「要支援」と「要介護」の違いとは?基準やサービス内容を詳しく解説

「要支援」と「要介護」の違いとは?基準やサービス内容を詳しく解説

公開日: 2024.5.20     更新日: 2025.1.14

介護保険を利用する際、「要支援」と「要介護」という2つの区分に分けられることをご存じでしょうか。この2つの区分は、利用者の状態に応じてどのようなサポートが必要かを明確にするためのものです。この記事では、「要支援」と「要介護」の定義や基準、各段階ごとの詳細な説明、受けられるサービス内容、認定手続きの流れ、そして支給限度額について詳しく解説します。特にこれから介護保険を利用しようと考えている方や、家族の介護を検討している方に役立つ内容となっています。

1. 「要支援」と「要介護」の定義と基準の違い

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介護保険では、利用者の状態に応じて「要支援」と「要介護」に区分されます。この区分は、どの程度のサポートが必要かを明確にし、それに基づいたサービスを提供するためのものです。

要支援とは?

「要支援」とは、日常生活において軽度のサポートが必要な状態を指します。たとえば、掃除や買い物などの家事をこなすのが難しくなったり、体力の低下により一部の動作が不便に感じられる場合などがこれに該当します。

要支援の基準

・生活の自立度

基本的に自立しており、軽度の手助けが必要。

・身体的、精神的な状態

加齢に伴う体力の低下や軽い認知機能の衰えが見られるが、重大な障害はない。

・支援の目的

現在の状態を維持し、要介護状態に進行しないようにすること。

要介護とは?

一方で「要介護」は、日常生活全般にわたって継続的なサポートが必要な状態を指します。たとえば、入浴、食事、排泄といった基本的な身体介護が必要な場合や、認知症によって安全な生活が困難な場合です。

要介護の基準

・生活の自立度

身体的、または精神的な状態が低下し、多くの日常生活動作に支援が必要。

・身体的、精神的な状態

病気や障害により、身体介護が必要。また、認知機能の低下が進行している場合も該当。

・支援の目的

安全で快適な生活を提供し、必要に応じた専門的な介護を行うこと。

2. 要支援・要介護の7段階における目安と具体例

介護保険制度では、利用者の状態に応じて「要支援1〜2」と「要介護1〜5」の7段階が設定されています。それぞれの段階では、日常生活の中でどのような支援が必要かが異なります。この章では、各段階の状態をイメージしやすいように、目安となる具体例を示します。

