遺影はどこに飾る?正しい位置・方角・順番と保管法を徹底解説

2025.4.14

  • 葬儀

家族や親しい人を見送ったあと、遺影は単なる写真ではなく、故人の存在を日々感じられる心のよりどころになります。特に葬儀後の一定期間は、遺影が供養の中心的な役割を果たすことも多く、その飾り方や扱いには配慮が求められます。 しかしながら、「遺影はどこに飾るのが正解?」「方角や配置に決まりはあるの?」「複数あるときはどう並べるべき?」「いずれ保管する際の注意点は?」など、具体的なマナーや作法について迷う方も少なくありません。宗教や地域の風習、家族の考え方によっても対応が異なるため、一般的な知識を押さえておくことが重要です。 本記事では、遺影の飾る場所、方角、順番、注意点、そして保管方法に至るまで、葬儀後に知っておきたい実用的なポイントを順を追って詳しく解説します。仏教の基本的な考え方をはじめ、実際の住宅環境や家族の生活スタイルに合った対応方法も紹介していきます。 故人の尊厳を保ち、ご遺族が安心して供養できるように。遺影の飾り方と保管の基礎知識を正しく理解して、穏やかな心で毎日を過ごしていけるようにしましょう。

遺影の飾る場所やルール

遺影は、故人を偲ぶ象徴的な存在として、葬儀後も一定期間、家庭内で飾られることが一般的です。しかし、遺影の取り扱いには宗教的な意味やマナーが存在するため、飾る場所や期間に関する基本的なルールを理解しておくことが大切です。ここでは、四十九日までとそれ以降の飾る場所について詳しく解説します。

遺影 飾る場所

四十九日までは後飾り祭壇に飾る

仏教では、故人が亡くなってから49日間は「中陰(ちゅういん)」と呼ばれる期間にあたります。この期間は、故人の魂が成仏に向けて旅立つ準備をするとされており、供養を続けることで極楽浄土へ導かれると信じられています。 この中陰の間、自宅には「後飾り祭壇(中陰壇)」を設置し、遺影・白木位牌・骨壷・香炉・供物などを飾ります。遺影は祭壇の中央もしくはやや高い位置に配置し、訪れる人が自然に手を合わせられるようにします。目線の高さを基準にすると、見やすく安定感があります。 なお、後飾り祭壇は葬儀社が用意することが多く、仏具店でもレンタルや購入が可能です。白木位牌は四十九日法要を終えると本位牌に変わるため、そのタイミングで祭壇を片付け、遺影の位置も変更するのが一般的です。

四十九日以降は仏間などに飾る

四十九日の法要が終わると、「忌明け」となり、中陰壇は撤去されます。その後は、仏壇のある部屋や家族の集まる場所で遺影を引き続き飾る家庭が多いです。 仏壇のすぐ横や、同じ部屋の壁面などに設置すると、日々のお参りの中で自然に故人へ手を合わせることができます。特に仏間がない住宅では、リビングの一角にスペースを設けることも一般的になってきています。 ただし、後述するように、仏壇の中やその真上に遺影を飾るのは避けるべきとされているため、配置には注意が必要です。現代的な住宅事情では、写真立てやコンパクトなフォトスタンドを用いるケースも増えており、家族のライフスタイルに合わせて工夫することが求められます。

遺影を飾る方角

遺影を飾る際に「どの方角に向けるのがよいのか?」という点は、多くの方が気になるポイントです。実際には厳密な決まりがあるわけではありませんが、仏教や風水の観点から、ある程度の指針があります。ここでは、一般的に好まれる方角やその理由、例外となるケースについて詳しく解説します。

一般的には「南向き」または「東向き」が良いとされる理由

仏教においては、仏壇や位牌、遺影などを飾る方角として、南向きや東向きが好まれます。これは、光が差し込みやすい方角であり、明るく清浄な空間にふさわしいとされるためです。 ・南向き:日照時間が長く、太陽の恩恵を受ける明るい方向とされ、繁栄や発展を象徴します。仏教の教えの中でも、仏壇は南向きに配置するのが理想とされてきました。 ・東向き:朝日が昇る方向であり、「始まり」「再生」を象徴することから、故人の安らかな旅立ちを願う意味合いでも東向きが選ばれます。 住宅の構造や間取りによって、南や東が難しい場合もあるかもしれませんが、できる範囲で明るく清潔な空間に配置することが大切です。

実際には生活動線や配置のバランスを重視する

理想的な方角があるとはいえ、遺影を飾る場所は住環境によって大きく左右されます。とくに都市部の住宅やマンションでは、仏間がない場合も多く、実用性や動線とのバランスが重視されます。 ・来客から見えすぎない位置 ・直射日光が当たりすぎない ・手を合わせやすい高さや場所 といった配慮も大切です。南や東を意識しつつも、「家族が自然に目を向け、心静かに故人を想える場所」であることが何よりも重要です。

