喪主が避けるべき忌み言葉とは?適切な言葉選びと挨拶のマナー

2025.3.12

  • 葬儀
  • マナー

喪主として葬儀の挨拶をすることになったとき、多くの人が「どのような言葉を使えばよいのか」「失礼にならない言葉遣いは?」と悩むものです。特に注意すべきなのが「忌み言葉」と呼ばれる、不適切な表現です。 忌み言葉を知らずに使ってしまうと、参列者に違和感を与えたり、不謹慎だと受け取られることがあります。また、通夜と告別式では挨拶の目的が異なるため、場面に応じた適切な言葉選びが求められます。さらに、宗教ごとに適切な表現が異なり、キリスト教や神道では仏教とは違った言葉遣いが必要です。 喪主の挨拶は、ただ故人を悼むだけでなく、参列者への感謝を伝える大切な役割を持っています。慣れない場面での発言だからこそ、正しい言葉遣いやマナーを理解し、落ち着いて挨拶できるよう準備することが大切です。 この記事では、喪主の挨拶において避けるべき忌み言葉や、その適切な言い換え方を詳しく解説します。また、通夜と告別式の挨拶の違い、宗教ごとの表現の違い、マナーや注意点についても詳しく説明します。最後には、実際の挨拶例文も紹介するので、安心して挨拶できるよう参考にしてください。

1. 忌み言葉とは?

1-1. 忌み言葉の定義と由来

忌み言葉とは、葬儀の場で使うことを避けるべき言葉のことを指します。特に、死や不幸を直接的に表現する言葉や、不幸が繰り返されることを連想させる言葉が忌み言葉とされています。 日本には「言霊(ことだま)」の考え方があり、言葉には特別な力が宿るとされています。そのため、不吉な言葉を発すると、その言葉が現実のものとなると考えられ、古くから葬儀の場では慎重に言葉が選ばれてきました。 例えば、「重ね重ね」「再び」「続く」といった言葉は、「不幸が繰り返される」ことを連想させるため、葬儀の場では使用を避けるべきとされています。 また、「死亡」「終わる」「消える」などの表現は、死を直接的に表し、遺族や参列者に対して強い悲しみを思い出させる可能性があるため、控えるのが一般的です。

1-2. なぜ忌み言葉を避けるべきなのか?

忌み言葉 避ける 理由

忌み言葉を避ける理由は主に3つあります。 ① 遺族や参列者の心情を考慮するため 葬儀は、故人を偲び、遺族の悲しみに寄り添う場です。直接的に「死」や「不幸」を強調する言葉を使うと、遺族の悲しみを深めてしまう可能性があります。 例えば、喪主の挨拶で「亡くなった」「終わった」といった表現を使うと、聞き手に強い衝撃を与えてしまいます。そのため、「ご逝去されました」「旅立たれました」といった柔らかい表現に言い換えることが大切です。 ② 不吉な印象を与えないため 「重ね重ね」「再び」「続く」などの言葉は、「不幸が繰り返される」ことを暗示するとして、縁起が悪いとされています。葬儀は故人との最後の別れの場であり、これからを生きる遺族や参列者にとって、前向きな気持ちを持つことが求められます。そのため、不吉な言葉を使わないことが大切です。 ③ 葬儀のマナーとして定着しているため 日本では、長い歴史の中で葬儀の場におけるマナーが確立されてきました。忌み言葉を使わないことは、一種のマナーとして広く認識されており、特に年配の方々はこうした伝統を重視します。喪主として適切な言葉遣いをすることは、参列者への配慮にもつながります。

1-3. 忌み言葉を使うことで起こりうる問題

忌み言葉を意図せず使ってしまった場合、どのような問題が生じる可能性があるのでしょうか? ① 遺族が不快な思いをする 遺族は故人を失った悲しみの中にいるため、不適切な言葉遣いがさらに気持ちを沈ませることがあります。 例(避けるべき表現) 「○○さんが亡くなってしまい、本当に残念です。」 適切な言い換え 「○○さんがご逝去され、大変残念でなりません。」 このように、少しの言葉の違いが、遺族や参列者への印象を大きく変えることになります。 ② 年配の参列者がマナー違反と感じる 葬儀には高齢の参列者が多く、忌み言葉に対する意識が特に強い傾向があります。喪主の挨拶で忌み言葉を使ってしまうと、「マナーを知らない人だ」と思われることがあります。特に、故人が年配であった場合、その友人や親族も高齢の方が多くなるため、より慎重な言葉選びが求められます。 ③ 不吉な印象を与えてしまう 忌み言葉の中には、不幸が続くことを暗示するものもあります。そのため、葬儀の場ではできるだけ縁起の良い表現に言い換えることが大切です。 例(避けるべき表現) 「このようなことが重ね重ね続くのは、とても悲しいことです。」 適切な言い換え 「この度は突然のことで、深い悲しみを感じております。」 このように、表現を変えるだけで、不吉な印象を与えずに済みます。

