別れ花とは?棺に添える最後の花に込める意味と正しい選び方

2025.5.20

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大切な人を失った悲しみは、言葉では語り尽くせないものです。そうした別れの瞬間に、静かに想いを込めて捧げられるのが「別れ花」です。これは、故人に対する感謝や愛情を表すものであり、日本の葬送文化の中で大切にされてきた習慣のひとつです。 しかし、「別れ花とは何か?」「どのようなタイミングで渡すのか?」「どんな花を選べばよいのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。また、使用される花の種類やそれぞれの花言葉には、深い意味が込められており、それを知ることでより丁寧な気持ちを届けることができます。 この記事では、別れ花の意味や背景をはじめとして、実際に花を添えるタイミングや流れ、使われる花とその花言葉、選び方の注意点、さらには手配方法や相場まで、必要な情報を詳しくご紹介します。 故人への最後の贈り物となる別れ花。この一度きりの大切な別れの場面において、気持ちをしっかりと形にするための手助けになれば幸いです。

「別れ花」とは?

別れ花とは、故人を火葬する直前に、棺の中へ花を手向ける習慣のことを指します。これは、葬送の過程における非常に重要な瞬間であり、故人への最後の別れを象徴する行為とされています。遺族や参列者が順番に一輪ずつ、あるいは数本の花を棺の中に手渡すことで、感謝や祈り、そして別れの想いを静かに表現します。

日本独自の文化としての「別れ花」

別れ花という言葉自体はあまり一般的ではありませんが、その行為は日本の葬送文化に深く根付いています。西洋の葬儀でも花を贈ることはありますが、棺に直接手渡すという形は、日本独特のものであり、より個人的な感情を表現できる手段といえるでしょう。 花を添えることで、故人の姿がより美しく整えられ、見る者の心にも穏やかな印象を残します。また、死を“終わり”ではなく、“感謝で満たされた旅立ち”として受け入れるための行為でもあります。

「別れ花」は何のためにあるのか?

単に棺を飾るという目的だけでなく、別れ花には多くの心理的な意味が込められています。  ₋・心の整理₋:別れの実感を得ることで、気持ちに区切りをつけやすくなる。  ₋・感謝の表現₋:言葉にできない感謝や想いを花に託すことができる。  ₋・美しさの共有₋:最後の姿をより優しく、印象深く演出する。 とくに身近な人を亡くした場合、別れ花の瞬間は深い癒しと心の整理をもたらすことが多いです。この文化的意味を理解することは、形式的ではなく、心を込めた見送りにつながります。

名称のバリエーションと注意点

「別れ花」は地域や宗教によって呼び方が異なる場合があります。たとえば、「告別の花」「最後のお花」などと呼ばれることもありますが、いずれも意味合いはほぼ同じです。 ただし、仏教・神道・キリスト教など宗教的背景によっては、別れ花の方法や取り扱いに違いが出ることもあります。例えば、仏教式では白い菊が主流である一方、キリスト教式ではユリやカーネーションが好まれます。これについては後述のセクションで詳しく解説します。

別れ花はいつどこで添える?

別れ花を添えるのは、葬送の流れの中でも特に大切な場面です。葬儀や告別式の後に火葬場へ移動し、棺を炉に納める直前に行われますが、地域や火葬場の運用によっては、式場内で行われることもあります。このタイミングで遺族や親族、親しい参列者が一人ひとり、棺の中に花を手向けることで、故人への感謝や別れの気持ちを静かに伝えます。

