お盆はお墓参りに行こう|お墓に供える花の種類・選び方

2025.6.26

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はじめに

お盆の時期には、多くの人がご先祖様に感謝の気持ちを伝えるためにお墓参りに訪れます。この時期、家族で墓地を訪れることは、単なる年中行事ではなく、故人とのつながりを再確認し、心を整える大切な時間です。 しかし、「お墓参りにはどんな花を供えたらいいのだろう?」と悩む方も少なくありません。スーパーや花屋で供花用の花を見かけても、「本当にこれでいいのか」と不安になることもあります。特にお盆の花選びには、季節性や宗教的な意味、マナーなど、考慮すべきポイントが多く存在します。 この記事では、お墓に供える花の種類やそれぞれの意味、選び方のコツ、供え方のマナーまで、初めての方でも安心して実践できるよう丁寧に解説します。正しい知識を持つことで、お墓参りの時間がより深い供養のひとときとなるはずです。

お墓参りで花を供える理由

お墓に花を供える風習は、日本における仏教的な死生観に根ざしています。仏教では、花は「無常(むじょう)」の象徴とされ、咲いては散るその姿が、命の儚さや移ろいゆく時間を象徴しているとされています。 また、花の美しさは、故人への敬意と感謝の気持ちを視覚的に表現する手段でもあります。私たちは、亡き人に直接言葉をかけることはできませんが、手向けた花を通じて想いを届けることができるのです。 この習慣は仏教だけに限らず、キリスト教や神道でも見られます。宗教や地域によって供え方や使用する花に違いはありますが、「花を供える」という行為の本質は、どの文化でも「敬意と祈り」の表現に他なりません。 特にお盆という季節は、先祖の霊が一時的に帰ってくるとされる特別な期間です。この時期に供える花は、ただの飾りではなく、故人へのメッセージであり、家族のつながりを再確認する象徴でもあります。

お墓に供えるのにふさわしい花の種類

お墓参りにふさわしい花は、まず第一に「長持ちするかどうか」が重要なポイントです。夏の暑さの中でも枯れにくく、見た目が美しい花が好まれます。 よく選ばれる代表的な花には以下のような種類があります。  ・菊(キク):日本で最も一般的な供花。仏事の定番で、邪気を払うとされる。  ・カーネーション:母の日のイメージもあるが、故人への感謝の気持ちを込めやすい。  ・スターチス:乾燥しても色あせにくく、長持ちする。花言葉は「永遠の記憶」。  ・リンドウ:青紫の色味が落ち着いた印象を与える。花言葉は「哀悼」。  ・小菊(スプレーマム):菊の一種で、アレンジしやすく、色のバリエーションも豊富。 これらの花は、見た目の美しさに加えて、「意味」も大切にされています。たとえば、リンドウの深い青色は、故人を静かに偲ぶ気持ちにぴったりですし、スターチスは「記憶を大切にする」姿勢を表すには最適です。 また、花の組み合わせも考慮しましょう。暑さに強く、色のコントラストが控えめなものを選ぶと、供養の場にふさわしい落ち着いた雰囲気が生まれます。無理に華やかにする必要はなく、あくまで「故人を偲ぶ」ことが主眼です。

故人の好みに合わせた花選びもおすすめ

お墓に供える花は、一般的なマナーに沿って選ぶことも大切ですが、何よりも「故人らしさ」や「家族の想い」を大切にした花選びが、心のこもった供養につながります。たとえば、故人が特に好きだった花や色合いを思い出し、その花を供えることで、より個人的で温かな供養が可能になります。 たとえば、春に桜を愛した方であれば、桜の色に似た淡いピンクの花を選ぶ、園芸が趣味だった方なら、ご自身で育てていた花に近い種類を選ぶなど、花を通して故人の生き方や思い出を表現することができます。 家族や親族と一緒にお墓参りに行く場合は、花選びの段階で故人との思い出話を共有するのもおすすめです。「おじいちゃんは、いつも庭で紫の花を大事にしてたね」といった会話が自然に生まれ、供養の時間が単なる儀式ではなく、思い出を語り合う貴重なひとときになります。 形式にとらわれすぎず、「どんな花を供えるか」にこだわるより、「その花にどんな想いを込めるか」を大切にしましょう。気持ちがこもった供花は、形式的なもの以上に、故人の心に届くものです。

お墓参りに不向きな花とは?

