面が多く、経営支援のための強力なチームとして機能することもあります。

1. 公認会計士

 ₋・業務範囲₋:財務諸表の監査、内部統制の評価、会計・税務コンサルティング、IPO支援、M&Aの財務デューデリジェンスなど  ₋・資格概要₋:金融庁管轄の国家資格。合格率は非常に低く、高度な会計・法務・経営知識が求められる。  ₋・専門性₋:企業の財務諸表が正しく作成されているかを独立した立場で監査する唯一の専門職。大企業から中小企業まで、会計の信頼性確保に不可欠な存在。  ₋・活用例₋:上場企業の法定監査、会計基準の導入支援、IFRS対応、企業買収時の財務調査など。

2. 中小企業診断士

 ₋・業務範囲₋:経営診断、事業計画策定支援、業務改善提案、補助金申請サポート、地域振興プロジェクト参画など  ₋・資格概要₋:経済産業省所管の国家資格。一次試験と二次試験を突破し、さらに実務補習または実務経験が必要。  ₋・専門性₋:企業経営のあらゆる局面(マーケティング、人事、生産、財務、戦略)を総合的に診断・助言できる唯一の国家資格。  ₋・活用例₋:経営再建プロジェクト、創業支援、事業承継計画の立案、IT導入補助金の申請アドバイスなど。

3. 不動産鑑定士

 ₋・業務範囲₋:不動産の鑑定評価、資産評価、価格調査報告書の作成、固定資産税評価、裁判・税務対応のための評価意見書の作成  ₋・資格概要₋:国土交通省所管の国家資格。一次試験・二次試験に加え、実務修習を経て登録。  ₋・専門性₋:不動産の「適正価格」を客観的かつ専門的に判断できる唯一の国家資格。不動産の売買・担保・訴訟・税務すべてに関与可能。  ₋・活用例₋:相続時の不動産評価、企業の資産評価、事業用地の取得支援、不動産投資判断のための鑑定など。

8士業・10士業の違い

活動領域の比較

8士業と10士業は活躍する領域や想定される利用シーンに違いがあります。以下に、分類ごとの対象分野と主な特徴をまとめます。

     ₋分類₋    ₋対象分野₋  ₋想定される活用シーン₋
     8士業法律、税務、登記、行政手続、労務、知財等個人・小規模事業者の生活・事業支援(例:相続、会社設立、労務手続)
    10士業上記+会計監査、経営戦略、不動産評価中堅〜大企業の戦略支援・資産活用(例:IPO、M&A、企業再生)

このように、8士業は「日常の法務・手続き支援」に強みがあり、10士業は「企業の経営判断や資産戦略支援」に長けているという棲み分けがなされています。

分類が生まれた背景

これらの分類は、法務省や総務省、経済産業省などが業務範囲や社会的役割をもとに、業種の共通点や必要性を整理する中で形成されました。また、企業活動の多様化に伴い、士業も連携や分業による対応が求められるようになり、特定の分類でパッケージ化することによって、依頼者が目的に応じて適切な専門家を選びやすくするという意図もあります。

士業を終活で活用する方法とその具体例

「終活」とは、人生の最終段階をより自分らしく、そして家族に負担をかけないよう準備する行為です。エンディングノートの作成や財産の整理、意思能力の低下に備えた制度利用など、考えるべきことは多岐にわたります。 こうした終活の各場面で士業(専門家)を活用することで、₋法的に正確で、心理的にも安心できる備えが可能₋になります。ここでは、終活で士業がどのように関わるのかを、具体的な4つの支援分野に分けて紹介します。

1. 成年後見制度の準備

 ₋関与士業:司法書士・弁護士₋ 年齢を重ねるとともに心配になるのが、₋認知症などによる判断能力の低下₋です。こうした将来に備える法的仕組みが「後見制度」です。   ₋・任意後見制度₋:本人が元気なうちに後見人を指名し、判断力が落ちたときに効力を発揮。契約書は公正証書で作成され、士業が関与することで内容の漏れや不備を防げます。   ₋・法定後見制度₋:すでに判断力が低下している人について、家庭裁判所が後見人を選任する制度。士業は申立てや後見人としての活動を支援できます。   ₋・家族信託との比較・併用₋:後見制度と信託を組み合わせて、資産管理と意思決定支援を両立させるケースも増えています。 成年後見制度は₋早めの備えがカギ₋となるため、司法書士や弁護士への事前相談が重要です。

2. 生前贈与・財産整理の支援

 ₋関与士業:税理士・行政書士・弁護士₋ 生前に財産をどう扱うかは、相続トラブルを防ぐうえで非常に重要です。士業は主に以下のような支援を行います。   ₋・贈与税の非課税枠の活用₋:年間110万円の基礎控除や、住宅取得等資金の特例などを活かして、計画的な資産移転を行うサポート。   ₋・財産目録の作成₋:どこに何がどれだけあるかを一覧に整理することで、家族が混乱しないようにする準備。行政書士や弁護士が記載項目のアドバイスを行います。   ₋・生前整理₋:不動産の名義整理、不要資産の処分、相続対策の提案など、複数の士業が連携するケースもあります。 早期に士業とともに進めることで、₋「争続」の回避とスムーズな相続準備₋が実現できます。

