
生活保護受給者でも安心!民生葬の費用内訳と申し込み方法
公開日: 2024.11.26 更新日: 2024.11.29
目次
生活保護を受給している方やその家族が亡くなった場合、葬儀費用をどうすればよいかという経済的な不安を抱えることが多いです。一般的な葬儀は高額になるため、費用を準備できない場合、適切な選択肢を探す必要があります。このような状況において、公的支援の一つとして利用できるのが「葬祭扶助」に基づく「民生葬」です。
民生葬は、生活保護を受けている方やその遺族が最低限の葬儀を執り行えるよう、地方自治体が提供する支援制度です。本記事では、生活保護受給者が利用できるこの制度について詳しく解説するとともに、申請手続きや注意点、さらに制度が適用されない場合の代替手段についても触れています。限られた条件の中で、故人を敬いながら経済的負担を最小限に抑えるための具体的な方法を一緒に学んでいきましょう。
民生葬とは?その概要と対象者
民生葬とは、生活保護法に基づく「葬祭扶助」として提供される葬儀サービスです。この制度は、経済的に困窮している方々を対象に、地方自治体が簡素な葬儀を手配するものです。特に、生活保護を受けている方やその遺族、または身寄りがなく葬儀を執り行う親族がいない場合に適用されます。「福祉葬」や「生活保護葬」という名称で呼ばれることもありますが、いずれも同じ制度を指しています。
民生葬は、過剰な装飾や大規模な儀式を省き、最低限の形式で故人を送り出すことを目的としていますが、自治体が費用の一部または全額を負担するため、経済的負担が大きく軽減されます。
民生葬の主な対象者
民生葬を利用できるのは、以下の条件を満たす方々です。

1.生活保護を受給している本人、または生活保護受給者が扶養していた親族が亡くなった場合
民生葬は、生活保護受給者本人が亡くなった場合、または生活保護を受けている扶養義務者が負担する親族の葬儀に適用されます。
2.扶養義務者がいない、または扶養義務者が経済的困難で葬儀費用を負担できない場合
故人に扶養義務者が存在しない、または扶養義務者が低所得や失業、病気などにより経済的困難に陥っている場合に適用されます。この場合、扶養義務者の状況を証明する書類が必要です。
このように、民生葬の対象者は「生活保護を受給している世帯」を中心としており、制度の範囲は厳格に運用されています。
民生葬が利用できない場合の代替手段
民生葬の利用条件を満たさない場合や、葬祭扶助の申請が受理されなかった場合でも、葬儀費用を抑える方法はいくつか存在します。以下に、代表的な代替手段を紹介します。
1. 葬儀社の直葬プランを選ぶ
葬祭扶助が適用されなかった場合、葬儀社が提供する「直葬プラン」を利用することで、葬儀費用を抑えることが可能です。直葬プランとは、通夜や告別式を省略し、火葬のみを行う葬儀形式です。民生葬が実施する葬儀内容も基本的には直葬と同じであるため、これを選ぶことで費用を大幅に軽減できます。
・費用の目安
直葬プランの費用:10万円~20万円程度(地域や葬儀社により異なる)
葬儀社によっては、遺体搬送や火葬費用を含んだパッケージプランを提供している場合が多いため、複数の葬儀社に相談し、内容や費用を比較することをお勧めします。
2. 家族葬を検討する
通夜や告別式を行いたい場合、直葬プランでは対応できないため、小規模な形式で行う「家族葬」を選ぶのがおすすめです。家族葬は、親族や親しい友人など限られた参列者のみで執り行う葬儀形式で、一般葬よりも費用を抑えられます。
・家族葬の特徴と費用
費用:30万円~50万円程度(直葬プランより高額だが、一般葬より低価格)
親しい人々と落ち着いた雰囲気で故人を見送ることができる。
葬儀後の香典を葬儀費用に充てられることが多いため、経済的負担を軽減できる場合がある。
民生葬が認められないケース
民生葬が認められないケースについて、以下に主な理由を挙げます。
1. 扶養義務者が存在し、十分な収入や資産を持っている場合
民生葬の適用は、故人や遺族が経済的に困窮していることが前提です。そのため、 扶養義務者が高収入であったり、資産(不動産、預貯金など)を所有していると自治体が判断した場合、葬祭扶助の支給対象外となり、民生葬は利用できません。
2. 故人が生活保護を受給していない場合