一方で、お墓参りにはふさわしくないとされる花もあります。これは、宗教的な理由だけでなく、実際の管理のしやすさや見た目の印象など、実用面を考慮した結果でもあります。 まず避けたいのは、トゲのある花です。たとえばバラは美しく高貴な印象を与えますが、その鋭いトゲが「攻撃性」や「不和」を連想させるとして、供養の場にはふさわしくないとされます。特に仏教では、トゲのある植物は縁起が悪いと考えられ、避けられる傾向にあります。 次に避けるべきは、香りが強すぎる花です。たとえばユリの中でも特に香りの強い品種は、周囲の参拝者の迷惑になる可能性があるため注意が必要です。お墓は複数の家族が訪れる公共的な場でもあるため、香りの強さには十分な配慮を。 また、花びらが散りやすい花も不向きです。たとえばアジサイは美しい花ですが、花びらが地面に落ちやすく、放置すると墓所の美観を損ねてしまう原因になります。掃除がしにくい花は避け、管理が簡単で長持ちする種類を選ぶことが望ましいです。 このように、「きれいだから」「珍しいから」といった理由だけで花を選ぶのではなく、供養の場にふさわしいかどうかを第一に考えて選びましょう。見た目の美しさだけでなく、意味や配慮も大切な要素なのです。

お墓に供える花の色合いや組み合わせの工夫

供花の「色合い」や「組み合わせ」は、故人への想いを視覚的に表す、非常に重要な要素です。花の持つ色や構成が、お墓という静かな場所に調和することで、参拝する人の心も自然と整っていきます。ここでは、供花の色の選び方と組み合わせの工夫についてご紹介します。

1. 落ち着いた色合いが基本

お墓は、哀悼の意を表す神聖な場所であるため、基本となる色合いは「落ち着いたトーン」です。中でも以下のような色が、仏教の供養においてよく用いられます。  ・:純粋さや清らかさを象徴。どんな宗教にも合う万能な色。  ・:高貴さや尊厳を表し、哀悼の気持ちを深く伝える色。  ・:冷静さや静けさを連想させ、落ち着いた印象を演出。 これらを中心に構成された供花は、厳かで心のこもった供養の雰囲気を作り出してくれます。

2. 明るい色を取り入れる場合の注意点

一方で、黄色や赤などの明るい花を取り入れることも、決して悪いことではありません。故人が明るい性格だった、元気な印象を大切にしたい、という想いがある場合には、暖色系の花が前向きな印象を与えることもあります。 ただし注意したいのは、配分と組み合わせです。あくまで主張しすぎないよう、差し色程度に抑えることがポイントです。鮮やかな花を数輪だけアクセントとして使い、全体は落ち着いた色味でまとめることで、調和の取れた印象になります。

3. 組み合わせの例とポイント

供花のアレンジメントでは、花の種類だけでなく、組み合わせによる印象作りも大切です。以下は人気のある構成例です。  ・白い菊(中心):仏事の定番で安定感があり、純粋さを象徴。  ・紫のリンドウ:哀悼の気持ちを添えるシックな色。  ・淡いピンクのカーネーション:やさしさと親しみを感じさせる。  ・スターチス:立体感とボリュームを加え、色持ちも良好。 このような組み合わせでアレンジすると、派手すぎず、かつ華やかさを感じる仕上がりになります。

4. 左右対称に供えて整った印象に

供花は、左右対称に供えるのが正式なマナーとされています。花束を1対用意し、墓石の左右にそれぞれ同じように配置することで、整然とした美しい印象が生まれます。 この左右対称の配置には、バランスを整え、調和を大切にするという日本人らしい美意識が反映されています。花の高さや向き、ボリュームが左右で揃うように意識することで、見た目の印象も一層引き締まり、丁寧な供養の気持ちが伝わります。