一般的な別れ花の流れ

 ₋1.告別式の終了後に火葬場へ移動₋     ・式を終えると、霊柩車で故人を火葬場へ搬送します。同行するのは遺族や親しい親族が中心です。  ₋2.火葬場に到着し、炉前室へ案内される₋     ・火葬場では手続きが行われた後、炉前室と呼ばれる場所に通されます。ここで、棺のふたが開けられ、最後の対面ができます。  ₋3.棺に花を手向ける₋     ・用意された花を、参列者が順番に棺へ手向けます。一般的には頭、胸、手、足元など、故人のまわりを彩るように配置します。     ・花は一輪ずつまたは小分けの状態で渡されることが多く、葬儀社があらかじめ準備しています。  ₋4.最後の言葉をかける₋     ・花を添える際、故人への感謝や想いを静かに語りかける人もいます。無言で手を合わせる方もおり、形式よりも気持ちが重視される瞬間です。  ₋5.棺のふたを閉じ、火葬へ₋     ・すべての花が手向けられたら、棺のふたを閉じて火葬炉に納めます。これが、故人と顔を合わせる最後の時間となります。

地域や家庭による違いも

別れ花の方法や流れは、地域や家庭の風習によって多少異なることがあります。例えば、  ・花を棺に敷き詰めるように多く添える地域もあれば、最小限の花だけを手向ける地域もあります。  ・故人が好きだった花や色を取り入れることで、個性を尊重する形が選ばれることもあります。 このような違いはあっても、基本的な目的は同じです。別れ花の時間は、形式にとらわれすぎることなく、心を込めて故人を見送ることが何より大切とされています。

別れ花にふさわしい花の選び方と花言葉

別れ花に用いられる花には、それぞれ深い意味が込められています。色や形だけでなく、花言葉や文化的背景を考慮して選ばれることで、故人への想いをより豊かに表現できます。この章では、別れ花によく使われる代表的な花とその花言葉、宗教や文化による違い、そして避けるべき花についても詳しく解説します。

よく使われる花とその意味

以下は、別れ花でよく選ばれる花と、それぞれに込められた意味の一例です。

    ₋花の名前₋     ₋花言葉₋   ₋特徴・用途例₋
₋白いカーネーション₋  無垢で深い愛・尊敬両親や目上の方への別れ花として好まれる
₋ユリ(特に白)₋純潔・威厳・無垢な魂女性の故人やキリスト教系の葬送でよく用いられる
₋トルコキキョウ₋優美・希望・永遠の愛色合いが柔らかく、華やかで棺の中を優しく彩る
₋白菊₋真実・誠実・悲しみを超える心仏教式葬送で最もよく使われる、日本の葬花の代表格
₋胡蝶蘭₋永遠の別れ・幸福が飛んでくる高級感があり、会社関係や社葬などで選ばれることも
₋かすみ草₋清らかな心・感謝の気持ち他の花を引き立てつつ、優しさを添える名脇役

どの花も、それぞれの特徴や想いを表現できる美しさを持っています。とくに色味や花言葉を重視して選ぶことで、形式ではなく心からの別れを伝えることができます。

宗教や文化による花の使い方の違い

ここで、前章で削除した宗教ごとの違いを、花の選び方の視点からご紹介します。  ₋・仏教(特に日本仏教)₋:    ・主に白菊、ユリ、カーネーションなど、落ち着いた色合いの花が好まれます。    ・赤や濃いピンクなど、派手な色は避ける傾向があります。  ₋・神道₋:    ・清浄を重んじるため、白を基調とした花が選ばれます。榊が用いられることもありますが、別れ花として花を手向けることも一般的です。  ₋・キリスト教₋:    ・白ユリや淡いバラ、カーネーションなどが好まれ、色彩の自由度は比較的高めです。    ・生前の人柄や好みに合わせてカラフルな花を選ぶケースもあります。 このように、宗教や文化的背景に応じて使用される花には違いがあります。迷ったときは、葬儀社やお寺、教会の担当者に確認するとよいでしょう。

故人の人柄や好みを反映する選び方

最近では、「生前好きだった花を入れてあげたい」「趣味にちなんだ色を選びたい」といった、よりパーソナルな別れ花の選び方も増えています。たとえば、   ・音楽が好きだった方に、音符のような細かい花(デルフィニウムなど)   ・自然を愛していた方に、野花やグリーンの葉を多めに   ・若い故人に、明るいピンクやオレンジのトルコキキョウを使う といった工夫を加えることで、見送る側の気持ちがより深く伝わることがあります。