2. 忌み言葉の具体例と適切な言い換え

喪主の挨拶では、特定の言葉が不適切とされる「忌み言葉」を避けることが求められます。この章では、具体的な忌み言葉とその適切な言い換えを紹介します。適切な表現を使うことで、参列者への配慮を示し、故人を穏やかに見送ることができます。

忌み言葉の種類と適切な言い換え

喪主の挨拶で避けるべき忌み言葉は、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます。 1.死や不幸を直接連想させる言葉 2.繰り返しを連想させる重ね言葉 3.不幸が続くことを連想させる続き言葉 4.故人が浮かばれないことを示唆する言葉 それぞれの具体例と、適切な言い換えを紹介します。 1. 死や不幸を直接連想させる言葉 「死」「亡くなる」「終わる」などの表現は直接的であるため、遺族や参列者の心情を考慮し、より柔らかい表現に言い換えます。

忌み言葉適切な言い換え
死ぬご逝去、ご永眠
亡くなるお旅立ち、ご昇天(宗教による)
消える使用を避ける
終わる滞りなく済む、無事に執り行われる
悲惨深い悲しみの中
苦しい忍ばれる

例:不適切な喪主挨拶 「○○が亡くなったことは、本当に悲惨で、苦しい思いでいっぱいです。」 適切な言い換え 「○○がご逝去され、深い悲しみに包まれておりますが、皆様のお支えにより、無事に本日を迎えることができました。」 2. 繰り返しを連想させる重ね言葉 「重ね重ね」「たびたび」「繰り返し」などの表現は、不幸が繰り返されることを暗示するため、できるだけ別の言葉に置き換えます。

忌み言葉適切な言い換え
重ね重ね心より、深く
たびたび言い換え不要(削除推奨)
繰り返し使用を避ける
いよいよ言い換え不要(削除推奨)
ますます一層

例:不適切な喪主挨拶 「重ね重ね、このような場を迎えることになり、悲しみの気持ちがますます深まります。」 適切な言い換え 「皆様のお言葉に深く感謝申し上げます。○○も、皆様に見守られながら、安らかに旅立ったことと思います。」 3. 不幸が続くことを連想させる続き言葉 「続く」「長引く」「繰り返し」などの言葉は、不幸が長く続くことを連想させるため、より前向きな表現に変えることが望ましいです。

忌み言葉適切な言い換え
追って後ほど
再三言い換え不要(削除推奨)
なおその上で
何度も言い換え不要(削除推奨)
続いて使用を避ける
繰り返し使用を避ける
引き続きこれからも変わらぬご厚情を

例:不適切な喪主挨拶 「このようなことが繰り返し起こらないように願っております。」 適切な言い換え 「皆様の温かいお言葉を励みに、遺族一同、○○をしっかりと見送る所存です。」 4. 故人が浮かばれないことを示唆する言葉 「浮かばれない」「迷う」「成仏できない」などの言葉は、故人の魂が安らかでないことを暗示するため、避けるべきです。

忌み言葉適切な言い換え
浮かばれない皆様のご厚情をいただき、○○も安らかに旅立ったことと思います
迷う使用を避ける
成仏できない安らかに眠る

例:不適切な喪主挨拶 「○○が浮かばれません。」 適切な言い換え 「皆様にお見送りいただき、○○も安らかに旅立つことができたことと思います。」

3. 喪主挨拶の例文

3-1. 通夜の挨拶

挨拶のポイント ・ 参列者への感謝の言葉を述べる ・ 故人が生前お世話になったことへの御礼を伝える ・ 翌日の葬儀・告別式について案内する 例文 「本日はお忙しい中、○○の通夜にお越しいただき、誠にありがとうございます。 ○○は生前、皆様に支えられ、穏やかな人生を送ることができました。本人もきっと、皆様にこうして集まっていただけたことを喜んでいることと思います。 突然のことで、私どももまだ気持ちの整理がついておりませんが、皆様の温かいお言葉や励ましに支えられながら、○○をしっかりと見送りたいと存じます。 なお、明日の○時より当斎場にて葬儀・告別式を執り行う予定です。ご都合が許しましたら、どうぞお立ち寄りください。 本日は誠にありがとうございました。」