故人や遺族が生活保護を受給しておらず、経済的困窮が証明できない場合は対象外となります。
3. 民生葬の対象外となる葬儀形式を希望した場合
民生葬はあくまで簡素な葬儀形式を想定しています。例えば、豪華な祭壇や多くの参列者を伴う葬儀を希望する場合、民生葬では対応できません。
4.申請が事後になった場合
葬儀の前に福祉事務所への申請が行われなかった場合、事後申請は原則として認められません。そのため、必ず葬儀前に申請手続きを行うことが必要です。
民生葬における葬儀形式
民生葬では、費用を抑えるために「直葬」という形式が一般的です。この形式は、支給金内で実施可能な葬儀として採用されています。
直葬とは
直葬は、通夜や告別式といった従来の葬儀儀式を省略し、遺体を火葬場に直接搬送し、火葬のみを行う形式です。
直葬の流れ
1.遺体の搬送:病院や自宅から火葬場または安置施設に遺体を搬送します。
2.短時間のお別れ:火葬前に短い時間だけ遺族が故人と対面し、お別れをする場が設けられることがあります。
3.火葬の実施:火葬を行い、遺骨を遺族に引き渡します。
自治体の費用負担と支給額の上限
民生葬では、自治体が葬儀費用を一部または全額負担しますが、この支給額にはあらかじめ上限が設定されています。この上限金額は、自治体ごとの規定によって異なりますが、一般的には以下の範囲内に収まることが多いです。
・支給額の目安
10万円~20万円程度が一般的
多くの自治体では、葬祭扶助として支給される金額の上限が10万円から20万円程度に設定されています。この範囲内であれば、葬儀費用を全額補助する場合もあります。
民生葬の費用とその内訳
民生葬の費用は非常に抑えられており、経済的困窮者でも利用しやすい設計となっています。以下に、具体的な内訳についてさらに詳しく説明します。
主な費用項目
1. 火葬費用
費用の目安:無料~数万円
火葬費用は民生葬において最も基本的な項目です。地方自治体が火葬にかかる費用を全額負担することが多く、その場合、利用者の実際の支払いは0円となります。ただし、自治体によっては、一部自己負担が必要な場合もあります。この場合でも、費用は1万円~5万円程度に抑えられることが一般的です。
2. 遺体搬送費用
費用の目安:1万円~5万円程度
故人の遺体を、自宅や病院などから火葬場または安置所まで搬送する際にかかる費用です。搬送費用は、距離や使用する車両(霊柩車など)によって異なりますが、民生葬の場合は、この費用も自治体が負担するケースがほとんどです。
3. 葬儀場の使用料
費用の目安:無料~割引料金(5000円~2万円程度)
自治体が所有する火葬場や簡易葬儀場を使用する場合、使用料が無料となる地域が多いです。一部の地域では、割引料金(数千円〜数万円程度)で利用できる場合もあります。
4. 最低限の棺や祭壇の費用
費用の目安:5万円前後
故人を安置するための棺や簡易的な祭壇にかかる費用です。民生葬では、豪華な装飾や追加オプションを排除し、必要最低限のものだけが提供されます。
民生葬の総額の目安
これらの費用を合計すると、民生葬にかかる総額は自治体や地域によって異なりますが、15万円〜20万円程度が一般的な目安です。しかし、この総額のうち、火葬費用や搬送費用などを自治体が負担するため、実際に利用者が支払う金額は大幅に軽減されるか、ゼロになることも珍しくありません。
民生葬の申し込み方法と手続きの流れ

民生葬を利用するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。以下では、手続きの流れを詳細に解説します。
1. 自治体への相談
まずは、お住まいの自治体の福祉課に相談することが第一歩です。相談窓口では、次のようなサポートを受けることができます。
・制度の詳細説明:民生葬の利用条件や適用可能な補助額について説明を受けます。
・対象者かどうかの確認:生活保護受給者や扶養義務者の状況をヒアリングし、対象者であるかを判断します。
主な相談窓口
・市区町村役場の福祉課
・地域包括支援センター
・生活保護担当のケースワーカー
2. 必要書類の準備
民生葬を申請するためには、いくつかの書類を準備する必要があります。特に、対象者であることを証明する書類は必須です。自治体によって必要書類が異なる場合があるため、事前に問い合わせて確認することをお勧めします。
