2025.6.18
土葬とは
歴史的背景
法律上の土葬の扱い
土葬に必要な許可
現代日本における土葬の実施状況
火葬率99.9%超の現実
土葬の内訳
宗教的ニーズと地方自治体の対応例
土葬が可能な地域
北海道:余市郡・よいち霊園
茨城県:常総市・朱雀の郷
山梨県:北杜市・風の丘霊園/山梨市・神道霊園
栃木県:栃木市・足利市など
その他:鳥取県・高知県・三重県・奈良県・岐阜県の山間部や過疎地
土葬可能墓地の利用に必要な前提条件
地域選びのヒントと注意点
日本で土葬が困難とされる主な要因
法制度と自治体条例
土地・環境規制・地盤条件
地域住民からの拒否と社会心理
宗教的ニーズの調整の難しさ
経済・社会構造の変化
土葬をするメリット・デメリット
メリット
デメリット
まとめ
日本における埋葬の方法として、現在は「火葬」が事実上の標準とされています。厚生労働省の統計によれば、全国の火葬率はほぼ100%に達しており、現代の日本社会において土葬は極めて例外的な存在です。実際、日常的に土葬を目にする機会はほとんどなく、一般市民の多くが「土葬はすでに日本では禁止されている」と考えているのではないでしょうか。 しかし、土葬は日本の長い歴史において本来の埋葬方法であり、仏教・神道・儒教などの伝統的宗教においても、自然な形での埋葬として長らく受け継がれてきました。明治時代の文明開化を契機に衛生政策が見直され、火葬が奨励されるようになったことで、次第に土葬は減少していきます。戦後には法制度の整備が進み、多くの自治体が条例で土葬を制限するようになったことで、現在のような火葬一辺倒 の状況が確立されました。 それでも、土葬は現在も完全に禁止されたわけではなく、法律上は一定の条件を満たせば実施が可能です。問題はその条件が極めて限定的であり、実際に土葬を行うには行政との調整や適切な墓地の確保など、複雑なプロセスを踏まなければならない点にあります。 本記事では、まず土葬の基本的な意味や歴史的背景を整理し、次に法的な位置づけと制約、さらに現代日本における土葬の実態と実施可能な場所を紹介していきます。そして、なぜ土葬が困難なのかという理由や、実際に土葬を行う際のメリット・デメリットについても詳しく解説します。
土葬とは、遺体を火葬せず、そのまま棺に納めて地中に埋葬する葬送方法です。現代では日本でほとんど見られなくなったものの、かつてはこの方法こそが主流であり、宗教・文化・風習のなかで自然と発展してきた埋葬の形でした。土葬は、遺体を「土に還す」という自然観にもとづき、仏教・儒教・神道を問わず長く受け継がれてきたものです。 一方、形式としては、屈葬(遺体を屈曲させて埋葬)、伸展葬(遺体を伸ばしたまま埋葬)、そして棺葬(棺に収めたまま埋葬)などがあり、時代や地域によってさまざまな様式が取られていました。
日本における土葬の歴史は非常に長く、縄文時代から人々は自然なかたちで死者を地中に還してきました。弥生・古墳時代を経て、仏教が伝来した奈良時代には、僧侶や皇族の一部で火葬が行われ始めましたが、庶民には土葬が根強く残っていました。江戸時代には、儒教的な身体観の影響から火葬を嫌い、土葬を選ぶ武士階級も見られました。 明治時代に入り、都市化とともに公衆衛生への配慮が求められるようになると、政府は火葬を推奨する政策を取り始めます。1875年には一度出された火葬禁止令が撤廃され、代わって火葬奨励の動きが全国に広まりました。20世紀に入ると火葬場が整備され、戦後の復興期には全国的に火葬の利用が急速に拡大。現在では火葬率が99%以上となり、土葬は宗教的・地域的なごく限られた事例を除き、実施が極めて困難な葬送方法となっています。
日本において土葬が明確に「法律で禁止」されているわけではありません。現行の「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」には、土葬そのものを禁止する条文は存在していません。 しかし、実態として多くの自治体が条例により「土葬禁止区域」や「火葬必須区域」を定めており、これにより日本全国の大多数の地域で土葬が行えない状況となっています。東京都、神奈川県、大阪府など都市部の多くはこれらの条例に基づき、土葬を禁止または実施困難としています。 つまり、国の法律として土葬は禁止されていないが、各自治体レベルの条例により、実質的に禁止または極端に制限されているというのが現実です。
仮に土葬を実施できる地域であっても、自由に行えるわけではありません。「埋葬」は法律上、火葬と同様に行政手続きが必要であり、主に以下の2つの許可が求められます。 1.