避けるべき花や配慮すべきこと

別れ花にふさわしくないとされる花もあります。以下の点に注意しましょう。  ₋・トゲのあるバラやアザミ₋:攻撃的な印象があるため避けられる。  ₋・強すぎる香りの花(例:ユリの一部品種)₋:体調への配慮が必要。  ₋・毒性のある花(例:スズラン)₋:安全性の面で懸念があるため控える。 また、色が濃すぎたり、グリッターや装飾が施された花は、厳粛な場にそぐわない場合があるため注意が必要です。

別れ花の選び方で失敗しないために

別れ花は、単なる飾りではなく、故人への最後の贈り物です。そのため、選び方には慎重さが求められます。見た目の美しさだけでなく、葬送の場にふさわしいかどうか、宗教・風習への配慮、遺族や参列者の心情に寄り添う姿勢が大切です。ここでは、別れ花を選ぶ際に気をつけるべきポイントを、実例を交えて詳しく紹介します。

1. 色合いは落ち着いたものを選ぶ

別れ花にふさわしい色は、一般的に「白」「淡いピンク」「薄紫」「淡い黄色」など、柔らかく静かな印象を与えるものです。故人が穏やかに旅立つ姿を引き立てる効果があり、場の雰囲気にもなじみます。 避けるべき色としては、  ・濃い赤や派手なピンク  ・原色の青や紫  ・黒(生花ではまず用いられません) といった、強い印象を与える色があります。特に仏教葬では白を基調とするのが通例であり、派手な花は場にそぐわないとされることもあります。

2. 花の形や大きさに注意する

棺に手向ける花は、できるだけ扱いやすいサイズであることが望まれます。大輪の花を丸ごと入れるよりも、小さな花や一輪ずつに分けたもののほうが、故人の顔まわりや体を優しく包み込むように配置しやすくなります。 また、トゲのあるバラやアザミのような花は避けるのが基本です。万一使用する場合は、事前にトゲを取り除いておく必要があります。

3. 故人や遺族の意向を最優先に

花の好みは人それぞれです。生前に故人が好きだった花、遺族が希望する色や種類がある場合は、それを尊重しましょう。とくに最近では、「故人らしさ」を大切にした柔軟な花選びが増えており、カスタマイズが可能な葬儀社や花屋も多く存在します。 例:  ・故人がバラを好んでいた → トゲを取った淡い色のバラを使用  ・季節の花を入れたい → 桜の時期には枝を短く切って添えることも このような配慮が、参列者の心にも温かく伝わるのです。

4. 宗教や地域の風習に配慮する

宗教や地域によって、使ってよい花・避けるべき花に違いがあります。たとえば仏教では白菊やユリが主流で、赤い花はあまり好まれません。一方でキリスト教ではユリや淡い色のバラも許容され、比較的色の自由度が高い傾向にあります。 地域の風習としては、   ・菊以外の花を多く使う地域(関西など)   ・家族葬中心の地域では、小ぶりな花を選ぶ傾向 などがあります。葬儀社と相談し、場に合った選び方を心がけることが大切です。

5. 香りやアレルギーへの配慮も忘れずに

別れ花は、火葬場や葬儀会場という密閉された空間で使用されるため、香りが強すぎる花や花粉が多い花は避けた方が無難です。特に体調を崩しやすい高齢者や、アレルギーのある方への配慮として、  ・控えめな香りのユリ(オリエンタル系よりカサブランカ系)  ・花粉を落としてある花(事前処理済みのもの) などを選ぶのが適切です。

別れ花の費用相場と手配方法

別れ花は、故人を見送るうえで非常に印象に残る重要な役割を果たします。その手配方法や費用相場を事前に把握しておくことは、遺族にとっての安心につながります。この章では、代表的な手配方法とその費用、参列者が気をつけたいポイントについて詳しくご紹介します。