必要な書類一覧
・申請者の身分証明書:マイナンバーカード、運転免許証など。
・故人の死亡診断書:医師による正式な診断書が必要です。
・経済状況を証明する書類:生活保護受給証明書や扶養義務者の収入証明書。
・戸籍謄本:故人との親族関係を確認するため。
3. 申請書類の提出
必要書類を揃えたら、自治体の福祉課に申請書類を提出します。申請内容に基づき、自治体が審査を行います。
・審査期間:通常は数日から1週間程度で結果が通知されます。
・不備がある場合:提出書類に不備があれば、追加で資料を求められることがあります。
4. 葬儀会社への依頼
申請が承認されたら、葬儀会社へ依頼を行いましょう。
葬儀社との連携について
多くの葬儀社は「葬祭扶助」に対応したプランを用意していますが、プラン名として「民生葬」「福祉葬」「生活保護葬」などが明示されていない場合があります。そのため、葬儀社に相談する際は以下のポイントを確認しましょう
・生活保護を受給していることを伝える
生活保護受給者であることを明確に伝えると、葬祭扶助の範囲で利用できる適切なプランを案内してもらえます。
・プラン内容や費用の確認
葬儀内容(火葬のみ、直葬など)や費用が葬祭扶助の範囲内に収まるかを事前に確認しましょう。
事前の確認が重要
葬儀社に相談する際には、以下の点をしっかり確認してください:
・葬儀プランが葬祭扶助の範囲に適しているか
・火葬費用や遺体搬送費用が含まれているか
・追加費用が発生する場合の金額や内容
5. 葬儀の実施
民生葬では、火葬のみや直葬といった簡素な形式で葬儀が実施されます。一般的な流れは以下のとおりです
1.遺体の搬送:故人を病院や自宅から火葬場または安置施設に搬送します。
2.短時間のお別れ:火葬場で短時間のお別れの場が設けられることがあります。
3,火葬の実施:火葬を行い、遺骨を遺族に引き渡します。
注意点として、宗教的儀式や特別な装飾を希望する場合は、追加費用が発生することがあります。これについても、葬儀社と事前に相談しておきましょう。
民生葬を利用する際の注意点
民生葬は経済的に困窮している方々を支援するための重要な制度ですが、利用時にはいくつかの注意点があります。事前にこれらを理解しておくことで、トラブルを防ぎ、スムーズに手続きを進めることができます。
1. 葬儀形式への理解が必要
民生葬は、費用を抑えるため「直葬」や「火葬のみ」といった簡素な形式が基本となります。通夜や告別式といった一般的な葬儀を希望する場合、それらの費用は葬祭扶助の範囲外となり、遺族が別途負担する必要があります。民生葬を選択する際には、シンプルな形式で行われることを事前に理解し、遺族間で話し合っておくことが大切です。
2. 遺骨の管理や納骨は対象外
火葬が終わった後の遺骨管理や納骨先の手配については、葬祭扶助の対象外です。たとえば、以下のような費用は遺族自身が負担する必要があります
・お墓の新規購入や建立費用
・納骨堂や永代供養墓の利用費用
・既存の墓地への埋葬費用や管理費
火葬後の遺骨の扱いについては、遺族間で相談しておき、費用や手続きについて早めに準備することをお勧めします。
3. 香典の取り扱い
民生葬を利用する場合でも、香典を受け取ることは可能です。香典は生活保護法上の収入として扱われず、葬儀費用や遺族の生活支援に自由に使うことができます。ただし、自治体によっては香典の金額や用途について報告が求められる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。また、香典返しの費用は葬祭扶助の適用対象外となり、遺族が自己負担する必要があります。
まとめ
民生葬は、経済的に困窮している方々にとって重要な支援策です。制度の条件や利用方法を正確に把握し、必要に応じて自治体に相談することが第一歩です。また、条件を満たさない場合でも代替手段を利用することで、葬儀の負担を軽減することができます。
ぜひお住まいの自治体や福祉団体に問い合わせを行い、最適な方法で故人を送り出す準備を進めましょう。
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