宗教・宗派によって異なる供え方の違い

お墓参りにおける花の供え方は、宗教や宗派、さらには地域の慣習によって微妙に異なります。一般的に日本では仏教式の供養が広く浸透していますが、すべての家庭が同じ作法をしているわけではありません。ここでは、代表的な宗教ごとの供花の特徴とマナーについてご紹介します。

仏教式|左右対称に供えて心を整える

日本で最も多く見られるのが仏教式の供花のスタイルです。この場合、基本となるのは「左右対称に供える」という点です。墓石の左右に設置された花立てに、1対の花をそれぞれ同じように挿して、全体のバランスを保つようにします。供える際には、茎の長さを揃え、花の高さや向きが整うよう意識することが丁寧さを示すポイントです。 また、仏教では一般的に、供花を飾る前に線香を焚き、お水を供える順序が基本とされています。こうした手順を守ることで、形だけでなく心を込めた供養の時間を持つことができるのです。

神道|清らかさを象徴する榊を手向ける

神道では、仏教のような花ではなく、榊(さかき)と呼ばれる植物を供えるのが慣わしです。榊は神の宿る木とされ、その緑の葉には「清らかさ」「神聖さ」を象徴する意味が込められています。神前に榊を供えることで、故人の霊に対しても敬意と祈りを示すことができます。 華やかな花ではありませんが、榊の持つ静かで厳かな雰囲気は、神道の儀礼において非常に重要です。特に神社の家系や、神式の葬儀を行った場合には、このスタイルが選ばれます。

キリスト教|白い花で静かな哀悼を表す

キリスト教では、仏教や神道のような「供花」というよりも、「献花」という形で花を捧げるのが一般的です。特に白い花(ユリ、白バラなど)が好まれ、清潔感や純粋さを表す手段として使われます。 墓前では、花をそっと手向けて祈りを捧げたり、黙祷を行ったりするのが主なスタイルです。キリスト教ではあまり形式にとらわれすぎず、静かな心で故人を思いながら献花を行うことが大切にされています。

地域の風習にも目を向けて

同じ宗教であっても、供花の作法や意味合いには地域差があることも見逃せません。たとえば、関西と関東ではお盆の供え方や花の種類に違いが見られることがあります。また、親族や家の風習によっても「こうすべき」という暗黙のルールがある場合があります。 そのため、初めて訪れるお墓や、久しぶりに家族でお墓参りをする場合は、事前に地元の慣習や親族の意見を確認しておくと安心です。供養はあくまで「故人を思う心」が第一ですが、こうした伝統や文化的背景に配慮することも、敬意を示す大切な要素です。

どんな花を選べばよいか迷ったときの考え方

お墓参りのための供花を選ぶ際、「どんな花がふさわしいのか分からない」と感じる方は少なくありません。そんなときに役立つのが、次の3つの視点です。このポイントを意識するだけで、迷わずに心のこもった花を選ぶことができるようになります。

1. 暑さに強く、長持ちする花を選ぶ

お盆の時期は真夏にあたるため、気温が高く、花にとっては過酷な環境です。せっかく心を込めて供えた花が、翌日にはしおれてしまっていては、残念な気持ちになりますし、清掃の手間も増えてしまいます。 そのため、花選びの第一条件として、「暑さに強く長持ちすること」を確認しましょう。たとえば以下のような花がおすすめです。  ・スターチス:乾燥にも強く、色あせしにくい  ・小菊:丈夫で水持ちがよく、供花の定番  ・カーネーション:比較的耐久性があり、色も豊富 これらの花は気温や日差しに負けにくく、墓前でも美しい状態を保ちやすいため、安心して供えることができます。

2. 見た目が落ち着いていて、場所にふさわしいか

次に大切なのが、供花の「見た目の雰囲気」です。お墓は、静けさと敬意が求められる神聖な場所です。あまりに派手な色や、過度に装飾的なアレンジは、かえって場の雰囲気にそぐわない印象を与えることもあります。 おすすめは、以下のような落ち着いた色合いを基調にすることです。  ・:清らかさ、純粋さを象徴  ・:高貴さ、哀悼の意を表す  ・:冷静さや静けさを演出 これらの色で構成された花束は、故人に対する敬意や感謝の気持ちを、控えめながらしっかりと伝えてくれる存在になります。