2.1 要支援状態の目安と具体例

要支援1

目安

・基本的な動作はほぼ自分でできるが、日常生活の一部に支援が必要な状態。家事や買い物、外出に少し不安を感じることがあります。

具体例

・掃除をすると疲れやすくなり、1人では難しいと感じる。

・買い物に行く際、荷物が重いと運べない場合がある。

・友人や家族との交流が減り、外出する機会が減っている。

要支援2

目安

・立ち上がりや歩行が不安定であり、生活動作のいくつかに補助が必要な状態。適切な支援を受けることで、要介護状態への進行を防ぐことが期待されます。

具体例

・トイレまで移動する際に壁や家具に手をつくことが多い。

・お風呂に入る際、浴槽のまたぎ動作に不安がある。

・階段の上り下りが怖くなり、家の中で転倒しそうな感覚がある。

2.2 要介護状態の目安と具体例

要介護1

目安

・手段的日常生活動作が低下し、部分的な介護が必要な状態。立ち上がりや歩行が不安定で、排泄や入浴に一部の介助が必要です。

具体例

・自分で食事はできるが、調理は難しくなり外食やデリバリーを頼ることが多い。

・お風呂では自分で体を洗えるが、浴槽から出る際に手を借りる必要がある。

・1人でのトイレ利用は可能だが、服を脱ぎ着する際に手助けが必要になる。

要介護2

目安

・日常生活動作においても部分的な介護が必要な状態。起き上がりが自力では困難で、排泄や入浴に一部または全介助が必要です。

具体例

・朝起きるときに自力で布団から出られないため、ベッドサイドで支えてもらう必要がある。

・排泄後に自分で清拭できず、介助が必要なことがある。

・入浴時には衣類を脱がせてもらう支援がないと準備ができない。

要介護3

目安

・日常生活動作および手段的日常生活動作の両方で全面的な支援が必要な状態。起き上がりや寝返りが自力で難しく、排泄や衣服の着脱に全介助が必要です。

具体例

・ベッドで寝返りを打つとき、自力では体を動かせず、介助が必要になる。

・食事は介助を受けながらでないと摂取できない。

・衣類を自分で脱ぎ着するのが難しく、朝晩の着替え時に全面的な介助が必要。

要介護4

目安

・動作能力がさらに低下し、介護なしでは日常生活を営むことが困難な状態。排泄や入浴、衣服の着脱などで全面的な介助が必要で、認知症による症状がより顕著になる段階です。

具体例

・1日中ベッドで過ごし、体を起こすことができないため、ベッド上で食事を介助されながら摂取する。

・入浴は自宅では難しく、施設や訪問入浴サービスを利用して介助を受ける必要がある。

・認知症による徘徊で家族が目を離せなくなる。

要介護5

目安

・ほぼすべての生活動作で全面的な介護が必要な状態。寝たきりの状態や高度な医療ケアが必要で、理解力の低下が進み、意思疎通が困難な場合が多いです。

具体例

・自力での飲食ができず、胃ろうや点滴による栄養補給が必要。

・尿や便はオムツで管理され、定期的な交換と清拭が必要。

・ベッド上でほとんどの時間を過ごし、褥瘡(床ずれ)防止のために頻繁な体位変換が必要。

3. 要支援と要介護に応じたサービス内容の違い

要支援と要介護では、利用できるサービスの種類や目的が異なります。要支援の場合は、心身の状態を維持・向上させ、要介護状態への進行を防ぐことを目的とした「介護予防サービス」が中心です。一方で、要介護の場合は、生活全般を支援するサービスが提供され、家族の介護負担を軽減する役割も担っています。以下で、それぞれの段階に応じたサービス内容を詳しく解説します。

3.1 要支援のサービス内容

要支援1、2の方は、介護保険が適用される「介護予防サービス」を利用できます。これらは、住み慣れた地域で自立した生活を送れるように支援し、要介護状態への進行を防ぐことを目的としています。また、自治体が提供する地域密着型サービスや「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」も活用できます。

利用できるサービス例

1.介護予防サービス

・介護予防訪問看護

・介護予防通所リハビリテーション(デイケア)

・介護予防居宅療養管理指導

・介護予防福祉用具貸与(一部の用具は対象外)

・特定介護予防福祉用具販売

2.地域密着型介護予防サービス

・介護予防小規模多機能型居宅介護

・介護予防認知症対応型通所介護

3.介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)

・訪問型サービス(掃除、洗濯、調理などの生活支援)

・通所型サービス(デイサービスでのリハビリや交流)

・介護予防教室(体操、口腔ケアなど)

・高齢者サロンや地域活動

注意点

・福祉用具の貸与については、一部対象外の用具があります(例:電動ベッド)。

・特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型医療施設などの入居サービスは、原則として要支援者は対象外です。

・一部のサービスは、自治体の総合事業に移行して提供されています。

3.2 要介護のサービス内容

要介護1~5の方は、介護保険が適用される「介護サービス」を利用できます。これらのサービスは、日常生活の支援から施設介護まで、要介護度に応じて幅広く提供されます。要介護3以上では、特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用できるのが特徴です。

利用できるサービス例

1.居宅サービス

・訪問介護(身体介護や生活援助)

・訪問看護(医療的なケアの提供)

・通所介護(デイサービスでの生活支援)

・短期入所サービス(ショートステイ)

・福祉用具貸与(車いす、歩行器など)

・特定福祉用具販売

2.施設サービス

・特別養護老人ホーム(原則要介護3以上が対象)