3. 葬儀・墓地・死後事務委任契約の準備

₋関与士業:行政書士・弁護士₋ 自分の死後に関する希望や手続きも、終活の大切な要素です。   ₋・死後事務委任契約₋:死亡届の提出、火葬・納骨、病院や公共料金の清算などを、あらかじめ信頼できる人に託しておく契約。行政書士や弁護士が契約書の作成を支援します。   ₋・葬儀・供養の希望整理₋:宗派、式の形式、埋葬場所の希望などを明文化しておくことで、家族の判断負担を軽減できます。   ₋・士業の役割₋:「家族に直接言いにくいこと」を士業が第三者として橋渡しすることで、心理的にも円滑に準備が進められます。 このような契約や記録は₋法的に認められた形式₋で残しておく必要があるため、士業の関与は不可欠です。

4. エンディングノートの作成サポート

₋関与士業:行政書士₋ エンディングノートは、法的効力はないものの、自分の想いや希望を自由に書き残せるツールです。士業はこのノート作成において、次のようなサポートを提供できます。   ₋・構成や優先順位のアドバイス₋:財産情報、医療の希望、家族へのメッセージなど、何を書いておくとよいかを整理します。   ₋・法的文書との違いを説明₋:遺言書や死後事務契約との役割分担を明確にすることで、記載内容の矛盾や誤解を避けられます。   ₋・家族への伝達支援₋:記載内容を家族にどう伝えるか、誰にどこまで見せるかなど、実務的な相談も可能です。 「書いておくだけで安心できる」だけでなく、₋のちの手続きや意思伝達の出発点₋としても機能します。

士業を個人で活用する方法とその具体例

士業は企業だけでなく、実は個人にとっても非常に身近な存在です。人生の節目やトラブルに直面したとき、専門知識を持った士業に相談することで、複雑な手続きや法律的なリスクを安心して乗り越えることができます。 ここでは、個人がよく直面する5つの生活場面を取り上げ、それぞれにどの士業がどのように役立つのかを紹介します。

1. 相続・遺言の手続き

₋・関わる士業₋:司法書士、税理士、行政書士、弁護士 ₋・活用例₋:    ・司法書士:相続による不動産の名義変更登記    ・税理士:相続税の申告・節税対策    ・行政書士:遺産分割協議書や遺言書の作成サポート    ・弁護士:相続争いへの対応、調停・訴訟代理 遺産の分割は「感情」と「法務」が交差する場面。複数の士業が連携して、冷静かつ法的に適正な解決を支援します。

2. 離婚に関する問題

₋関わる士業₋:弁護士、行政書士 ₋活用例₋:    ・弁護士:慰謝料、財産分与、親権など争いがあるケースの交渉・代理    ・行政書士:離婚協議書や公正証書の作成サポート 離婚は法的にも感情的にも負担が大きいため、第三者の専門家に相談することで冷静な話し合いと法的保護が得られます。

3. 住宅の購入・売却

₋関わる士業₋:司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士 ₋活用例₋:    ・司法書士:所有権移転登記の手続き    ・不動産鑑定士:購入価格の妥当性チェックや資産評価    ・土地家屋調査士:土地境界の確定や建物表示登記 数千万円単位の取引となる不動産だからこそ、法的手続きのミスが大きな損失につながります。プロのサポートが不可欠です。

4. 外国人の在留・就労手続き

₋関わる士業₋:行政書士 ₋活用例₋:    ・在留資格の取得・更新・変更手続きの代行    ・永住権・帰化申請の相談と書類作成    ・外国人雇用企業との手続き調整 日本で働いたり生活する外国人にとって、行政書士は制度上の「通訳者」のような存在です。

5. ライフプランと資産形成

₋関わる士業(準士業)₋:ファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)、税理士 ₋活用例₋:    ・老後資金・教育資金の積立計画    ・保険の見直し、投資信託・NISA・iDeCo活用の助言    ・資産管理や相続対策のアドバイス(税理士との連携) FP技能士は法的な独占業務はないものの、士業と連携しながら「お金の人生設計」を支える存在として重宝されています。

このように、個人が士業を活用する場面は非常に多岐にわたります。トラブルが起きてからではなく、「困りそうな時」にこそ早めに相談することで、精神的・経済的な負担を大きく減らすことができます。

まとめ

本記事では、士業という言葉の意味から始まり、8士業・10士業の違い、個別職種の役割、企業・個人における活用方法までを包括的に解説しました。 士業とは単なる国家資格保持者ではなく、法律、税務、経営、労務、行政手続きといったさまざまな分野で、専門知識と実務経験を活かして社会の仕組みを支えるプロフェッショナルです。企業にとっては業務効率化とリスクヘッジの要として、個人にとっては人生の節目や困難を乗り越えるサポーターとして、非常に重要な存在です。 特に「8士業」や「10士業」といった分類を理解することで、目的に応じて適切な専門家を選ぶ手助けになります。また、士業同士が連携して対応する事例も多く、ひとつの課題に対して複数の視点から支援を受けられるのも士業活用の大きな魅力です。 最後に強調したいのは、「困ったら相談」ではなく、「困る前に相談」するという姿勢です。士業はその専門性から、事前の備えや予防措置こそが本領を発揮する場面。企業でも個人でも、信頼できる士業との関係を早めに築いておくことが、長期的な安定と安心につながるでしょう。

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