3-2. 告別式の挨拶

挨拶のポイント ・ 参列者への感謝を伝える ・ 葬儀が滞りなく執り行われたことを報告する ・ 故人を偲び、これからの遺族の決意を述べる 例文 「本日はご多忙の中、○○の告別式にご参列いただき、誠にありがとうございます。 ○○は生前、皆様とのご縁を大切にし、多くの方々に支えられながら歩んでまいりました。本日、こうして皆様にお見送りいただき、○○もきっと感謝していることと思います。 おかげさまで、昨日の通夜、そして本日の葬儀・告別式も滞りなく執り行うことができました。生前賜りましたご厚情に対し、遺族を代表し、心より御礼申し上げます。 これからは残された私どもが○○の意思を受け継ぎ、日々を大切に過ごしてまいる所存です。皆様には、今後とも変わらぬご指導、ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。 簡単ではございますが、これをもちましてご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。」

3-3. 精進落としの挨拶

挨拶のポイント ・ 葬儀が無事に終わったことを報告する ・ 参列者への感謝と慰労の気持ちを伝える ・ 食事を囲みながら、故人を偲ぶ場であることを伝える 例文 「皆様、本日は○○のためにお集まりいただき、誠にありがとうございました。 おかげさまで、昨夜の通夜、そして本日の葬儀・告別式を滞りなく執り行うことができました。これもひとえに、皆様のお力添えと温かいお心遣いのおかげと、心より感謝申し上げます。 ささやかではございますが、皆様への感謝の気持ちを込めまして、お食事をご用意いたしました。どうぞ、ごゆっくりお召し上がりいただきながら、○○の思い出などをお聞かせいただければ幸いです。 本日は、長時間にわたり誠にありがとうございました。」

4. 喪主挨拶で注意すべきマナー

4-1. 挨拶の基本姿勢

喪主の挨拶では、言葉遣いや態度が相手に与える印象を大きく左右します。以下の点に注意し、落ち着いた態度で臨むことが大切です。 姿勢と態度 ・背筋を伸ばし、深くお辞儀をする(目安:45度程度の礼) ・参列者全体に視線を向けながら話す ・動揺して早口にならないよう、ゆっくりと落ち着いた口調を意識する 表情と声のトーン ・必要以上に悲しみを表さず、落ち着いた表情を心がける ・感情がこもりすぎると声が震えることがあるため、一呼吸おいてから話し始める ・マイクを使用する場合は、大きすぎず小さすぎず、適度な声量を意識する

4-2. 挨拶の長さと話すペース

喪主の挨拶は、長すぎても短すぎても適切ではありません。1〜2分程度(200〜300文字程度) を目安に、簡潔にまとめましょう。 適切な話し方のポイント ・1文を短く区切り、聞き取りやすいテンポで話す ・大事な部分では、少し間を置くことで強調する ・声が小さくなりすぎないよう注意する

4-3. 無理に暗記せず、メモを活用する

喪主の挨拶は緊張しやすい場面のため、無理に全文を暗記する必要はありません。要点をまとめたメモを手元に用意し、必要に応じて見ながら話すことで、落ち着いて挨拶することができます。 メモを活用するポイント ・簡潔な箇条書きで要点を整理する ・話す際は、できるだけ参列者の方を向く(メモを見すぎないよう注意) ・大事な部分はしっかり伝えるよう意識する メモを活用することで、言葉に詰まることなく、安心して挨拶をすることができます。

4-4. 参列者への配慮

喪主の挨拶は、自分の感情を伝える場ではなく、参列者への感謝を表す場でもあります。以下の点に配慮すると、より良い印象を与えます。 配慮すべきポイント ・個人的な感情を強調しすぎない 「まだ信じられない」「悲しくてたまらない」といった表現は控えめにし、落ち着いた言葉で伝える ・参列者への感謝を最優先する 例:「本日はご多用の中、ご参列いただき誠にありがとうございます。」 ・宗教や地域の慣習に注意する 例:仏教では「ご冥福をお祈りします」を使うが、神道やキリスト教では異なる表現が適切

5. 宗教ごとの喪主挨拶の特徴

5-1. 仏教の喪主挨拶

日本の葬儀の多くは仏教形式で執り行われます。仏教では、故人が極楽浄土へ旅立つことを願い、冥福を祈る表現がよく用いられます。ただし、宗派によっては使わない言葉もあるため、注意が必要です。 特徴 ・「冥福をお祈りする」「成仏」「ご供養」などの表現が一般的 ・通夜・告別式ともに厳粛な雰囲気で行われる ・故人を偲び、極楽浄土へ導かれることを願う 避けるべき表現 ・天国(仏教では「天国」という概念は一般的ではなく、「極楽浄土」などを用いる) ・浮かばれない、浮かばれぬ、迷う(故人が成仏できず苦しんでいる印象を与えるため不適切) ・冥福、霊前(浄土真宗では「冥福を祈る」という概念がなく、「ご冥福をお祈りします」は適切でない)