・介護老人保健施設

・介護療養型医療施設

・介護医療院

3.地域密着型サービス

・小規模多機能型居宅介護

・夜間対応型訪問介護

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

注意点

・要介護1~3の方は、レンタルの対象とならない福祉用具があります。

・特別養護老人ホームへの入居は、原則として要介護3以上が対象です。

3.3 共通の支援内容:住宅改修サービス

要支援1から要介護5までの全ての段階で利用できる支援として、「介護保険適用の住宅改修サービス」があります。

主な住宅改修内容

・手すりの取り付け

・段差の解消

・滑り防止のための床材変更

・和式トイレから洋式トイレへの交換

支給限度基準額

・20万円(生涯1度のみ)

ただし、要介護状態が3段階以上上昇した場合や転居した場合には、再度支給されます。

4. 介護サービスを利用するための認定のプロセスと手続き

介護保険サービスを利用するためには、まず要支援または要介護の認定を受ける必要があります。この認定は、利用者の心身の状態や日常生活における支援の必要性を評価し、適切なサービスを提供するための基準となります。この章では、認定のプロセスや手続きについて詳しく解説します。

4.1 認定のプロセス

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介護保険サービスの認定は、以下のプロセスで進められます。

1. 申請

市区町村の介護保険窓口で認定の申請を行います。申請者は利用者本人、または家族や代理人が行うことが可能です。

必要書類

・介護保険認定申請書

・被保険者証

・マイナンバーが確認できる書類

・身分証明書

2. 認定調査

調査員が自宅や施設を訪問し、利用者の心身の状態や日常生活の状況を詳しく調査します。調査内容には以下が含まれます:

・身体機能: 起き上がりや歩行の能力、排泄の自立度など。

・認知機能: 記憶力や判断力の程度。

・日常生活動作: 食事や入浴、着替えの能力。

3. 主治医意見書の作成

市区町村が利用者の主治医に依頼し、健康状態や疾患に関する情報をまとめた意見書を作成してもらいます。この意見書は審査の重要な資料となります。

4. 介護認定審査会

認定調査の結果と主治医意見書をもとに、市区町村の介護認定審査会が審査を行い、要支援または要介護の区分を決定します。審査は公平性を保つため、複数名の専門家によって行われます。

5. 認定結果の通知

認定の結果は申請から30日以内に通知されます。結果通知には、認定区分(要支援1~2または要介護1~5)や、利用可能な介護サービスの情報が記載されています。

4.2 認定結果を受けた後の手続き

認定結果を受けた後は、ケアマネジャーと相談しながら、具体的な介護サービスの利用計画を立てます。

ケアプランの作成

・要支援の場合:地域包括支援センターの職員が作成。

・要介護の場合:居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成。

サービス利用の開始

ケアプランに基づき、利用する介護サービスが決定され、各事業者と契約を結んでサービスが開始されます。

4.3 認定の有効期限と更新手続き

介護認定には有効期限があり、定期的な更新が必要です。

有効期限

・新規認定の場合:原則6か月。

・更新後の認定の場合:原則12か月。

更新手続きの流れ

1.有効期限の60日前に市区町村から更新手続きの案内が届きます。

2.必要書類を市区町村に提出し、更新審査を受けます。

5. 要支援・要介護の支給限度額

介護保険では、各区分ごとに利用できるサービスの上限額が設定されています。以下に最新の情報を基にした支給限度額をまとめます。

区分

支給限度額の目安(円/月)

要支援1

約50,320円

要支援2

約105,310円

要介護1

約167,650円

要介護2

約197,050円

要介護3

約270,480円

要介護4

約309,380円

要介護5

約362,170円

※地域やサービス内容により変動する場合があります。

まとめ

「要支援」と「要介護」の違いを理解することは、介護保険を賢く活用するための第一歩です。それぞれの状態に応じたサービスを適切に利用することで、利用者自身の生活の質を向上させ、家族の負担も軽減することができます。また、介護認定の手続きやサービス選びでは、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどの専門機関を積極的に活用することが重要です。

介護保険制度は、誰もが安心して生活を続けられるための支えとなる仕組みです。不明点があれば早めに相談窓口を訪れ、適切なサポートを受けながら、自分や家族に最適な介護計画を立てていきましょう。

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