風水の観点から見た注意点

風水の立場から見ると、「北向き」は冷たさや孤独を連想させるため、避けた方が良いとされる場合があります。また、西向きは「物事の終わり」を示すと考えられる地域もあるため、慎重に判断する家庭もあります。ただし、これらはあくまで考え方の一つであり、絶対的な決まりではありません。 宗教・信仰・風習にこだわりすぎるよりも、故人やご遺族の気持ちを第一に考え、無理のない範囲で最適な場所を選ぶことが推奨されます。

遺影を飾る順番

家庭内に複数の遺影がある場合、「どの順番で並べるべきか」は意外と悩ましい問題です。遺影の配置には、故人への敬意や仏事のマナーが反映されるため、適切な順番を知っておくことが大切です。

一般的な並べ方は「亡くなった順に右から左へ」

日本の伝統的な風習では、遺影を並べる際は「亡くなった順に、向かって右から左へ」配置するのが一般的です。つまり、もっとも早く亡くなった人が右端、最近亡くなった人が左端になるようにします。 これは、遺影の飾り方において「向かって右が上座(位が高い)」とされているためで、年長者・家長・祖先などの故人を右側に配置することで、敬意を表す意味があります。 【例:祖父→父→兄の順で亡くなった場合】 ・向かって右:祖父(最も早く亡くなった) ・中央:父 ・向かって左:兄(最近亡くなった) この配置は、仏間に設けた遺影スペースや後飾り祭壇で用いられることが多く、位牌や位牌棚の並べ方と一致しています。

額縁のバランスや配置の工夫も大切

遺影の額縁の大きさやデザインが異なる場合、視覚的なバランスをとることも配慮すべきポイントです。例えば中央に大きめの額を置き、左右に小さめの写真を配置するなどして、見た目に違和感がないよう調整します。 また、写真を等間隔で並べるだけでなく、故人の人生や家族関係を反映するような飾り方にすることで、供養の意味がより深まります。

縦に飾る場合も「上が上位、下が下位」

壁のスペースなどの関係で、縦に遺影を並べる場合もあるでしょう。その場合は、「上段が上位(亡くなった順に上)」「下段が下位」となるように飾るのが一般的です。 【縦に並べる例】 ・上段:祖母 ・中段:父 ・下段:母 仏壇の両側や、納骨スペースの壁面など、縦方向に飾るスタイルでもこの原則を活かせます。

家族の意向や地域の習慣に合わせる柔軟さも必要

遺影の並べ方には一定のルールがありますが、すべての家庭に画一的に当てはまるわけではありません。宗派や地域の違い、家族の考え方によって、「飾らない」「一枚にまとめる」「デジタルで保存する」といった選択肢も増えています。 現代では、遺影をスキャンしてデジタルフォトフレームに保存し、時間ごとに表示を切り替える方法や、先祖代々の写真を一つの額にコラージュするケースも見られます。こうした新しい形式の供養方法も、家族の思いを反映した尊い形といえるでしょう。 このように、「向かって右が位が高い」「亡くなった順に右から左へ」という原則を基本にしながらも、柔軟で心のこもった配置を心がけることが大切です。

遺影の飾り方に関する注意点

遺影を飾る際には、ただ場所や方角、順番を整えるだけでなく、「どう飾るか」という点でも細かな注意が必要です。宗教的な意味合いや安全性、地域の風習などを踏まえた配慮が求められます。ここでは、遺影を飾るときに特に気をつけるべき3つのポイントを詳しく解説します。

仏壇の中や真上に飾らない

仏壇に関して最も重要なマナーのひとつが、遺影を仏壇の中や真上に飾らないという点です。これは、仏壇の中が「仏様の居場所」「神聖な空間」とされているためで、遺影(人の姿)がそこにあることは不適切とされる場合が多いのです。 また、仏壇の真上に遺影を飾ると、仏様の上に人を配置することになり、目上を見下ろす構図になってしまうため、宗教的にもマナー違反とされます。 【推奨される位置】 ・仏壇の横の壁(左右いずれか) ・仏壇と同じ部屋の別の壁面 ・仏壇の正面だが離れた位置(上下関係が出ないよう注意) このように、仏壇と同じ空間に置く場合でも、仏様との位置関係に十分配慮することが大切です。