手配方法:誰が、どこで、どう準備するか

別れ花の準備方法は、大きく分けて以下の3通りです。 ₋1. 葬儀社に一括依頼する₋ 葬儀プランに「別れ花」が含まれているケースが多く、段取りもすべて任せられるため安心感があります。  ₋・メリット₋:準備の手間が省け、花の種類・本数も適切に用意される。  ₋・注意点₋:細かな指定ができない場合があり、費用はやや高めになる傾向があります。 ₋2. 花屋に直接注文する₋ 地域の生花店やオンラインショップを利用して、希望の花材・色味でアレンジメントをオーダーできます。  ₋・メリット₋:故人や家族の意向に沿った花が用意できる。  ₋・注意点₋:搬入のタイミング調整が必要で、葬儀社との事前連携が欠かせません。 ₋3. 自分で持ち込む₋ 生前好きだった花などを遺族が自ら用意するケースもあり、よりパーソナルな別れを演出できます。  ₋・メリット₋思い入れのある花を自由に選べる。  ₋・注意点₋:棺のスペースや全体の色合い、花の保管状態にも配慮が必要です。

参列者としての注意点:花の持ち込みは事前確認を

参列者が別れ花を持参したい場合、必ず₋喪主や葬儀社に確認を取ることが大切₋です。  ₋・棺のスペースには限りがあります₋。葬儀社が人数分の花を用意している場合、追加の花は収まりきらない可能性があります。  ₋・使用できる花に制限がある場合もあります₋。宗教的・地域的な慣習により、特定の花や色が不適切とされることも。  ₋・遺族の意向を尊重することが大前提です₋。花を手向けたい気持ちが、かえって遺族の考えと食い違うこともあります。 どうしても気持ちを伝えたい場合は、₋弔電や手紙など他の方法で想いを表す₋ことをおすすめします。

費用の相場

別れ花は、祭壇に飾られている供花を使用する場合がほとんどで、追加料金がかからないこともあります。ただし、供花を別途注文する場合や特別な装飾を希望する際は費用が発生します。 以下が主な目安です:

       用途・形式     費用の目安(税込)
       供花(一基)     約7,500〜15,000円
       供花(一対)     約15,000〜30,000円
    顔周りのみに花を添える場合       約20,000円程度
   全身を覆うように花を添える場合       約60,000円程度

花の種類や量、季節によっても費用は変動します。供花を送る際には₋一対で20,000円程度を目安₋にするのが一般的です。

予算に応じた工夫

限られた予算でも、心のこもった別れ花の準備は可能です。以下の工夫を参考にしてください。   ₋・花の種類を選ぶ₋:高価な洋花を避けて、菊やカスミソウを中心に選ぶとコストを抑えられます。   ₋・一部を自作にする₋:市販の花を組み合わせて自分で簡単にアレンジメントを作ることも可能です。   ₋・オンライン注文を活用する₋:定額制の「お別れ花セット」など、選択肢も増えています。 また、₋量よりも配置とバランスが大切₋です。想いを込めて選んだ花は、それだけで十分に温かく、美しい別れの場を演出してくれます。

まとめ

別れ花は、故人との最後の対面において、深い感謝や愛情を込めて手向ける花であり、日本の葬送文化の中で静かに受け継がれてきた重要な習慣です。棺に添える花一輪には、形式ではなく想いが込められており、遺された人の心を慰め、故人の旅立ちを穏やかに見送るための大切な手段となります。本記事では、別れ花の意味から、添えるタイミングや流れ、使われる花の種類とその花言葉、選び方の注意点、さらには費用相場や手配方法、参列者としての配慮まで、幅広くご紹介しました。花は単なる装飾ではなく、故人とのつながりを形にするものであり、その選び方ひとつで送る側の気持ちがより豊かに表現されます。参列者が花を用意したい場合には、必ず事前に遺族や葬儀社へ確認をとることが礼儀とされており、配慮ある行動が求められます。最期の別れの場にふさわしい花を心を込めて選ぶことで、その一瞬が忘れがたい温かな記憶として刻まれることでしょう。

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