5-2. 神道の喪主挨拶

神道の葬儀(神葬祭)では、「死」は穢れ(けがれ)とされるため、仏教的な表現を避ける必要があります。神道では、故人は祖先の神(祖霊)となり、家族を見守る存在になると考えられています。 特徴 ・故人は神となり、「御霊(みたま)」として祭られる ・「冥福を祈る」「成仏」などの仏教的な表現は使わない ・四十九日に相当する儀式は「五十日祭」と呼ばれる 避けるべき表現 ・成仏、供養(神道では故人は仏ではなく神として祀られるため) ・冥福、往生(死後の考え方が仏教とは異なるため) ・お悔やみ(死を穢れとする考えから、遺族に対して「お悔やみ申し上げます」と言うのは不適切)

5-3. キリスト教の喪主挨拶

キリスト教の葬儀(カトリックでは「葬儀ミサ」、プロテスタントでは「告別式」)では、故人の魂が神のもとへ召されることを願います。仏教的な表現は用いず、神の恵みのもとで安らかに眠ることを祈る言葉が適切とされます。 特徴 ・「天国」「主の御許(みもと)」「召される」などの表現を用いる ・仏教的な言葉は避け、神のもとでの安息を願う ・祈りの言葉や、故人の信仰への言及が含まれることが多い 避けるべき表現 ・ご冥福、お悔やみ、供養、成仏(キリスト教では死は終わりではなく、神のもとでの新たな命の始まりとされるため) ・往生(仏教的な概念のため) ・哀悼(カトリックでは用いられないことが多い)

5-4. 宗派ごとの禁忌表現に注意する

日本には多様な宗教・宗派が存在し、それぞれに独自の考え方や儀礼があります。喪主の挨拶では、宗派ごとに適切な言葉遣いが異なるため、故人が生前に信仰していた宗派に合わない表現は避けるべきです。 ・仏教(浄土真宗)では「ご冥福」「霊前」を使わない ・神道では「成仏」「供養」などの仏教的表現は使わない ・キリスト教では「ご冥福」「お悔やみ」といった言葉を避ける 故人が大切にしていた宗教を尊重し、適切な表現を選ぶことが、参列者への礼儀ともなります。宗教的なタブーを避けることで、遺族や参列者が安心して挨拶を聞くことができるでしょう。

6. トラブルを避けるために

喪主の挨拶は、多くの参列者の前で話す重要な役割を担います。しかし、言葉選びや話し方を誤ると、思わぬトラブルにつながることもあります。スムーズに葬儀を進めるために、事前に確認すべきポイントを押さえておきましょう。

6-1. 親族間で事前に内容を確認する

喪主の挨拶は、個人の言葉だけでなく、親族全体の意向を反映するものでもあります。事前に親族と話し合い、以下の点を確認しておくと安心です。 ・宗派や地域の慣習に合った内容か ・故人のエピソードを盛り込む場合、家族の了承を得ているか ・挨拶の長さや話し方について意見をもらう 葬儀は親族全員にとって大切な儀式であるため、トラブルを避けるためにも、事前の相談を徹底することが重要です。

6-2. 予期せぬ事態に備える

葬儀の場では、突然の変更や予想外の事態が発生することがあります。喪主として冷静に対応できるよう、以下の点を意識しておきましょう。 ・メモを用意し、緊張しても話せるようにする ・万が一言葉に詰まっても、深呼吸して落ち着いて話す ・マイクや音響トラブルに備え、声の大きさに注意する また、高齢の親族が多い場合は、座ったまま挨拶をしても問題ないケースもあります。体調に不安がある場合は、無理をせず適宜対応しましょう。

まとめ

喪主の挨拶では、忌み言葉を避け、参列者への感謝を伝えることが何よりも大切です。「重ね重ね」「亡くなる」などの不適切な表現を適切な言葉に言い換え、宗教ごとの違いにも配慮する必要があります。また、通夜と告別式では挨拶の目的が異なるため、それぞれの場にふさわしい内容を準備しましょう。事前に親族と確認し、緊張しても落ち着いて話せるようメモを用意することも重要です。適切な言葉遣いとマナーを心がけ、故人を丁寧に送り出しましょう。

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