宗派や地域の風習を確認しておく

日本は宗教的・文化的に多様な国であり、仏教の中にも浄土真宗・曹洞宗・日蓮宗などさまざまな宗派が存在します。そのため、遺影の扱いや飾り方にも宗派ごとの違いがあります。 例えば ・浄土真宗では「成仏=すでに仏様」であるという考えから、遺影を長期的に飾らないこともあります。 ・地域によっては、遺影の代わりに「位牌」のみを重視する文化も存在します。 加えて、同じ宗派であっても地域差がある場合や、家庭ごとの習慣が引き継がれていることも多いため、迷った際は菩提寺の住職や葬儀社に相談するのがもっとも確実です。

落ちないように固定する

遺影を飾る場所や高さが適切であっても、地震や振動で落下するリスクがあっては意味がありません。特に遺影は額縁入りでガラスが使われていることが多く、落下した場合に破損やケガの原因になります。 【安全対策の例】 ・壁掛け用の頑丈なフックやビスを使用する ・賃貸住宅などでは強力な両面テープ+耐震パッドを併用する ・スタンド式の場合は、滑り止めシートや重しで安定させる ・壁に取り付ける場合、傾斜をつけて前に倒れない設計にする さらに、額縁が大きい場合や高所に設置する場合は、ワイヤーとネジを併用した二重固定なども推奨されます。遺影は長期的に飾るものですから、地震対策も忘れずに行いましょう。

遺影の保管方法

遺影は、長く飾り続けるご家庭もあれば、一定期間を過ぎた後に丁寧に保管しておくご家庭もあります。飾らなくなった遺影をどう保管するかは、故人への敬意と共に、安全性や保存状態の維持といった実務的な観点からも考える必要があります。ここでは、遺影を劣化させずに長期保存するための具体的な方法や注意点を紹介します。

直射日光・湿気を避けた場所を選ぶ

遺影は写真用紙に印刷されていることが多いため、直射日光や湿気、温度変化に非常に弱い性質があります。長期間保管する場合は、以下のような環境を選ぶことが重要です。 ・直射日光が当たらない場所(写真の退色防止) ・湿度が一定に保たれる場所(カビや劣化の防止) ・風通しが良い(結露やカビのリスク軽減) 押し入れやクローゼットの中に保管する場合は、除湿剤を併用したり、密閉しすぎない収納ボックスを使うなどの工夫が必要です。

保存袋・アーカイブボックスの活用

遺影をそのまま収納棚に置くのではなく、保護性の高い保存袋やアーカイブボックスを活用することで、より安全に保管できます。 【おすすめの保存方法】 ・写真専用の保存袋(防湿・防塵素材) ・アシッドフリーの紙製フォルダ(化学変質を防止) ・緩衝材入りのハードケース(額縁ごと保管したい場合) 額縁付きのまま保管する際は、ガラス面と他の物が接触しないよう、フェルトやクッション材で覆うことも大切です。さらに、遺影が複数ある場合は、収納スペース内で重ねないようにしましょう。

デジタル保存も視野に入れる

最近では、遺影をスキャンしてデジタルデータとして保存する方も増えています。これは、災害時の備えや、家族間での共有を目的とした合理的な方法です。 【デジタル保存のメリット】 ・写真が劣化しない ・複数端末での閲覧が可能 ・離れて暮らす家族と共有しやすい ・印刷用データとして再利用可能 スマートフォンやパソコンで簡単にスキャンできる時代ですので、デジタル化をしておくことで、遺影の扱い方にも柔軟性が生まれます。クラウド保存サービスや外付けハードディスク、USBメモリなど、複数のバックアップ方法を併用するのが安心です。

将来的な処分を考える場合

遺影の保管を続ける中で、「いつかは処分しないといけないのでは…」と悩まれる方もいます。仏教の考え方では、遺影そのものに魂が宿るわけではないとされる場合が多いですが、それでも粗末に扱うのは避けたいものです。 処分する際は、以下のような方法が一般的です。 ・菩提寺での供養処分(お焚き上げ)を依頼する ・専門業者による遺品整理サービスに含める ・写真を取り出して、額縁を別の用途に再利用する いずれの方法も、故人への感謝と敬意を込めたうえで判断することが大切です。

まとめ

遺影は、故人を偲ぶための大切な象徴であり、適切な飾り方や保管方法を知ることは、故人への敬意を示す一歩です。四十九日までは後飾り祭壇に飾り、その後は仏間やリビングなど生活に根ざした空間に移します。飾る際は、仏壇の中や真上を避け、向かって右から左へ亡くなった順に配置するのが一般的です。南向きや東向きなど、明るく清浄な方角に置くことも望まれます。また、遺影を保管する場合は、湿気や直射日光を避け、専用の保存袋やデジタル化などで丁寧に管理しましょう。宗派や地域による違いもあるため、迷った際は菩提寺や専門家に相談するのが安心です。大切なのは、故人への思いを日々の中で自然に寄せられる場所と形を整えることです。

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