3. 故人や家族とのつながりを感じられる花を選ぶ

形式的に整った花であっても、心が込もっていなければ、それはただの飾りにすぎません。大切なのは、「その花にどんな思いが込められているか」です。 たとえば、  ・故人が生前好んでいた花を思い出して選ぶ  ・家族との思い出話に花を添える  ・季節の花を取り入れて、自然な彩りを加える といった工夫をすることで、供花に「意味」や「温かさ」が生まれます。迷っている時間そのものが、故人との対話の時間になると考えれば、花選びの過程自体が供養の一部であるとも言えるでしょう。

花の選び方

花を供えるときの基本的なマナー

供花は「どんな花を選ぶか」だけでなく、「どのように供えるか」「その後どう扱うか」といったマナーも非常に大切です。美しい花には、気持ちが込もっています。その思いがしっかり伝わるように、以下の基本的なマナーを心がけましょう。

1. 花筒の掃除をしてから供える

まず最初に確認したいのが、花筒(花立て)の清掃です。長い間手入れされていない花筒には、古い茎や泥、水垢がたまっていることが多く、そこに新しい花を挿しても美しさが半減してしまいます。 お墓参りの際には、柔らかい布やウェットティッシュなどを持参し、簡単にでも汚れを拭き取ってから花を挿すようにしましょう。ほんのひと手間ですが、その気遣いが、より清らかな供養につながります。

2. 清潔な水を用意し、水温にも配慮する

供花の美しさを保つために欠かせないのが、水の管理です。特に夏場は気温が高く、水がすぐにぬるくなって雑菌が繁殖しやすくなります。そのため、花を供える際には必ず新しくて清潔な水を入れるようにしましょう。 さらに、気温が特に高い日には、氷を数個入れることで水温を下げる工夫も効果的です。冷たい水は花のもちを良くし、長時間きれいな状態を保つ助けになります。

3. 供えた後の片付けにも責任を持つ

供花は「供えて終わり」ではなく、供えた後の管理も含めて供養の一部です。花が傷んできたら、そのままにせず、早めに回収して処理することがマナーとされています。放置された花は、見た目が悪くなるだけでなく、虫が寄ったり、他の参拝者の迷惑になることもあります。 特に帰省先など遠方のお墓参りでは、誰が片付けるかを事前に家族で話し合っておくことが大切です。次に誰が来るか分からないまま放置されると、供養の意味が薄れてしまうこともあります。

おわりに

お墓に供える花は、単なる形式的な「習慣」ではなく、私たちの心の中にある故人への想いを表現する大切な手段です。花は言葉を持たないからこそ、その佇まいが私たちの祈りや感謝、哀悼の気持ちを静かに語ってくれます。 どの花を選ぶか迷ったときは、「長持ちするか」「落ち着いた色合いか」「故人を思い出せるか」という3つのポイントを意識することで、自然と心を込めた選択ができるはずです。そこに故人との思い出や家族との会話が加われば、供花の時間はより温かな供養のひとときとなります。 また、お墓参りという行為そのものも、年に一度の義務的なものではなく、心を整え、家族や先祖とのつながりを再確認する機会です。日々の忙しさに追われる中で、静かに手を合わせる時間は、私たち自身の心の豊かさにもつながっていきます。 お盆の時期は、故人の霊が家に帰ってくるとされる特別な季節です。この時期にお墓を訪れ、心を込めた花を供えることは、先祖への感謝の気持ちをかたちにする行為であり、今を生きる私たちにとっても、人生を見つめ直す貴重な時間です。 どうかこの記事が、あなたの供花選びやお墓参りの時間を、より意義深く、心温まるものにする助けとなれば幸いです。供える花一輪一輪に、あなたの気持ちが宿り、それが静かに故人のもとへ届いていくことを願っています。

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